BBC Yemen on brink of food crisis, say aid groups 22 May 2012
イェメンの情勢不穏はこの国を飢餓に落とし込みつつある,という警告の話。援助団体7つが合同会議をサウジ・リヤドでしたが,ざっと1000万人(人口の44%)が栄養不足であり,500万人が緊急食糧援助を必要とするという。2009年から比較して,栄養不足の率は二倍ほどにもなったという。
北部では民主主義を求める抗議行動が(あとShia Houthiとの闘争が),南部ではイスラミスト(アルカイダ)の反乱があって―それだけでも大変だが,世界的に食料価格・燃料価格が上昇傾向にあるのも厳しい。
ありがちなことだが,マーケットには(まずまず)十分な食料があるのだという。ところが一般家庭ではそれを買うに必要な金銭を得ることができない。そこで子供たちを学校から引き揚げさせ,物乞いをさせて足しにする―。彼ら(子供)のざっと1/3が栄養不良とのこと(国連の推計,about 267,000)。
で,現大統領のお仕事は―
BBC Yemen's new president faces multiple challenges 21 February 2012 By Rupert Wingfield-Hayes
―世間の為政者にまずもって必要なこと,”支配下の民衆を食わすこと”だろうと。
先日のテロの責任を取らされた格好でしょう,免職された前大統領の甥Yahya Saleh氏は無能な人物ではないんでしょう(しかもちょっと癖のある感があるもののわりとイケメンだ)。確かに彼の指揮下の部隊は―米国の援助・訓練が行き届いているようで―精強なんだろう。
その任務は反乱勢力を鎮圧することにある,はず。
しかし英字紙のエディターをするほどの知識人にあってさえ,「アルカイダはリアルな存在よ」「単に否定はできない。彼らはそこにいるのよ」という。イェメンは保守的な国であり,多くの民衆がイスラームに共感を持っている。だから,国家がそのようにはしていないところの,そのところのものを,もしアルカイダがうまく提供するなら―アルカイダは人民に生命と天界とを与えることであろう! ―というのだ。
―いや世界と世界の流れを見るとそれはいろいろ死亡フラグな考え方だと思うのだが,西部のとある村Deir Ayyashを見ればよい,というのである。
藁と泥で作られた家々が建ち並び,舗装道路はなく水道も通らず,電気もない。子供たちは栄養不良。まー早死にするか,障害を増大させて成長するほかないような。医薬品はクリニックにはある。というのもUnicefがくれたから。
―こうした人々にとって,国家以外のなにものか―アルカイダ等々を支持するのはイデオロギーの問題ではない。貧困(とそれからの救済)だ。だから新大統領はこの問題を何とかすることから始めるべきだ―。
…とはいえ,全土にまあまあの生活水準を行きわたらせるのは至難の業。お金だってどれだけかかるか。そんなんだったら,えりーとふぉーす作って反乱勢力をぶちのめす方がおカネ,かからずに済むかもしれない。
…うん,歴史は繰り返すかもしれない。
基本,所謂独立とか世俗化とか,まあ西洋の基準で”どくりつこく”になったらなんか独裁者とかでてきてすげぇ生活が困っちゃう。そこでイスラームの伝統に帰りたいなあ,と希望が出てくるところ,イスラームを掲げる勢力が出てくる。これに期待をかけてしまう―
―アルカイダ的な者たちに。ところが同じイスラームを標榜してはいるが,アルカイダ的イスラームはどーもワッハーブのダイジェスト版(に個人的な思いを付け加えたりした)なものらしく。そんな”イスラーム”なんぞ,現実にはどこの土地にもあったことがないモノだというわけだ。
―経験を積めば,いつか彼らも妥協を憶え,一端の(穏健な)政治的勢力として穏当な政治を行ってくれるに違いない―と多くの人々は思うものだろう。
ところが,アルカイダ的運動がある地域で非常に勢力を張ると,世界各地から”聖戦士”がよって集まってくるのだな。そして運動がローカル化することを妨げる。
ローカル化ってダメじゃん!ガラパゴス化じゃん!と思うかもしらんが,いや実際やられたらたまらんぞ。その国際化・普遍化勢力がある日突然ブラジャー禁止ぃ!とか,金歯・銀歯はイスラム法に反するからペンチで引っこ抜くぞぉう!とか言い出したら。なんか変な方向にガラパゴス化してるが,これ。
そんな感じなので,まあ全体的には穏当にローカル化した(しかし改めて,それなりに自覚的に受け入れなおした)イスラーム文化で手を打っておこうよ,という流れに収束するものと私は思う・期待するのである(私市氏の見解も,私が読む限りそうだと思う。参照,私市 正年『原理主義の終焉か―ポスト・イスラーム主義論 (イスラームを知る) 』,2012年)。
でまあ,いま,イェメンがアルカイダの温床になると…世界中から”聖戦士”が集まって洒落にならん状況になるおそれががが。ソマリアのアレなひとたちが移動する可能性とかああああ。
…今ならMaliあたりもアリかもだけど,あそこはTuareg民族主義勢力がつよいっぽいからなあ。Mali事情の勉強は中途で放棄したままだが。
なお
BBC Yemen holds sombre national day after deadly bombing 22 May 2012
南北イェメン統合記念日記念行事は(1時間ほどに・諸種行事を縮約されながらも)無事に済んだ由。
イェメンの情勢不穏はこの国を飢餓に落とし込みつつある,という警告の話。援助団体7つが合同会議をサウジ・リヤドでしたが,ざっと1000万人(人口の44%)が栄養不足であり,500万人が緊急食糧援助を必要とするという。2009年から比較して,栄養不足の率は二倍ほどにもなったという。
北部では民主主義を求める抗議行動が(あとShia Houthiとの闘争が),南部ではイスラミスト(アルカイダ)の反乱があって―それだけでも大変だが,世界的に食料価格・燃料価格が上昇傾向にあるのも厳しい。
ありがちなことだが,マーケットには(まずまず)十分な食料があるのだという。ところが一般家庭ではそれを買うに必要な金銭を得ることができない。そこで子供たちを学校から引き揚げさせ,物乞いをさせて足しにする―。彼ら(子供)のざっと1/3が栄養不良とのこと(国連の推計,about 267,000)。
で,現大統領のお仕事は―
BBC Yemen's new president faces multiple challenges 21 February 2012 By Rupert Wingfield-Hayes
―世間の為政者にまずもって必要なこと,”支配下の民衆を食わすこと”だろうと。
先日のテロの責任を取らされた格好でしょう,免職された前大統領の甥Yahya Saleh氏は無能な人物ではないんでしょう(しかもちょっと癖のある感があるもののわりとイケメンだ)。確かに彼の指揮下の部隊は―米国の援助・訓練が行き届いているようで―精強なんだろう。
その任務は反乱勢力を鎮圧することにある,はず。
しかし英字紙のエディターをするほどの知識人にあってさえ,「アルカイダはリアルな存在よ」「単に否定はできない。彼らはそこにいるのよ」という。イェメンは保守的な国であり,多くの民衆がイスラームに共感を持っている。だから,国家がそのようにはしていないところの,そのところのものを,もしアルカイダがうまく提供するなら―アルカイダは人民に生命と天界とを与えることであろう! ―というのだ。
―いや世界と世界の流れを見るとそれはいろいろ死亡フラグな考え方だと思うのだが,西部のとある村Deir Ayyashを見ればよい,というのである。
藁と泥で作られた家々が建ち並び,舗装道路はなく水道も通らず,電気もない。子供たちは栄養不良。まー早死にするか,障害を増大させて成長するほかないような。医薬品はクリニックにはある。というのもUnicefがくれたから。
―こうした人々にとって,国家以外のなにものか―アルカイダ等々を支持するのはイデオロギーの問題ではない。貧困(とそれからの救済)だ。だから新大統領はこの問題を何とかすることから始めるべきだ―。
…とはいえ,全土にまあまあの生活水準を行きわたらせるのは至難の業。お金だってどれだけかかるか。そんなんだったら,えりーとふぉーす作って反乱勢力をぶちのめす方がおカネ,かからずに済むかもしれない。
…うん,歴史は繰り返すかもしれない。
基本,所謂独立とか世俗化とか,まあ西洋の基準で”どくりつこく”になったらなんか独裁者とかでてきてすげぇ生活が困っちゃう。そこでイスラームの伝統に帰りたいなあ,と希望が出てくるところ,イスラームを掲げる勢力が出てくる。これに期待をかけてしまう―
―アルカイダ的な者たちに。ところが同じイスラームを標榜してはいるが,アルカイダ的イスラームはどーもワッハーブのダイジェスト版(に個人的な思いを付け加えたりした)なものらしく。そんな”イスラーム”なんぞ,現実にはどこの土地にもあったことがないモノだというわけだ。
―経験を積めば,いつか彼らも妥協を憶え,一端の(穏健な)政治的勢力として穏当な政治を行ってくれるに違いない―と多くの人々は思うものだろう。
ところが,アルカイダ的運動がある地域で非常に勢力を張ると,世界各地から”聖戦士”がよって集まってくるのだな。そして運動がローカル化することを妨げる。
ローカル化ってダメじゃん!ガラパゴス化じゃん!と思うかもしらんが,いや実際やられたらたまらんぞ。その国際化・普遍化勢力がある日突然ブラジャー禁止ぃ!とか,金歯・銀歯はイスラム法に反するからペンチで引っこ抜くぞぉう!とか言い出したら。なんか変な方向にガラパゴス化してるが,これ。
そんな感じなので,まあ全体的には穏当にローカル化した(しかし改めて,それなりに自覚的に受け入れなおした)イスラーム文化で手を打っておこうよ,という流れに収束するものと私は思う・期待するのである(私市氏の見解も,私が読む限りそうだと思う。参照,私市 正年『原理主義の終焉か―ポスト・イスラーム主義論 (イスラームを知る) 』,2012年)。
でまあ,いま,イェメンがアルカイダの温床になると…世界中から”聖戦士”が集まって洒落にならん状況になるおそれががが。ソマリアのアレなひとたちが移動する可能性とかああああ。
…今ならMaliあたりもアリかもだけど,あそこはTuareg民族主義勢力がつよいっぽいからなあ。Mali事情の勉強は中途で放棄したままだが。
なお
BBC Yemen holds sombre national day after deadly bombing 22 May 2012
南北イェメン統合記念日記念行事は(1時間ほどに・諸種行事を縮約されながらも)無事に済んだ由。
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