道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

民主化の濃淡

2023年09月26日 | 人文考察
日本の政治が、敵性国家の対日強硬政策を奇貨として民意を煽り、対抗して軍事力を増強する方向に舵を切った。
の戦争遂行に大きな責任があった人々の、衣鉢を継ぐ人たちが表立って発言するのが目立つようになっている。

彼ら彼女らに若い人たちが使嗾されないよう、誤った国家主義に被れないよう、私たち戦争の影響を直接蒙った世代は、政治が右傾することに対して敏感でなければならないと思う。
国民が非戦を国是と望むまで、選挙の度に事を糺していかなくてはならない。

日本は敗戦後、形は民主国家に生まれ代わったように見えるが、本質は民主主義の国には程遠い。中央の官僚が国会議員の私利に配慮するような国は、決して民主国家ではない。
戦後の保守政権は、巧妙に外面は民主、内面は因循固陋の、政治的に不合理極まりない国を作り上げたのである。

外には民主国家らしく振る舞い、米国に追従することで欧米の民主的先進国のグループに入っているが、内では、戦前回帰の情念に凝り固まった勢力との親和性が高い政権が国政を担っている。ファシズムに対する潔癖性において、同じ敗戦国のドイツとは大きな違いがある。

自発でなく、占領軍が敷いた日本の民主化の流れは、1955年頃から始まる経済の発展に伴い年ごとに勢いを失い、東北大震災とそれに起因する原子力発電所の電源喪失事故を機に蹉跌した。
未曾有の国難が、それまでの民主的な政治を破壊し、全体主義の跳梁を許す口実を与えたのである。
今日わが国にリベラルな政治が行われる可能性は低くなるばかりである。

情緒に訴え、国民を戦前回帰に導こうとする勢力の台頭は、戦後の78年にわたる民主教育が、形ばかりで中身の無いものだったことを物語る。
戦後の教育界は、民主主義を真っ先に標榜し、日教組の組織活動は民主化の先兵に見えたが、それはある意味、守旧反動勢力にとって好都合だった。
日教組に対する共産党のオルグ活動は、日教組にアカのレッテルを貼ることを許し、当時の児童生徒の親たちを震撼させた。復員した兵士は、徹底した反共教育を受けた世代である。

共産党の台頭を惧れる国民とその支持を受けた政権が、教育現場における民主化勢力の一掃に全勢力を傾注した。その結果、日教組は組織力を失い、民主教育の推進基盤としての能力を失った。日教組にアカのレッテルを貼って、民主教育を後退させるプロパガンダは、成功したのである。

現代の世界の多くの国々は、僅かな独裁国家を除き、民主主義を標榜し、民主化に向かっている。それがその国の国民の幸福に適っているとする国民の合意が、定着しているからだ。
資本主義・自由主義は、民主主義の下でなければ正常に機能しない。民主化はグローバル経済時代の通商・貿易にとって必要不可欠、極言するなら絶対の存続要件である。

それにもかかわらず、国によって民主化の達成度に差異がある。民主化の達成度を、地図に黒のモノクロの濃淡で表せば、間違いなく世界地図はまだら模様になる。

北朝鮮が真っ黒なのは、誰もが異存ないだろう。中国は濃いグレー、ロシアはそれよりやや薄い。
韓国・日本はより薄いグレー。アジアで白に近いのは、シンガポールぐらいだろう?マレーシアも民主化は東アジア諸国より遥かに進んでいるらしい。

アメリカに敗戦し、その占領を受けたわが国の民主化度が、戦後78年も経っていながら未だに黒白半々のグレーなのは、非民主的な勢力の支持を受ける政権が権力を握り、行政機構が未だに無謬性の神話を信奉し、事務の透明性を書いていることに関連する。
民主主義を標榜しながら、旧体制を奉ずるダブルスタンダードが戦後のわが国を、今日の変則的な民主国家たらしめていると見るのが適切かと思う。

形式的には民主国家の体をしていても、実質はまだ民主国家には程遠い。韓国がグレーだとしても、明度はわが国より高い。
ミャンマーは黒に近いグレーと見てよいだろう。タイやラオスもミャンマーと民族的に親和性が高いから、独立後の民主化の進捗は捗々しくない。
日本とスタートラインが同時期だったシンガポール、マレーシアの民主化の水準は、はるかに日本より高い。

何故民主化の進度に違いが出るか?それはその国の多数派を占める民族の精神の基底に、民主的素質が備わっているか否かに因ると私は思っている。自国や近隣の東南アジア諸国の民主化の進度を見ると、それは明らかである。東アジアより南アジアの民族の方が、民主的素質は明らかに高い。この素質は先天性のものであるようだ。

中・韓・日3国の人民は、民主的な素質が乏しいと判断してよいのではないか?どう考えても、自発的な民主の精神が乏しいのである。
強制であれ形式であれ、これだけ長期間民主的制度のもとで体制を築いて来ても、民主主義が育たない。未だに歴史を逆転させようとする勢力が、国政に影響を与えている。

日本は当時世界で最も民主的な米国に戦争で負けた結果、民主主義を国是として採用せざるを得なくなった国である。
形式的、制度的には民主国家の体をしているが、体質は民主の精神からかけ離れた素質の人々が多数を占めている。300年にも及ぶ専制政治を許したもの、それは長いものに巻かれることに従順で、お上の権力に弱い、一般市民に共通する属性である。

韓国は朝鮮戦争後にアメリカの影響を強く受け、日本に少し遅れて民主化したが、独裁国家の北朝鮮と同じ民族である。歴史的に見ても、本質的には、非民主の人々が多数を占める国である。
しかしかの国の人口に占めるキリスト教徒の割合が日本の比率の10倍であることを考えると、彼の国の方が民主の素質はわが国より高いと考えざるを得ない。民主主義は、キリスト教の絶対神の存在によって、初めて西欧に発現した思想である。

中国は歴史的に早く紀元前から中華思想という非平等的観念を生んだ国で、民族性からして最も民主主義に馴染まない国と言わざるを得ない。民主主義の価値観で、中国の理解・協力を求めることはできないと思う。
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