てんちゃんのビックリ箱

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愛知県美術館 2021年度第1期コレクション展について

2021-05-10 14:05:48 | 美術館・博物館 等


「コレクション展入口のライオン」
三沢厚彦作 Animal 2008-0 1


 先日 愛知県美術館にトライアローグ展(愛知県美術館、富山県美術館、横浜美術館の連携展)を見に行きました。それも面白かったのですが、それと一緒にやっている 県美術館の2021年度第1期コレクション展も面白かったので、まずそちらの方を紹介します。

名称:2021年度第1期コレクション展
期間:2021年4月23日(金) ~ 6月27日(日)

 通常のコレクション展は、あまり展示内容を変えずに現代美術を展示しているのだが、今回はこの美術館で目玉となっているものがトライアローグ展の方に行ってしまっているので、思いっきり変えてかなり攻めている展示をやっていた。
 内容は以下の通り。
・展示室5 特集 石田尚志   映像芸術
・展示室6 木村定三コレクションの環頭大刀と耳環   古墳時代の埋蔵文化財
・展示室7 document 2021  原爆に関わる現代美術
・展示室8 ヘビの表象   美術品に描かれる蛇の意味

 展示室5と7が現代美術に対して、6の古い埋蔵品のミスマッチ、そして蛇という面白い対象を扱っている。これらの組合せが面白い。


1.展示室5 特集 石田尚志
 石田尚志は、線を少しずつ描いては撮影するドローイング・アニメーションで知られる作家である。そのアニメ―ションの映像とともに、作業風景やドローイングパターンを映像化する前の紙に描かれた構想図が展示されている。
 
 非常に広いエリアにプロジェクターが並び、壁や床にカラフルな画像を映し出す。ほぼ人がいないため、光が溢れた大きな空間が独占物のようになる。
 全体は以下の様子。ここは本人の作業状況が壁の3画面に出て、作品が床に投影されている。



<私はここにはいない>

声あれど
姿はあれど
体温なし
光の渦に
墜ち込んだから



作者の分身が3つも動いているのに、そこには熱がない。足元には光の渦がグルグルと蠢いている。



「ここがロドスだ、ここで跳べ! 」

床の投影と監視員とを組み合わせてみました。


2.展示室6 木村定三コレクションの環頭大刀と耳環
 木村定三は2003年に亡くなった名古屋市内でビル会社を経営していた有名なコレクターで、日本国内およびアジアの美術品を多量にこの美術館に寄贈し、専用の展示室を持っている。そのうち古墳時代の刀の飾りと耳飾りを展示している。
 映像展示を観た後、入口の銅鏡に導かれ、中のほぼ真っ青になった刀を見る。しかし柄の頭の部分は、龍などきれいに成形され鍍金(金メッキ)されてほぼそのまま残っている。すっきりしたデザインであり、モダンで現代でも通じそうである。ともかく現代美術の隣に、ずっと土に埋もれて眠っていた過去の遺物がさりげなく置かれているのが面白い。

  

「大刀の環頭例 2件、左は龍の文様」
 (美術館の報告書からの引用)


<いつでもモダン>

永遠と
思った眠りを
起こされた
今もモダンで
私は許す



3.展示室7 document 2021  
 令和元年度に新たに収蔵した加藤大博の作品は、原爆というテーマを持っていた。そこでそれらの絵とともに、名古屋で開催された原爆の悲惨さに関わる展覧会、平和利用を進めようとした展示会などの記録、また他の人の原爆に関わる作品が並べられている。
 この展示室のみ撮影禁止であったが、愛知県美術館のツィッターに加藤大博の作品の写真が出ていた。
彼の作品は、現在の日本が原爆という悲惨なことを原点としていることと、それを内包しつつその後の高度成長を行ってきたことが描き込まれているそうだ。題目のごとくヒロシマをテーマとしていることはわかるが、どう見るのかはわからない。ただし下記の作品でエノラゲイのほうは主翼の両側のプロペラの音圧を感じるし、ヒロシマの方は一点からの衝撃波の伝播を感じる。描き込まれた人は誰だろう。その他再生をイメージする卵をパターンとして描き込んだ絵が掲載されている。



「左:Y.W.B計画<ヒロシマ>No.2、右:Y.W.B計画<ヒロシマ>エノラゲイ
 (愛知県美術館のtwitterより)

<結晶にして>

おぞましい
一瞬の圧力
結晶にして
キャンバスに鎮め
未来に送る

 
 寧ろ資料や加藤さん以外の人の作品の方が、原爆というテーマがはっきりとわかる。



「長崎上野町で掘り起こされた腕時計、爆発の瞬間に停止」
(長崎新聞の記事より)



4.展示室8 ヘビの表象
 蛇を組み込んだり描き込んだりした古今東西の20点ほどの美術作品を並べ、それが何を象徴しどう表現されているかを鑑賞する展示となっている。この展示はこの美術館の目玉であるクリムトの「人生は戦いなり(黄金の騎士)」に蛇が描き込まれていることからなされたようである。
 蛇は、毒により死ぬことがあること、脱皮を繰り返して成長すること、長期の飢餓状態に耐えることから、邪悪な存在、神の使い、死と再生の象徴などいろいろの意味を持っていると紹介された。
 クリムトの絵画には、確かに進行方向の地面に蛇が寝そべっている。これはクリムトの運動の反対派を意味して、踏み潰すべき災厄を意味するとのこと。



「クリムト 人生は戦いなり 全体 および 足元の蛇拡大」  



<進むべき道>

嚙まれるか
踏み潰せるか
でも進む
私のために
災厄もある


 その他に小川芋銭の絵やデューラーの絵などがあり、その解釈についての説明があった。



「小川芋銭 若葉に蒸さるる木精」


 せっかくだから、下記のWHOのマークに蛇が書き込まれていることも、紹介した方がよかったのでは。





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