つらつら日暮らし

面山瑞方禅師「冬安居辯」参究⑩

冬安居結制に伴う面山瑞方禅師「冬安居辯」を参究する不定期短期連載記事である。

 東陽煇云く、言うが如く、臘人氷を験し、坐臘の人を以て、其の行を験するは、猶お氷潔のごとし。
 或いは謂く、蠟人を地に埋め、以て所修の成虧を験するは、淫巫俚語に類し、庸すれば、相伝の訛に非ざるや。
 此の説は、睦菴を承けるなり。
 案ずるに、睦菴、事苑を造り、蠟人氷を挙して、注に云く、蠟、当に臘と作すべし、謂く年臘なり。
 按ずるに、増輝記、臘は接なり。新故の交接を謂う。臘の明日を謂て、初歳と為すなり。蓋し臘尽くして、而も歳来たる故なり。
 釈氏、解制受臘の日を以て、之を法歳と謂う、是なるや。
 天竺、臘人を以て験と為すは、且く其れ人の臘に長幼有り。又、其の行の験に染浄有り。
 臘人氷と言うは、是れ其の行の冰潔を言うなり。
 今の衆中の妄謂、西天の立制なり。
 唯だ蠟人の冰融を観て、然る後に其の行の染浄を知るは、仏経に文無し。律範に制無し。未だ是の説、何に於いて得るか詳らかならず。
    『面山広録』巻24「冬安居辯」、原典に従いつつ訓読


昨日の記事以来問題になっていた「臘人氷」についてだが、まず、「臘人(或いは蠟人)」を地面に埋めておいて、それが溶けていなければ、安居中の学人の戒行が浄潔であったという話があったという。特に、東陽徳煇『勅修百丈清規』にまでそれが引用されており、大きな影響を与えた可能性があるのだが、ただ、それは「淫巫俚語(怪しげな占い、或いは怪しげな教え)」に過ぎないという評価を示してもいる。

面山禅師は、この説の典拠として、「睦菴」を承けたものだとしているが、これは大観2年(1108)に『祖庭事苑』を著した睦菴善卿のことを指しており、この説は同書にあるというが、巻6「風穴衆吼集」に「蠟人氷」項として見える。そして、睦菴は上記の通り、この蠟人氷の説は、妄言であり、更にはインドから存在していたと示すのである。ただし、その内容は、仏経にも律範にも定めが無いとし、「今、此の集、臘を以て蠟と為すは、深く後人の誤りなり。良に歎ずべきなり」と結論付けたのである。

この是非については、明日の記事で面山禅師の評価を参照しつつ、検討してみたい。

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