11月19日、東京地検特捜部に金融商品取引法違反の疑いで逮捕された日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)。役員報酬を有価証券報告書に約50億円分少なく記載した疑いのほか、会社の資金を海外の自宅用不動産の購入に流用していた問題が明らかになっている。
【写真】各国にあるゴーン氏の自宅
今回、新たに浮上したのが、私的な投資で生じた損失を2008年頃、日産に付け替えていた疑いだ。ゴーン容疑者は2006年頃、自身の資産管理会社と新生銀行との間でデリバティブ取引の契約を結んだものの、2008年秋のリーマン・ショックで約17億円の損失が発生し、担保不足に陥ったという。
「新生銀行は担保の追加を求めたものの、ゴーン氏は損失も含めて日産側に権利を移そうとしました」(新生銀行元幹部)
そこで動いた一人が、当時、新生銀行のキャピタルマーケッツ部長だった政井貴子氏(53)だ。
「政井氏ら新生銀行側と日産の幹部が協議した結果、日産が取締役会での議決を行うことを条件にゴーン氏の取引を日産に事実上、付け替えたといいます」(同前)
ところが証券取引等監視委員会が新生銀行や日産に検査に入ったことで状況は一変する。背任の恐れもあると指摘を受けて、最終的には、ゴーン氏との個人取引の形に戻したという。
その後、政井氏は執行役員に昇進した後、2016年6月、日本銀行政策委員会審議委員に就任した。6人いる審議委員は、日銀総裁、2人の副総裁とともに日銀の政策委員会を構成し、金利など、日本の金融政策の最高意思決定機関の一員。会社でいえば、取締役にあたる重要ポストを務めている。
新生銀行は「個別事案に関するお問い合わせにつきましては、弊行からご回答いたしかねます」。日本銀行は「2008年当時、新生銀行のキャピタルマーケッツ部部長の職にあったことは事実ですが、守秘義務の観点から、新生銀行における個別の取引に関するご質問については、事実関係も含め、お答えは差し控えさせていただきます」。日産自動車は「捜査が入っているので、何も答えられない」とコメントした。ゴーン氏の逮捕は、日本の中央銀行にも波紋を広げることになりそうだ。
11月29日(木)発売の「週刊文春」では、ゴーン容疑者の告発に動いた日産「極秘チーム」メンバーの実名や、約1年間にわたった内部調査の経緯などについて詳報している。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2018年12月6日号
【デリバティブ取引】伝統的な金融商品の株式や債券から様々なノウハウや金融工学(高度な数学的手法やコンピューターを用い、デリバティブなど金融商品の開発やリスク管理を行う技術)によって派生した商品のことを、デリバティブ取引といいます。デリバティブ取引は、時価評価が原則として行われます。時価評価が適当でない場合は、ヘッジ会計が適用されます。
デリバティブ取引には、主にこんなものがあります。
・先渡取引 ・先物取引 ・オプション取引 ・スワップ取引
✱ 金融商品~一方の企業に金融資産を生じさせ他の企業に金融負債を生じさせる契約および一方の企業に持分の請求権を生じさせ他の企業にこれに対する義務を生じさせる契約(株式その他の出資証券に化体表章される契約)をいいます。
✱ ヘッジ会計~資産の価格変動などのリスクを回避するための一定の要件を満たすヘッジ取引(株式や為替など、現物の価格の変動による損失を回避するために、先物を売買すること)において、その損益を同一の会計期間に認識し、財務諸表に反映させる会計処理。
日産への付け替えは一定の手順を踏んで、結局取り消されている。此の付け替えは、当時検察も知っていたと思われる。結果的に、一件落着したものを10年経って検察が蒸し返したことが不可思議である。此の事件には、検察と西川社長の何某かの悪意を感じる。
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