3. 生命・自由及び幸福追求の権利
①幸福追求の権利性と裁判規範の有無 國民が幸福感をもって暮らせるようにするために國家はあるのも確かなのだが、憲法が態々「幸福追求の権利」を保障している以上、國家は國民が幸福裡に生活させる義務があると言えるのであろうか? 「自身の幸福」は本来自由主義社会では自己の努力によって達成されるべきものである。然も、「幸せ感」は個人によって千差万別である。こう考えると「幸福追求の権利」に対する「裁判規範」は個別の事例から累積して作って行かなければならないものと考えられる。
誤解があってはいけないので、ここで一言触れておく。國民の暮らしへの保障規定は生存権など他の基本的人権の保護規定でカバーできる場合も多い。とすれば、「幸福追求の権利」とは他の人権よりも一段要求度の高いものであると決め付けられることになる。裁判所の事前審査で保障されるべき「幸福追求の権利」だと判断された場合のみ、裁判は審理を続けることになる。
自由社会では、如何に生きようと勝手であり、自分の能力や努力によって幸福を掴んでいくものだ。であるから「幸福追求の権利」を主張する場合は、こうした自由に生きる権利が立法や國家の不作為によって侵害された場合に限って行うべきであると言うように結論付けられよう。具体的には、個人の能力や努力や置かれた状況からして、立法や國家の不作為などが無ければ、何らかのその人が望む「幸福」は得られた筈か如何かを訴訟対象されれば良いのだ。このことから、憲法のこの条項で定められた「幸福追求の権利」のみを縁に裁判所は判断することは出来ないのは当然である。具体的には、「幸福追求の権利」を侵害するような事実認定可否が争われることになる。こう考えれば、個人的な侵害に限らず、「幸福追求の権利」を侵害するような立法や、公私問わず國民の「幸福追求の権利」を阻害するような事実を國や自治体が放置した場合などがあったと裁判で認められれば、國や自治体は何らかの責めを負わされることになる。
②一般(包括)的自由権の根拠 自由に生きる権利は人が生まれ乍に持っている権利であるので、如何なる権力機構によっても侵さざるべきものでは無い。
包括的な人権規定、包括的自由権である生命・自由・幸福追求権がある。プライバシーの権利、自己決定権などの新しい人権は、同条により保障される。
③プライバシー権の内容・根拠条文及びこの権利が問題となる事例
○プライバシー権の内容 自己に関わる情報は自己の管理下におかれ、他人が勝手にこの管理権を侵すことを禁止するというもの。「知る権利」との間に対立軸が置かれる。
○プライバシー権の根拠条文 憲法第13条に根拠を求めるとされている。
○プライバシー権が問題となる事例 憲法第13条に根拠を求めるとされている。 個人の人格の尊厳は侵すべからざる権利であることは異論を待た無いが、問題は「知る権利」との絡みにある。相手の個人的情報を知ることはが、情報を求める者の利害に関係する場合や、情報を発信する者の素性を知ることが出来なければ、或いは、多くの人に報せることも出来ないのでは、誤った判断を導かれることがあり、都合のよい情報はどんどん公開し、自己に都合の悪い情報の公開を禁止できるのだとすれば、國民はその人物の思想信条を知らないままに操作されてしまう恐れもあるのだ。
無論、芸能ネタ等で個人の醜聞を流すことは、一般の国民の利害とは余り関係の無いことであり、このようなスキャンダラスな情報は、「知る権利」や「表現の自由」等の憲法上の問題と関係ない。芸能人などは、自己PRの為にマスコミを利用することが頻繁なので、醜聞の流布も受けざるを得ないだけのことと私は考える。しかし、譬え芸能人ネタであっても、間接的であったとしても國民の「知る権利」を護る意味合いを含んでいるような場合には(例として、政治的意味合い)、個人情報の公開も已む無しといえよう。
具体的事例はそれぞれ考えて頂きたい。
④肖像権 プライバシー権の一種である。自分の肖像を写真に撮られたりして公表されることを阻止できる権利であり、侵害があれば損害賠償等を相手に請求できることになる。公人でも全くのプライバシーの行動中のものであれば、肖像権はあるとされるが、たとえ私的行動であっても、その人格を正しく知ることに國民の「知る権利」を護ることに繋がるものであれば、肖像権の侵害には中ら無いと考える。
⑤環境権の保護
○環境権とは 境権とは、人間にとって必要な環境を守る権利であるが、その概念は曖昧でしかも生存権を護る為の公害の差し止めから美しい景観を守る権利まで幅広く、温暖化と絡めて最近富にかまびかしく話題になる権利である。
○環境権の根拠条文 憲法第13条と同第25条を根拠とする(各自条文参照)。
○環境権の裁判規範性 環境権自体は未だ単独に確立してい無い概念であり、その範囲の拡大も進行中である。このような権利を包括的に纏め上げることは困難なことで、環境権が問題とされる具体的な事例を環境権の根拠条文を規範において審理判断する以外無い。
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