◆◆【我「老子」の私見を綴る】◆◆任信第七十八

任信第七十八

天下莫柔弱於水。而攻堅強者莫之能勝。其無以易之。弱之勝強、柔之勝剛、天下莫不知、莫能行。故聖人云、受國之垢、是謂社稷主、受國不祥、是謂天下王。正言若反。

天下に水よりは柔弱なるはなし。而も堅強を攻むることこれによく勝るものなし。そのもってこれを易うるなければなり。弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下知らざるものなきも、よく行なうものなし。故に聖人云う、「国の垢を受くる、これを社稷の主と謂い、国の不祥を受くる、これを天下の王となす」と。正言は反のごとし。

水ほど脆弱なものは無いが、実際は世の中で此れに代われる強い力を持っているものは無い。一見弱弱しく見えても剛直に勝るものが在ることを世の人々は知らなくてはならいのだが、世間には其れを知って認める者は僅かしか居ない。因って、為政者曰く：国中の恥辱を一身に引き受けてこそ、漸く一国の指導者として治まり得るのだ。国家が危難にあったとき一身に其の責務を担えばこそ王と言えるのだ。誰も否定することの出来無い，普遍的で妥当性のある法則や事実は訊くと総て耳を疑うことが多いのだ。