中脇初枝の『世界の果てのこどもたち』を読了。2016年本屋大賞第三位の本作は、戦時中満州で出会った三人の少女のその後の壮絶な生涯を描いて、戦争や人権、差別の虚しさを痛感させられる、ただただ圧倒される小説でした。本屋大賞にランクインした作品は全国の書店員が選ぶだけあって、ハズレがありませんね。
塩田武士の『騙し絵の牙』を読了。表紙は大泉洋で、これは作者が、主人公に大泉洋をイメージしたからだそうで、来年映画化も決定しているのだとか。出版業界を舞台にした痛快小説で、働くことの意味を改めて考えさせられました。僕はデジタルの波が来ても、本や新聞は紙媒体で読みたい派なので(というのも映画はもっぱらスマホで観ているので、本までスマホで読み出すと目に優しくないかなぁと思いまして)、そういう出版業界のデジタルとの苦闘も描かれていて読み応えがありました。
カズオ・イシグロの『忘れられた巨人』を読了。深淵といいますか、神話やファンタジーの要素を絡めて、そんじょそこらの小説とは一線を画す描写の数々に圧倒されました。
中山七里の岬洋介シリーズ第一作『さよならドビュッシー』を読了。音楽を人生の再生と絡めて描いて、単なるミステリーに終わらないところがすごい。中山七里自身は音楽の知識はないらしいけど、音楽の描写の緻密なこと。他の作品も読みたくなります!
荻原浩の『家族写真』を読了。実は読むのは二度目。こういう、家族を描いた小説は家族を持つ身として定期的に読み返したくなります。悲喜こもごもの家族イベントが描かれていて和みます。
小川糸の『キラキラ共和国』を読了。どうも勉強不足で、本作は『ツバキ文具店』という2017年本屋大賞4位の作品の続編ということも知らずに手に取ってしまったわけだけど、鎌倉を舞台に代筆業を営む女性主人公にしたどこかホッコリさせられる本でした。小川糸の作品は読んでいて和みますね。
中山七里の『もういちどベートーヴェン』を読了。少し前に『いつまでもショパン』を読んで、この岬洋介シリーズ第一作目の『さよならドビュッシー』を読もうと思ったものの、図書館で貸出中だったので代わりに手に取ったのが本作。司法修習生を主役にしたミステリーで、司法修習の日常を描きつつ、クラシックを絡めて、しっかりしたミステリー作品に仕上がっていて唸らざるを得ませんでした。クラシック好きには堪らないかもしれませんね。次はようやく借りられた『さよならドビュッシー』!
小川糸の『ライオンのおやつ』を読了。2020年本屋大賞第2位の本作は、瀬戸内海に浮かぶレモンが名産の小島のホスピスを舞台にした物語です。主人公は癌に侵された余命幾ばくもない33歳の女性で、若くして死と向き合うんだけど、優しく温かみのある文体が静かな感動を呼びます。日常がいかにありがたいことかを考えさせられる素晴らしい本でした。レモンとアートの島『生口島』にいつか行ってみたいです。
中山七里の『スタート!』を読了。これは斬新。映画の撮影現場を舞台に起こる人情ものかと思いきやしっかりミステリーの要素もあり、映画好きミステリー好きとして楽しく読むことができました。