”ほっときゃ治る” 平成25年9月26日
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近藤誠博士は 慶応義塾大学医学部講師。
1948年生まれで患者本位の治療の実現を掲げられ、医療の情報公開を積極的に進めてこられた。
抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、癌治療における先駆的意見を述べられ、その功績から2012年に 菊池寛賞
を受賞された。近藤医師の 現場臨床体験をもとに、”患者の心得”を書いておられる。
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大学時代の友人Sちゃんのご主人はA大学病院勤務。 ご自宅に伺ったとき、ゴミ箱に、薬の処方箋が捨てられていた。
”ああ、薬は、大学病院の大事な収入源だから・・勿論、中身ごと 主人はポイよ。 医者だから薬は飲まないほうが
いいってわかるんだって・・・”
ドイツ人の友人の医師も ”風邪薬? ほんとうに、風邪の原因がわかって効く薬が発明されたら、ノーベル賞ものだ。
風邪ひいたと思ったらレモンとお茶の方がよく効くよ”と言っていた。
風邪薬といえば、抗生物質が浮かぶが、近藤医師は、次のように著書で意見している。
”抗生物質一つとっても、風邪のウイルスには 無意味なのに、どんどん医者は患者に出す。
手術の時も、術前に 一回使えば十分というエヴィデンス(証拠)を無視して、今でも、”術後の感染予防のため”
と、言っては、何日も抗生物質を点滴し続けています。”
何故、抗生物質を大量に使わない方が良いのか?
抗生物質のみならず、抗菌剤も含めて同じ薬を使い続ければ当然、その人の体の ”菌に対する、耐性化”が強くなるから
だという。耐性化が強くなれば、薬の量を さらに、増やし続けなければならない。
そして、薬の副作用を招くことになる。耐性菌 とよばれる細菌がある。
これは、抗生物質や抗菌剤に抵抗力をもつ菌で、抗生物質では効かない。その現状を 近藤医師はこう述べている:
”感染症の患者から検出した 異色ぶどう球菌のうち、院内感染を引き起こす耐性菌 MRSA(メチシリン耐性異色
ブドウ球菌)が 占める率の国際比較を見ると、イタリアは42%、アメリカ40%、スペイン36%、ドイツ9%
オランダ0%、そして、日本は70~80%と先進国でもワーストです。”
つまり、MRSAの数値が高いほど、薬が効きにくいため、 院内感染も高くなるという。
手術後、高齢者、抵抗力のない人たちが抗生物質を長く投与された後に、こうした菌に侵されて、容易に感染してしまう
ということが多いと近藤医師は 述べている。
私がインドで生活をしていたとき、ペストが流行ったときがあった。1995年ごろだと思う。
日本のメジャー紙、A新聞・現地記者は、デリーの路上風景を一面に載せた。それは、道端に寝転んでいる人達の写真。
デリーの街頭ではごく日常風景だったが、さも、ペストで行き倒れたかのように、
”ペスト、デリーで流行” というような見出しまでついていた。このような情報は他のメディアでも流されたためか、
在印日本人家族は、本土(本社)命令が出て一斉に 日本に帰国するという状況になった。
”ベストは恐ろしい” という常識が先行していて、実態を冷静に受け止めて”事実を調べる余裕”がなかったようだ。
実際のところ、その死亡率は マラリヤより低いとされ、しかも、死亡に至るケースは 栄養失調や体の抵抗力の
無い人に限られていること。
一方、マラリヤに関してはほとんどの在印日本人たちは、無防備・無意識で 発生確率は ペストより高いにも
かかわらず、15年近い滞在期間にわたり、日本人が感染したという話も聞かなかった。
ペストやマラリヤも、日本人の体力や栄養状態が良いためかかったとしても、死亡率は低いと専門筋から聞いた。
同様のことを、近藤医師も、言っておられる。現代の日本では、死亡率は下がり切っているため、
抗生物質やワクチンを導入する以前に、、薬に頼らなければ治らない病気はほとんどないという。
”死亡率が下がった理由”は ”医療が進んでいる”ためと言われているが 大きな要因があるという。
”戦前の日本人の死因の多くは胃腸炎 肺炎 結核などの感染症、戦後、栄養。衛生状態が良くなって、寿命がどんどん
伸びた”と 近藤医師は補足している。
わが国では、インフルエンザが流行する見込みと話が出れば、予防ワクチン接種が奨励される。
果たしてワクチン接種がどのくらい臨床的に効果的なのだろう?オランダでは、ワクチンを打った群と、
打たない群を比較して、インフルエンザのワクチン接種と予防効果の関連性をテストしている。
その結果、”予防効果は全くない”というデータがあるという。
近藤医師はこのことについて こう書いている:
”60歳以上になると、ワクチンを打った群で、急死する人が明らかに多く、表向きは、心筋梗塞のせいだとされています
が、これはどう見ても、ほぼ、ワクチンの副作用と考えられます”
さらに、 WHO(世界保健機構)や
厚生労働省の、ホームページでは ”インフルエンザ・ワクチンで感染を抑える働きは保証されていない” と表明されて
いると記されている。
近藤医師は ”ワクチンの保障がない” 理由をこう記す。
”変わり身の早い、インフルエンザ・ウイルスに効くワクチンを作ることには、原理的に無理があります。
はしかウイルスのように遺伝子的に安定した、人間にだけ感染するウイルスに対しては、効果的なワクチンが
作れます。
でも、インフルエンザ・ウイルスは人に感染しながらどんどん形を変えていき、鳥や豚など、多くの動物にも感染
します。そういう変幻自在のウイルスにぴったり合う(効く)ワクチンを作るのは、ほとんど不可能です。”
薬本来の効果 に近藤医師は まだ記憶に新しいタミフル を例にとっている。2009年、豚インフルエンザ騒動で
話題になったのが、タミフル という薬だった。
日本国内の、タミフルに対する反応と対照的に、海外の学者たちは ”タミフルの効果は疑わしい”、
”抗ウイルス作用はほとんど認められない”と発表していた。
実際、服用後の追跡調査で、タミフルの副作用が出た。呼吸停止突然死、意識モウロウ状態の転落死などの深刻な
状況を引き起こした。
つまり、薬で一時、症状を鎮めても、それがイコール、治癒しているというわけでは 決してない。
近藤医師は
”抗インフルエンザ薬と解熱剤を一緒にとると、39度以上の熱が一気に34度くらいまで下がります。
体温が下がってもウイルスの消滅とは関係はなく、人体には致命的です。” と述べて、
”服用後の突然死も、この低体温化に引き起こされた可能性”さえあると述べている。
抗生物質やインフルエンザ薬、ワクチンなど、子どもや老人に 何も疑問なく投与されている。
そして、入院すれば必ず 過剰に投与されがちな 抗生物質、日本人がとる、抗生物質量は国際的にみても高い。
日本では、一回の入院日数が国際平均より、長い。たとえば、出産入院の入院日数を国際比較してみると、
欧米では出産後一泊か2泊、一方、日本では通常1週間となってている。入院が長ければ、死亡率が高くなる~
というのが近藤医師の持論だ。
”1976年、南米コロンビアで医師たちが52日間のストを行い、緊急医療以外の診療活動がすべてストップ。
そのおかげで、”死亡率が35%減った”というニュースが流れた。同年、米ロサンゼルスで医者のストライキがあり、
17の病院で手術の件数が普段より60%減った。すると全体の死亡率は18%低下、ストが終わって診察再開とともに
死亡率は スト前の水準に戻り高くなった。”
など、国際的な事例を他にもあげて、医者がストしたために、”死亡率半減” になった国もあることを報告してい
る。 結論から言えば、予防医学や抗生物質他、他の薬で副作用を招いたり必ずしも必要でない手術をして、
体の生理機能を崩すより、”ほっときゃ治る” ぐらいの気持ちをもつことを近藤医師は薦めている。
”病気の80%は医者にかかる必要ない。”掛った方がいいのが10%強。掛ったために、悪い結果になったが10%弱。”
として、
”基本的に少々の痛みや 不自由は’ほっときゃ治る’と放置して、どうしても日常生活にさしつかえる症状があったときは
病院へ行く。本当に手術や入院が必要なのか、あらゆる情報を調べてから 踏み切ること”
と アドヴァイスしている。
引用箇所) ”医者に殺されない47の心得” 近藤誠著 2013、 株)アスコム