本書ではAiの技術が解説されている。Aiとは死亡時画像診断、事件現場の残された血痕、指紋、足あとなどから死亡時の被害者と加害者の動き、姿勢などをシミュレーションして、加害者の特徴、例えば性別、身長、利き腕、体重、などを推測するコンピュータ技術である。これを筆者が書いたのは、Aiの必要性を行政に説いてもなかなか理解されず予算が下りなかったからとしている。本書が300万部売れたことで医療行政の問題を普通の人達も認識するところになり、厚生労働省の役人を動かしたというのである。医療行政の問題には、新薬認可に時間がかかりすぎて、もし認可されれば治療できた患者が死んでいるとか、病気に伴う内蔵移植が法律のせいでできない、その他代理母出産問題やその子の戸籍問題、幼児の臓器移植など、法律による壁が多いことを指している。
下巻では、ひょっとしたら瑞人の父を殺してしまったかもしれない浜田小夜と瑞人に焦点を当て、歌手の冴子の歌声、そして小夜の歌声の共感覚と言われる知覚様式がポイントになる。共感覚とは音を聞くことにより色を感じたり映像を思い浮かべたりする「能力」のこと。小夜の歌声は聞く人に小夜が思い描く映像を正しく思い浮かべさせるよいう設定である。病気になり余命少ない杉山由紀が死ぬ前に海が見たいという、その望みは叶えられそうにないのだが、その由紀に小夜は海が見える歌声を聞かせる。両目を摘出する手術を嫌がる瑞人を説得するのは、もうすぐ死んでしまう由紀、それに答える瑞人だが、やはり決め切れない。5歳で片目の摘出が必要なアツシは怖がりながらも兄貴分である瑞人が両目を摘出するなら、と自分の手術を受け入れる。それを聞いた瑞人は両目の摘出を承諾する。
そして小夜と瑞人、彼らを取り巻く大人たち、警察、病院の医師、看護師たち。SF風の設定があり、現実感が乏しいと感じる部分もあるが、海堂尊のこのシリーズ、続けて読んだら病みつきになるのではないか。
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