僕の会社の大先輩に、毎週月曜日になると呼びつけて週末に読んだ本について細かく説明する方がいました。結構細かく説明を受けるので大体中身がわかります。その人は何のために毎週毎週それをやっていたのか、記憶するためだったんですねえ。人に話せば覚えますから。一歩進めて、本を読んでいるときから「月曜日にはあいつに説明するからちゃんと頭に入れよう」と考えながら読むのだそうで、読み方からして気合いが入っています。
斉藤さんによると「記憶力が人間の生活環境を快適にし、仕事を進めるためにも重要な役割を果たす。人は、自らの経験をもとに進化してきた、経験によって『こうなったときはこうするといい』とか『こうした時はこれがうまくいくこつ』というように成功ケースと失敗ケースを記憶していくことで、仕事もスムーズに進む。アイデアというのは99%、過去の経験値や実績あるもののアレンジであり、経験値の多い人、記憶力のいい人ほど良いアイデアが浮ぶ。普通の人でもアイデアが浮ぶが、これをなかなか形にできないし、気をつけていなければ何を思いついたのかも忘れてしまう。文字はこのアイデアを外部記憶として補うものであり、文字に残さない人は脳が老化する。また声に出すことで、自分の声と文字や映像をリンクさせることができ、記憶を自分のものにすることができる。聞いた話について自分で説明できない人は聞いていないのと同じ、どんな名文を読んでもそれを人に話せないのではできないというのは読んでいないのと同じ。」
確かに、自分の経験とあわせてみてもハラ落ちがする話、僕も英語を勉強していた頃2年間、毎朝1時間くらいかけて英語新聞を音読していた期間がありました。効果があったかどうかはよくわかりませんが、自分の声と記事内容が自分の目と耳から二重奏で入ってくるので、記憶が確かになる、かもしれないと思ったものです。
斉藤さんは「頭のいい」状態を、段階に分けることで、そのレベルを次のように定義しています。
Dランク 「意味は理解できなくても覚え、再生することができる力」→丸暗記
Cランク 「記憶に基づいて自分で再構築できる力」→要約
Bランク 「知識や情報を自在に組み合わせて、自分自身で新たなアイデアを出せるの能力」→思いつき
Aランク 「新しい意味を見いだせる力」→コンセプトの創造
Aランクまではいかなくとも、Bランクまでは誰でも訓練で鍛えることができると、方法論を展開。書き言葉で「話す」練習をすること。書くように話すことを心がけ、最初の一語を最後にどうやって着地させるかを考えながら話すだけでも、相当、脳味噌が鍛えられるとのこと。
「たとえば」は文脈を散らし、「つまり」は要約、具体と抽象を往復できる力、これも文脈を作っていくときの一つの工夫です。つまり、言葉の意味を考えて適切に使い、場の雰囲気や前後左右の文脈を捉える力が頭の良さであり、それを鍛えることが大切。
「文脈力」とは、
・連なる意味をつかまえる力
・正しく意味を読み取る力
・場の空気を読み取る力
これが「文脈力」であり、「頭がいい」ということであるとまとめています。
三色ボールペンの効用。
青 客観的に見て「まぁ大事」と思ったところ誰が見てもある程度大事だというところに引く。赤線と違って多く引きすぎても構わないので、気楽な気持ちで引きましょう。青線を引いたあとに、赤線を引きなおすのもOK。
赤 客観的に見て「すごく大事」だと思ったところ自分の独りよがりではなく、誰が見てもここが最重要という箇所に引く。赤線の部分だけを読んでいけば、文章の内容がおおまかに分かります。赤線はむやみに多く引きすぎず、本当に重要な部分に限定しましょう。
緑 話の要点でなくても、自分が「おもしろい」と思ったところ一般的には大事ではないかもしれないけれど、自分の好みでおもしろいと思ったところに自由に引く。論理的に重要かどうかより、感覚優先で引くと赤・青にはない味が出る。
この3色ボールペン読書には僕は抵抗がある。「本は大事にして読みなさい」と教わったから。人と一緒に読むのが本、線を引いたり、折り目を付けてはいけません、という教えは身に付いていますので、これはちょっとね。
「頭がいい」とは「能力」ではなく、「状態」だと著者はいいます。何かのできごとがある、あるものに触れた時に、それまで別々のものとして無関係に記憶されていた知識と知識の間に新しい関係や意味を見出してゆく力が文脈力。そのような文脈を作り出して行ける状態を脳が活性化している状態としている。誰でも経験している状態だが、頻度を増やすことで、その人なりに頭が良くなれるということ。このような話を例を出して、仕事や生活、スポーツなどの色々な場面を想定して「頭がいい」とはどんな状態かが説明されて行くので素直に納得できる、読みやすい本である。
「頭がいい」とは、文脈力である。
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