意思による楽観のための読書日記

流転の海 第七部 満月の道 宮本輝 ****

第7部は1961年から63年ころまでの話。松坂熊吾が始めた中古車販売店「はごろも」のビジネスは拡大していった。さらに熊吾が管理人をしているモータープールの経営者、柳田が始めたトヨタの小型車販売店も順調に規模を拡大していった。日本も自動車時代に突入、交通量が増え物流ビジネスも盛んになりつつある。そんなとき、熊吾が昔付き合いがあった森井博美を見かける。博美はダンサーとして食べていけなくなり今はヤクザの赤井と一緒に暮らしているというが別れたいと頼まれる。熊語は昔のよしみでなんとか助けてやろうとする。赤井は70万円の手切れ金で別れてやると熊吾に話を持ちかける。一方、熊吾が始めたはごろもは順調なビジネスに見えたが、ある時から急に売上が鈍化し始める。誰かに販売妨害されているのかもしれないと熊吾は気になる。

伸仁は中学生から高校入学を迎え、近所の私立高校に入学するとともに、柔道にも熱を入れる。熊吾の妻房江は前から劣等感を持っていたペン習字を始める。通信教育で、楷書、草書などを練習、努力の結果修了証書を貰えるまで頑張る。城崎に住んでいた麻衣子は妻子ある町会議員の子供を生んで、口止め料を受け取り、自分ひとりで子供を育てる決意を決めていた。房江はそんな麻衣子を度々城崎に訪れて励ます。麻衣子は父無し子を生んだという近所の評判も気にすることなく、いつの間にか蕎麦打ちの修行をしていて、温泉街にそば屋を開店することにしたという。たくましい麻衣子に房江は逆に励まされる気がする。

柳田がビジネスを拡げている理由は、茨城にゴルフ場を開発して経営者になるという夢のためだと熊吾は知ることになる。モータープールも自動車販売店ビジネスも、実はこの夢実現のための布石だった。熊吾のはごろもの経理は玉木という一人に任せて信じていたのだが、玉木が競馬や博打に入れあげた結果、借金を返すために売上の一部、合計230万円もの額を着服していたことを突き止める。その胴元はヤクザの赤井の兄弟分で、赤井は手切れ金を巻き上げるだけではなく、玉木をうまく使って、熊吾が経営する会社も食い物にする魂胆だったことをあとから知る。この間、熊吾は一人になった博美と関係を結び、昼間から博美のアパートに入り浸るなどしてビジネスに力が入っていなかった。人を信じて任せてしまう、お金の管理が杜撰、という熊吾はまたまた騙されてしまったことを反省する。 

流転の海 第7部 満月の道 (新潮文庫)


↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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