システムとは日本で言えば「コンピュータ・システム」のように使われることが多くて、システム・エンジニアといえばコンピュータ技術者なので、IT関連用語のように受け取られることが多い。本書では広義に捉えて、2つ以上の複雑な要素により組み合わされて成り立つ系のことで、人工物も自然物をも含まれる。
本書では、会社や組織において仕事をする中で、学びや成長を経験していくと、自分自身の能力を活かすためにどのような専門性と考え方を身につけるかという分析論を展開する。成長の度合いや方向性は人がそれぞれに目指す方向性に依存する。
1.まずは専門性を高めて仕事や研究対象を要素に分類、論理的、分析的に考える。多くの新入社員は、研修受講後に配属され、それぞれの部署に必要なスキルをOJT、OffJTを通して身につける最初の段階に当たるだろう。本書ではこの段階を要素還元思考と名付ける。
2.対象となる仕事などを複雑系の一つと考え、その全体型の一つとして対象を分析、論理的、分析的に理解を深める。理解するときのキーワードとしては、MECE、ロジックツリー、ネットワーク図、マトリックス図、Vモデル、分解と統合、多目的最適化、モデリング、客観的世界観など、コンサルティングや経営のお勉強をするときに学ぶ各種手法はここにある。本書ではシステム思考と呼ぶ。
3.システム思考に加えて、それを司り遂行している自分自身や構成する人員の気持ちやモティベーション、合意形成や人間関係をも含める。論理的な世界観形成には限界があることを理解し、複雑系として、哲学的な部分も理解する。二項対立を解消もしくは包含し、主観と客観を無理に分離しない自他非分離、科学とアートの非分離、最適化から満足度向上へ、合意からアコモデーションへと向かう。本書ではポスト・システム思考と呼ぶ。
4.ポスト・システム思考でも限界があることを経験すると、更にそれらを超越して必要とされることを考察する段階。その不完全性を受け入れ、楽しむことができる段階。システム思想と名付ける。現状追認主義のように受け取られるかもしれないが、それでも組織や仕事は前に進めていく必要があり、それが現実である限りは、さらなる解決策を見出すことが現実解として求められる。こうした複雑な状況を受け入れて、相反する現実に対する最善策を考えて合意形成を努力し、前に進む。
実際の人生や恋愛、仕事、環境推進活動、エコ的生活、縦割り組織、金儲け、寿命と健康推進、現代日本社会などの複雑系問題にどう立ち向かうかの参考になることを願う。本書内容は以上。