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東大寺二月堂の不思議な「青石壇」、善財童子(華厳経・入法界品)に関係か

2023年11月10日 | 奈良にこだわる
東大寺二月堂わきに石段がある(数え方によるが、53~55段)。その最下部と最上部に3段ずつ、文様の刻まれたものがある。絵柄は、亀甲、唐草、流水など。
※トップ画像は、今日の奈良新聞「美ビット見て歩き」(2023.11.10付)から拝借した

ガイドをしていると、たまにお客さんから「なぜ、こんな模様が彫られたのですか?」と聞かれたことがあったが、「分かりません」としか答えられなかった。

それが、この記事(11/9付)で解明された! 大和高田市ご出身の美術家で歌人の田中教子(たなか・のりこ)さんの研究成果である。記事によると、

この石段は、古文書の記述から「青石壇(あおいしだん)」と呼ばれているらしいことを知った。段数は、華厳経の説話に出てくる善財童子(ぜんざいどうじ)が、指導者を訪ね歩いた旅の数とほぼ一致した。同数の石段がある各地の寺社を調べたところ、石段を上り切った所には観音様をまつったお堂があるという共通点がわかった。

二月堂の本尊も十一面観音だ。文様は、最上部と最下部でしか確認できないことなどから、「結界」のようなものを示しているのではないかと推測した。田中さんは青石壇について、「菩薩(ぼさつ)の世界へ行く悟りの道を表している」とみている。


『華厳経』の「入法界品(にゅうほっかいぼん)」に出てくる善財童子の話なら、聞いたことがある。『日本大百科全書』によると、

福城長者の子であったが、発心 (ほっしん) して、「愛着に執 (とら) われ、疑いで智慧 の目が曇り、苦しみ、煩悩の海に沈殿している私の目を覚ましてほしい」と文殊 菩薩に願い、文殊の教えを受け、55か所・53人の善知識 (ぜんちしき) (各自の道を究め、解脱への道を勧めるのにふさわしい人物)を歴訪して教えを受ける。

青石壇の拓本などを展示する田中さんの個展は、11月12日(日)までの13:00~16:30。詳細は、奈良まほろばソムリエの会会員の松森重博さんのブログ「鹿鳴人のつぶやき」(10/20付)に出ている。

なお、今日の奈良新聞(11/10付)の川嶌一穂さんの連載「美ビット見て歩き 122」でも、紹介されていた。こちらも、全文が「鹿鳴人のつぶやき」(11/10付)に紹介されているので、ぜひお読みいただきたい。

以下2枚の画像は、ブログ「鹿鳴人のつぶやき」(10/20付)から拝借した




以下2枚の画像は、トップの新聞記事を2分割して、読みやすくしたもの





なお、本年3月に行われた田中さんの展覧会の様子が、毎日新聞奈良版に〈仏教、ドラマひらく17メートル 大阪の田中さん 石段の模様を拓本、パリ展で金賞 17~19日展覧会〉(2023.3.16付)という記事として掲載されていた。そこには、以下のように紹介されていた。

田中さんは17年にお水取りの参拝に訪れた際に石段を目にし、興味を持った。謎多き模様の起源を探ろうと寺の歴史や仏典を調べ、「善財童子」の物語にたどり着く。善財童子は華厳経の「入法界品(にゅうほっかいぼん)」に登場する主人公で、53人の師を訪ね歩いて悟りを開く。

東大寺は華厳宗の大本山で、二月堂の石段の段数と模様はこの物語に由来するという自説を論文にまとめた。また、寺の許可を得た上で20年春、参拝者の少ない早朝に、金粉をにかわで溶かした金泥を使って模様の拓本を取った。
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