節電の夏には、うちわがよく売れるそうだ。四国新聞(7/8付)によると《夏の節電ムードが全国に広がる中、うちわ業界が「特需」に沸いている。全国シェアの9割を占める香川県丸亀市内の業者には、電気を使わない暑さ対策グッズとして、全国の企業や団体から注文が殺到、生産が追いつかないほどの好調ぶりだ。2008年秋のリーマン・ショック以降、生産量は減少傾向だっただけに、各業者は「節電の追い風に乗って、再定着してほしい」と期待を寄せている》。
《例年、うちわの本格受注は5月中旬に始まる。しかし、今年は福島第1原発事故などに伴う「節電ムード」を背景に、4月中旬から100万~10万本単位の大口注文が相次ぐ。従来の企業の販促用などに加え、「がんばろう日本」などと書かれた被災地支援や啓発イベント用としての注文も多いという》。
《「骨」の製造メーカーもフル操業で対応しているが、それでも供給が追いつかない。業界最大手のずゞや(高松市)は、例年は生産を終える5月以降も製造ラインを稼働させたものの、6月中旬に在庫が底をついた。「景気低迷で2~3割減産したのが裏目に出た。注文量は例年の1・5倍で、作っても作っても追いつかない」と担当者。現在も連日20~25万本の骨を製造するが、お盆明けまで忙しさが続くとみている》。
丸亀市のうちわ生産が全国シェア9割とか、リーマンショックでうちわの生産量が減っていたことなど、初めて聞くことばかりで、これは興味深いニュースだった。さて、うちわといえば、奈良には伝統工芸品「奈良団扇(ならうちわ)」がある。『奈良まほろばソムリエ公式テキストブック』(山と渓谷社刊)によると、
《団扇は、奈良時代の中ごろ春日社の神官が軍器の形になぞらえて作りだしたと伝えるが、おそらく骨太なものに紙を張った渋団扇であったらしい。室町時代になると、興福寺の僧が今様の団扇を作りだしたとか、奈良町の岩井善助が軍配団扇に似せた団扇を案出したという》。
正倉院文様や四神をかたどった団扇もある(3,360円~4,200円)
《その後、豊臣秀吉のころ、透かし団扇が作りだされたと伝えるが詳しくは分からない。しかし、このころから奈良団扇の名も次第に世に聞こえるようになり、団扇の意匠も紋章や判じ絵、役者の似顔絵を描いたもの、奈良の風物をとりいれた模様を透かし彫りにするなど改良が加えられたらしい。江戸時代には、上品で美しいと贈り物に喜ばれ、六月の土用の入りには奈良奉行が幕府に献上するならわしになっていた。奈良団扇は、奈良晒や刀剣・墨・酒などと並んで南都の特産として名声を博するようになった》。
《現在、奈良団扇は正倉院宝物の文様などをモチーフとした、いわゆる天平模様や、鹿、五重塔など奈良の風物をたくみに配した名所模様を、五色に色付けした和紙に透かし彫りして仕上げ、一セットにした「五色団扇」などとして知られている。この技法を継承する奈良団扇の製造元は今や唯一。この製造元の先祖が明治初年に透かし彫り用の道具一式を見出し、この技法を研究して復興し改良に努め、子孫に伝えて今日に及んでいる》。
NHKではあるまいに、お店の名前が出ていないのでどうもピンとこない文章であるが、「今や唯一」という製造元は「池田含香堂」(いけだがんこうどう 奈良市角振町16)である。三条通の奈良漬屋さん「今西本店」のお隣である。以前は5本1組が基本だったが、現在は1本ずつバラ売りされている。店頭には100円~400円の普及品もあるが、伝統技法の奈良団扇は2,100円から。
毎日新聞奈良版に連載されていた「元気銘柄」(02.8.14付)によると《うちわ作りの最初の工程である紙すきから、仕上がりまで約2年半。作業は家族と職人が分業で行う。うちわの紙は愛媛県の手すき和紙、竹骨は香川県の国産の竹を用い、柄の部分は筆の産地で有名な広島県から取り寄せている。手すき和紙ににかわを塗り、顔料を丸ばけで塗り、染めた後、1年近く紙を寝かせる。「これにより色に落ち着きが出る」》。手間がかかっているのである。
手にとって扇いでみると、販促用にもらうプラスチックのうちわより、ずっと手になじむし、よく風が来る。これは不思議である。天然素材である竹を使っているからだろう、団扇によって微妙にバランスや風の来かたが違う。私は最も手に馴染んだブルーの鹿の団扇(並鹿 2,100円)を買い求めた。会社の机の上に置いて時々扇いでいるが、これはなかなか風流なものである。
上記の毎日新聞には《芸術性と実用性に加え、耐久性にも優れているという。「70歳を過ぎた女性が学生時代から使っていたうちわと同じ物を購入しに来てくれたこともある」》という話が紹介されていた。
奈良団扇は、節電の夏用ギフトにも、ピッタリである。いちどお店に足をお運びいただきたい。
※お店のホームページはこちら
《例年、うちわの本格受注は5月中旬に始まる。しかし、今年は福島第1原発事故などに伴う「節電ムード」を背景に、4月中旬から100万~10万本単位の大口注文が相次ぐ。従来の企業の販促用などに加え、「がんばろう日本」などと書かれた被災地支援や啓発イベント用としての注文も多いという》。
《「骨」の製造メーカーもフル操業で対応しているが、それでも供給が追いつかない。業界最大手のずゞや(高松市)は、例年は生産を終える5月以降も製造ラインを稼働させたものの、6月中旬に在庫が底をついた。「景気低迷で2~3割減産したのが裏目に出た。注文量は例年の1・5倍で、作っても作っても追いつかない」と担当者。現在も連日20~25万本の骨を製造するが、お盆明けまで忙しさが続くとみている》。
丸亀市のうちわ生産が全国シェア9割とか、リーマンショックでうちわの生産量が減っていたことなど、初めて聞くことばかりで、これは興味深いニュースだった。さて、うちわといえば、奈良には伝統工芸品「奈良団扇(ならうちわ)」がある。『奈良まほろばソムリエ公式テキストブック』(山と渓谷社刊)によると、
《団扇は、奈良時代の中ごろ春日社の神官が軍器の形になぞらえて作りだしたと伝えるが、おそらく骨太なものに紙を張った渋団扇であったらしい。室町時代になると、興福寺の僧が今様の団扇を作りだしたとか、奈良町の岩井善助が軍配団扇に似せた団扇を案出したという》。
正倉院文様や四神をかたどった団扇もある(3,360円~4,200円)
《その後、豊臣秀吉のころ、透かし団扇が作りだされたと伝えるが詳しくは分からない。しかし、このころから奈良団扇の名も次第に世に聞こえるようになり、団扇の意匠も紋章や判じ絵、役者の似顔絵を描いたもの、奈良の風物をとりいれた模様を透かし彫りにするなど改良が加えられたらしい。江戸時代には、上品で美しいと贈り物に喜ばれ、六月の土用の入りには奈良奉行が幕府に献上するならわしになっていた。奈良団扇は、奈良晒や刀剣・墨・酒などと並んで南都の特産として名声を博するようになった》。
《現在、奈良団扇は正倉院宝物の文様などをモチーフとした、いわゆる天平模様や、鹿、五重塔など奈良の風物をたくみに配した名所模様を、五色に色付けした和紙に透かし彫りして仕上げ、一セットにした「五色団扇」などとして知られている。この技法を継承する奈良団扇の製造元は今や唯一。この製造元の先祖が明治初年に透かし彫り用の道具一式を見出し、この技法を研究して復興し改良に努め、子孫に伝えて今日に及んでいる》。
NHKではあるまいに、お店の名前が出ていないのでどうもピンとこない文章であるが、「今や唯一」という製造元は「池田含香堂」(いけだがんこうどう 奈良市角振町16)である。三条通の奈良漬屋さん「今西本店」のお隣である。以前は5本1組が基本だったが、現在は1本ずつバラ売りされている。店頭には100円~400円の普及品もあるが、伝統技法の奈良団扇は2,100円から。
毎日新聞奈良版に連載されていた「元気銘柄」(02.8.14付)によると《うちわ作りの最初の工程である紙すきから、仕上がりまで約2年半。作業は家族と職人が分業で行う。うちわの紙は愛媛県の手すき和紙、竹骨は香川県の国産の竹を用い、柄の部分は筆の産地で有名な広島県から取り寄せている。手すき和紙ににかわを塗り、顔料を丸ばけで塗り、染めた後、1年近く紙を寝かせる。「これにより色に落ち着きが出る」》。手間がかかっているのである。
手にとって扇いでみると、販促用にもらうプラスチックのうちわより、ずっと手になじむし、よく風が来る。これは不思議である。天然素材である竹を使っているからだろう、団扇によって微妙にバランスや風の来かたが違う。私は最も手に馴染んだブルーの鹿の団扇(並鹿 2,100円)を買い求めた。会社の机の上に置いて時々扇いでいるが、これはなかなか風流なものである。
上記の毎日新聞には《芸術性と実用性に加え、耐久性にも優れているという。「70歳を過ぎた女性が学生時代から使っていたうちわと同じ物を購入しに来てくれたこともある」》という話が紹介されていた。
奈良団扇は、節電の夏用ギフトにも、ピッタリである。いちどお店に足をお運びいただきたい。
※お店のホームページはこちら
今度奈良市に行った際はぜひ購入します!!
実家へのお土産にもいいかも^^普段はもらいもののうちわで済ますことが多いですもんね
販促などで配られてる団扇も重宝しますが、一つくらいは奈良団扇を持ってみたいです。
昔、このブログでちょっとだけ紹介されていた「奈良麺通88選」の“弐”が発売されてましたね。
残念ながら、88店から72店(だったかな?)に減ってましたが(^^;
> 今度奈良市に行った際はぜひ購入します!! 実家へのお土産にも
> いいかも^^ 普段はもらいもののうちわで済ますことが多いですもんね
軽く扇ぐだけでたくさん風が来て、ホントに不思議です。お土産にもピッタリですよ。
> 販促などで配られてる団扇も重宝しますが、
> 一つくらいは奈良団扇を持ってみたいです。
はい。1本だけ買われ、長く大切に使われるのが良いと思います。
> 「奈良麺通88選」の“弐”が発売されてましたね。
おお、そうでしたか。近々、啓林堂を覗いてみます。情報、深謝です。
この団扇は、デザインとして、紙を抜いてありますが、これがすごい職人技なのです。団扇に紙を貼ってから抜いてしまうと、骨まで一緒に切ってしまうので、団扇として役に立ちません。それで、貼る前に、それも二枚同一に抜いてから団扇に貼っていきます。やっかいな事に、骨の厚みがあるので、そうすると、紙がずれて、柄がずれて、失敗してしまう訳です。
柄を、ずらさずに貼っていくのは、難しい技です。何気なく見ていますが、こんな所にも、技術が潜んで居ます。
ちなみにウチのお子様は、椿井小学校で、この団扇の制作体験を、池田さんに来て頂いてさせて貰いました。子供のうちから、この様な工芸品の勉強をさせるのは大切だと感じました。
こんな事を研究しながら見ていくのも面白いと思いますが如何でしょうか。
> デザインとして、紙を抜いてありますが、これがすごい職人技なのです。
> 柄を、ずらさずに貼っていくのは、難しい技です。
なるほど。骨には厚みがありますし、糊で貼ると紙が伸びますが、これをわずかの狂いもなく貼りつけるのはすごい技術なのですね。
> 椿井小学校で、この団扇の制作体験を、池田さんに来て頂いてさせて貰いました。
> 子供のうちから、この様な工芸品の勉強をさせるのは大切だと感じました。
子供の頃から、地元に受けつがれた伝統技法を知るのは、とても良い勉強ですね。上記の毎日新聞の記事には《型写しをし、続いて透かし彫りの作業。20枚の和紙を1組にし、小刀で模様の型通りに突き切る。細かい作業で集中力を要するとともに、厚さ約1センチの紙の束と向きあうかなりの力作業だ。その後、糊付けや、竹骨を浮き立たせる念はぎ、裁断、ふち取りを経て、うちわが完成する》とありました。