昨年のクリスマスイブから取り組んできた『奈良「地理・地名・地図」の謎』の増補改訂版(実業之日本社刊 税込み1,100円)が、刊行された。旧版は、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」が監修した本で、同会としては初の著作である。
私を含め、同会の5人の会員が改訂作業に取り組んだ。コロナ禍のなか、基本的には各自が在宅で作業したが、途中で2回、顔を合わせ、丁丁発止とやり合った。東京書籍の地図帳に約1,200ヵ所の間違いが見つかり、これは「コロナ禍の在宅勤務などの影響」と報じられた(NHKニュースなど)。
自宅作業では、なかなか集中力が保てないし、緊張感もない。やはり、集まって議論を戦わせながら相互チェックするという過程が、どうしても必要なのである。おかげで各自の負担は大きかったものの、良い著作に仕上がったと自負している。先週から県内の書店の店頭にも並んでいるので、ぜひお買い求めいただきたい。では「明風清音」(2023.5.18付)の全文を紹介する。
『奈良の謎』を増補改訂
5月10日、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」が監修した『増補改訂版 奈良「地理・地名・地図」の謎』(実業之日本社刊)が発売された。本書は当会初の著作(監修書)として2014年3月に刊行された旧版の増補改訂版である。このシリーズは各都道府県版が刊行されていて、奈良県版は根強く売れているそうだ。今回、増補改訂の機会をとらえて、中身を全面的に見直すことになった。
見直しの結果、旧版の78本の「謎」のうち12本をまるごと差し替えるとともに、残る66本も、最新の情報にアップデートした。この作業には、私を含め5人の会員が携わった。昨年のクリスマスイブにお話をいただき、正月返上で取り組んだ。
増補改訂版の「まえがき」には、〈「奈良を訪れると変わらない風景に癒やされる」という人は多いが、東京や大阪に比べて変化のスピードは遅いものの、奈良もじわじわと変化してきている。この九年間の変化で奈良の「謎」はさらに増えているように思われる。(中略)根っからの奈良好きが集まって、本書を監修した。ぜひ改訂された本書を携えて、奈良・大和路を巡っていただきたい。そして奈良に興味を持ち、奈良を好きになってもらいたい。ひとりでも多く奈良ファンになっていただきたい。そんな思いを込めた一冊である。〉
本書は五つの章に分かれている。「第一章 奈良の古刹のミステリー地図」「第二章 地図に残された古代王朝の足跡」「第三章 大和に伝わる信仰・伝説の謎」「第四章 古式ゆかしい地名のルーツ」「第五章 奈良の『今』がわかる迷宮地図」。今回、新たに書き下ろした12本のタイトルを紹介する。()内は私の補足である。
(1)興福寺は明治の初め廃寺となり、誰もいなくなった!?(神仏分離令と上知令)
(2)石上神宮に残る巨大寺院・内山永久寺の遺構!(神仏分離令と残された出雲建雄神社拝殿)
(3)江戸時代、ならまちにはもう一基五重塔がそびえていた!(幕末に焼失した元興寺五重塔)
(4)石舞台古墳がもうひとつあった!古墳が語る蘇我氏の飛鳥(小山田遺跡の発掘)
(5)初期ヤマト政権発祥の地、纒向遺跡は邪馬台国であったか?(邪馬台国纒向説)
(6)相撲発祥の地が奈良県に三つある不思議(桜井市、葛城市、香芝市)
(7)なぜ達磨大師が王寺町のお寺の本尊になった!?(『日本書紀』の片岡飢人伝説)
(8)南北朝合一後、奈良の地で起こった再興運動の痕跡とは?(南朝の末裔と川上村の朝拝式)
(9)吉野で作られていた!サンマの丸干し(熊野灘のサンマを吉野で干していた)
(10)有名な柿本人麻呂の歌、「かぎろひ」は「けぶり」だった!(「炎」の訓読・解釈の変更)
(11)「考古学の鬼」と呼ばれた森本六爾(ろくじ)の悲劇的な生涯(早くから弥生時代の水田稲作を主張)
(12)両国の花火、ルーツは五條市にあり!(鍵屋の創業者は同市大塔町の出身)
私は常々「京都は面白くてタメになる解説書がたくさん出ているのに、奈良は小難しい本ばかりだな」と不満に思っていた。本書は、その不満を解消する絶好の手引き書になったと自負している。
よく「奈良県民は、案外奈良のことをよく知らない」と言われる。本書は主として他府県の読者を想定しているが、ぜひ多くの奈良県民に読んでいただきたいと願う。
旧版の刊行時、本紙「國原譜(くにはらふ)」には〈貴重な歴史遺産を有する本県だが、それを十分に生かし切れていない。(中略)県民は地元の魅力を再認識すべきだろう〉(14年4月21日付)とあった。地元の魅力をよく知ることで、地元愛が生まれてくることを大いに期待している。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
私を含め、同会の5人の会員が改訂作業に取り組んだ。コロナ禍のなか、基本的には各自が在宅で作業したが、途中で2回、顔を合わせ、丁丁発止とやり合った。東京書籍の地図帳に約1,200ヵ所の間違いが見つかり、これは「コロナ禍の在宅勤務などの影響」と報じられた(NHKニュースなど)。
自宅作業では、なかなか集中力が保てないし、緊張感もない。やはり、集まって議論を戦わせながら相互チェックするという過程が、どうしても必要なのである。おかげで各自の負担は大きかったものの、良い著作に仕上がったと自負している。先週から県内の書店の店頭にも並んでいるので、ぜひお買い求めいただきたい。では「明風清音」(2023.5.18付)の全文を紹介する。
『奈良の謎』を増補改訂
5月10日、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」が監修した『増補改訂版 奈良「地理・地名・地図」の謎』(実業之日本社刊)が発売された。本書は当会初の著作(監修書)として2014年3月に刊行された旧版の増補改訂版である。このシリーズは各都道府県版が刊行されていて、奈良県版は根強く売れているそうだ。今回、増補改訂の機会をとらえて、中身を全面的に見直すことになった。
見直しの結果、旧版の78本の「謎」のうち12本をまるごと差し替えるとともに、残る66本も、最新の情報にアップデートした。この作業には、私を含め5人の会員が携わった。昨年のクリスマスイブにお話をいただき、正月返上で取り組んだ。
増補改訂版の「まえがき」には、〈「奈良を訪れると変わらない風景に癒やされる」という人は多いが、東京や大阪に比べて変化のスピードは遅いものの、奈良もじわじわと変化してきている。この九年間の変化で奈良の「謎」はさらに増えているように思われる。(中略)根っからの奈良好きが集まって、本書を監修した。ぜひ改訂された本書を携えて、奈良・大和路を巡っていただきたい。そして奈良に興味を持ち、奈良を好きになってもらいたい。ひとりでも多く奈良ファンになっていただきたい。そんな思いを込めた一冊である。〉
本書は五つの章に分かれている。「第一章 奈良の古刹のミステリー地図」「第二章 地図に残された古代王朝の足跡」「第三章 大和に伝わる信仰・伝説の謎」「第四章 古式ゆかしい地名のルーツ」「第五章 奈良の『今』がわかる迷宮地図」。今回、新たに書き下ろした12本のタイトルを紹介する。()内は私の補足である。
(1)興福寺は明治の初め廃寺となり、誰もいなくなった!?(神仏分離令と上知令)
(2)石上神宮に残る巨大寺院・内山永久寺の遺構!(神仏分離令と残された出雲建雄神社拝殿)
(3)江戸時代、ならまちにはもう一基五重塔がそびえていた!(幕末に焼失した元興寺五重塔)
(4)石舞台古墳がもうひとつあった!古墳が語る蘇我氏の飛鳥(小山田遺跡の発掘)
(5)初期ヤマト政権発祥の地、纒向遺跡は邪馬台国であったか?(邪馬台国纒向説)
(6)相撲発祥の地が奈良県に三つある不思議(桜井市、葛城市、香芝市)
(7)なぜ達磨大師が王寺町のお寺の本尊になった!?(『日本書紀』の片岡飢人伝説)
(8)南北朝合一後、奈良の地で起こった再興運動の痕跡とは?(南朝の末裔と川上村の朝拝式)
(9)吉野で作られていた!サンマの丸干し(熊野灘のサンマを吉野で干していた)
(10)有名な柿本人麻呂の歌、「かぎろひ」は「けぶり」だった!(「炎」の訓読・解釈の変更)
(11)「考古学の鬼」と呼ばれた森本六爾(ろくじ)の悲劇的な生涯(早くから弥生時代の水田稲作を主張)
(12)両国の花火、ルーツは五條市にあり!(鍵屋の創業者は同市大塔町の出身)
私は常々「京都は面白くてタメになる解説書がたくさん出ているのに、奈良は小難しい本ばかりだな」と不満に思っていた。本書は、その不満を解消する絶好の手引き書になったと自負している。
よく「奈良県民は、案外奈良のことをよく知らない」と言われる。本書は主として他府県の読者を想定しているが、ぜひ多くの奈良県民に読んでいただきたいと願う。
旧版の刊行時、本紙「國原譜(くにはらふ)」には〈貴重な歴史遺産を有する本県だが、それを十分に生かし切れていない。(中略)県民は地元の魅力を再認識すべきだろう〉(14年4月21日付)とあった。地元の魅力をよく知ることで、地元愛が生まれてくることを大いに期待している。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
> 手軽に読める新書版ながら内容はとても専門的で勉強になります。
恐縮です、とても嬉しいです。
> 「うんちくをラインナップするじっぴコンパクト新書」だけありますね。
版元には良い校閲者がいらっしゃいましたので、当方と競い合いながら、作業を進めました。
> 今では大茶盛ぐらいでしか知られていない西大寺、小学生の
> ときに境内の池にザリガニ釣りに行ったことを思い出します(笑)
おお、そうでしたか。西大寺は桜の時期も、いいですよ。