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田中利典師の「拝金主義からの脱却」

2024年10月10日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「衣食(えじき)の中に道心なし、道心の中に衣食あり」(師のブログ 2016.11.1 付)。利典師が金峯山寺の『金峯山時報』に寄稿した文章である。
※トップ写真は、ウチの近隣公園の桜。コロナで「Stay Home」中の2020.3.30に撮影

このタイトルは伝教大師最澄の言葉で、〈道心とは、仏教を学び実践する心をいい、衣食とは、衣食住の生活環境のことです。道を求めて努力を重ねる向上心があれば、その目的を達成するのに必要な衣食住は、十分とはいえないまでも、おのずとついてくる、一方いくら生活に恵まれていても、その生活の中からは、むしろ安逸に流されて、道を求め、自分を高めようとする心は起きてこないということです〉(妙心寺「法話の窓」)。

2016年(平成28年)といえば、明仁天皇が生前譲位の意向を示された年。国内では安倍総理・菅官房長官が政権を握り、アメリカではトランプ大統領がこの年に誕生した。当選したばかりの小池百合子東京都知事が、豊洲市場の「盛り土」問題(土壌汚染対策)を取り上げていた。熊本地震も、この年に起きた…。では、以下に全文を紹介する。

「衣食の中に道心なし、道心の中に衣食あり」ー田中利典著述集281101
過去に掲載した金峯山寺の機関誌「金峯山時報」のエッセイ欄「蔵王清風」から、折に触れて拙文を本稿で転記しています。今日は伝教大師のお言葉を借りて、サラ金と拝金主義に一言。10数年前の執筆だが、あまり世の中は変わっていない。

「サラ金が日本の優良収益企業のベストテンの半数近くを何年も占めている」…という社会は終わって、確かにサラ金は規制されたが、大手銀行が逆に表立ってサラ金業務をしているかの時代にさえなっているのだから…。

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「衣食の中に道心なし、道心の中に衣食あり」
世の中、腹の立つことは多いが、ここ数年ずーと腹が立っていることがある。それはサラ金のテレビコマーシャルである。各社、それぞれに多彩なものを繰り出して、あの手この手で消費?意欲というか、借り手の心に怪しく誘う。しかし所詮はサラ金なのである。利息制限法を越えた暴利で金を貸し付けて、弱者からなけなしのものを搾取し、苦しめるのである。

もちろん借り手の責任が一番であるとはいえ、そんな不当なものを、あたかも真っ当であるかのように、親切そうなコマーシャリズムに乗せて、テレビにたれ流すなど、この国の品性を疑ってしまう。さもしい国になったものだ。

しかもあろうことか、そのサラ金が日本の優良収益企業のベストテンの半数近くを何年も占めているのだから呆れてしまう。またそんなサラ金に融資しているのが大手銀行であり、近頃は大手銀行までが直接サラ金まがいの融資を始めたのだから、呆れを通り越して、憤りを感じる(ま、銀行の諸悪はこんな程度ではなく、官僚と政治家とぐるになって、とんでもないことをやってきたんだけど…。最近銀行の諸悪を題材にした内田康夫著の浅見光彦シリーズ『中央構造帯』を読んだ。みなさん必読ものです。

それはともかく、本当にいつからこんな品性のない国になったのだろうか。国民一人一人の品性の問題とはいえ、そういう国に、国を挙げて導いてきた感が戦後の行政や日本社会のあり方には見え隠れする。いわゆる拝金主義の横行である。ま、そういう筆者もひとのことを言えた義理でもなく、どこか拝金主義に犯されているかもしれない。

お金がなければ始まらない。お金あってこその、今の豊かな生活であり、家庭であり、自分である…という所を自覚もする。そういう教育を受けてきたし、そういった生活に長年に亘り、飼い慣らされてきた感がある。

でももうそろそろ国民みんなが気がついてもいいのではなかろうか?戦後の夢、右肩上がりの経済発展は終焉を迎えている。戦時中の「贅沢は敵だ!」から、「消費は美徳だ!」に変わり、拝金主義に踊らされてきたノーてんきな私たちであったが、サラ金問題だけでなく、社会生活のあらゆる分野で、充分にその災禍を実感したのではなかろうか。

殺伐とした事件が毎日のように起こっているが、その裏では拝金主義に陥って恥の文化を捨て、思いやりの心を捨てた日本人の品性のなさを見る思いがする。

「衣食の中に道心なし、道心の中に衣食あり」とは伝教大師のお言葉であるが、品性をなくさせた責任は宗教家にもある。拝金主義を殴打し、真に人間的に生きることの意味や、その大切さをこんな世の中だからこそ説いていかなければならない。

少なくとも僧侶自らが拝金主義を抜け出て道心の中に衣食がある生活を取り戻さなくてはならないだろう。自戒を込めて、伝教大師の聖句を反芻している。 
ー「金峯山時報平成14年11月号所収、蔵王清風」より

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拝金主義はますます横行をしてますねえ。でもお金がないとしんどいのも事実。とはいえ、やはり「衣食の中に道心なし、道心の中に衣食あり」…と、ならなくてはいけません。
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