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田中利典師の「そもそも、修験道とは」

2023年11月09日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「そもそも、修験道とは」(師のブログ 2014.9.26 付)、師と正木晃さんとの共著『はじめての修験道』(2004年春秋社刊)「第1章 修験道とはなにか」からの抜粋である。
※トップ写真は、師がご住職を務める林南院の開山50周年記念大祭(11/3)。師のFBから拝借

修験道といえば、毎年11月第2日曜日(今年は11/12)、御所まち一帯で「霜月祭(そうげつさい)」が行われる。このお祭りのモトになったのが吉祥草寺(本山修験宗、役行者の生誕地とも)の「採燈大護摩供養」(正午~14時)で、全国からたくさんの山伏が集結する。

大護摩供養の前には、御所まち一帯を山伏が練り歩き(山伏お練り)、またお寺では「山伏問答」も見学することができる。では、利典師の全文を紹介する。

「そもそも、修験道とは」
修験道を学問的に定義すると、こうなる。修験道とは、「日本古来の山岳信仰に、神道や外来の仏教、道教、陰陽道などが混淆して成立した日本に固有の民族宗教」である。「山岳信仰」というのは、これまで説明してきたように、山をあがめ、山に代表される自然を先生にして学ぶ宗教のことだ。

「神道」というのは、日本の神さまたちをあがめる宗教のことだ。日本の神さまといっても、八百万の神々というくらいで、天皇家のご先祖ということになっている天照大神から、道ばたの名もなき神さままで、たくさんいる。ここではとりあえず、外国生まれではない神さまたちをあがめる宗教と考えてもらえればいい。

「仏教」はご存じのとおり、2500年ほど前のインドで、ブッダが開祖となって広まった宗教だ。日本には、1450年くらい前に、中国から朝鮮半島をへて入ってきた。現在に至るまで、日本人の精神にもっとも大きな影響をあたえてきた宗教といっていい。仏教の場合は、生まれ故郷のインドから、民族や国を超えて世界中に広まったので、「世界宗教」ともよばれる。だから、同じように、民族や国を超えて世界中に広まったキリスト教やイスラム教と並んで、世界の三大宗教ともいわれる。

「道教」というのは、中国生まれの宗教だ。今から2500年くらい前に、老子という人がはじめた。ちょっとなじみがないかもしれないけれど、『西遊記』の孫悟空とか『三国志』の関羽が道教のヒーローといえば、わかってもらえるだろうか。不老長寿の秘法を学んで、最終的には仙人になるための宗教といってもいい。その反対に、すごく現実的に金儲けのために信仰する人もあって、このへんがいかにも中国的というか、ようするに何でもあり!という宗教でもある。

「陰陽道」というのは、天体の運行や気象現象、あるいは方位などをもとに、未来を予知する神秘的な技術だ。生まれは古代の中国で、日本には仏教と同じころ、つまり1450年くらい前に入ってきたらしい。夢枕獏さんが書いて大ヒットしている『陰陽師』の世界が、そのものズバリだ。主人公の安倍清明が呪文を唱えたり、ふしぎな絵図を描いて、邪悪な敵たちと戦う場面を思い浮かべれば、おおよそイメージできる。

「混淆」というのは、いろいろな要素が混じりあっているという意味だ。したがって、修験道というのは、とても古くから、たぶん縄文時代ころからあった山岳宗教を母胎にして、神道も仏教も道教も陰陽道もみな混じりあって出来上がった宗教ということになる。

「民族宗教」というのは、その民族だけが信仰している宗教のことだ。さっき仏教のところで述べたように、民族や国を超えて世界中に広まった「世界宗教」の、ちょうど逆といっていい。とはいっても、世界宗教は仏教とキリスト教とイスラム教の三つしかないので、そのほかの宗教はすべて民族宗教になる。神道は日本の民族宗教で、道教は中国の民族宗教だ。そして、修験道も、日本の民族宗教になる。

『はじめての修験道』(田中利典・正木晃共著/2004年春秋社刊)「第1章 修験道とはなにか」より
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