原種がアンデスの花、
『千日小坊』の花が点から粒へと大きくなってきた。
ピンクが入ったような赤紫の花はこれから熟成し大きくなっていき、
寒波にやられなければ、千日とまではいかないでも長期間咲き続ける。
耐寒性は強くないが、冬場の貴重な花だ。
(写真)赤紫色の千日小坊の花
草丈が80cm程度あり、柔らかい黄緑の葉は根元が紅葉し、
銀灰緑色の茎が花の重みで弓なりに広がる。
風がなく、日当たりが良い中庭、吹き抜けの陽のあたる室内などでは
360度のパノラマで弓なりに広がる生きた作品として展示したい価値があり、
贅沢なスペースに負けない驚くほど質素だが味のある“いきばな(生き花)”ともなる。
この『千日小坊』は原種の園芸品種で角田ナーセリーが開発し(詳しくは脚注に)、
丈の低い「千日小鈴」白い花になる「千日小雪」などが作出されている。
最近は、アルテルナンテラという風変わりな属名の変わった葉を持つ品種が
園芸店に出回るようになっている。
原種を採取したのは、キューのプラントハンター、スプルース
この『千日小坊』の原種は、
南米のペルー・エクアドルの学名がアルテルナンテラ・ポリゲンスで、
英国キュー植物園のプラントハンター、スプルース(Spruce, Richard 1817-1893)によって
1857年にエクアドルのアンデス山中で採取された。
スプルースは、1849年から1863年までの14年間アマゾンからアンデス地帯を探検し、
3万以上の植物を採取して標本を作り、5473種もの新種を発見したプラントハンターで、
マッソン同様にキューの一時代を築いた人間だ。
特に有名なのは、原因が良くわからなかったマラリアの治療薬『キニーネ』の原木
キナノキを採取し、スリランカなどのイギリスの植民地農園で栽培することに寄与したことだろう。
キナノキは、アマゾン川上流のアンデス山脈東部の雨が多く霧が発生する斜面にしか生息しない。
栽培が難しい樹木だが、これの種子を採取し、育成し、スリランカで栽培できるようにした。
キナノキから取れるキニーネは世界を変えた薬用植物でもあるが、
最終的には園芸・栽培技術の水準が高かったオランダがジャワ島で大量に栽培することになり、
キニーネ供給の独占体制をつくることになる。
現在は、あの頭から散布されたことで悪名高いDDTが蚊を駆除し、マラリアの発生は低下している。
スプルースは5473もの新種を採取しているので、もっといろんな場面で登場すると思われる。
(写真)千日小坊の立ち姿
千日小坊(Alternanthera porrigens 'Sennichi-Kobo')
・ヒユ科アルテルナンテラ属の常緑多年草。
・学名は、Alternanthera porrigens cv. Senniti-kobo。 属名はalterno(互生)+anthera(葯)でおしべとめしべが互い違いに生えることを意味し、種小名のporrigensは広がった様をいう。
・原産地はペルー・エクアドルで、アルテラナンテラの園芸品種
・草丈は、60~80cm。
・短日性で10~2月に小さな赤紫の花を咲かせる。
・暑さには強いが、冬の寒さには弱く室内で栽培したほうが良い。(半耐寒性)
・日当たりの良い場所で栽培する。
・花後に強く刈り込む。挿し木で増やす。
<管 理>
・花後、切り戻しをする。
・冬の管理(5℃以下だと...)葉が紅葉したり、地上部が枯れたりするので、室内の日当たりの良い場所に入れる。水は控えめに。
・4月の春野菜を植え込む時期になったら植え替えて、日が当たる戸外に。
・9月上旬までに、切り戻しをし続ける。根元から15―20cmのところで。この時、水+肥料は多めに。注意すること→日照管理
・11月上旬(10月下旬)から可愛い花が咲く。
角田ナーセリーの開発商品
この“千日小坊”は、愛知県一宮市の角田ナーセリーが作出し、現在では40万ポットも販売するという人気商品だ。
角田ナーセリーの開発秘話を読むと、
イギリスの花の展示会で3鉢だけブースの片隅にあったそうだ。これを輸入し、その後、1996年のジャパンガーデニングフェアーに出品し、この当時は名前がまだ付いていなかったそうだが、千日紅に似て小さな花だから“千日小坊”という名前をつけてもらったそうだ。
原種の命名者
オットー・クンツ(Kuntze, Carl Ernst Otto 1843-1907)
クンツは実業家として成功し、この資金を使い余生は趣味の植物探索旅行と植物収集に費やし、植物分類の体系に新説を提案し迫害があったドイツの植物学者。チャとツバキは同属と修正したのがクンツ。
最近は実業界から趣味を極めて学者に転進するほどのヒトがいないようなので、興味を持ちフォローしてみようかと思った。
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