火災保険や自動車保険などを扱う中小の損害保険代理店が、「手数料ポイント制度」という仕組みのもとで苦境に立たされています。
代理店の主な収入源は、損害保険会社からの手数料です。2003年に始まった「手数料ポイント制度」により、大手損保会社は手数料を事実上勝手に決めることができるようになり、代理店の収入が減少し、後継者難も重なり存続できない状況です。制度見直しを求める代理店の声は切実です。
一方的に決まる手数料
損保代理店は、事故や災害が起これば契約者の安否確認、保険金の支払いなど顧客支援のために尽力します。東日本大震災や西日本豪雨などでは、自ら被災しながら顧客対応に奔走し、被災契約者を絶望から救うなどしました。
「1人はみんなのために、みんなは1人のために」という相互扶助の精神に基づきリスクを軽減する―こうした保険の使命を担って、地域のセーフティーネットを支える存在にもなっています。
損保代理店は、大手損保会社と代理店委託契約を交わし、保険会社を代理して顧客と保険契約を結びます。しかし大手との力関係は圧倒的な差があります。
手数料ポイント制度は、米国から要求された金融・保険の市場開放と自由化の中で損保各社が導入しました。それまで手数料は保険の種別ごとに一律に決められ、金融監督庁(当時)が認可していました。新制度で手数料は、保険会社と代理店が自由競争のもとで消費者ニーズに対応しつつ「主体的」に設定するとされました。
金融庁は「基本的に(手数料は)損保会社と代理店の合意によって決められている」との立場です。しかし、大手損保がポイント算定基準を一方的に決めているのが実態です。代理店の規模が大きくならなかったり、毎月増収にならなかったりすれば、ポイントが下げられます。ポイントが60%にされると手数料は従来の6割に減額されてしまいます。
手数料ポイント制度導入に先立つ2000年10月、東京海上日動(当時の東京海上)が作成した文書「新委託契約書解説(社員用)」には「対価の支払い条件の決定や変更は基本的に当社が行う」と明記されていました。大手が主導していた事実は隠せません。
制度開始から20年、大手損保が優越的地位を利用して不当な圧力をかけた結果、代理店は次々と廃業に追い込まれました。最盛期に全国に約60万店あった代理店は20万店を割り込みました。
さらに今、手数料ポイント制度をてこに代理店の淘汰(とうた)・再編を加速する動きが強まっています。
是正を求める声広げよう
手数料ポイント制が大手損保の優越的地位の乱用にあたるとして、代理店と大手の公正な関係を求め、公正取引委員会への申し立てを行おうと全国の代理店の200人超が立ち上がっています。
代理店が声を上げ、日本共産党議員が国会質問などで取り上げる中、金融庁は、代理店契約は民間同士の契約で、個別の相談には応じられないという従来の姿勢から変わりつつあります。損保会社による優越的地位の乱用が代理店本来の役割を妨げている現状を是正し、損保業界の持続的な発展を図るため、地域に根を張る代理店を守れの声を広げましょう。
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