ジャックの訃報を聞いて、ぼくは真っ先に長年のダイビングによる肉体的・精神的なダメージの蓄積を疑った。死の淵を垣間見て、そこに身をさらすことは、精神に重大なダメージを与えることを前述した。だから、彼の心の奥深くまでダイブして、彼の死の真相を知りたいと思ったのだ。しかし、いろいろ資料を集めて調べて行く内に、彼は何事にも囚われない自由人であることに気が付いた。彼は愛する家族も捨てて、世界中を泳ぎまわっている。彼のライバルであったもう一人の伝説のダイバーであるエンゾ・マヨルカは、ジャックのように自由に生きることをやめて、家族を大切にし、海を守るために政治家にもなった。ジャックとエンゾは、選択した道こそ違うが、「海を守る」という同じ目的のため後年行動を起こしている。
「もし人間の思考と精神に、兄弟であるイルカのインスピレーションが少しでもあったら、傷ついてしまった我々共通の惑星地球は、かつてそうであったようにパラダイスに戻ることができるだろう・・・・・。」
晩年は白髪に、白い口ひげを蓄え人懐っこい笑顔。日焼けして深くしわが刻まれた顔に、グレーの目が印象的だった。彼の夢とともに彼の思い出はいつまでも我々の心に生き続ける。彼はまた、ぼくらの心の奥深くまでダイビングした人であった。
自然の叡知を学び、「今」を生きる。休暇で賑わうクリスマスの前日に、老け行く自分をはっきりと意識した自由人ジャックは、イルカと同様に群れからひっそり離れることを希望した。イルカとともにあった彼は、また海に帰って行っただけなのかもしれない。どこかの海のブルーから群青へのグラディエーションのなかで、元気の泳ぎ回ることを夢見て。伝説はあっけなく幕を降ろしていく。現実とはそんなものなのだ。
Jacques、 I won’t say good bye. His message will forever be alive at the deep bottom part our hearts.
He just select his last trip not by sea、 but by land. I see off him with tossing the oars.
Have a good trip. I promise to do my best for my life、 Jacques Mayol.
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