部品を洗浄して、交換する部品は交換して組み立てる。ブラッダーはシールリップ部分にシリコングリスを塗布。
が、ただ組み立てても面白くないので、まず見た目がボロボロのスプリングを塗装する。 ※既にこれで再々塗装となる。
サンドブラストで旧塗膜を剥離すると厳密にはスプリングそのものも削れてしまうので、ほとんどはスケルトン(塗装剥離剤)で除去してから、仕上げにブラストを掛けた。
プライマーを塗り、最初に白をザッと塗って下地作り。
何色にしようか・・・? 結局、在庫している二液ウレタンの中で、最も趣味が悪いと思われる色をチョイス。
俺としては自分のバイクがホンダ車に見えると、困るのですよ。
スプリングは非常に塗るのが難しい。もっと小さいガンを使えば何とかなるのかもしれないが、俺のテクニックではキレイに塗れん。内側に塗料が付かないのでたくさん吹き付けると、今度は外側に付きすぎてタレてしまう。しかも360°全面塗らなければならない。圧を低くしてジックリと塗ってみた。それなりに塗れたつもりだったが、後で見たら結構酷い・・・。まあいいか、ヘタクソな面を見えないように組み付けよう。
サスペンション本体はバフ掛け。ピカピカに仕上げるのは大変なので、適当です。
バラシと逆の手順で組み立てる。何でもそうだが湿り気が必要なので、クッションオイルを塗布しつつの作業である。交換したのはオイルシールの組み込まれた「ロッドガイドケース」(コンプリートで外周にOリングが組まれてくる)、アジャスターのOリング2つ、ピストンリングとその下に重なるOリング、ブラッダーとバンプラバー。
最終的にエア抜きをしなければならないが、どこからやるのが良いのだろう?
車種によってはブリーダーボルトが付いている物もあろうが、XRの場合は本体の開口はシリンダー部分とブラッダー部分、そしてリザーバータンク上のアジャスター。
リヤサスを自分でバラした経験をネット上に公開している人が数人いた。この辺はまちまちで、本体にナミナミと油を入れておいて、油を溢れさせながらピストンとブラッダーを押し込む・・・というのが有力のようであった。が、各オイル通路の向きを検討すると、どうやら先にピストンとブラッダーを組み付け、アジャスターの穴から油を注ぐのが良いかと感じた。
それとオイルはどの位の量が入るのだろうか? ザッと計算すると(非常にいい加減に計った数字なので、参考まで)、シリンダー内部に180cc(オイルシールとピストンの容積分は差し引き済み)、リザーバータンク内に30cc(ブラッダーの容積分は差し引き済み)、合計210cc位かな? 抜いたオイルをメスシリンダーに移してみると約200cc。だいたいこの量を目安にしよう。新しいクッションオイルをメスシリンダーに200cc用意。
バイスにリヤサスを銜えさせる。開口がちょうど頂点になるように角度を気にして設置し、泡が立たないように注意を払いつつオイルを流し込む。そしてフロントフォークと同じようにストロークさせてエアを抜く・・・・。
が、ソコには罠が仕掛けられていた。
ブヒーッ、水鉄砲宜しくオイルが顔面直撃ぃぃぃぃ。
よくよく考えてみると、フロントフォークで言えばフォークエンドボルトを外した状態でストロークさせている訳なので、水鉄砲そのもの。発射するのは当たり前だ。コリャイカン。アジャスターを仮に取り付けてストローク。何回かやったらバルブを外してオイルを継ぎ足す。プラハンでコツコツと叩いてみたりして、気泡が可能な限り上に出るように努力をする。んで、一晩放置。
次の日またバルブを外して、スリキレまでオイルを入れ、溢れさせながらアジャスターを取り付ける。また数回ストロークさせ、最後にアジャスターを一瞬緩めてエアを追い出して完了。
52427KT1671 バンプラバー ¥483
52429KS6831 ロッドガイドケース ¥987
52431KS6831 ピストンリング ¥535
52432KS6831 Oリング 35.5*2.0 ¥?
52447KS6701 Oリング 17.8*4.2 ¥105
52448KS6701 Oリング 15.5*1.5 ¥105
52451KZ4003 ブラッダー ¥840
部品の価格はH19年8月の物。バックオーダーだったOリングのみ控えが無いが、数百円。もしも注文される場合は、パーツリストで品番を確認してください。間違ってるかもしれません。
最後に窒素ガスを入れて完了なのだが、恐らく一般の人が自力でサスをOHしようとすると最も困るであろうのがこの作業。
大気中(空気中)には窒素が約80%なので、そのままコンプレッサーで入れても良いような気がしたが、できる事なら拘りたい。
最初に考えたのは、タイヤ屋さんとかで入れてもらう方法。近年はタイヤに窒素ガスを入れるのが流行りなので、大抵のピットには設備されているであろう。この時点で俺は、窒素ガス=窒素ガス発生器で入れる物と思い込んでいたのだが、そんなものでは10kgf/c㎡では入れれんぞ・・・と思い始めた。
あっ!!! そー言えば、普通に仕入れ可能じゃんか!!
そう、我社は金属加工をやっているので、当然溶材屋さんと取引がある。酸素やアセチレン、アルゴン、炭酸ガスを仕入れている以上、窒素ガスも入るはずだ。
で、仕入れてしまいました。
ボンベ(瓶)はリース扱いとなり、メーターは他のガスにも使えるので予備という意味も含めて新調。アホですな。
一番右のが窒素で、その真後ろの瓶と手前の小さい瓶がアルゴンガス。同じグレーに見えるが、少し色が違う。赤茶色の二本がアセチレン、緑が炭酸ガス、黒二本が酸素。高圧ガス取締法の容器保安規則によって色が定められている。
この瓶にどの位の圧力で入っているのかというと、何と、150kgf/c㎡(=14.7Mpa)なのだ。普通のエアーコンプレッサーは大体8kgf/c㎡で使用するので、ケタ違いである事はお解かり頂けると思う。アセチレンを除いて引き抜きで作られる瓶は、充填する際は「シューッ」とアッという間に入れてしまえる訳ではなく、何時間も掛けて少しずつ入れていくのだそうだ。この瓶の中に7?の窒素が入っている。ちなみに敢えて1瓶の価格は書かないが、それほど高いものではない。
窒素ガスがタイヤ以外で実際にどんな現場で使われているのだろうと思って聞いてみたら、その溶材屋さんではそれほど需要がないらしいが、配管などの漏れの検査などで使用するらしい。全く引火性が無いものだからとの事だ。
メーターは片方は瓶の圧を示している。開封時は約150kgf/c㎡を指し、使うと圧が下がるのでメーターの数値も下がっていく。つまり中身の量を示しているのと同義。もう一つはレギュレーター。ハンドルを回して、150kgf/c㎡の圧力を使用する圧に減圧する。実際にホースから出る圧力を示している。ここを10kgf/c㎡に調整して、一気に入れる。タイヤに注入する場合は最初に空気を抜くため、「真空抜き」という作業を行うらしいのだが、今回は数回注入と排出を繰り返して窒素の純度を高めるようにしてみた。
塗装したスプリングが乾くのを待って組み付け。
うーむ、いままで聖域だと思っていたリヤサスのOH、簡単に終わってしまった。しかしホントにコレで大丈夫なのか??
どーだ、シャコタンKDXのT中さん。羨ましいだろう!!!