サイズを間違えて用意していたカムシャフトベアリングの正しい物が入荷した(仕事の仕入先に取り扱い業者があるので、そこに頼んでいる)。
やっと組める・・・。
ベアリングが無い間にHOTCAMの説明書(当然全部英語)を熟読していたのだが、何故かバルブクリアランスの指定がXR250のサービスマニュアルによる指定よりも少々大きい事に気が付いた。
純正の指定は・・・
■IN 0.10±0.02
■EX 0.12±0.02
とある。
HOTCAMの指定では
■IN 0.13
■EX 0.15
となっている。
先日、入手後2年以上放置したHOTCAMを箱から出した時、ノーマルと比較・・・と思ってノギスで簡単に測定したのだが、もうちょっとマジメに測ってみた。
現物カムシャフトの測定結果は以下(マイクロメーターで測っている)。
何回も測定をし直した上で最も正しいと思われる数字であるが、ノーマルの方は中古であり、しかも焼きついていたエンジンの物。SM上の指定の基準値に納まっていたとは言え、あまり当てにはしない方が賢明かと思われる。
加えてノーマルとHOTCAMの双方共、比較参考にできるデータが記載されていない。
ノーマルで記載があるのは
○弁開閉時期
●IN開き 5°BTDC @1mm
●IN閉じ 35° ABDC @1mm
●EX開き 35° BBDC @1mm
●EX閉じ 5° ATDC @1mm
HOTCAMでは
○リフト量
●IN9.0mm
●EX8.7mm
○Duration(作用角)@1mm(1mmリフト時、大抵の場合コレが基準になる)
●IN236°
●EX236°
ノーマルカムの作用角は単純な足し算で求められる。IN、EX共に220°である。HOTCAMの236°というのは、一般的なチューニング用カムシャフトとしては大人しい数字だ。
ノーマルのバルブのリフト量の基準値が公表されておらず、俺自身ノーマルを仮組みしてまで測るのも面倒なので、ロッカーアームのレバー比を計算で導き出して机上の空論を展開。
先日はいい加減な事を書いてしまったが、その計算によれば思っていたよりもリフト量が増えるという結果が出た(間違っている可能性が高いので数字の公表は差し控えます・・・どうやって計算するのかは各自お考え下さいませ)。
単純に考えるとバルブクリアランスを基準よりも広く取った場合は、作用角が減り、リフト量も減る。カム山のベース径がノーマルより小さい事の相殺かと思ったが、どうも別の理由の様だ。
憶測ではあるが、恐らく実際にテストして導き出した数値ではと思われる。
仮組してあったタペットカバーだが、サブロッカーアームの動きが重いのが気になる。RFVCであるXR250は一般的なロッカーアーム方式とは異なり、INバルブ同士とEXバルブ同士が逆ハの字になっているので、バルブを真っ直ぐ押す為にロッカーアームが二重仕掛けになっている。ここまでしてRFVCに拘る必要があるんだろうか?
メインのロッカーアームの方はシャフトで支持されているだけだが、サブロッカーアームはウェーブワッシャーにてロードが掛けられているのでフリクションが大きい。なので万力で挟んで潰し、フリクションが軽くなる様にしてみた。
直接万力で挟むのもどうかと思ったので、鉄板二枚で挟み、鉄板ごと万力で潰した。簡単に平たくなってしまうかと思いきや、結構しぶとい。何度も仮組みして動きとクリアランスを確認しつつの作業。
写真は作業途中の物で、最終的にはもう少し平らに近い状態となった。
それと以前の記事で「銅ワッシャをオイルストンで研いで再使用」とか書いたのだが、スミマセン。その後OHガスケットセットに含まれている事が判明し、新品に入れ替えた。このガスケットセットの内容の管理が出来てなくて、既に結構無駄な買い物してしまっている。近い内に纏めてデータ化します。
カムシャフトを組む。
写真はMD30のスプロケの上にME08のスプロケを重ねた物で、180°反転させてもピッタリ重なる。ノックピンの様なボルトで位置決めするカムスプロケットは、スプロケットを対称に割る位置関係に穴があるので180°回転させた状態で組んでも問題は無いのだが、この二つの穴は径が異なる事が判明。穴位置の公差を吸収する為だと思われる。なんでこんな事を気にしたのかというと、シリンダーヘッドを面研(といっても手作業であり、削った量はかなり小さい)してるので厳密にはバルブタイミングが遅れてしまう事、カムスプロケット一回転でクランクシャフト二回転に相当、つまり一回転で720°である。ノックボルトの芯間のピッチは50mmであるので、50*3.14÷720=0.218・・・ノックボルトの位置で円周方向に0.218mm狂うと、バルブタイミングが1°狂ってしまうからなのである。
一度でもエンジンの組みバラシをした事がある人ならば判ると思うが、ノーマルのエンジンは非常にいい加減に出来ている。部品単位ではかなりの精度を出していると思うが、前出のノックボルトも然り、7mmのピンが刺さる穴は7.0mmではダメなので、小さい方の穴は7.1mm(ノギスにて計測の為、正確性は今一つ)、穴位置の公差吸収の為に大きい方は7.5mm。中心の穴はカム側のボスが外径38mmに対して内径38.1。クランクシャフト側のスプロケットはクランクシャフトに刻まれたスプラインに嵌るのだが、当然ここにも公差が見込まれている筈である。それでもこの辺りはまだマシ。カムスプロケットは、ピストンが上死点時にスプロケットに刻まれた印がシリンダーヘッドに平行になる位置に組み付け、との指示(つまり目測)だが、どう見ても平行にならねえ(爆)。
たまたま出来が悪い部品が集まってしまうと、その個体(バイク)は所謂「ハズレ」ってヤツである。でもまあ仮にハズレだったとしてもそれなりに普通に動くのがメーカー製エンジンの凄い所でもあるのだが、それをそのまま組んだエンジンはチューニングエンジンではない。仮に鍛造ピストンやハイカムが組み込まれていても、チューニング(調律)してない以上はチューニングエンジンでは無いのである。コレを指摘されて「ドキッ」ていうショップもありますでしょ? 自覚のある人は偉いっつーか、マシ。出来合いの部品くっつけただけで「カスタム」とか言って能書きタレるバカショップは、俺は大嫌いである。近所にもありますが。その他、身近にも堂々と不動カスタムバイク(改造メニューは確かに凄い)を取材されて雑誌に載せる店もありますな(ゴメンネー)。※個人的にはカスタムとチューニングは、全く種類の違う物だと思っている。
公差どうのこうのはともかく、現状では対策のしようも無いので、取り敢えず組む。
カムシャフトベアリングは右が6003LU、左は6003Z。どちらも入手時は両側シールだが、その片側を取り外して使用。両側シールのベアリングにはグリスが詰め込まれているので、パーツクリーナーで洗い流します。空転させて比べると、接触シールのLUと非接触シールのZでは、恐ろしくフリクションが違う。
ついでに・・・俺はエンジンを組む時、コレを使っている。
REDLINEのアッセンブリ・ルーブ。要するに組み立てグリス。SMでモリブデン溶液とか出てくる物の一種だ。REDLINEは7~8年くらい前に突然現れて大旋風を巻き起こしたが、最近あまり売っている所を見掛けない。流動性のテストでは超ブッチギリの好結果を叩き出すらしいのだが(コチラは聞いた話、ROYAL PURPLEも同等らしい。ホント?)、俺が昔何種類もオイルを用意して持ち込んだ「焼き付きテスト」ではアッサリ4CRに敗退。このアッセンブリ・ルーブを使ってるのはコダワリでも何でもなく、ちっとも無くならないから(爆)。
あと、治具を製作した。
インシュレータの位置に取り付ける、マグネットベースの台座と、左側クランクケースカバーを外した時用のフライホイール刻印を合わせる針。フライホイールの上から取り付けてあるのは、単なる360°分度器である。10年くらい前に文房具屋で買った物。本来は専用品の様に金属製が良い。フライホイールセンターボルトで共締めした時、樹脂製だとボルトを締めきれないのでヤンス。
つづく。