『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『ガラスの街』 ポール・オースター

2010-02-15 | Books(本):愛すべき活字

『ガラスの街』
ポール・オースター(米:1947-)
柴田元幸訳
"City Of Glass" by Paul Auster(1985)
2009年・新潮社

++++

夜だった。

クインはベッドで横になって煙草を喫い、雨が窓を打つのを聞いていた。


いつ止むのだろう、彼はふと思い、朝になったら俺は長い散歩に出る気分だろうか、それとも短い散歩だろうか、と考えた。

脇にある枕の上には、マルコ・ポーロの『東方見聞録』が伏せて置いてある。


二週間前にウィリアム・ウィルソンの最新作を書き上げて以来、クインはずっとぼうっとしていた。

語り手の探偵マックス・ワークはいくつもの込み入った事件を解決し、何回か袋叩きの目に遭い、何回か危うく命拾いして、そのせいでクインも何となく疲れてしまった。

++++


オースターのニューヨーク三部作 (The New York Trilogy) の一作目。

はっきり言って、二作目の『幽霊たち』と、まるっきり同じ地点に帰結する。


不思議なのは、別にどっちが2作目でもおかしくないような気がすんだよね。

「幽霊たち」のほうが何かが深まってるという気もしない。

音楽でいうところのリミックス・アルバムとか、あんな感じ。


この、そっくりさんな2作に優劣はないと思う。

どっちも読んでる間、自分が透明になったように引き込まれる。


要するに・・・、

要するに孤独ってのはさ。


<だから、ルー・リードじゃないっつーの>
■ニューヨーク三部作
『幽霊たち』 (柴田元幸訳/ 1989年・新潮社) 
『鍵のかかった部屋』 (柴田元幸訳/ 1989年・白水社) 
『ガラスの街』 (柴田元幸訳/ 2009年・新潮社) 
■長編
『ブルックリン・フォリーズ』 (柴田元幸訳/ 2012・新潮社)  
■オースター編
『ナショナル・ストーリー・プロジェクトⅠ』 ポール・オースター編 
■ オースター特集
『青春のポール・オースター』 MONKEY vol.1 

 

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ガラスの街
柴田 元幸
新潮社

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