◆たけおに行った
もちろん、カンボジアのタケオ州タケオではなく、佐賀県武雄市である。久しぶりだ。博多から佐世保行き特急に乗れば、1時間ちょっとで到着する。島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』の舞台となった町である。駅の北には辰野金吾設計の楼門が特徴的な温泉がある。長崎街道の取材があったころには何度も来た。武雄温泉駅から嬉野行きのバスに乗って、写真撮って歩いたのは2001年頃のこと。古い駅舎に続く食堂で、昼間から酒宴が展開されていた記憶がある。
長崎新幹線の乗換駅となる予定があるため、それを見越して立派に建て替わっていた。
◆有名な図書館
武雄市には武雄町大字武雄という、トリプル武雄な地名がある。エリアは結構広く、駅の北にある武雄温泉も、駅の南にある文化会館もトリプル武雄である。駅南エリアのトリプル武雄地区には有名な武雄図書館がある。
看板の下には市章ではなく、おなじみスターバックスのマークがついていた。
見学してみたが、ひとことでいうとこの看板の通りの施設だった。
◆違和感
貸し出し本スペースでは、とても手が届かない壁面の高いところまで本が並んでいて、梯子などは見当たらない。危険だからか。係の人に頼めば取ってもらえるのかも知れないが、自由に手に取って中身を見られないで、何が開架だ。
スタバで買ったものしか館内では食べられない。閲覧席にはスタバの飲みものなら持ち込める。中高生が弁当を食べるスペースが館内に用意されていない、閲覧席で持参水筒や持参ペットボトルの水や茶が飲めない、ウォーターサーバーもない、というのは、教育機関としての図書館として、配慮に欠けていないか。
まあ、スタバが高い!!というのなら、お昼になったら向かいの「ゆめタウン」に行けばフードコートがあって、そこでお弁当食べてても目くじら立てられたりしないと思うんだけどね。
他の町の図書館に行くと、必ずその町の資料をみて、いくつか写しを貰って帰る。せっかく来たんだからね。ところが、コピーサービスが面倒。私の行くたいがいの地方公共団体の図書館は、コピー機のところに、著作権法についての注意書きが貼ってあるだけで、自由に自分で複写できるんだけど、ここは、普通の本1ページコピーを取るのにも、申請書を書かないといけない。どの本の何ページを複写したい、と。で、係の人がコピーを取ってくれるのだ。
◆図書館と思わない方が精神衛生上よい
このあたりで、ふだんは眠っている私のイラチ虫が起き出そうとしてきた。
目を閉じた。
深呼吸して、脳内で賛美歌298番「やすかれわが心よ」(笑)を再生して落ち着く。
「これは図書館ではない」という言葉で括ってみたら、少し気分がスッキリした。ステキなカフェ併設書店だ。DVDレンタル書店の庇に非売の古本があり、見たり読んだり借りたりもできる施設だ。
◆思ったほど儲からないのは当然だと思うよ
通常、図書館は経費がかかる施設で、どの自治体も維持管理に四苦八苦している。
だからカフェつきDVDレンタル書店(ここではスタバ+ツタヤ)を併設すれば、金食い虫の図書館運営が少しはましになる、と考えたのだろうが、実際はこの図書館は、赤字だそうである。どういう会計で「赤字」というのかはわからないが、全国で話題になり、来場者数も多いし、カフェも賑わっているのに、思った採算は得られないということなのかな。
たぶん、収益をもたらすはずのカフェ書店併設が、余計な仕事をつくり、ひどく非効率なことになっているのだと思う。
カフェ書店を併設した公共図書館に期待されるのは「いわゆる図書館の経費」を「カフェつきDVDレンタル書店の利益」で補填することなのだと思う。簡単に補填できそうだ。
しかし、思ったほど採算がとれないのは、図書館とカフェつきDVDレンタル書店を併設することにより、人件費が余計にかかっちゃってることなんじゃないかな、と私は思った。
つまり、それぞれが独立した施設であれば発生のしようのない人件費がかかっているように見受けられる。なにしろ、係員の数がやたら多い。この業態にすると、余計に人が要るのだと思う。
たとえば、今回、コピー1枚取るのに係員が2人関わった。
連れて行ってご案内いただかなくても、「あそこの係員に」と言っていただければ十分である。わざわざその場まで案内されて、別の係から説明を聞き、申請書を書き、複写してもらった。新刊書店と併設されているから、利用者が自由に複写できたら、売り本である新刊書や新刊雑誌の欲しいとこだけ複写する輩が出て来ることは想像にかたくない。それでこんな面倒が生じるのであると察する。
新刊書店を併設していない普通の図書館ならば、コイン複写機を設置して終了のところである。人はいらない。
警備上の問題も考えられる。無断持ち出し防止が併設で面倒臭くなる。それは買った本なのか借りた本なのか持参の本なのかぱっと見でわかりにくいからである。
普通の図書館であれば、すべての蔵書にICタグをつけて、ゲートにセンサーを設置すればほぼ終わる。貸し出し手続きを済ませた本と持参の本しかゲートを通過できないから、警備員さんはゲート近くにいれば大体大丈夫である。
普通の書店なら、わざわざ持参本をこれ見よがしに持ち歩く人はあまりいないから、ICタグをつけてない商品については、レジを通らない持ち出しそのものを見ていればいいだけなんじゃないかな。
図書館と同じフロアに新刊書店が設置されていることで、お客さんが持っている本が、持参本か貸し出し本か本屋の売り本か、どうやって見分けるのか。無断持ち出し防止策が面倒臭くなるのは想像に難くない。人員が余分に必要となる。ツタヤ、スタバと併設となれば、人員確保のためにボランティアスタッフを募るわけにもいくまい。
ほかの飲食施設で食事を済ませてやってきた(わざわざ武雄まで来てスタバでもないだろう)私のような、スタバにお金を落とさない利用者が、この施設を赤字にするのであろう。だが、公共図書館を標榜する以上、お金を落とさない利用者も受け容れないといけない。
カフェ書店DVDレンタル店兼公共図書館には、このような限界がありそうだ。増えた利用者というのは、スタバつき書店が珍しくて増えたんだと思っている。スタバが普通に町にいくつもあるところでは、こんな図書館はできないと思う。で、武雄には、もの珍しさでよそからの人もこの図書館を見に来るが、全国にたくさんできると、こういった書店をわざわざ見学に行く人はいないと思う。それでいよいよ採算が取れなくなる。
市の図書館のツタヤカフェ化を推し進めた市長(県知事に転身しようとして落選)は、ツタヤ関連企業に天下った。まあその程度である。
これからこの図書館がどうなるかはわからないが、カフェ書店化リニューアルのときに廃棄された貴重な郷土資料は元には戻らないのだ。
もちろん、カンボジアのタケオ州タケオではなく、佐賀県武雄市である。久しぶりだ。博多から佐世保行き特急に乗れば、1時間ちょっとで到着する。島田洋七『佐賀のがばいばあちゃん』の舞台となった町である。駅の北には辰野金吾設計の楼門が特徴的な温泉がある。長崎街道の取材があったころには何度も来た。武雄温泉駅から嬉野行きのバスに乗って、写真撮って歩いたのは2001年頃のこと。古い駅舎に続く食堂で、昼間から酒宴が展開されていた記憶がある。
長崎新幹線の乗換駅となる予定があるため、それを見越して立派に建て替わっていた。
◆有名な図書館
武雄市には武雄町大字武雄という、トリプル武雄な地名がある。エリアは結構広く、駅の北にある武雄温泉も、駅の南にある文化会館もトリプル武雄である。駅南エリアのトリプル武雄地区には有名な武雄図書館がある。
看板の下には市章ではなく、おなじみスターバックスのマークがついていた。
見学してみたが、ひとことでいうとこの看板の通りの施設だった。
◆違和感
貸し出し本スペースでは、とても手が届かない壁面の高いところまで本が並んでいて、梯子などは見当たらない。危険だからか。係の人に頼めば取ってもらえるのかも知れないが、自由に手に取って中身を見られないで、何が開架だ。
スタバで買ったものしか館内では食べられない。閲覧席にはスタバの飲みものなら持ち込める。中高生が弁当を食べるスペースが館内に用意されていない、閲覧席で持参水筒や持参ペットボトルの水や茶が飲めない、ウォーターサーバーもない、というのは、教育機関としての図書館として、配慮に欠けていないか。
まあ、スタバが高い!!というのなら、お昼になったら向かいの「ゆめタウン」に行けばフードコートがあって、そこでお弁当食べてても目くじら立てられたりしないと思うんだけどね。
他の町の図書館に行くと、必ずその町の資料をみて、いくつか写しを貰って帰る。せっかく来たんだからね。ところが、コピーサービスが面倒。私の行くたいがいの地方公共団体の図書館は、コピー機のところに、著作権法についての注意書きが貼ってあるだけで、自由に自分で複写できるんだけど、ここは、普通の本1ページコピーを取るのにも、申請書を書かないといけない。どの本の何ページを複写したい、と。で、係の人がコピーを取ってくれるのだ。
◆図書館と思わない方が精神衛生上よい
このあたりで、ふだんは眠っている私のイラチ虫が起き出そうとしてきた。
目を閉じた。
深呼吸して、脳内で賛美歌298番「やすかれわが心よ」(笑)を再生して落ち着く。
「これは図書館ではない」という言葉で括ってみたら、少し気分がスッキリした。ステキなカフェ併設書店だ。DVDレンタル書店の庇に非売の古本があり、見たり読んだり借りたりもできる施設だ。
◆思ったほど儲からないのは当然だと思うよ
通常、図書館は経費がかかる施設で、どの自治体も維持管理に四苦八苦している。
だからカフェつきDVDレンタル書店(ここではスタバ+ツタヤ)を併設すれば、金食い虫の図書館運営が少しはましになる、と考えたのだろうが、実際はこの図書館は、赤字だそうである。どういう会計で「赤字」というのかはわからないが、全国で話題になり、来場者数も多いし、カフェも賑わっているのに、思った採算は得られないということなのかな。
たぶん、収益をもたらすはずのカフェ書店併設が、余計な仕事をつくり、ひどく非効率なことになっているのだと思う。
カフェ書店を併設した公共図書館に期待されるのは「いわゆる図書館の経費」を「カフェつきDVDレンタル書店の利益」で補填することなのだと思う。簡単に補填できそうだ。
しかし、思ったほど採算がとれないのは、図書館とカフェつきDVDレンタル書店を併設することにより、人件費が余計にかかっちゃってることなんじゃないかな、と私は思った。
つまり、それぞれが独立した施設であれば発生のしようのない人件費がかかっているように見受けられる。なにしろ、係員の数がやたら多い。この業態にすると、余計に人が要るのだと思う。
たとえば、今回、コピー1枚取るのに係員が2人関わった。
連れて行ってご案内いただかなくても、「あそこの係員に」と言っていただければ十分である。わざわざその場まで案内されて、別の係から説明を聞き、申請書を書き、複写してもらった。新刊書店と併設されているから、利用者が自由に複写できたら、売り本である新刊書や新刊雑誌の欲しいとこだけ複写する輩が出て来ることは想像にかたくない。それでこんな面倒が生じるのであると察する。
新刊書店を併設していない普通の図書館ならば、コイン複写機を設置して終了のところである。人はいらない。
警備上の問題も考えられる。無断持ち出し防止が併設で面倒臭くなる。それは買った本なのか借りた本なのか持参の本なのかぱっと見でわかりにくいからである。
普通の図書館であれば、すべての蔵書にICタグをつけて、ゲートにセンサーを設置すればほぼ終わる。貸し出し手続きを済ませた本と持参の本しかゲートを通過できないから、警備員さんはゲート近くにいれば大体大丈夫である。
普通の書店なら、わざわざ持参本をこれ見よがしに持ち歩く人はあまりいないから、ICタグをつけてない商品については、レジを通らない持ち出しそのものを見ていればいいだけなんじゃないかな。
図書館と同じフロアに新刊書店が設置されていることで、お客さんが持っている本が、持参本か貸し出し本か本屋の売り本か、どうやって見分けるのか。無断持ち出し防止策が面倒臭くなるのは想像に難くない。人員が余分に必要となる。ツタヤ、スタバと併設となれば、人員確保のためにボランティアスタッフを募るわけにもいくまい。
ほかの飲食施設で食事を済ませてやってきた(わざわざ武雄まで来てスタバでもないだろう)私のような、スタバにお金を落とさない利用者が、この施設を赤字にするのであろう。だが、公共図書館を標榜する以上、お金を落とさない利用者も受け容れないといけない。
カフェ書店DVDレンタル店兼公共図書館には、このような限界がありそうだ。増えた利用者というのは、スタバつき書店が珍しくて増えたんだと思っている。スタバが普通に町にいくつもあるところでは、こんな図書館はできないと思う。で、武雄には、もの珍しさでよそからの人もこの図書館を見に来るが、全国にたくさんできると、こういった書店をわざわざ見学に行く人はいないと思う。それでいよいよ採算が取れなくなる。
市の図書館のツタヤカフェ化を推し進めた市長(県知事に転身しようとして落選)は、ツタヤ関連企業に天下った。まあその程度である。
これからこの図書館がどうなるかはわからないが、カフェ書店化リニューアルのときに廃棄された貴重な郷土資料は元には戻らないのだ。
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