発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

ゴーイン、マイウェイでした。

2012年01月12日 | 映画
 「マイウェイ」 試写会。

 予告でやってた「僕達特急A列車で行こう」が見に行けるといいな。予告で女の子にキスしようとした鉄道オタクの男(=平清盛またはデスノートのL、松山ケンイチだ!!)が、聞こえてきた列車の音に「あっ、キハ125の音だっ」と、思わず言ってしまう。ありそうあるかも、と、微量鉄道マニアの私は思う。
 キハ125とは、JR九州、唐津線とか久大本線で、ひょっとすると一両編成で運行されているワンマンディーゼルカーである。デザインは水戸岡鋭治。以前は筑豊本線原田・桂川間を運行していた。黄色い車体で、田園の中を走る姿の可憐さといったら。そのキハ125に注目するとは。さすがだ。それだけでも見に行く価値はある、と思う。
 って、マイウェイはどうした?

 超大作だ。
 韓国俳優では群を抜く男前、チャン・ドンゴン様も出ることだし。
 相変わらずステキである。こども、少年、青年(チャン・ドンゴン様)と、三人の俳優が演じていたが、少年時代は、高良健吾ふうの美少年が出ていた。

 CGで航空機や戦車や軍艦が大増量されているところは、レッドクリフさながら。でも、それはいいと思う。
 軍事考証だとか法律考証だとか医学考証だとか衣装考証とか。高い予算の割には、考証が甘いような気がする。それが、リアリティの薄さをもたらしている。
 レッドクリフのような1800年前の物語ならまだしも、まだ同じ時代の人はたくさん生きているわけで。

 と、素人は思う。とりあえず、司法史とか戦史に詳しい方に教えて欲しいと思う。

 裁判所が、争乱を起こした人々を、懲罰として団体で徴兵して前線に送る、なんてありうるのか。
 あんな派手な刺繍のある裁判長の法冠は見たことないのだけど、あれは実在したのか。
 被告不在の軍法会議や、結構簡単にハラキリさせる、なんてありうるのか。
 陸軍刑法は考証したのか、運用はどうだったのか。
 ノモンハンの時点で、日の丸ハチマキで団体で陸地を走って、夥しい数のソ連戦車に突撃、なんてあったのか。
 冬のシベリアで一晩?宙づりにされて、それで重大な凍傷にもかからず無事に生還してるし。
 
 普通に徴兵する(実際の徴兵は1943年からだったんだけどね、まあそれくらいは史実からはずれるにしても)、ノモンハンで普通に負ける、普通な懲罰。たんたんと話を進めたほうがよかったんじゃあないかと思う。

 戦闘は、ワイルド7どころじゃない分量の爆薬を使って、手持ちカメラをブレされまくって、主人公ふたりの目線にしての臨場感。
 2人が雪山を助け合って越えるところや、捕虜たちがノルマンディーの海辺でサッカーをする。美しい画面。
 をを、と思っていたが、最後の最後で、感動がぶっ飛ぶほどの「それは無理でしょ」がある。
 感動的な映画になり得たのに、ショーアップの方法がちょっと違うような気がする。説得力のある考証がほしかった。惜しいと思う。


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