「市民と法」2009年6月号(民事法研究会)の最新重要判例解説に「株主総会における取締役解任決議に定足数に欠ける瑕疵がある場合と決議取消しの可否」が掲載されている。なお、同判例については、旬刊商事法務2009年1月25日号52頁にも紹介されている。
争点となっているのは、株主総会の普通決議に関する定款の定足数排除規定の効果が取締役の解任決議の定足数にも及ぶかというものであり、次の記事で私がたまたま問題提起していた点である。
cf.
平成20年5月21日付「取締役の解任決議における定足数について」
改めて検討すると、次のとおりであろう。
会社法第341条の規定が「特則」として置かれている(「会社法第309条第1項の規定にかかわらず」である。)ことからすると、また旧商法第256条ノ2の規定ぶりとは明らかに異なることからすると、取締役の選任及び解任の決議については、定款の定めによる普通決議の定足数排除の効果が及ばない、したがって、いずれの場合も特段の規定がなければ、会社法第341条の原則どおり(過半数)と解すべきである。
この点、「全株懇モデル(新訂2版)」(商事法務)49頁)では、取締役の選任に関してであるが、「普通決議に関する定足数排除があって取締役の選任につき定足数の特段の規定がない場合・・・定足数は3分の1と定めたものと解される(通説)。」と論じているが、妥当ではないと考える。旧法下の解釈に引きずられたものであろう。
もっとも、実務上の混乱を回避するためには、普通決議に定足数排除規定を設けている株式会社は、取締役の選任及び解任についても定款に定足数の特段の規定(会社法第341条の原則どおりであれば、その旨。)を置くのが手堅い選択というべきである。