tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『荒野にて』

2021-06-02 23:32:37 | 映画-か行

 アンドリュー・ヘイ監督、イギリス、2017年。原題は『Lean on Pete』。

 dTVで観た。

 原題の「リーン・オン・ピート」というのは競走馬の名前で、主人公の15歳の少年(青年?)の旅のきっかけでもあり、道連れでもある。

 アメリカの広大な土地が舞台のロードムービー、社会問題が要素としてあり、劇中BGMがほとんど使われていないところ。最近観た『ノマドランド』と作りがちょっと似ていた。「無口な映画」と勝手に部門分けしている、その部門に入るかな。

 それなりにアクの強い登場人物たちの中で(スティーブ・ブシェミが何ともワイルド!)、チャーリー・プラマー演じる主人公の素直さと透明感が際立っていた。

 彼の現実感を支えるのが、マージー伯母さんの記憶である。

 行き当たりばったりで当然厳しい逃避行ではあるんだけど、イヤな気持ちにはならなかった。観客として彼の犯罪を裁く気にはなれない。
 ちなみにチャーリー・プラマー氏は第74回ベネチア国際映画祭新人俳優賞を受賞したそう。

 これ以上書くとネタバレになってしまいそうなのでやめておこ。

 Wikipediaによればチャーリーの目指すワイオミング州は、「アルゴンキン語族インディアンの言葉で`大平原’」を意味するそうだ。ワイオミングに着くまでも相当だだっ広い荒野だったけど、アメリカって何て広くて平らなところなんだろう!(平らではないか…。)
 その広大さだけで、もう何をか語ることが出来るような景色に、少年と馬。


 
 


『風の谷のナウシカ』

2020-07-13 22:16:16 | 映画-か行
 すごく久しぶりに『風の谷のナウシカ』を観た。

 初めてがいつだったか、忘れてしまった。
 一番たくさん観たのは高校時代で、寮生活の上映会で何度も観た気がする。ナウシカとラピュタとカリオストロの城を、何回も繰り返し観たと思う。上映会は小学生から高校生まで一緒くただから、ジブリ作品しか選択肢が無かったのかも。ただ何度観ても楽しかった。
 上映会のスクリーンは小さめで、それでも目の前いっぱいにナウシカの世界が広がった。


 「一生に一度は、映画館でジブリを。」
 ということで、6月末からジブリ4作品のリバイバル上映が始まった。

 大きなスクリーンで、時代のせいか少し粗めに感じるアニメーションを観ていて、少し不思議な感じだった。


 ナウシカ達の住む世界が、今、どこかに存在しているような感じがするのだ。
 というか、実はずっと存在し続けていて、その場所ではやっぱりナウシカが戦ったり、空を飛んだり、オームが歩いたりしている。ずっと。
 まるでパラレルワールドのように。

 座って映画館のスクリーンを眺めていると同時に、何か違う次元の世界を生々しく覗いているような、次元の隙間にいるような感覚がした。


 懐かしい、というのもちょっと違う。

 あまりに何度も観たので、意識上はうろ覚えなのに、無意識が色んなことを記憶していたのかもしれない。

 「風の谷」は昔からあるし、今もあるし、これからもずっとあるんだな、と訳もなく実感(?)したという、変な経験だった。



 『風の谷のナウシカ』、宮崎駿監督、スタジオジブリ(トップクラフト)。1984年。




コミック版↓




※漫画版については、オリラジの中田さんがyoutubeチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」で、二部構成で詳しく語ってくれています。
とても楽しいので、良かったらこちらもどうぞ!
(前半)https://www.youtube.com/watch?v=WiqufoF_3hE
(後半)https://www.youtube.com/watch?v=kZr4m303AB4




 

 

『キューティー&ボクサー』

2014-03-15 21:06:14 | 映画-か行
 このタイトルで、どんな映画を思い浮かべるだろうか。私は最初、タイトルを耳にした時、「小さな女の子と犬のアニメ」だと思った。


 私の安直な想像力はとうてい現実について行かなかった訳だけど、悔しまぎれに言えば(悔しくないけど)、あながち間違ってはいない。
 キューティーは、乃り子さんの無垢なる分身だし、ギュウちゃんこと有司男さんの引き締まった体は、まるでボクサー犬のようではないか!
 なんてね。

 会話の妙があるとはいえ、二人が人生をどのようにして乗り越えてきたのか、とてもじゃないけどスクリーンからだけでは分からない。監督は二人のラブ・ロマンスを、お伽話のように仕上げることで、篠原有司男・乃り子芸術家夫妻のアートの一つ向こうに、もう一つ作品を抽出してみせた。5年間、週に一回通い続けたそうである。しかし80分という短い作品だ。


 まだまだ人生は続く。
 あっちの人生もこっちの人生も、あそこにも、ここにも。キューティーよ、もっともっといじわるになれ!
と言うと、語弊があるけれども。無防備さはアーティストの特権であり、はかない魅力である。


 ザッカリー・ハインザーリング 監督、2013年、アメリカ。


    

『恋するリベラーチェ』

2014-01-20 23:14:20 | 映画-か行
 マイケル・ダグラスに釘付け。マット・デイモンは、美形か?と言ったら美形ではないと思うけれど、それがまたなかなか。

 太ったり、痩せたり、整形したり(あれどうなってるの??)、大変です。

 トップ・エンターテイナー(ピアニスト)のリベラーチェには、登場のコンサートシーンから、惹きつけられる。「本当はマイケル・ダグラス」だとは、とても思えない。
 ゲイであること、かつらを被っていることをひた隠しにしながら、常に人目にさらされ、常に人を楽しませつづける人気者。想像するだに大変そうです。リベラーチェという人のことは、初めて知った。

 ソファにちょこんと座るマイケル・ダグラスの太ももに、マット・デイモンが脚を投げ出すシーンが良かったな。


 「わたしの醜さに目をつぶってくれる」「わたしを称賛してくれる」「わたしの善良さを信じてくれる」…  

 あ、ちょっと字幕と違うな。でもそういうことでした、リベラーチェにとっての愛は。

 泣かせるじゃないですか。

 
 スティーブン・ソダーバーグ監督、2013年、アメリカ。

 

 

 

『喜劇 女は度胸』

2013-11-21 22:51:21 | 映画-か行
 最近映画を観るのが、あまり楽しくないような感じだったけれど、この映画で復活した。
 やっぱり映画は楽しい。

 清川虹子、渥美清、倍賞美津子、河原崎建三、沖山秀子、花沢徳衛。

 最高だ!

 森崎東監督のデビュー作ということ、1969年。

 
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『クロワッサンで朝食を』

2013-09-21 17:52:19 | 映画-か行
 冒頭は、分厚く雪の積もったエストニアの夜だった。
 
 街が人を変えていく様子が楽しい。

 真昼の凱旋門の輝き、夜の橋とセーヌ川の灯り、早朝のエッフェル塔の影。アンヌの見るそれぞれの光景が本当に美しくて、映画の中の映画が始まるみたいだ。

 故郷で母を看取り、今度はパリで気難しい金持ち老女の家政婦となる。もう決して若くはないアンヌと、「元移民」のフリーダを、どのように見ればいいんだろう? 
 朝食は抜きか、フィリピン産のバナナを一本呑みこんでバタバタ出て行くような私には、孤独に描かれる二人さえ、憧れだ。

 大女優ジャンヌ・モローがすごい。素晴らしくチャーミング。お似合いのシャネルの衣装は自前らしい。
 人の居る場所が人を変え、そして幾つになっても人は変わるということを、大貫禄で教えてくれた、大女優さんたちに感謝しよう。

 原題は“Une Estonienne a Paris”。
 イルマル・ラーグ監督、2012年、フランス・エストニア・ベルギー。


           

『華氏451』

2013-09-04 20:26:02 | 映画-か行
 最近、SF映画を続けて観た。

 SFと言っても色々あるけど、私はどちらかと言うとロボットものは苦手(だからか『トランスフォーマー』もあんまり感激しなかった)。
 舞台は未来だったり、海底だったり、どこかの星だったり、どこでもない場所だったり。あくまで「現在」の「ここ」と比べるから楽しい。『マーズ・アタック』のように、どこかの星の方が、こちらに来ちゃうというのもあるけど。舞台は地球規模。

 SF嫌いで、「機械やロボットが出てくる映画には嫌悪感をおぼえる」らしい、トリュフォー監督の『華氏451』。ロボットは出てこないけど、でもこれSFだよね。シチュエーションSFって言うのかしら。


 『華氏451』、フランソワ・トリュフォー監督、1966年、イギリス。

 以前やっぱりSF映画を立て続けに観た時、その時一度観たけれど、忘れていた。今回観て、面白かった。
 映画の中の街やインテリアは、ドイツ統治下のフランスをモデルにしたらしい。未来のどこかと思うけれど、すごくキッチュ。懐かしいのは地上波テレビのアンテナ。今だって沢山あるけれど、こんな風に象徴的に使われはしない(と思う)。もう廃れたのだから、敵視もされない。部屋の中には、双方向性薄型テレビがあった。「家族」はその中にあって、テレビの出演者は「いとこ」らしい。

 華氏451度というのは、本が燃える温度。
 本を見つけて燃やすのは、消防士、firemanの役目だ。「昔消防士が火を消していただなんて!誰がそんな事言ったんだ?」
 燃やすっていうのは劇的だ。

 人々が、燃やされないように本を暗記して、自ら本になる。本の名前で呼ばれる「本人間」。そういえば体中に文字を書くという映画もあった。私は体に字も書かないし、一冊も暗記した本などないので、役に立たないな。

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『荒野の七人』と、『007/ロシアより愛をこめて』

2013-08-07 20:45:48 | 映画-か行
 新橋文化劇場にて、二本立て。

 一本目は『荒野の七人』、ジョン・スタージェス監督、1960年、アメリカ。

 『七人の侍』と比べれば、戦闘シーンの迫力が今一つな気がする。やっぱり、刀と銃だから。やっぱり飛び道具はちょっと。
 こちらで撃って、あちらに当たる。おおすごい腕前!という昂揚感もあるけれど、何て言うか距離がありすぎるからか、身が震えるような感じはどうもしない。ぶるっとしない。
 他の場面はとても面白かった。
 スティーブ・マックイーンが格好よいなあ。ユル・ブリンナーもスリムで。そのせいか、そうでないか、菊千代に変わるチコ(ホルスト・ブッフホルツ)には目が行きづらい。農民出身でガンマンに憧れる、というのは面白いキャラクターだけれど。しかし素朴な疑問だけど、西部の農民はみんな銃を持ってるんじゃないのかしら。ガンマンって、賞金稼ぎのこと?
 そう言えば、マックイーンはまだ始めの方のシーンで、ユル・ブリンナーに、これからどうするんだ?と聞かれ、雑貨屋でも手伝うさ、と答えていた。エプロンをつけて、レジを打ってるマックイーンを思い浮かべてしまった。(レジ、ないですけども、この時代。)



 お次は、『007/ロシアより愛をこめて』、テレンス・ヤング監督、1963年、アメリカ・イギリス。

 007。始まりでずいぶんわくわくする。まずアクションがあり、それからクレジット。格好良いなあ。女体を流れるクレジット。この部分でもう期待感がマックスに。
 でもその後、何だかソ連人らしき人も、英語を喋っていた。その辺で戸惑い、筋がつかみにくい。どうも、当時の政治的な配慮から原作とは少し変えているらしいけど、悪の組織「スペクター」が何だかよく分からないことに。
 でも筋よりも、音とか色とかセットとか、俳優さんだとか、スパイの小道具を見ていると、楽しかった。


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『風立ちぬ』

2013-07-27 21:37:36 | 映画-か行
 夏休みの子供たちで、映画館もわりと混雑。

 すごく久しぶりに、ジブリの作品を大画面で観た。
 『もののけ姫』以来だ。予告を観たら、観たくなった。ノンフィクションを下敷きにしていること、あと、主人公が女の子じゃないのも観たくなった理由の一つだ。女の子の話はもういいかなと。お、女の子じゃない!と楽しみにしていた。

 主人公の声(キャスト)がよくないっていう声が結構あるみたいだけれど、私は別に問題なかったな。庵野監督のことをあまり知らないので、顔が浮かんでくることもなかったし、そういえばそうだったなと、観終わってから思い出したくらい。むしろ、とつとつとした感じが主人公のキャラクターと合ってるなと、いたって満足していた。

 主人公のキャラクターと言えば、もちろん零戦の設計者なんだけれど、自分の世界に没頭して行く多少現実離れしたエゴイストぶりを、あれだけさわやかに描けるのは、やっぱり手腕でしょうね。まったく良い人です。いつもの女の子もそうだけれど、そういうキャラクターを描いてくれて、さらに観ていて面白いのだから、ありがたいものです。これは才能と特権と言える気がする。

 ただ一つ疑問もある。
 大正生まれの人たちが、あんなにチュッチュ、チュッチュ、キスするもんだろうか。何かと言えば、キスをする。主人公はドイツに研修に行ったりしていて、ハイカラで外国文化に慣れていると言えばそうだけれど、それでもちょっと他の場面にそぐわない感じもした。二人の情感を描かなくてはいけなくて、たとえばそういう風にしか描けなかったんだとすれば、そこにこの作品の限界を感じてしまう。なんてね。子供が見るには、しすぎだし(笑)。

 宮崎駿監督、2013年、日本。

     
     

『キートンの大列車追跡』と『パームビーチ・ストーリー』

2013-07-24 20:15:51 | 映画-か行
 シネマヴェーラで二本立てで観た。

 面白かった!いやいや!本当に両方とも面白かった。割と混雑していたけど、お客さんは皆(多分)声に出して笑ってたね。どうしてこーんなに面白いんだろ。やっぱり一人で観るより、大勢で観た方が面白いね。ついつい一人で観がちだけどね。一緒に行く人がいなかったりでね。今回は、私は旦那と一緒だったので、良かった良かった。でないと興奮の行き場に困るね。隣の人と握手しちゃうかもね。

 『キートンの大列車追跡』は、バスター・キートン監督、1926年、アメリカ。

 『パームビーチ・ストーリー』(『結婚5年目』)は、プレストン・スタージェス監督、1942年、アメリカ。ほんと洒落てる。出てくるのは変な人ばっかりで、だけど楽しい。役者さんが面白いなあ。

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