tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『華麗なるギャッツビー』

2013-07-07 20:53:02 | 映画-か行
 ああ、びっくりした。

 派手でびっくりした。2Dで観たけど、どうして3Dなんだろう?という疑問が見ているうちに、するすると解ける。ここが3Dの見所なんだろうなという場面が結構あった。でも2Dでも十分にお腹いっぱいなので、特に悔いはなし。

 昔原作を読んだ時は、ギャッツビーのことをどうも好きになれずじまいだった。
 そして今回、やっぱり好きとは言えない。けど彼の持っている輝き(ニック曰く)は、切なさとして胸に迫ってきた。泣きそうになった、タイタニック以来(ディカプリオ比)。

 持てるものを失わないよう、全力で立場を守る人たちと(意識的でも、無意識的でも)、「先へ先へと後退していく狂騒的な未来」に手を伸ばそうとする人たちと、どちらの輝きが魅力的かと言えば、私には後者である。「後退していく狂騒的な未来」とは、ギャッツビーにとっての<緑の光>であり、<過去>であり、どちらも手をすり抜けるものなのかもしれないけれど。

 そして、『ギルバート・グレイプ』や『マイ・ルーム』のディカプリオは、本当にきれいだったなと思い出す。

 バズ・ラーマン監督、2013年、アメリカ。
 

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『かぞくのくに』

2013-06-26 20:38:50 | 映画-か行
 旦那がDVDを借りてきてくれたので、観た。

 こうゆう映画って、ちょっと観るきっかけが難しいんじゃないかと思う。
 なんでなら、家族という普遍的なものを描いているようでいて、やっぱりその状況は特殊だと言わざるを得ない。かと言って、文化的なことや政治的なことを描いているわけでもない。

 映画自体は、普遍的な、普通の家族を描こうとしているように見えた。そしてそれは少なくとも私に関しては、とても成功しているように見えた。

 観るきっかけが難しいというのは、簡単にカテゴリーにくくれないということだ。

 
 在日朝鮮人や集団帰国のことを描いている映画はある。ただ何か派手なもの、「境界」や「越境」を見せるのではなくて、ただここに、そこに暮らしているということをベースに、そこから決して離れない映画は、他にあまりないんじゃないかということだ。私が知らないだけという可能性を脇におけば。
 この映画は特殊だと思う。

 ここには日本国籍の日本人はほぼ出て来ない。在日か、在北朝鮮かという差異さえ、実はそう大きなものではないよう。描かれているのは、「人の力ではどうしようもない、運命のようなもの」と、「それに挑むもの、希望」という、それぞれ普遍的なものだ。ただそれが現れ出る過程が、表される過程が、とても特殊なのだ。
 カテゴリーにくくりずらく、観るきっかけが難しい。誰かに「どういう映画だった?」と聞かれたら説明しずらいけど、どうしよう。

 ヤン・ヨンヒ監督、2012年、日本。

   
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『汚れなき祈り』

2013-06-24 19:50:01 | 映画-か行
 クリスティアン・ムンジウ監督、2012年、ルーマニア・仏・ベルギー。

 2005年にルーマニアで起こった「悪魔祓い事件」を題材にした作品で、事件の舞台は丘の上の修道院。

 色んな人たちと色んな場所が、ほぼ同じトーンで描かれてた。
 なんでそんなことをあえて思うのかと言えば、まるで隣同士のような近い場所に、信じるものが全く違う、世界の違う人たちが普通に暮らしているからだ。その中で丘の上だけが切り取られてるんじゃなくて、民家も、病院も、薄いイコールで繋がっているように見えた。そこには、お互い行き来することの不自然さが全くない。だから、それが不思議。

 そんな中で行きあぶれてしまったのは、アリーナ彼女一人なのかもしれないな。
 どうして言葉にできなかったんだろうと、それが悔しいような、哀しいような。「普通の言葉でしゃべって!」と怒鳴った時の命綱から手を滑らせたかのような焦りと苛立ちが、思い返すと哀しい。

 草を踏み、雪を踏んでいく、修道院への丘を上る道のりが、とても美しかった。

   



 


『CUT』

2013-06-05 21:54:07 | 映画-か行
 以前、同じ監督の、『駆ける少年』というのを観たけど、そっちの方が好きだな。あちらは劇場で、こちらはDVDで観たので、もしかして劇場で観てたら違う印象かもしれないけど。

 どちらも、すごくエネルギッシュだ。エネルギーに直に触れたいという感じ。そこのところは似ているけど、何にしても、殴られ続けるのはやっぱり閉塞感があるような。アミール・ナデリ監督、2011年、日本。



 最近、スピルバーグ監督の87年作品、『太陽の帝国』のジム少年が、クリスチャン・ベイルだったことが分かって嬉しい。
 あのかすれ声は印象的で、記憶の彼方に飛んで行った少年が、元気だったことが分かったような幸せ。そう言えば、目元に面影がある気がする。

 

『孤島の王』

2013-05-15 21:19:03 | 映画-か行
 面白かった。
 最初にたしか、島の遠景があったと思うんだけど、どうだったかしら。その後は島の全貌も分からないし、少年矯正施設の全体像もよく分からない。
 ただただ、白い雪と、白い息と、少年たちと、あとは少しの大人がうごめいていて、主人公が語るクジラの物語(未完)と、クジラの映像がところどころに差し挟まれる。
 DVDで観たけれど、映画館で観たかったな。

 1915年、ノルウェーのバストイ島というところの少年矯正施設で起こった、脱走事件を元にした映画だ。主人公が、某お笑い芸人に見えてきて、そういうのは本当にどうしようもないなと自分で自分にほとほと困ってしまう。

 いつ死人が出てもおかしくないような状況で、実際に死人が出てからの、憎しみと希望と、少年たちの恐れが静かに描かれる。孤島の王、というタイトルは淋しすぎないか。敗れ去ることを前提とした美学のようで、あまり好きじゃない(要するにハッピーエンドが好きなんだけど)。歴史はもう動かないかもしれないけど、物語なら動かせる。文盲の主人公の語るクジラの物語は、話すたびに現実を映し出すようになり、動いていった。

 マリウス・ホルスト監督、2010年、ノルウェー・フランス・スウェーデン・ポーランド。

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『合衆国最後の日』

2013-04-13 20:14:30 | 映画-か行
 『カルフォルニア・ドールズ』に続いて、こちらも観に行く。
 面白かったし、好きだったので、劇場で買った『ロバート・オルドリッチ読本1』を読む。こちらはそんなに面白い気はしないけど。

 始まり方と終わり方が、とても格好よくて好きだった。

 77年に作られた映画で、舞台は81年の設定。単にこの頃の手法が好きなのかもしれないけど、あまり比較対象がないので(自分に)、分からない。
 オープニングにクレジットが入る。バックは、逆光の自由の女神を、斜め後ろから写した写真だった。動画ではない。向こうの波は動かないし、夕日も動かず。音楽と共に、気持ちよすぎて30分くらいこのままでいいんじゃないかと思った。

 ラストはカメラが引いていく。
 どんどんどんどん引いていく。芝生の上の真っ直ぐな道。距離感が、観ている私からどんどん人物を引き離して行く。合衆国は最後ではないんだなと、芝生の上の無機質な道を見ながら思った。


 『ロッキー』のポーリーン役、バート・ヤングが(ちょっと)活躍している。
 まくしたてているし、視線の焦点がコンマ以下で動いていてすごい。役柄の印象と違ってこの人は、歴史小説を出版しているらしい(読本より)。歴史好きなのか。

 1977年、アメリカ・西ドイツ。ロバート・アルドリッチ監督。

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『カルフォルニア・ドールズ』

2013-04-10 21:40:50 | 映画-か行
 何か面白いことはないかな。あった。『カルフォルニア・ドールズ』、ロバート・アルドリッチ監督、1981年アメリカ。

 この映画を観る限り(他のは観たことがない)、この監督は、最高の皮肉屋なんじゃないか。な感じがする。

 皮肉が皮肉すぎて、ストレートになりかかっている。
 だといいなあ。
 だといいなあ。
 なぜこの、半裸の流浪の天使たちと格言好きのマネージャーを描いたのか。泣けるじゃないか!泣けるじゃないか!それ以外に言うことが見つからない。(だからって二度言うなって)