いつまでも不貞腐れているわけにもいかない
話だけでも聞いてみようと思うと同時に
子犬のような小さな狛犬たちに質素な小箱を差し出される
幼く、拙い文字で宝箱と書かれてたその小箱
触れていい物かと思案するも、その小箱から柔らかな温もりを感じ、
そっと、開けてみる
あぁ、と吐息にも似た声だけが出る。
小箱の中身は何も入ってはいない
正確には物質的なモノがだ
入っていたのは、
人々の願いや想いが
カラフルな色をした球体で頭の中を駆け巡る
淡く、優しい色のした自分ではない誰かのために祈る想い
黒く、禍々しい色の怨念
不安や悲しみから来る願い
どの色の球体に触れても、
その人の人生観、その時の感情や状況などが心を締め付ける
ふと我に返り、周りを見渡すと先ほどまでの神々の姿はない
代わりに居たのは、小学生低学年くらいの子供?
声をかけようと息を吸った際に理解する存在
恐らく、あの小箱の蓋を開けた瞬間から
物質的な現実空間から目に見えない空間の狭間に居るような感じだった
この子供は、その狭間の住人だ
神でも人間でもない、それでいて両方の空間を紡ぐ存在
宝箱と書かれた小さな小箱の持ち主だ