- バラの原種、即ち野生種は北半球のみに分布。その数は約150種と言われている。大雑把に、日本に20種、ヨーロッパに20種、北アメリカに20種、残りは中近東から中国に存在。中国が多い。
バラの原種の分類って、どうなのか? 素人なので勉強してみよう!
生物学的には、バラ属は4つの亜属と10の節に分けられ、その下に種小名で表している。これから4つの亜属と10の節の概要を見てみる。バラ属は全て=Rosa
●4つの亜属
バラ属 Rose ❶フルテミア亜属(Hulthcmia) →1節
❷ローザ亜属(Rosa) →10節
❸プラティロードン亜属(Platyrhodon) →1節
❹へスペロードス亜属(Hesperhodos) →1節
とバラ属は区分される。次に❶〜❹の節についてみてみよう。◉代表種
❶フルテミア亜属(Hulthcmia) 中国西部〜西アジア 原産
この亜属には
◉ロサ・ペルシカ(R.persica) 1種類のみです
☞バビロンローズの名で新種が出ているそうだ。ブロッチが特徴。
❷ローザ亜属(Rosa) この亜属は10の節なので後述
❸プラティロードン亜属(Platyrhodon)
◉ロサ・ヒルトゥーラ(サンショウバラ) R.hirtula. 日本原産
※バラ属の中で唯一樹木状になり、葉が山椒に似ている事から命名
◉ロサ・ロックスブルギー R.roxburghii. 中国原産
❹へスペロードス亜属(Hesperhodos)
◉ロサ・ステラータ R.stellata 北アメリカ原産
◉ロサ・ミヌティフォリア R.minutifolia. 北アメリカ原産
❷ローザ亜属(Rosa) 10節です
❷ローザ亜属(Rosa) 10節です
1) ピンピネリフォリア節 Pimpinellifoliae
◉ロサ・スピノシッツマ R.spinosissima. ヨーロッパ原産
◉ロサ・フォエティダ R.foetida. イラン、イラク、アフガニスタン原産
※現代バラの黄色を導入した種である。黄色の祖である。(写真)
◉ロサ・プリムラ R.primula. 中国原産
◉ロサ・ヒューゴニス R.hugonis 中国原産
2)ガリカ節 Gallicanae
以下3種が古代から栽培、利用されていたと考えられている
◉ロサ・ガリカ R.gallica. 中近東〜西アジア
※最も古いヨーロッパの野生種で、赤いバラの祖
◉ロサ・ダマスケナ (R.gallica × R.Phoenicia)交雑
※ダマスク香の芳香品種のあるバラの誕生に貢献
◉ロサ・アルバ (R.damasccena × R.canina)交雑
3)カニーナ節 Caninae
◉ロサ・カニーナ R.canina. ヨーロッパ原産
※ドッグローズと呼ばれるヨーロッパの園芸品種の台木
◉ロサ・エグランテリア R.eglanteria. ヨーロッパ原産
◉ロサ・グラウカ R.glauca. ヨーロッパ原産
4)カロリナ節 Carolinae
◉ロサ・カロリーナ R.carolina. 北アメリカ原産
◉ロサ・フォリオローサ R.foliolosa. 北アメリカ
◉ロサ・ニティダ R.nitida. 北アメリカ
◉ロサ・ヴァージニアーナ R.virginiana. 北アメリカ
5)ローザ節(キンナモメア節)
◉ロサ・ルゴサ(ハマナシ) R.rugosa. 日本、東南アジア原産
※耐寒性のあるバラの誕生に貢献
◉ロサ・ニッポネンシス(タカネバラ)R.nipponensis. 日本原産
◉ロサ・アキクラーリス(オオタカネバラ)R.acicularis. 日本、シベリア
◉ロサ・ダヴリカ・アルペストリス(カラフトイバラ)R.davurica alpestris 日本
◉ロサ・キンナモメア R.cinnamomea. ヨーロッパ原産
◉ロサ・ペンデュリーナ R.pendulina. ヨーロッパ原産
6) シンスティラ節 Synstyllae
◉ロサ・ムルティフローラ(ノイバラ) R.multiflora 日本原産
※ランブラーローズやポリアンサローズの作出に貢献。房咲きの祖
◉ロサ・ルキアエ(テリハノイバラ) R.luciae. 日本原産
※19世紀末ヨーロッパに渡り、つるバラの誕生に貢献した
◉ロサ・オノエイ(ヤブイバラ) R.onoei. 日本原産
◉ロサ・サンブキナ(ヤマイバラ) R.sanbucina. 日本原産
◉ロサ・センペルウイレンス R.sempervirens 中国原産
◉ロサ・フィリペス R.filipes. 中国原産
7) インディカ節 Indicae
◉ロサ・キネンシス R.chinensis. 中国原産
※四季咲き性のあるバラの誕生に貢献
◉ロサ・キネンシス・スポンターネア R.chinensis spontanea 中国原産
◉ロサ・ギガンティア R.gigantean 中国原産
※剣弁の花弁と紅茶の香りのあるバラの誕生に貢献
8)バンクシア節 Banksianae
◉ロサ・バンクシアエ(シロモッコウバラ)R.banksianae. 中国原産
◉ロサ・バンクシアエ・ノルマリス R.banksiae normalis. 中国原産
◉ロサ・バンクシアエ・ルテスケンス R.banksiae lutescens. 中国原産
◉ロサ・キモーサ R.cymosa. 中国原産
9)ラエウィガータ節 Laevigatae
◉ロサ・ラエウィガータ(ナニワイバラ) R.laevigata. 原産中国
10)ブラクテアタ節 Bracteata
◉ロサ・ブラクテアタ(カカヤンバラ) R.bracteata 沖縄、中国原産
◉ロサ・クリノフィラ R.clinophylla. インド原産
以上、植物学的の分類でした。基本種といえる。
今日の栽培されているバラの源流、元になっているのは「ロサ・ガリカ」「ロサ・キネンシス」「ロサ・ギガンティア」「ロサ・フェティダ」「ロサ・ムルティフローラ」「ロサ・ルキアエ」などの十数種といわれている。古代から先人達が美しい野生種を選び、栽培し、そして選抜改良を重ねた結果、いくつかの栽培原種が残ったことになる。
野生種→オールドローズ→現代バラと品種改良の歴史である。
◉原種(Species)のバラは人の手が加えられていない野生バラで、基本種に、自然交雑種・亜種、変種、枝変わり・選抜個体も含めて原種に分類される。
■余談
◉ハイブリッド・スピーシーズ Hybrid Species は、野生種を親とした野生交雑種をいう。「原種系統」と分類されている。
例えば、ロサ・ルゴサを親にして改良したものはハイブリッド・ルゴサ(HRg)、ロサ・モスカータを親としてハイブリッド・ムスク(HMsk)などと呼び分類している。以下にアップしてみる 【 】は略記号
◆ハイブリッド・エグランテリア 【Heg】Hybrid Eglanteria
☞交雑親: ロサ・エグランテリア(ロサ・ルビキノーサ)
◆ハイブリッド・カニーナ 【Hcan】Hybrid Canina
☞交雑親: ロサ・カニーナ
◆ハイブリッド・グラウカ 【Hglau】Hybrid Glauca
☞交雑親: ロサ・グラウカ
◆ハイブリッド・コルデシー 【Hkor】Hybrid Kordesii
☞交雑親: ロサ・コルデシー
◆ハイブリッド・スピノシッシマ 【HSpn】Hybrid Spinosissima
☞交雑親: ロサ・スピノシッシマ
◆ハイブリッド・セティゲラ 【Hset】Hybrid Setgera
☞交雑親: ロサ・セティゲラ
☞交雑親: ロサ・セティゲラ
◆ハイブリッド・フェティダ 【HFt】Hybrid Foetida
☞交雑親: フェティダ
◆ハイブリッド・フゴニス 【Hhug】Hybrid Hugonis
☞交雑親: ロサ・フゴニス
◆ハイブリッド・ブラクテアータ 【HBc】Hybrid Bracteata
☞交雑親: ロサ・ブラクテアータ
◆ハイブリッド・フルテミア Hybrid Hulthemia
☞交雑親: フルテミア
◆ハイブリッド・マクランタ Hybrid Macrantha
☞交雑親: ロサ・マクランタ
◆ハイブリッド・ムスク 【HMsk】 Hybrid Musk
☞交雑親: ロサ・モスカータ
◆ハイブリッド・モエシー 【Hmoy】Hybrid Moyesii
☞交雑親: ロサ・エモシー
◆ハイブリッド・ルゴサ 【HRg】Hybrid Rugosa
☞交雑親: ロサ・ルゴサ(ハマナシ)
以上
⚫︎オールドローズ略記号リスト
🟥原産地別の原種 主なもの
- ヨーロッパの原種
- ロサ・アルバ(Rosa alba)
- ロサ・カニナ(Rosa canina)
- ロサ・ガリカ(Rosa gallica)
- ロサ・キナモメナ(Rosa cinnamomea)
- ロサ・グラウカ(Rosa glauca)
- ロサ・ケンティフォリア(Rosa centifolia)
- ロサ・スピノシッシマ(Rosa spinosissma)
- 中近東の原種
- ロサ・フェティダ(Rosa foetida)
- ロサ・フェティダ・ビコロール(Rosa foetida bicolor)
- ロサ・フェティダ・ペルシアナ(Rosa foetida persiana)
- ロサ・フェッチェンコアナ(Rosa fedtschenkoana)
- ロサ・ダマスケナ(Rosa damascena)
- 中国の原種
- コウシンバラ(Rosa chinensis)
- グリーンローズ var. Viridiflora - 花弁・雄蕊・雌蕊が葉に変化した品種、花期は長いが種子と花粉が出来ない。
- ナニワイバラ(Rosa laevigata)
- ロサ・ギガンティア(Rosa gigantea)
- ロサ・プリムラ(Rosa primula)
- ロサ・マリガニー(Rosa mulliganii)
- ロサ・セリカナ・プテラカンサ(Rosa sericana pteracantha)
- ロサ・ユゴニス(Rosa hugonis)
- ロサ・バンクシアエ・ルテア(Rosa banksiae lutea)(モッコウバラ)
- ロサ・キネンシス(Rosa chinensis)
- コウシンバラ(Rosa chinensis)
- 日本の原種
- イザヨイバラ(Rosa roxburghii)
- オオタカネバラ(Rosa acicularis)
- サンショウバラ(Rosa hirtula)
- タカネイバラ(Rosa nipponensis)
- テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)
- ノイバラ(Rosa mulitiflora)
- ハマナス(Rosa rugosa) 英: Japanese Rose, Rugosa Rose
- サクライバラ(Rosa uchiyamana)
- モリイバラ(Rosa jasminoides)
- フジイバラ(Rosa fujisanensis)
- 北米の原種
- ロサ・キンナモメア(Rosa cinnamomea)
- ロサ・ニティダ(Rosa nitida)
- ロサ・カリフォルニカ(Rosa californica)
- ロサ・ヴィルギニアナ(Rosa virginiana)
- ロサ・パルストリス(Rosa palustris)
品種改良に使用された原種
⚫︎ロサ・ムルティフローラ(ノイバラ)(Rosa mulitiflora)
- ロサ・ウィクライアナ (テリハノイバラ)(Rosa wichuraiana)
- コウシンバラ(Rosa chinensis)
- ロサ・ガリカ(Rosa gallica)
- ロサ・アルバ(Rosa alba)
- ロサ・ダマスケナ(Rosa damascena)
- ロサ・ケンティフォリア(Rosa centifola)
- ロサ・フェティダ(Rosa foetida)
- ロサ・モスカータ(Rosa moschata)
- ロサ・ギガンティア(Rosa gigantea)