~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
野鳥の移動で地球温暖化による脅威の進行が明らかに
種の越冬地の北上、政策修正の必要性を示す
2009年2月10日、米国ワシントンDC発─北米に生息する野鳥が北上や内陸部へ
の移動をしていることが何千人もの市民による観察で確認され、地球温暖化が自
然体系に深刻な影響を及ぼしていることを示す強力な新たな証拠となることが、
全米オーデュボン協会(以下オーデュボン)所属の科学者による新たな分析で明
らかになった。この調査結果を受け、広範囲に広がっている生態系の混乱と闘う
ために政策を抜本的に修正する必要性が示された。
オーデュボンでは、クリスマス・バード・カウント(訳注:毎年、クリスマス前
後に全米の愛鳥家が野鳥の個体数を観測する行事)で市民が観測して集めた過去
40年分のデータを元に分析を行い、米国で越冬する305の様々な野鳥種のうち58
%が1966年に比べて大幅に北上していることを突き止めた。中には数百キロメー
トル北上した種もいる。このような移動は、森林に生息する野鳥や餌台を利用す
る野鳥など適応力の高い鳥種の70%以上を含む、あらゆる鳥種で観察されたとい
う。
一方、草原に生息する野鳥種で同じ傾向をみせたのは38%にとどまっている。こ
の事実は、それらの野鳥種がひどく枯渇してしまった生息地から離れられない状
況を反映していると同時に、それらの野鳥種が「生息地の喪失」と「気候変動へ
の適応」という重圧の組み合わせによる二重の脅威にさらされている現状を示し
ている。
各野鳥種の個体数変化は珍しくなく、変動もすれば、その原因も多様である。し
かし、「177もの野鳥種による継続的な移動傾向は長期的な冬の温度上昇と密接
に相関しており、気候変動との関連性に議論の余地がないことは明らかです」と
オーデュボンの科学者は語っている。
「野鳥は、人類による締め付けがいかに自然の均衡を揺るがし、生態系に混乱を
引き起こしているかを、人間がなんとか予測し、理解できるような形で示してい
るのです」と本報告書の共著者でオーデュボン野鳥保護部長のグレッグ・ブッチャー
博士は語る。「常識的に考えれば、私たちが今すべきことは、地球温暖化の原因
と影響をできるだけ抑制することであり、回避できない混乱に適応できるよう政
策を立てることです」
移動傾向を示さなかった野鳥種も含め、40年にわたる野鳥全種の移動距離は平均
約56キロメートルであった。一方、広範囲にわたる移動の全体図や一部の種が全
く移動しなかったという事実によって、潜在的問題も明らかになった。
・ムラサキマシコ、マツノキヒワ、カナダコガラは、カナダ北方林へと大幅に北
上しており、40年以上にわたって生息範囲はそれぞれ約693キロメートル、約461
キロメートル、約446キロメートル移動したと見られている。温暖化と開発が続
けば、北方林やそこに生息する種に悪影響が及ぶと予測されている。
・ウミアイサ、クビワキンクロ、アメリカガモは通常南部州で観察されるが、冬
の水温が上昇したのを利用し、生息範囲をそれぞれ約507キロメートル、約350キ
ロメートル、約291キロメートル北上させたと推測されている。それでも、地球
温暖化が悪化するにつれて北米の多くの地域で拡大すると予測されている干ばつ
によって悪影響を受ける可能性がある。
・草原に生息する26の野鳥種のうち、9種が南下したのに対し、大幅に北上した
のは10種のみであった。ヒガシマキバドリ、オジロヒメドリ、アナホリフクロウ
といった種は、穀物畑や牧草地、干し草畑など人間による激しい土地利用転換が
進み、必要とする草原の生息域が消滅してしまったために、北部の気温がより温
暖になっても北上できないかもしれない。地球温暖化と人間による継続的な草原
乱用が相まって、草原に生息する野鳥種の個体数はさらに減少し続けることにな
るだろう。
「地球温暖化は、多くの野鳥種に絶滅をも含む恐ろしい結果をもたらすだろうと
専門家は予測しています。今回の分析は、その恐ろしい結果に向かうプロセスが
すでに始まっていることを示しています」とオーデュボンのジョン・フリッカー
会長は警告する。「私たちは、野鳥と地球に対して規制のない実験が行われてい
るのを目の当たりにしているのです。」
ブッチャー博士は、適した餌や生息地を求めて長距離移動をする野鳥は多くいる
が、問題は、気候変動に直面しながら、野鳥が生息地や餌、あるいは運が尽きて
しまう前にどの程度移動できるかである、と説明する。同博士はさらに、「多く
の野鳥種にとって長期的展望はよくありません。短期的にも、移動し過ぎてしまっ
た野鳥を1度でも厳冬が襲えば、壊滅的な影響を与える可能性があります」と話
す。
オーデュボン・カリフォルニアが発表した未来志向の新調査も全国的な結果を裏
付ける内容だ。カリフォルニア州原産鳥種のうち約80種の地理的生息域が、気候
変動によって今後数十年間にわたり大幅に減少すると予測している。
同調査では、科学モデルを使い、今の時代に講じられる温室効果ガス排出量削減
対策次第で、カリフォルニア州において野鳥の生息地が失われる規模が大きく左
右されることも示している。どのような気候変動対策がとられるかによって、例
えば、カリフォルニアブユムシクイの生息域で失われる割合は最大で56%、最小
で7%になるという。サンフランシスコ湾地域で人気の高いクロイロコガラの場
合、失われる生息域の割合は最大で49%、最小で16%と予測されている。
オーデュボン・カリフォルニアの調査プロジェクトを活用し、これらの野鳥が50~
100年後にどこに生息しているかについても、地理情報システム(GIS)の詳
細地図で示している。この調査結果があれば、政策立案者や土地管理担当者は、
避けられない変化に対応できるよう生息地を保全するための投資をしながら、地
球温暖化による深刻な影響を緩和する努力を強化しやすくなるはずだ。
「鳥類は人間に緊急行動を求める警告を今再び送っているのです」とフリッカー
氏は付け加える。「一般の人々は氷河の融解や天候の変動については知っていま
す。そして今、ドアを開けて目にする、あるいは目にしない鳥でもって、地球温
暖化が与えている影響を感じられるようになりました。これらの鳥は私たちにとっ
て、地球温暖化の抑制や生息地保護のために今すぐ何かすべきだと警告する『炭
鉱のカナリア』なのです。」
市民ができる重要な行動としては、オーデュボンのウェブサイトAudubon.orgに
リストしてあるものもあるし、積極的な国の政策的措置求める全国的な請願書に
署名するという方法もある。オーデュボン・カリフォルニアが示したような未来
志向の予測に基づく生息地保護の取り組みも必要不可欠だ。
野鳥の生息地はすでに、開発やエネルギー生産、農業拡大、その他の人間による
土地利用によって包囲攻撃されている。鳥の個体数を維持し、人間の健康、経済
的繁栄、生活の質にとって必須となる環境的利益を提供できるよう、生息地の保
護・回復策を強化する必要があるのだ。
今回野鳥が示した新たな証拠が、4,000万人以上いる米国内の自称野鳥観察家や、
今回の調査の基礎データとなったクリスマス・バード・カウントに貢献した何万
人もの愛鳥家たちの注目を集め、彼らが行動を起こす起爆剤になると、オーデュ
ボンは期待している。このクリスマス・バード・カウントは、鳥の個体数の推移
を過去109年間、連続的に記録した最も歴史ある個体数調査である。
「私たちは、市民参加による科学で、地球温暖化が今米国に与えている影響をよ
く理解できるようになりました。その影響を緩和できるのは市民による行動しか
ないのです」とブッチャー氏は語っている。
野鳥の移動で地球温暖化による脅威の進行が明らかに
種の越冬地の北上、政策修正の必要性を示す
2009年2月10日、米国ワシントンDC発─北米に生息する野鳥が北上や内陸部へ
の移動をしていることが何千人もの市民による観察で確認され、地球温暖化が自
然体系に深刻な影響を及ぼしていることを示す強力な新たな証拠となることが、
全米オーデュボン協会(以下オーデュボン)所属の科学者による新たな分析で明
らかになった。この調査結果を受け、広範囲に広がっている生態系の混乱と闘う
ために政策を抜本的に修正する必要性が示された。
オーデュボンでは、クリスマス・バード・カウント(訳注:毎年、クリスマス前
後に全米の愛鳥家が野鳥の個体数を観測する行事)で市民が観測して集めた過去
40年分のデータを元に分析を行い、米国で越冬する305の様々な野鳥種のうち58
%が1966年に比べて大幅に北上していることを突き止めた。中には数百キロメー
トル北上した種もいる。このような移動は、森林に生息する野鳥や餌台を利用す
る野鳥など適応力の高い鳥種の70%以上を含む、あらゆる鳥種で観察されたとい
う。
一方、草原に生息する野鳥種で同じ傾向をみせたのは38%にとどまっている。こ
の事実は、それらの野鳥種がひどく枯渇してしまった生息地から離れられない状
況を反映していると同時に、それらの野鳥種が「生息地の喪失」と「気候変動へ
の適応」という重圧の組み合わせによる二重の脅威にさらされている現状を示し
ている。
各野鳥種の個体数変化は珍しくなく、変動もすれば、その原因も多様である。し
かし、「177もの野鳥種による継続的な移動傾向は長期的な冬の温度上昇と密接
に相関しており、気候変動との関連性に議論の余地がないことは明らかです」と
オーデュボンの科学者は語っている。
「野鳥は、人類による締め付けがいかに自然の均衡を揺るがし、生態系に混乱を
引き起こしているかを、人間がなんとか予測し、理解できるような形で示してい
るのです」と本報告書の共著者でオーデュボン野鳥保護部長のグレッグ・ブッチャー
博士は語る。「常識的に考えれば、私たちが今すべきことは、地球温暖化の原因
と影響をできるだけ抑制することであり、回避できない混乱に適応できるよう政
策を立てることです」
移動傾向を示さなかった野鳥種も含め、40年にわたる野鳥全種の移動距離は平均
約56キロメートルであった。一方、広範囲にわたる移動の全体図や一部の種が全
く移動しなかったという事実によって、潜在的問題も明らかになった。
・ムラサキマシコ、マツノキヒワ、カナダコガラは、カナダ北方林へと大幅に北
上しており、40年以上にわたって生息範囲はそれぞれ約693キロメートル、約461
キロメートル、約446キロメートル移動したと見られている。温暖化と開発が続
けば、北方林やそこに生息する種に悪影響が及ぶと予測されている。
・ウミアイサ、クビワキンクロ、アメリカガモは通常南部州で観察されるが、冬
の水温が上昇したのを利用し、生息範囲をそれぞれ約507キロメートル、約350キ
ロメートル、約291キロメートル北上させたと推測されている。それでも、地球
温暖化が悪化するにつれて北米の多くの地域で拡大すると予測されている干ばつ
によって悪影響を受ける可能性がある。
・草原に生息する26の野鳥種のうち、9種が南下したのに対し、大幅に北上した
のは10種のみであった。ヒガシマキバドリ、オジロヒメドリ、アナホリフクロウ
といった種は、穀物畑や牧草地、干し草畑など人間による激しい土地利用転換が
進み、必要とする草原の生息域が消滅してしまったために、北部の気温がより温
暖になっても北上できないかもしれない。地球温暖化と人間による継続的な草原
乱用が相まって、草原に生息する野鳥種の個体数はさらに減少し続けることにな
るだろう。
「地球温暖化は、多くの野鳥種に絶滅をも含む恐ろしい結果をもたらすだろうと
専門家は予測しています。今回の分析は、その恐ろしい結果に向かうプロセスが
すでに始まっていることを示しています」とオーデュボンのジョン・フリッカー
会長は警告する。「私たちは、野鳥と地球に対して規制のない実験が行われてい
るのを目の当たりにしているのです。」
ブッチャー博士は、適した餌や生息地を求めて長距離移動をする野鳥は多くいる
が、問題は、気候変動に直面しながら、野鳥が生息地や餌、あるいは運が尽きて
しまう前にどの程度移動できるかである、と説明する。同博士はさらに、「多く
の野鳥種にとって長期的展望はよくありません。短期的にも、移動し過ぎてしまっ
た野鳥を1度でも厳冬が襲えば、壊滅的な影響を与える可能性があります」と話
す。
オーデュボン・カリフォルニアが発表した未来志向の新調査も全国的な結果を裏
付ける内容だ。カリフォルニア州原産鳥種のうち約80種の地理的生息域が、気候
変動によって今後数十年間にわたり大幅に減少すると予測している。
同調査では、科学モデルを使い、今の時代に講じられる温室効果ガス排出量削減
対策次第で、カリフォルニア州において野鳥の生息地が失われる規模が大きく左
右されることも示している。どのような気候変動対策がとられるかによって、例
えば、カリフォルニアブユムシクイの生息域で失われる割合は最大で56%、最小
で7%になるという。サンフランシスコ湾地域で人気の高いクロイロコガラの場
合、失われる生息域の割合は最大で49%、最小で16%と予測されている。
オーデュボン・カリフォルニアの調査プロジェクトを活用し、これらの野鳥が50~
100年後にどこに生息しているかについても、地理情報システム(GIS)の詳
細地図で示している。この調査結果があれば、政策立案者や土地管理担当者は、
避けられない変化に対応できるよう生息地を保全するための投資をしながら、地
球温暖化による深刻な影響を緩和する努力を強化しやすくなるはずだ。
「鳥類は人間に緊急行動を求める警告を今再び送っているのです」とフリッカー
氏は付け加える。「一般の人々は氷河の融解や天候の変動については知っていま
す。そして今、ドアを開けて目にする、あるいは目にしない鳥でもって、地球温
暖化が与えている影響を感じられるようになりました。これらの鳥は私たちにとっ
て、地球温暖化の抑制や生息地保護のために今すぐ何かすべきだと警告する『炭
鉱のカナリア』なのです。」
市民ができる重要な行動としては、オーデュボンのウェブサイトAudubon.orgに
リストしてあるものもあるし、積極的な国の政策的措置求める全国的な請願書に
署名するという方法もある。オーデュボン・カリフォルニアが示したような未来
志向の予測に基づく生息地保護の取り組みも必要不可欠だ。
野鳥の生息地はすでに、開発やエネルギー生産、農業拡大、その他の人間による
土地利用によって包囲攻撃されている。鳥の個体数を維持し、人間の健康、経済
的繁栄、生活の質にとって必須となる環境的利益を提供できるよう、生息地の保
護・回復策を強化する必要があるのだ。
今回野鳥が示した新たな証拠が、4,000万人以上いる米国内の自称野鳥観察家や、
今回の調査の基礎データとなったクリスマス・バード・カウントに貢献した何万
人もの愛鳥家たちの注目を集め、彼らが行動を起こす起爆剤になると、オーデュ
ボンは期待している。このクリスマス・バード・カウントは、鳥の個体数の推移
を過去109年間、連続的に記録した最も歴史ある個体数調査である。
「私たちは、市民参加による科学で、地球温暖化が今米国に与えている影響をよ
く理解できるようになりました。その影響を緩和できるのは市民による行動しか
ないのです」とブッチャー氏は語っている。