日本の歴史を紐解いてみよう。日本列島が今のように海に囲まれた島国になったのは、約2万年前の氷河期の終わりで、気温が上昇し海水面が約150m上昇したため大陸から切り離された。列島となった日本には、旧石器時代後期(縄文時代)から東南アジアから北上してきた古モンゴロイドの先住民が住んでいた。
この人々が縄文人で、「縄文文化」が日本列島で発展したが、その後、中国大陸の揚子江付近に住んでいた人々が渡来してくる。この人々が渡来系弥生人で、稲作文化と金属器文化を持ち、先住民と融合しながら古代文化の基礎となる「弥生文化」を、さらにその後の古墳文化を発展させていった。なお、揚子江は世界第3位の長さを持つ有名な川で、南岸地域には上海、 蘇州、 無錫などがある。
初期大和政権が誕生すると、大和政権は弥生文化を拒否する人々を “エミシ“と呼んで差別すると共に、財政強化の必要等の理由から、エミシが住んでいるところに兵を派遣し、弥生文化の浸透を図った。その過程で一部のエミシは新しい文化を受入れ、大和政権の傘下に入り大和民族と同化していった。一方、狩猟は採集文化を大切にしたほかのエミシは、北へ北へと逃れていったのである。
このようにエミシといわれた人々の住む範囲は、時代によって異なるのである。これは、エミシといわれた人々の居住地が北(特に北東北)に移ったからではなく、中央政権である大和朝廷の支配地域が広がっていった結果、かつてはエミシといった人々がエミシと言われず、また外見上からも、そのように見られなくなったのである。中央政権の支配下に入ったエミシは俘囚と言われたこともあったが、やがて俘囚の名も無くなり、大和民族の一員になっていった。かくして概ね鎌倉時代以降、エミシと呼ばれた人々は、北海道のアイヌのみになったのである。
ところで日本人は、大和民族とかアイヌ民族とか言われるが、両者は生物学的な意味での「人種の違い」ではなく、文化人類学的な意味での「文化の違い」に過ぎず、人種的には両者ともモンゴロイドに属する日本人であることに変わりはない。
“アイヌ”とは、もともと「カムイ=神」に対する人間を意味する言葉であったが、異なる文化を持つ和人との交易が盛んとなるに伴い、18世紀前後から自分たちの呼称として「アイヌ」という言葉を意識的に使ったと言われている。その前は「アイノ」とか「カイ」などいろいろあったらしいが、アイヌ民族には文字が無かったので、渡島(北海道)でどのように呼ばれていたのか、又は呼んでいたのかは分からないそうである。 アイヌには北海道アイヌ、東北アイヌ、樺太アイヌ、千島アイヌなど、地域文化の違いなどによって様々なアイヌがいた。だから、エミシやアイヌの歴史を遡ることによって、日本の歴史の一端が分かってくる。
ところで、50年前、ある大学講師が北海道民に革新性が生まれた理由は、アイヌ民族が松前藩に対して挑んだ1669年の“シャクシャインの戦い”にあると語っていた。シャクシャインの戦いは、「官」との戦いであったから、確かに選挙では、北海道は農業国なのに保革伯仲しているように、「官」への敵対意識が他県よりも強いように思う。道民のご先祖は、分家しても食べていく土地が狭いことや様々な理由から内地(本州)を飛び出してきた。そして、過去のことを聞きださない暗黙のルールのもとで、全国各地から入植した人々により開拓されてきた。道民は、各地方の良い慣習を積極的に取り入れて、良いものは良い又は悪いものは悪いというように、合理的に物事を考えてきた。
私はある時、関西に住んだことがある。大阪商人が、道産子に対して“これ以上、まけることが出来まへんわ”というと、すぐに了解してくれるので商売がやり易いそうだ。道産子は、お人好しでドアホの人が多く、一方で大阪商人は、損得に厳しく率直にものを言い、道産子と同様に革新性も強い。
内地・外地に関する話であるが、なぜ、道産子が本州のことを“内地 ”というのかは、北海道が流刑地で先住民族であったアイヌが住む辺境の地で、 “外地”であったからである。もっとも、西暦801年、征夷大将軍坂上田村麻呂が、エミシ征伐で東北を攻めた時には、北東北も辺境の地で外地であった。
ところで、司馬遼太郎氏の著書“街道をゆく(オホーツク街道)”を読むと、日本列島に住んでいたみんなが縄文人=エミシであり、日本列島に住んでいたほとんどが縄文人=蝦夷(エミシ)であると書いていた。すなわち、“日本人”の起源は縄文人にあり、その後裔にエミシ(アイヌ)がいるのであるが、このような史実が日本人にあまり知られていないことが、アイヌの差別を生む原因になっていると思っている。
なお、明治時代の北海道への入植者の県別は、青森県が第1位、2位は新潟県、3位は秋田県、続いて石川県、富山県、宮城県、岩手県、山形県、福井県、福島県である。
「十勝の活性化を考える会」会員
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