昼行灯(だった)トキの大雑把なひとりごと

クレヨンしんちゃんよりもユルく生きていた(当面過去系)私の備忘録と、大雑把なひとりごと。時々細かく語ることも。

農業:無農薬栽培は誰の為か

2006-05-28 17:51:56 | 農業
以前にも書いたことですが、無農薬栽培が健康被害リスクを低減するのは、消費者に対してではなく、農家に対するそれが殆どです。それ以外のヒト、つまり口に入れるヒトにとっては、現在の科学技術水準で確認できる限りは、まず実害はないと言っていい。そう考えます。(そうじゃない、というヒトは、複数の実験結果で検証された確たる証拠を見せるように。)
そういうわけで、私がはたともこさんのブログにブツクサ言っているからといって、無農薬栽培に意味がないと考えている訳ではない。例えば、農地に生息する生物にとっては、いうまでもなく無農薬栽培のほうが望ましい。そういうメリットもあります。だから、農産物を買うヒトは「自分の為に」ではなく、「生産者と環境」のために、無農薬栽培の農産物を買いましょう。万が一にでも、「自分の健康のため」だなんて思わないように。
もちろん、例外はあります。アレルギーで極微量の残留農薬もダメ、という方がいるのも事実です。逆にいうと、無農薬栽培農産物というマーケットが、消費者自身の実益によって選択される場合があるとすれば、これ以外にはない、と、私は思っています。(もっとも、この場合のアレルゲンがほんとうに極微量の残留農薬かどうかは、個人的には疑わしいと考えています。ですが、無農薬栽培農産物でアレルギーが回避できるなら、どんどんやるべきです)
最近疑問なのは、この減農薬・減化学肥料又は無農薬・無化学肥料栽培が、イメージとして良いため(どう良いかは不明だが、どうも「体によい」らしい)、よく売れるということです。そうして、売れるからと言う理由で、これらに取り組む農業者も出てきているのではないか。調べてはいないが、そう思えます。(少なくとも「売れる米づくり」等と言って、環境保全米の栽培拡大を図る一部の動きはこれに当たる。)
動機は何でもいい、とは、私には思えません。そもそも、いま環境保全型農業で成功している方には、かつて生産者が農薬によって健康を害されたことを知っている人達が多いように思います。自分の身に降り掛かる問題だからこそ、本気で農薬削減に取り組めたのです。そうでなければ、手間ひまのかかるこんな栽培方法は続けられるものではありません。
私は、恐らく、売らんが為に環境保全型農業を始めたヒトは、早晩、手を引くことになると思います。国は国内農業全体を環境と調和した農業にしようと言って旗を振っていますが、全体がそうなれば、価格面の優位性はなくなりますから、こういう人達は続ける気がなくなるでしょう。そして、そもそも適正に使用するなら、農薬も化学肥料も使って構わないはずだということに気付くでしょう。消費者の誤解に基づく「嗜好」にあわせて、生産量を落とし、収入が減るなんてばかばかしい話です。
さて、農産物に限らず、食料における最も恐ろしいリスクは何か。過去数千年、人類が戦ってきたのは「食料不足」=「飢餓」です。無農薬栽培は確かに良い点もありますが、生産量の減少は避けられない。なぜかというと、前々回の記事で書いたように、果物の多くは無農薬栽培に向かないからです。農薬を使わない場合、モモの収穫減少率は100%と言われています。全滅です。「すべて無農薬に!」と言っているヒトは、何と恐ろしいことを言っているのだろうか、と思いませんか?
もうひとつ違和感があるのは、無農薬・無化学肥料栽培って、なんとなく「有害物質で汚染されていない」「クリーン」といったイメージが付いているている点です。しかし、土耕栽培の場合、化学肥料のかわりに使うのは堆肥です。もとは糞尿です。発酵等の処理がきちんとされている完熟堆肥であれば、大腸菌とかはそんなに居ないでしょう。でも、おおもとは排泄物ですよ。イメージ大事の消費者の皆さんが、「クリーン』なイメージでそれを有難がっているように見えるのが、私には滑稽でなりません。もし、「クリーン」イメージで農産物を選ぶなら、値段の高いLED光源・水耕栽培の野菜工場のものを選ぶべきでしょうね。(コメや果物の多くは食えないってことになりますけど。)こういうの、すごく気になるんですよ。ちょっと考えれば矛盾があるってわかりそうなモノなのに、どうしてヒトは合理的に考えないのだろう。
 まとめると「環境保全型農業の推進は、その『環境負荷を低減する」というメリットゆえに進められるべき。そうして生産された農産物であろうが、そうでなかろうが、食べるヒトの健康リスクは変わらないということは徹底しなければならない。消費者は、『あぁオレ環境にいいことした』っていう満足感に金を払うこと」
「あなたがキレイだと思って選んだ物のほうが、むしろ汚いんじゃないの?そんなの止めな。」

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