先週、日本民芸館で「生誕120年記念 濱田庄司展」を見てきました。
濱田の作品はおおらかで力強く、それでいて品があって大好きです。特に、「流し掛け」の器にはいつも感嘆させられます。
このひしゃくで釉薬をかける「流し掛け」の技術に、「わずかな時間しかかからないのに、高価なのはなぜか?」と問われた濱田が「これは15秒プラス60年と見たらどうか」と答えたという有名な逸話がありますが、これは瞬時の釉がけに、陶芸人生の全てが入っている、と言わんとしたのでしょう。
陶芸教室に少し通ったことがありますが、ひしゃくで釉薬をかけるのは簡単だけど、結果を出すのは超難しいことが良くわかりました。(そんなのやる前からわかるって!15秒プラス0年にはそれなりの結果しかでません。)
昨年、濱田の窯があった益子に行ったのですが、また今年も行きたくなりました。
民芸館の搬入口にムクゲの花がたくさん咲いていました。
この花は以前にも書いたように民芸運動にゆかりのある韓国の国花ですが、この美しいピンクの花を見ていたら、若い時に見た濱田の作品を思い出しました。
若いころ、旅行でご一緒したご夫婦にご自宅に招かれたことがあるのですが、そのご夫婦が濱田と親交があり、直接益子の濱田を訪ねて求めたという蓋付きのスープボールを見せてくださいました。半径25cmくらいはあったでしょうか。
これが、なんと、全体が美しいピンクだったのです。ちょうど、このムクゲの花の色のように明るくって、それでいて深い奥行きのあるピンクだったんです。「この色はもう出せない。」って濱田さんが言ってたんだよ。とご主人から伺ったのですが、その時はまだそんなに焼き物に興味もなかったし、そっけない返事しかしなかったような記憶があります。
濱田の作品をたくさん見てきたほうだと思いますが、濱田のピンクの作品はあれ以外に見たことがありません。今回の展覧会にもありませんでした。
あの時はその貴重さが分からなかったけれど、今思い返してみれば、濱田のピンクの作品・・・しかもあんなに大きな作品は、民芸館の学芸員や研究者にも見ていただきたいくらい珍しい作品だと思います。
幻の濱田のピンクをもう一度見たい。