野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

武蔵野の記憶 狭山市堀兼上赤坂の森を歩く

2021年09月21日 | 武蔵野の記憶
(中央の森)

ボクがしばしば狭山所沢線と呼ぶ、埼玉県道126号所沢堀兼狭山線を狭山市方面へと進むと狭山市に入る手前くらいから大きな雑木林が見えてくる。これが堀兼・上赤坂の森と呼ばれる雑木林で、狭山市側の一部が公益財団法人さいたま緑のトラスト協会によってトラスト保全地とされており、散策路が整備されている。自宅から近く、何度か訪れたことがあるのだが、散策路をじっくりと歩いたことは無かった。新型コロナウイルスのワクチン接種の日程が決まったとはいえ、接種を終えて効果が出るのは10月下旬となるため、9月の連休はできれば近場を歩きたい。そこでこの堀兼・上赤坂の森の散策路を歩き、物足らないようなら散策路から北東へ延びる農地沿いの道も歩いてみることにした。

堀兼上赤坂の森には堀兼・上赤坂公園という狭山市の整備する公園がある。公園まではバスを使ってアクセスすることもできる(最寄りは西武バス新所沢駅東口発秋草学園経由西武フラワーヒル行き秋草学園高校バス停下車)が、自宅から自転車で20分ほどなので、自転車で向かう。シチズン前バス停近くの新開交差点を過ぎると農地の向こうに雑木林が見える。この所沢市側の雑木林もそれなりに広いのだが、散策路の無い私有地になっている。

(雑木林が見えてきた)

所沢市側の雑木林を抜けると信号があり、秋草学園高校と新富ゴルフプラザを結ぶ道路が横切っている。ボクがブログを始めた2010年頃はまだこの県道は開通しておらず、雑木林の手前で道路が止まっていた記憶がある。そして秋草学園と新富ゴルフとを結ぶ道はかなり薄暗く藪っぽい道だった。今でも新富ゴルフ側はかつての藪っぽい雰囲気をいくらか残している。信号より先、南西側は秋草学園の敷地となっていて、雑木林が切り開かれている。北東側は雑木林が残されているが、県道と斜めに交差する道は消失している。資材置き場のような所を過ぎると砂利道が直交しており、ここから堀兼上赤坂の森の一つである南の森に入ることもできる。でも道端に自転車を置きたくないので、まずは公園へと急ぐ。斜めに下る舗装路に入るとすぐに公園が見えてくる。駐車場と共用の出入り口から入り、駐車場とは反対側にある駐輪場に停める。

(堀兼上赤坂公園入口)




(公園内の案内板)

駐車場脇を抜けると公園のフェンスに扉があり、ここから南の森へと入ることができる。入口にある案内図を見ると南の森は一番小さいようだ。南の森に入ると少し道が登っている。公園の外周を整備した際に少し掘った可能性もあるが、雑木林の中は緩やかな起伏があるので、自然の地形がそのまま残されているのかもしれない。林内には何本かの道があるようだが、一旦外周を回ってみる。3分ほど歩くと重機の置かれた砂利道が見えてくる。県道と直交していたあの砂利道で、林内の歩道はこの砂利道に沿った形で延びている。このまま外周沿いを進んでも砂利道が見えて興ざめなので、少し進んだ所で林内を抜ける道に入る。林内には落葉広葉樹が目立つが、杉や松などの針葉樹も混じっている。文字通りの雑木林だ。

(南の森入口 公園側)


(トラスト保全地の案内図)


(南の森は中ほどが少し盛り上がっている)


(砂利道側の入口)


(南の森は外周沿いだと砂利道が目に入ってくる)

一旦公園付近まで戻ってから今度は中央の森を目指す。東へ林を抜けると金属製の塀で囲われた資材置き場が見えてくる。その資材置き場の脇を県道からの砂利道が通っている。砂利道を少し進めば中央の森だ。南の森と違い細長い形をしている。この雑木林も起伏があり、南東が高く、北西へ向かって下っている。近くに不老川があり、この辺りも河岸段丘になっていたのか、ハケとも呼べるような明確な段差もある。外周に沿ってきたので一つ内側の道に入ってみる。中央の森は細長い形をしている割に広さを感じる。ボクが中学生くらいの頃までは所沢市の北部にも雑木林が多く、子供が勝手に入って遊んでいても目くじらを立てて怒られるようなことは無かった。しかし年々雑木林が倉庫へと変貌し、子供が入れるような私有地の雑木林は少なくなってしまった。今歩いているような雑木林で虫取りや木登りをして遊べたボクらは良い時代を過ごせたのだと思う。

(中央の森を目指して南の森を抜ける)


(資材置き場前に出る 画面奥を進む)


(ここから中央の森に入る)


(細長い雑木林の割には広い)


(今は中央の森の端にいる)


(ここはやや大きく下っている)


(雑木林の中ほどに入ってきた)

森の集会所と呼ばれる小さな広場を過ぎると広い道に出る。道の向こう側は北の森だ。再び外周沿いを歩くべく東へ向かうと地元の人らしきオバチャンとすれ違う。地元の人が抜け道として使うらしく、この後農家のオジサンなどともすれ違った。保全地と私有地との境を進むと農地が見えてくる。堀兼上赤坂の森はここで終了だ。農地はもちろん私有地なので入ることはできない。ただ農地沿いに道があり、南西へ下れば公園に戻れる。また北東へも雑木林と農地との境に沿って道がある。この道は古い地形図にも描かれていて、地元の人は徒歩道として利用している。せっかくなので北東へと進んでみよう。

(森の集会所)


(広い道にぶつかる 正面は北の森)


(今は中央の森と北の森との境にいる)


(北の森と私有地との境を行く)


(農地との境に出た)


(広い農地の向こうには奥多摩の山並みが見える)


(農地脇の彼岸花)

農地沿いの道は真っ直ぐなようでいて、実際は少し右にカーブしている。所々雑木林の中を明瞭な道が延びているが、私有地なので入ることはできない。途中農家のオジサンとすれ違うが、挨拶を交わしただけで特段注意されることはなかった。歩いて抜ける分には黙認されているようだ。そろそろ雑木林を抜け出そうだという辺りに古い案内板がある。こういう案内板があるということは一応公道という扱いなのだろう。ボクは生活道としての歩道を設けるということはその地域の文化の高さを表していると考えている。京都の哲学の道はその典型であるが、東京も結構川沿いにクルマの入れない歩道を設けて生活道として維持している。クルマが入れる道はあくまで効率性を重視して設計されているに過ぎない。文化が成熟するには効率性とは離れた存在も必要なのだと思っているのだ。

(農地沿いの道を行く 所々農地や私有地の雑木林とつながっている)




(案内板がある)

雑木林を出ると赤坂浄苑という墓地がある。その先も雑木林は続くが、道は舗装道路となる。雑木林が終わると草刈街道と呼ばれる交通量の多い道路に出る。草刈街道は川越所沢線から派生し、新狭山駅近くのホンダの工場へと向かう道で古い地形図にも描かれる古い道の一つでもある。不老川方面に向かって歩いていくと老人ホームがあり、その向かいに一本の農道が延びている。農道の周囲は一面の里芋畑で、行く手を遮る雑木林は無い。そのおかげで遠くの山並みを眺めることができる。所沢からもよく見える大岳山はもちろんのこと、すっきりとした富士山が眺められるのが良い。

(再び農地が見えてくると墓地が近い)


(赤坂浄苑より先は舗装路になる)


(雑木林のキノコ)


(里芋畑の向こうに富士山が見える 農道沿いに電信柱が立つ)


(富士山と大岳山)


(富士山)

農道を見送ると上赤坂交差点に着く。目の前を横切る道路は上福岡駅と武蔵藤沢駅を結んでおり、これも古くからある道路である。ここが興味深いのは交差点から少し北西へ行った所にもう一本集落内を抜ける道が平行に延びているのだ。子どもたちの通学路にもなっているもう一本の道には古くからある農家の家が立ち並び、歴史を感じさせる所ではあるが、今日はもう少し先を行く。住宅街を抜けると農地が広がり、その先に不老川にある水門が見えてくる。不老川に差し掛かる手前に一本の農道が南西へと延びる。ここを歩いてみよう。道の両側には畑が広がり、やはり里芋が多い。ただ所々棚を設けた果樹が植えられており、近づいてみるとどうやらキウイを育てているようだ。こちらの農道も遮る雑木林がなく、富士山を望むことができる。ただこちらのほうが送電線に掛かってしまうことが多い。

(上赤坂交差点 この辺り古い農家が多い)


(ここから農道に入る なお一般車両の通行は一応禁止となっている)


(農地と雑木林)


(この農道からも富士山と大岳山が見える)

農道の突き当りを左に曲がると堀兼上赤坂公園へと通じる一本道に入る。交通量の多い道路を渡ると古い石仏が二体ある。古い地形図を見るとこれから歩く公園へと向かう道はかつて秋草学園を突っ切って所沢市下富の十四軒(じゅうしけん)という地域につながっていた。つまりこれも古い道の一部だったわけだ。広い茶畑の脇を通って雑木林に入れば間もなく公園に着く。結構歩いたように感じたが、実際は1時間ほどで回ってきてしまった。保全地内の散策路だけでは30分も歩けば一周できてしまうので、堀兼神社や不老川を併せて歩くと充実した散歩になるのではないだろうか。

(給水場が見えてくると農道の突き当りも近い)


(公園へ向かう道 右に石仏が見える)


(よく調べはしなかったが、右の石仏には元禄と彫られていた)


(堀兼上赤坂の森に再び向かう)


(茶畑 もう公園は近い)


(堀兼上赤坂公園のグラウンド)


(堀兼上赤坂の森周辺図 出典:国土地理院発行2.5万分1地形図 地理院タイルに文字等を追記して掲載)


ちょっと寄り道
帰りに公園の前の道を出て信号機のある交差点で県道を渡って更に進むと堀兼神社のある富士見台の裏手に出る。車が通る道を道なりに進むと二手に分かれる。正面に進む道は堀兼神社・旧鎌倉街道堀兼道に通じていて、左に曲がる道は畑の中を突っ切っている。畑の中の道は緩やかな上り坂で丘の上からは南狭山変電所を望むことができる。堀兼道の寄り道ルートとして歩いてみるのも良いかもしれない。

(県道を渡ると舗装路が延びる 交通量の多い道を行こう)


(丘へ向かって上り坂を行く)


(丘の上から南狭山変電所を眺める)

DATA:
堀兼上赤坂公園12:18~12:22南の森~12:31中央の森~12:37森の集会所~12:39北の森~12:42農地との境~12:53赤坂浄苑~13:04上赤坂交差点~13:08農道~13:37堀兼上赤坂公園

交通機関
狭山市内循環バス「茶の花号」堀兼コース(新狭山駅発)・入曽東コース(入曽駅発)であぐれっしゅげんき村バス停下車(一日各4便)徒歩5分
西武バス 新所沢駅発本川越駅行きシチズン前バス停下車(毎時1~2本)徒歩20分 新所沢駅発西武フラワーヒル行き十四軒バス停下車(毎時2~3本)徒歩15分 なお秋草学園経由のバスで秋草学園高校バス停で下車すれば徒歩7分ほどで公園に着くが、朝時間帯のみの運行。高校生たちの邪魔にならないように注意。

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