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(天覚山から東峠へ下る途中にある送電鉄塔下から望む橋本山)
刈場坂峠から天覧山へ連なる高麗川右岸の尾根は、飯能アルプスと呼ばれることが多い。標高が低い割には小さなアップダウンが連続し、巻き道が少なく、厳しい道が続くためにそう呼ばれているようだ。実際に歩いてみると、刈場坂峠から日和田山へのグリーンライン沿いの尾根と比べて、倍くらいきつく感じたものである。今回はその飯能アルプスの東部に当たる大高山から久須美坂を歩くことにした。概ね杉檜の植林に覆われ、顕著なピークも大高山と天覚山に限られるため、歩く人はそれほど多くない。その分、人に煩わされずにのんびりと歩くには良い所だ。
朝8時前に吾野駅に到着する。今日は一般ルートしか歩かないので、吾野駅近くにある岩殿観音と新たに整備されたという吾妻峡の河原歩きを加える予定だ。まずは駅西のガードを潜って霊園の前に出る。左手の尾根を登るのが大高山への道だが、そのまま霊園の前の道を進む。すると踏切がある辺りに「岩殿観音窟石龕」と書かれた看板がある。なお石龕とは石の塔のことを指すらしい。赤い幟に導かれて林道アズサズ線に入り、やがて林道を外れて右側の尾根に上がる。
しばらく登ると右手にコンクリート製の塀が見えてくる。塀の向こうは西武建材の敷地で、現在も石灰岩の採掘が行われている。道なりに行くと岩壁を望む広場に出る。岩殿観音へは広場の右手を上がっていくのだが、そのまま岩壁に近づくと右手に爪書き不動、左手に宝生の滝がある。宝生の滝は岩壁を穿つ細い流れのことで、水の流れよりも周囲の岩壁のほうが迫力はある。爪書き不動は石庇と石積みでできた岩室の壁に彫ったもので、よく見ないとわからない。
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(塀の向こうは西武建材の敷地)
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(宝生の滝)
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(爪書き不動)
岩殿観音へは砂が堆積した少々歩きにくい道を行く。古タイヤや靴が落ちているなど、あまり雰囲気の良い所ではない。陰気な所を抜けると明るい広場に出る。正面は西武建材の敷地で、左手に朱塗りのお堂がある。これが岩殿観音だ。お堂の奥は石灰岩に自然にできた洞窟となっていて、その洞窟を塞ぐようにお堂が建てられている。お堂の左側に扉があり、中に入ることができる。中には施錠された扉があり、奥には十一面観音像を拝むことができる。中は非常に暗く、かつて行場として使われていたという言い伝えにも納得がいく。
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(岩殿観音堂 内部に関しては実際に訪問して見ていただきたい)
観音堂の左手には二本の道がある。弘法の硯水と書かれた道標にしたがって進むと、畠山重忠公の馬の蹄跡、弘法の硯水とそれぞれ彫られた石柱が埋設された岩場の上に着く。弘法の硯水はおそらく宝生の滝と同じ水源から得た水なのだろう。もう一本の道は観音堂の上に出るもので、古峯神社の祠がある。祠を覆うように小屋掛けがあり、かつて手水のための水が引かれていたのであろう貯水槽も備えてある一風変わった所だ。榊の葉が奉納されていたので、定期的にお参りする人がいるのだろう。
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(古峯神社)
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(自然石を祀ったもののようだ)
往路を戻り、吾野湧水で一休み。岩殿観音の往復だけなら45分もあれば十分だろう。霊園の事務所脇から尾根に取り付き、急な斜面をジグザグに登っていく。ここは通い慣れた道なので、特にきつさは感じない。というよりも歩きやすい傾斜になるようによく考えられて作られた道だといえる。傾斜が緩み、道が右折する所に道標が立つ。ここからりゅうがい山に行くことができるが、踏み跡はかなり藪っぽくなっていた。やはり冬場が良いのだろう。
419のピークを北西から巻いていき、小さな切通しが作られた鞍部に出る。道はそのまま前坂へと向かっているのだが、沢地形を飛村林道へ向かって下る踏み跡もある。今回はこの踏み跡を下ってみる。踏み跡は所々シダ植物に隠されているものの、それほど歩き難くはない。5分も経たない内に林道へと下り立つ。ここから前坂と大高山との間にある鞍部まではおよそ10分。途中一台の大型バイクが追い抜いていった。林道マニアなライダーには知られた所なのだろうか。
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(飛村林道へ下る)
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(林道から風影集落を望む)
林道から大高山方面に上がるとすぐにベンチが置かれている。ベンチの類が決して多いとは言えないルートなので、ここでも一休み。関八州見晴台が少しだけ見える小ピークを越えると踏み跡明瞭な細道が続く。杉檜の中の細道は奥武蔵を代表する光景で、このルートは特にこういった道が多い。緩々と登っていき、山頂直下は露岩の急斜面となる。それでも5分も登れば大高山(493)の頂上に着く。南西方向が少し開けているほかは木々に覆われた山頂である。地形図で見た限りだとノボットや大仁田山などが見えるようだ。
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(奥武蔵らしい細道 作業道を整備したものなのだろう)
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(大高山頂上)
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(ノボット辺りを望む)
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(目立つ山は大仁田山ではないかと思う)
10分ほど休憩を取り、出発。大高山から天覚山まではぐにゃぐにゃと曲がった尾根を行く。踏み跡は明瞭だが、現在地把握が難しいので、読図の勉強にはちょうど良い。まずは緩やかな尾根を下っていく。道は標石が埋まっている辺りでやや急な斜面を下るのだが、右の赤テープのある急斜面を下ると尾根伝いに273のピークへ行くこともできる。広い尾根を下ると飯能アルプス同好会の道標がある尾根の分岐に着く。道標にしたがい南へ急斜面を下る。ここでゆっくりと下っていると初老の男性に追い抜かれる。今日初めて山中で人に会った。
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(南へ急坂を下る途中に見かけた木)
急斜面を下りきるとしばらくは緩やかな尾根を行く。すると道標の立つ大岩の前に出る。ここは尾根が東西に分かれる所で、縦走路は東、つまり大岩を左に巻いていく。奥武蔵らしい細道を行くと小ピークを左から巻いていく。この小ピークは南西へ延びる細長い尾根で、古いプラスチック製の道標がくくり付けられている。道なりに登った次の小ピークが前高山。以前歩いたときに392のピークを前高山としたが、その一つ西のピークが前高山であった。
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(大岩 ここを左に行く)
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(前高山)
392のピークは南北に長く、縦走路からは急斜面を登らなければならない。山頂には飯能アルプス同好会の道標が二つ付けられている。次は東西に二つの小さな山頂がある小ピーク。この二つの山頂をつなぐ尾根から大高山の山頂部を望むことができる。東のピークから下るとき天覚山の山頂が一瞬見える所がある。地形図を見ると東の鞍部に峠道が描かれているのだが、ここは既に廃道になっていて、道形を発見することもできなかった。
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(392のピーク 細長い山頂だ)
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(大高山の山頂部を望む)
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(天覚山を望む)
410のピークはそれほど顕著なピークではなく、淡々と細道を行く。天覚山の西の肩にあたる急斜面は南から回り込むように登っていく。山頂直下の岩場に差し掛かると賑やかな人の声が聞こえてくる。どうやら山頂は集団に占拠されているらしい。岩場を登りきると明るい天覚山の頂上(445.4)に出る。東側と南側が切り開かれ、このルートの中では一番の展望が得られる所だ。山頂には10人くらいの中高年グループがいたが、ベンチを空けてくれたので、眺めを楽しむことにする。朝から薄曇りの天気だったので、あまり遠望は利かないものの、地形図で調べると意外にも棒ノ嶺辺りまで見えているようだ。
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(天覚山と西にある小ピークとの鞍部の辺り)
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(天覚山頂上直下)
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(天覚山から南側の眺め 奥の尾根右辺りの一番高い山が棒ノ嶺 その下に見えるゴツい山が楢抜山)
騒がしい山頂から一旦戻り、北にある両峯神社跡で昼食を取る。山頂より広いので、大人数のグループにはこちらで会合を開いてほしいものである。両峯神社跡からは山頂を巻くように小道が付いている。踏み跡には草が被っているが、歩けないというほどではない。山頂からの道に合流し、しばらくは緩やかな尾根の下り。眼下に送電鉄塔が見える辺りから北側をトラバースしながら下る。下りきると送電鉄塔の前に出る。縦走路は右手の沢沿いに下っていくのだが、鉄塔の下は眺めが良さそうだ。薄の藪を掻き分けると北東側の眺めが良い。今いる鉄塔の送電線の先には越上山が尖った山頂を突き出している。眼下には東吾野駅周辺の集落が広がり、その集落裏手には橋本山が意外と大きい。橋本山のすぐ後ろの鞍部がエビガ坂で、そこから右に二つ目のピークがスカリ山だ。
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(両峯神社跡)
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(薄の藪濃い送電鉄塔)
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(鉄塔からの眺め 奥の尾根左の尖った山が越上山 中央手前が橋本山 そのすぐ上の鞍部がエビガ坂で右に二つ目の山がスカリ山 右端手前が吹上山)
沢沿いに下ると車道が乗り越す東峠。左へ登り返して尾根に取り付く。ここからカマド山の分岐までは6つの小ピークを越えていかなければならない。それほど大きなアップダウンではないものの、大高山、天覚山と越えてきた体には結構応える。急坂を登り切った所が最初のピーク。その先は緩やかな小道で、次のピークは吹上山への分岐だ。北に明瞭な尾根が延びているのでわかりやすい。ここを越えると送電鉄塔の建つ338のピークに着く。細長いピークで緩やかにアップダウンがある。
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(東峠から登り返した最初のピーク辺り)
338のピークを過ぎるとゴルフ場のすぐ側を通る。ゴルファーの話す声がこちらまで聞こえてくる。ん、キャディさんがファーと叫んでいるな。ボールには気を付けないと。縦走路はこの後も3つの小ピークを越えていくのだが、巻かずに律儀に尾根の上を進む辺りがアルプスらしいのかもしれない。最後のピークを越えるとあまり登った感じもせずにカマド山の分岐がある303のピークに着く。朽ち木が道標となっていて、天覚山は80分、久須美坂は30分と記してある。久須美坂まではもう厳しいアップダウンはないということなのだろう。
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(338のピークを過ぎると右手にゴルフ場が見えてくる)
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(カマド山分岐)
303のピークから一つ東のピークを越えると東側斜面に伐採地がある。6年前に歩いたときは登山道脇に幼木が植えられているだけで、斜面には表土が露出していた。それが今や幼木は伐採地を隠すほどに成長し、伐採地にも多くの植物が育ってきているようだ。10年後くらいには立派な林になっているのだろうか。伐採地を過ぎると緩やかなアップダウンが続く。今日一番の落ち着いて歩ける道だ。自分にはこのくらいのんびりと歩ける方が性に合っている。
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(伐採地の光景 右は6年前のもの)
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(緩やかな道 この辺りが一番落ち着ける)
280のピーク周辺は巻き道が多くなり、尾根が広くなってくれば、久須美坂は近い。緩やかに下ると武蔵横手駅への道が分岐する久須美坂だ。久須美方面へ下る道は更に一段下った鞍部から延びており、峠道としてはやや変わった形状をしている。鞍部へ下ったところでちょっと休憩。久須美への踏み跡は草が被っていて、あまり使われていない雰囲気である。
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(久須美坂武蔵横手方面)
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(久須美坂久須美方面)
久須美集落へは古の峠道らしくシダ植物の生える中をジグザグに下っていく。石がゴロゴロとしていて歩きやすい道とはいえない。傾斜が緩んでくると沢を高巻くように下っていく。沢を渡り、左岸の道を下ると間もなく工務店らしき建物脇の砂利道に出た。ここまで10分ほどだったので、人里に出るにはかなり便利な道だといえる。道なりに進めば久須美の集落を抜けて名栗街道に出る。山の中と違ってかなり暑い。名栗街道を東に少し進めば坂の上バス停に着く。久須美のバス停じゃなかったのか。まあ、下る分にはわかりやすい道だが、登りに使うには案内の類が無かったので難しいかもしれない。
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(久須美へ下る 草が被る所が多い)
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(右岸を下る この後沢を渡って左岸へ)
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(砂利道を行く 工務店だか木工所だかの建物がある)
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(久須美集落)
坂の上バス停から永田台・横手台の分譲地への分岐となる交差点までは10分ほど。分譲地への車道を少し上がると多峯主山への山道が延びる。ここは以前通ったことがあるのだが、何とか萬福寺の裏手辺りに出られないかと思っていた。しかし小沢の右岸から取り付くこの道は造成地脇まで行ってしまい、萬福寺には近づかないことだけはよくわかった。この多峯主山への縦走路だが、尾根を越えた後、一旦沢まで下るので、かなり遠回りさせられる感じは否めない。縦走するのであれば、むしろ武蔵台へ下って、分譲地内から277.5の三角点峰へと登ったほうが効率は良いだろう。
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(多峯主山への登り この道は萬福寺へは行かない)
沢から登り返すと多峯主山南の小ピークの辺りに出る。多峯主山へは寄らずに御嶽八幡神社を抜けて、永田大杉バス停へと下る。大里屋本店でお土産を買いこみ、吾妻峡へ。ドレミファ橋はこれまでも何度となく訪れているが、今日は吾妻峡から中平(なかだいら)河原まで歩く。このルートは飯能市のHPにある各種観光パンフレットダウンロードコーナーの「吾妻峡散歩みち」を参考にさせていただいた。ドレミファ橋を渡り、右岸から下流へ向かって歩く。赤岩・兎岩の辺りは河原ができていて、小さな子供を遊ばせている家族連れが多い。汽車渕と呼ばれる岩場だけが入間川へと突き出していて、ここの通過だけは緊張を強いられた。テントを張って憩う人もいる中平河原から上がると駐車場に出る。その後は道なりに進んで割岩橋を渡り、飯能駅に着いた。
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(御嶽八幡神社)
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(ドレミファ橋から)
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(まずは広い河原を行く)
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(対岸が近づく辺り 岩の上を通過する所も)
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(赤岩)
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(奥に兎岩が見える)
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(兎岩と彼岸花)
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(汽車渕)
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(中平河原へ近づくと河原が広くなる)
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(瀬 この辺りでは少ない)
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(中平河原)
DATA:
吾野駅7:48~8:07岩殿観音~8:32吾野湧水~9:30大高山~10:50天覚山~11:36東峠~12:13カマド山~12:38久須美坂~13:00坂の上バス停~13:42御嶽八幡神社~14:12吾妻峡入口(ドレミファ橋)~14:32中平河原~15:10飯能駅
地形図 正丸峠 飯能
トイレ 中平河原
刈場坂峠から天覧山へ連なる高麗川右岸の尾根は、飯能アルプスと呼ばれることが多い。標高が低い割には小さなアップダウンが連続し、巻き道が少なく、厳しい道が続くためにそう呼ばれているようだ。実際に歩いてみると、刈場坂峠から日和田山へのグリーンライン沿いの尾根と比べて、倍くらいきつく感じたものである。今回はその飯能アルプスの東部に当たる大高山から久須美坂を歩くことにした。概ね杉檜の植林に覆われ、顕著なピークも大高山と天覚山に限られるため、歩く人はそれほど多くない。その分、人に煩わされずにのんびりと歩くには良い所だ。
朝8時前に吾野駅に到着する。今日は一般ルートしか歩かないので、吾野駅近くにある岩殿観音と新たに整備されたという吾妻峡の河原歩きを加える予定だ。まずは駅西のガードを潜って霊園の前に出る。左手の尾根を登るのが大高山への道だが、そのまま霊園の前の道を進む。すると踏切がある辺りに「岩殿観音窟石龕」と書かれた看板がある。なお石龕とは石の塔のことを指すらしい。赤い幟に導かれて林道アズサズ線に入り、やがて林道を外れて右側の尾根に上がる。
しばらく登ると右手にコンクリート製の塀が見えてくる。塀の向こうは西武建材の敷地で、現在も石灰岩の採掘が行われている。道なりに行くと岩壁を望む広場に出る。岩殿観音へは広場の右手を上がっていくのだが、そのまま岩壁に近づくと右手に爪書き不動、左手に宝生の滝がある。宝生の滝は岩壁を穿つ細い流れのことで、水の流れよりも周囲の岩壁のほうが迫力はある。爪書き不動は石庇と石積みでできた岩室の壁に彫ったもので、よく見ないとわからない。
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(塀の向こうは西武建材の敷地)
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(宝生の滝)
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(爪書き不動)
岩殿観音へは砂が堆積した少々歩きにくい道を行く。古タイヤや靴が落ちているなど、あまり雰囲気の良い所ではない。陰気な所を抜けると明るい広場に出る。正面は西武建材の敷地で、左手に朱塗りのお堂がある。これが岩殿観音だ。お堂の奥は石灰岩に自然にできた洞窟となっていて、その洞窟を塞ぐようにお堂が建てられている。お堂の左側に扉があり、中に入ることができる。中には施錠された扉があり、奥には十一面観音像を拝むことができる。中は非常に暗く、かつて行場として使われていたという言い伝えにも納得がいく。
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(岩殿観音堂 内部に関しては実際に訪問して見ていただきたい)
観音堂の左手には二本の道がある。弘法の硯水と書かれた道標にしたがって進むと、畠山重忠公の馬の蹄跡、弘法の硯水とそれぞれ彫られた石柱が埋設された岩場の上に着く。弘法の硯水はおそらく宝生の滝と同じ水源から得た水なのだろう。もう一本の道は観音堂の上に出るもので、古峯神社の祠がある。祠を覆うように小屋掛けがあり、かつて手水のための水が引かれていたのであろう貯水槽も備えてある一風変わった所だ。榊の葉が奉納されていたので、定期的にお参りする人がいるのだろう。
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(古峯神社)
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(自然石を祀ったもののようだ)
往路を戻り、吾野湧水で一休み。岩殿観音の往復だけなら45分もあれば十分だろう。霊園の事務所脇から尾根に取り付き、急な斜面をジグザグに登っていく。ここは通い慣れた道なので、特にきつさは感じない。というよりも歩きやすい傾斜になるようによく考えられて作られた道だといえる。傾斜が緩み、道が右折する所に道標が立つ。ここからりゅうがい山に行くことができるが、踏み跡はかなり藪っぽくなっていた。やはり冬場が良いのだろう。
419のピークを北西から巻いていき、小さな切通しが作られた鞍部に出る。道はそのまま前坂へと向かっているのだが、沢地形を飛村林道へ向かって下る踏み跡もある。今回はこの踏み跡を下ってみる。踏み跡は所々シダ植物に隠されているものの、それほど歩き難くはない。5分も経たない内に林道へと下り立つ。ここから前坂と大高山との間にある鞍部まではおよそ10分。途中一台の大型バイクが追い抜いていった。林道マニアなライダーには知られた所なのだろうか。
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(飛村林道へ下る)
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(林道から風影集落を望む)
林道から大高山方面に上がるとすぐにベンチが置かれている。ベンチの類が決して多いとは言えないルートなので、ここでも一休み。関八州見晴台が少しだけ見える小ピークを越えると踏み跡明瞭な細道が続く。杉檜の中の細道は奥武蔵を代表する光景で、このルートは特にこういった道が多い。緩々と登っていき、山頂直下は露岩の急斜面となる。それでも5分も登れば大高山(493)の頂上に着く。南西方向が少し開けているほかは木々に覆われた山頂である。地形図で見た限りだとノボットや大仁田山などが見えるようだ。
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(奥武蔵らしい細道 作業道を整備したものなのだろう)
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(大高山頂上)
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(ノボット辺りを望む)
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(目立つ山は大仁田山ではないかと思う)
10分ほど休憩を取り、出発。大高山から天覚山まではぐにゃぐにゃと曲がった尾根を行く。踏み跡は明瞭だが、現在地把握が難しいので、読図の勉強にはちょうど良い。まずは緩やかな尾根を下っていく。道は標石が埋まっている辺りでやや急な斜面を下るのだが、右の赤テープのある急斜面を下ると尾根伝いに273のピークへ行くこともできる。広い尾根を下ると飯能アルプス同好会の道標がある尾根の分岐に着く。道標にしたがい南へ急斜面を下る。ここでゆっくりと下っていると初老の男性に追い抜かれる。今日初めて山中で人に会った。
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(南へ急坂を下る途中に見かけた木)
急斜面を下りきるとしばらくは緩やかな尾根を行く。すると道標の立つ大岩の前に出る。ここは尾根が東西に分かれる所で、縦走路は東、つまり大岩を左に巻いていく。奥武蔵らしい細道を行くと小ピークを左から巻いていく。この小ピークは南西へ延びる細長い尾根で、古いプラスチック製の道標がくくり付けられている。道なりに登った次の小ピークが前高山。以前歩いたときに392のピークを前高山としたが、その一つ西のピークが前高山であった。
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(大岩 ここを左に行く)
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(前高山)
392のピークは南北に長く、縦走路からは急斜面を登らなければならない。山頂には飯能アルプス同好会の道標が二つ付けられている。次は東西に二つの小さな山頂がある小ピーク。この二つの山頂をつなぐ尾根から大高山の山頂部を望むことができる。東のピークから下るとき天覚山の山頂が一瞬見える所がある。地形図を見ると東の鞍部に峠道が描かれているのだが、ここは既に廃道になっていて、道形を発見することもできなかった。
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(392のピーク 細長い山頂だ)
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(大高山の山頂部を望む)
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(天覚山を望む)
410のピークはそれほど顕著なピークではなく、淡々と細道を行く。天覚山の西の肩にあたる急斜面は南から回り込むように登っていく。山頂直下の岩場に差し掛かると賑やかな人の声が聞こえてくる。どうやら山頂は集団に占拠されているらしい。岩場を登りきると明るい天覚山の頂上(445.4)に出る。東側と南側が切り開かれ、このルートの中では一番の展望が得られる所だ。山頂には10人くらいの中高年グループがいたが、ベンチを空けてくれたので、眺めを楽しむことにする。朝から薄曇りの天気だったので、あまり遠望は利かないものの、地形図で調べると意外にも棒ノ嶺辺りまで見えているようだ。
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(天覚山と西にある小ピークとの鞍部の辺り)
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(天覚山頂上直下)
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(天覚山から南側の眺め 奥の尾根右辺りの一番高い山が棒ノ嶺 その下に見えるゴツい山が楢抜山)
騒がしい山頂から一旦戻り、北にある両峯神社跡で昼食を取る。山頂より広いので、大人数のグループにはこちらで会合を開いてほしいものである。両峯神社跡からは山頂を巻くように小道が付いている。踏み跡には草が被っているが、歩けないというほどではない。山頂からの道に合流し、しばらくは緩やかな尾根の下り。眼下に送電鉄塔が見える辺りから北側をトラバースしながら下る。下りきると送電鉄塔の前に出る。縦走路は右手の沢沿いに下っていくのだが、鉄塔の下は眺めが良さそうだ。薄の藪を掻き分けると北東側の眺めが良い。今いる鉄塔の送電線の先には越上山が尖った山頂を突き出している。眼下には東吾野駅周辺の集落が広がり、その集落裏手には橋本山が意外と大きい。橋本山のすぐ後ろの鞍部がエビガ坂で、そこから右に二つ目のピークがスカリ山だ。
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(両峯神社跡)
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(薄の藪濃い送電鉄塔)
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(鉄塔からの眺め 奥の尾根左の尖った山が越上山 中央手前が橋本山 そのすぐ上の鞍部がエビガ坂で右に二つ目の山がスカリ山 右端手前が吹上山)
沢沿いに下ると車道が乗り越す東峠。左へ登り返して尾根に取り付く。ここからカマド山の分岐までは6つの小ピークを越えていかなければならない。それほど大きなアップダウンではないものの、大高山、天覚山と越えてきた体には結構応える。急坂を登り切った所が最初のピーク。その先は緩やかな小道で、次のピークは吹上山への分岐だ。北に明瞭な尾根が延びているのでわかりやすい。ここを越えると送電鉄塔の建つ338のピークに着く。細長いピークで緩やかにアップダウンがある。
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(東峠から登り返した最初のピーク辺り)
338のピークを過ぎるとゴルフ場のすぐ側を通る。ゴルファーの話す声がこちらまで聞こえてくる。ん、キャディさんがファーと叫んでいるな。ボールには気を付けないと。縦走路はこの後も3つの小ピークを越えていくのだが、巻かずに律儀に尾根の上を進む辺りがアルプスらしいのかもしれない。最後のピークを越えるとあまり登った感じもせずにカマド山の分岐がある303のピークに着く。朽ち木が道標となっていて、天覚山は80分、久須美坂は30分と記してある。久須美坂まではもう厳しいアップダウンはないということなのだろう。
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(338のピークを過ぎると右手にゴルフ場が見えてくる)
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(カマド山分岐)
303のピークから一つ東のピークを越えると東側斜面に伐採地がある。6年前に歩いたときは登山道脇に幼木が植えられているだけで、斜面には表土が露出していた。それが今や幼木は伐採地を隠すほどに成長し、伐採地にも多くの植物が育ってきているようだ。10年後くらいには立派な林になっているのだろうか。伐採地を過ぎると緩やかなアップダウンが続く。今日一番の落ち着いて歩ける道だ。自分にはこのくらいのんびりと歩ける方が性に合っている。
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(伐採地の光景 右は6年前のもの)
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(緩やかな道 この辺りが一番落ち着ける)
280のピーク周辺は巻き道が多くなり、尾根が広くなってくれば、久須美坂は近い。緩やかに下ると武蔵横手駅への道が分岐する久須美坂だ。久須美方面へ下る道は更に一段下った鞍部から延びており、峠道としてはやや変わった形状をしている。鞍部へ下ったところでちょっと休憩。久須美への踏み跡は草が被っていて、あまり使われていない雰囲気である。
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(久須美坂武蔵横手方面)
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(久須美坂久須美方面)
久須美集落へは古の峠道らしくシダ植物の生える中をジグザグに下っていく。石がゴロゴロとしていて歩きやすい道とはいえない。傾斜が緩んでくると沢を高巻くように下っていく。沢を渡り、左岸の道を下ると間もなく工務店らしき建物脇の砂利道に出た。ここまで10分ほどだったので、人里に出るにはかなり便利な道だといえる。道なりに進めば久須美の集落を抜けて名栗街道に出る。山の中と違ってかなり暑い。名栗街道を東に少し進めば坂の上バス停に着く。久須美のバス停じゃなかったのか。まあ、下る分にはわかりやすい道だが、登りに使うには案内の類が無かったので難しいかもしれない。
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(久須美へ下る 草が被る所が多い)
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(右岸を下る この後沢を渡って左岸へ)
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(砂利道を行く 工務店だか木工所だかの建物がある)
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(久須美集落)
坂の上バス停から永田台・横手台の分譲地への分岐となる交差点までは10分ほど。分譲地への車道を少し上がると多峯主山への山道が延びる。ここは以前通ったことがあるのだが、何とか萬福寺の裏手辺りに出られないかと思っていた。しかし小沢の右岸から取り付くこの道は造成地脇まで行ってしまい、萬福寺には近づかないことだけはよくわかった。この多峯主山への縦走路だが、尾根を越えた後、一旦沢まで下るので、かなり遠回りさせられる感じは否めない。縦走するのであれば、むしろ武蔵台へ下って、分譲地内から277.5の三角点峰へと登ったほうが効率は良いだろう。
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(多峯主山への登り この道は萬福寺へは行かない)
沢から登り返すと多峯主山南の小ピークの辺りに出る。多峯主山へは寄らずに御嶽八幡神社を抜けて、永田大杉バス停へと下る。大里屋本店でお土産を買いこみ、吾妻峡へ。ドレミファ橋はこれまでも何度となく訪れているが、今日は吾妻峡から中平(なかだいら)河原まで歩く。このルートは飯能市のHPにある各種観光パンフレットダウンロードコーナーの「吾妻峡散歩みち」を参考にさせていただいた。ドレミファ橋を渡り、右岸から下流へ向かって歩く。赤岩・兎岩の辺りは河原ができていて、小さな子供を遊ばせている家族連れが多い。汽車渕と呼ばれる岩場だけが入間川へと突き出していて、ここの通過だけは緊張を強いられた。テントを張って憩う人もいる中平河原から上がると駐車場に出る。その後は道なりに進んで割岩橋を渡り、飯能駅に着いた。
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(御嶽八幡神社)
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(ドレミファ橋から)
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(まずは広い河原を行く)
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(対岸が近づく辺り 岩の上を通過する所も)
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(赤岩)
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(奥に兎岩が見える)
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(兎岩と彼岸花)
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(汽車渕)
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(中平河原へ近づくと河原が広くなる)
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(瀬 この辺りでは少ない)
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(中平河原)
DATA:
吾野駅7:48~8:07岩殿観音~8:32吾野湧水~9:30大高山~10:50天覚山~11:36東峠~12:13カマド山~12:38久須美坂~13:00坂の上バス停~13:42御嶽八幡神社~14:12吾妻峡入口(ドレミファ橋)~14:32中平河原~15:10飯能駅
地形図 正丸峠 飯能
トイレ 中平河原
冬、良いですね。あまり雪も降らない地域ですし、日が落ちるのが早くてもエスケープが豊富なので、歩くにはちょうど良い時期だと思います。
>いつか古くなったら洗ってみます。
洗うのは本当に古くなってからでもいいのかもしれません。それよりも普段から使った道具は綺麗に掃除しておくというのが大事かと思います。綺麗に使うと物持ちも違いますので。
飯能アルプスは、今年の冬、少しずついってみたいと思っているので、参考になりました。
ザックが古くなるのはまだ先かと思いますが、
いつか古くなったら洗ってみます。