(御殿場ルート頂上付近から剣ヶ峯を望む)
八合目以降で高山病に罹ったため写真が少なめです。予めご了承ください。
ボクの兄は御朱印集めを趣味にしている。世の中には目的が無いとなかなか出掛けられない人もいて、仕事が忙しく旅行先を決めづらい兄にはちょうど良い趣味なのだろう。ある日、そんな兄が所沢の家に戻ってきて歓談をしていたところ、富士山頂に行く機会があったら御朱印帳を購入してきてほしいと相談してきた。どうやら富士山頂でしか購入できない御朱印帳があるらしい。ボクは8年前と10年前に富士山頂まで登っていて、正直富士山はもう懲り懲りだと思っていた。しかし遠回しにとは言え、御朱印帳購入を頼まれたからにはいずれ登らなければならない。そこで機会をうかがっていたのだが、昨年の7月は繁忙期が長引いて忙しく、8月は悪天候と富士山へ行くことができなかった。だが、今年は繁忙期が早く終わったので準備をしっかりと整えて富士山へ三度目の挑戦をすることになった。
7月26日(一日目) 初めてのバスタ新宿 そして五合目宿泊
前回まで二度の富士登山は共にいわゆる弾丸登山と呼ばれるものであった。夜遅く高速バスで五合目に着き、そこから夜通し歩いて山頂を目指すやり方には現在自粛要請が出されている。今回はどこかで宿泊する必要があるのだが、七合目以降の山小屋の状況を考えるとあまり積極的に宿泊したいものではない。そこで観光地化されている五合目で宿泊できないか調べたところ、河口湖口にはいくつかの宿泊施設があり、予約を受け付けていた。早速その一つに宿泊予約を取った。あとは五合目までのアクセスだけが問題だった。河口湖口五合目までは新宿からの高速バスが安くて、早くて簡便なのだが、7月以降予約が一杯だったのだ。今回は諦めて電車利用を考えていたところ、宿の予約を取った後予約サイト(ハイウェイバスドットコム)を見ると運の良いことにバスの予約も取れてしまった。登山予定日には台風が近づいているとの予報もあったが、こうなれば後には引けない。雨風が強くなれば歩いて五合目から下山するつもりであった。
出発当日。かつて新宿駅は仕事でもレジャーでも頻繁に訪れていた所だが、最近は御無沙汰している。おまけに高速バス乗り場であるバスタ新宿へは初めて訪れる。どの辺りにあるのか全く調べなかったのだが、かつてあった西口のバス乗り場からはそう遠くないだろうと西武新宿駅からJR新宿駅に向けて地下道を歩き出す。空調の利いた地下道は涼しく、夏場夜行バスを使うときは人混みの多い地上部分を歩くよりも良いのではないだろうか。JR新宿駅近くまで来て案内図を見るとバスタ新宿は南口のすぐそばにある。ふむ、高島屋タイムズスクエアの近くだな。東口から地上に出て、ガードを潜り、エスカレーターで上がるとバスタ新宿の待合所に着いた。電光掲示板を見るとウィラーエクスプレスのバスも発着しており、利便性はかなり増したのではないだろうか。
綺麗な待合所ではバス乗車券の販売も行っており、席が空いていれば直接窓口で買ってもよい。但し富士山五合目は電光掲示板によると満席になっていた。ボクはコンビニで事前に乗車券を購入していたので、直接乗務員に見せてバスに乗り込む。なお乗車券は降車時に回収するとのことなので、紛失してしまわないようにしたい。ザックはトランクに入れ、手ぶらで乗り込むと隣は僕より年上らしき日本人男性であった。以前乗ったときは体の大きな外国人男性だったのでありがたい。バスは午後の新宿の街を快調に走り出し、1時間ほどで八王子近くまで来てしまう。日の高い内に中央道に乗ったのは初めてだったのだが、関越道や東北道と異なり片側二車線であることをようやく知った。これでは連休中の渋滞も激しくなるわけだ。
八王子を過ぎると周囲は山岳風景へと変わり、大月に近づけば見慣れた扇山・百蔵山や大きな岩場が露出する岩殿山が見えてくる。大月からは中央道の富士吉田線に入る。桂川によってできた谷間を富士急行大月線と並ぶように進んでいく。富士急ハイランドが見えてくる頃には富士山が正面に見えるはずなのだが、台風の影響なのか空は厚い雲に覆われて、薄らとしか姿を拝むことができなかった。河口湖ICを降りると河口湖口五合目へ続く富士スバルラインはすぐそこだ。周囲は鬱蒼とした原生林で、それが一時間近く続く。四合目の御庭を過ぎた辺りで雲の上に出たのか強い太陽の光が車内まで差し込んでくる。五合目より上は綺麗に晴れているようだ。
河口湖口五合目には予定時刻より10分ほど早く到着した。もう17時過ぎなのだが、まだ日は高く、観光客の姿も多い。宿に入るにはまだ早いので、軽く周辺散策をする。バスターミナルの下には休憩所とトイレがあり、唯一無料で使える施設だ。土産物店街の北には小御嶽神社があり、今の時期は17時半くらいまで開けているようだ。拝殿で明日の登頂成功を願ってお参りしていく。土産物店はどこも相変わらずの混雑だが、明日に備えて500mlのペットボトル入りの水を一本買っておいた。新所沢の西友でも一本買っておいたので、明日は1リットルの水を持って歩く予定だ。
(河口湖口五合目から山頂を望む 山頂付近には雲が掛かる)
(小御嶽神社から山頂を望む)
(五合目休憩所付近から下界を望むと雲海が広がっていた)
宿はすぐ側の「富士山みはらし」に取っているのだが、食事は付かないので、2階のレストランで早めの夕食を取ることにした。10年前に初めて富士山に登ったときも外国人が多かった印象があったのだが、今は観光客の比率としても外国人のほうが多いのではないだろうか。レストランも外国人の利用が多く、ボクにはわからない言葉が飛び交っていた。感心したのは富士山みはらしの従業員の方たちで、皆英語を流暢に話していた。英語が苦手なボクからしたら羨ましいばかりである。夕食は「山旅メーリングリスト」で「前日はパスタを食え」とのことだったので、パスタを取ることにした。味は良かったのだけれども、結構お腹が凭れた。朝から調子が悪かったのでそのせいもあるのだろう。食事を終え、外に出るとまだ日は落ちていない。日影はだいぶ肌寒い感じもするのだが、日に当たっているとかなり暑い。この暑さを考えると夜の出発時間をよく考える必要がある。
(右が富士山みはらし)
18時半を過ぎたので、1階奥で宿泊受付を済ませる。料金は税込で6480円。食事の付かない相部屋なので、この料金を高いと見るか安いと見るか難しいところだ。3階の宿泊スペースに案内されると他の宿泊客の荷物が既に置かれていた。40人泊まれる部屋に10人ほどの予約とのことだったので、スペースにはかなり余裕がある。荷物を下ろし、19時頃まで外で過ごす。土産物店街のすぐ先にある総合管理センターではTVモニターで気象情報を提供しており、5時間先の天気がわかる。山頂付近は晴れの予報だ。登る前にもう一度確認していくことにしよう。総合管理センター隣では入山料の徴収を行っていて、ボクも払っていくことにした。冊子と木札が貰えて、木札は登山中ザックに括り付けておくように言われる。
(総合管理センター 手前のテントで入山料の徴収を行っている)
宿に戻ると既に数人の宿泊客が床に就いて鼾をかいていた。足に靴擦れ防止のテーピングを張ってからボクも寝ることにした。布団を被るがどうにも眠れない。ボクの布団は廊下側にあるのだが、個室客の人たちが頻繁に出入りするので煩いのだ。とにかく目をつぶって体力の回復にだけ努めることにする。それでも22時前くらいからウトウトし始め、気が付いたら23時半になっていた。計画では夜の3時に出発する予定になっていたのだが、夕方五合目の暑さを考えるともう少し早く出発したい。そこで荷物をまとめて24時には五合目を発つことにした。外に出ると夕方の混雑が嘘のように誰もいない。気温は大分下がってはいるが、寒いと感じるほどではない。ラジオ体操をして体をほぐしているとタクシーがやって来た。登山姿の60過ぎのご夫婦が降りる。これから登るのだろうか。だとしたら七合目以降の山小屋に泊まる予定なのだろうか。そんなことを考えていたらいつの間にか24時が間近となっていた。
(夕陽を望む)
(出発前 ここを離れるとヘッドランプ無しでは歩けない)
7月27日(二日目) 七合目を目指す
24時を回ったところでいよいよ山頂に向けて出発する。まずは佐藤小屋方面との分岐でもある泉ヶ滝を目指すのだが、その前に総合管理センターで天気を確認していく。どうやら5時までは少なくとも晴れているらしい。ヘッドランプを点けて歩き出す。ちょっとした樹林帯を抜けると道はどんどん下っていく。泉ヶ滝まではずっと下りなのだ。北側は展望の良い所で、晴れていれば富士吉田の街の灯りも見えるのだが、今日は厚い雲が掛かっていて全く見えない。山頂付近とはえらい違いだ。所々落ちている馬の糞に気を付けながら、泉ヶ滝(2275)にやって来る。ここからは樹林帯の登りだ。石が敷き詰められた道は段差の大きな所もあり、少々歩き難い。落石事故防止用のトンネルの辺りで先ほどタクシーで乗り付けたご夫婦に追い抜かれる。奥さんがサポートタイツ姿だったところを見ると結構健脚な人達なのだろう。ボクはマイペースでゆっくりと歩いていく。トンネルを抜けると煌々と灯りの点いた六合目の安全指導センターに着く。簡易トイレがたくさん置いてあるのだが、その理由は下山時に判明する。
(泉ヶ滝)
(六合目安全指導センター)
六合目から七合目花小屋までは砂礫地の九十九折となっている。10年前に歩いたときはこの間でも死屍累々といった感じで座り込んで休憩している人が結構いたものだが、弾丸登山自粛を呼びかけるようになった成果なのか、今回は全く見当たらなかった。そして夜通し歩く人もかなり減ったように感じる。徐々に近づく山小屋の灯りを目印に歩き続け、六合目から一時間ほどで標高2700メートルの花小屋に到着。花小屋のHPによるとここまでは馬で上がることができるそうだ。どうりで歩きやすい砂礫地の九十九折になっていたわけだ。
(七合目の山小屋を見上げると月が出ていた)
(七合目の山小屋の灯り)
(花小屋)
七合目からが富士登山本番
七合目から八合目蓬莱館までは岩場のやや急な斜面へと変わる。吉田ルートで一番厳しいのはこの岩場の登りだろう。特に夜間登山の場合、足下がわかりにくいので、ややもすれば効率の悪いルートを歩いてしまいがちになる。ただ東洋館までは山小屋が連続するエリアなので、疲れたら小屋前で休んでいけばよい。富士山での死亡事故は落石によるものが最も多いのだが、小屋は一番安全なので、苦しくても岩場でへたり込まないようにしたい。赤い鳥居が立つ本七合目の鳥居荘に着いたのは2時半近く。10分前に居た一つ手前の富士一館の張り紙には八合目まで一時間と書かれていたので、まだ50分くらいはかかるだろう。床が板張りされた綺麗な東洋館を過ぎるとしばらくの間小屋が無い。精神的にはなかなかきつい所だが、五合目でしっかりと休憩を取ったおかげか、それほど身体は疲れていない。
(日の出館)
(七合目トモエ館 なお本八合目にもトモエ館がある)
(七合目救護所 八合目にも救護所がある)
(鎌岩館 標高は2790m)
(富士一館 標高は2800m)
(鳥居荘)
(東洋館)
東洋館を出発して30分ほどで標高3100メートルの太子館に到着。これ以降は八合目だ。過去二回はいずれもこの辺りから高山病の症状が出始めていた。今回は高山病の影響なのかはわからないが、とにかくお腹の調子が悪い。前日の朝から下痢気味ではあったのだが、高所で寒さが厳しくなってきたせいか、猛烈にお腹が痛む。ただ前日トイレに入っても出るものが無く、実際便意を催しているわけでもなかった。唯々お腹の痛みに耐えて登るしかなさそうだ。蓬莱館を過ぎると道は砂礫地の九十九折へと変わる。岩場の登りに比べると体力的にはかなり楽だ。標高3200メートルの白雲荘に着くと東の空が明るくなってきた。オレンジから藍色へと変わるグラデーションが美しい。40分ほどかけて登ると富士山ホテルに着く。小屋の前には雲海が広がっているのがはっきりと見える。もうじき日の出時刻だが、まだ上がれそうだ。
(太子館)
(蓬莱館)
(白雲荘)
(白雲荘からの眺め)
(元祖室 標高は3250m)
(雲海も見えるようになってきた)
(富士山ホテル)
(富士山ホテルからの眺め)
高山病に罹る それでも山頂へ
4時40分、標高3400メートルの本八合目トモエ館に到着。もう日の出の時刻は過ぎているが、まだ日は昇りきっていない。小屋前のテラスで待っていると雲海の向こうから太陽が姿を見せた。御来光に特別な感情は持っていないのだが、何故かこのときは手を合わせて拝んでしまった。太陽の持つ巨大な熱エネルギーがそうさせたのだろうか。日が昇ったことで少し空気が暖かくなってきた。だがお腹の調子は相変わらず悪く、おまけに頭痛と吐き気まで催してきた。完全に高山病だ。ただここまで来れば山頂は目前で、8年前に高山病に罹ったときも惰性で登ることができた。水を飲み、とにかくゆっくりと歩いていくことにした。
(本八合目トモエ館 標高は3400m)
(トモエ館からの御来光)
(江戸屋 後ろを見るとわかるように九十九折に上がっていく)
最後の小屋である御来光館を過ぎると学校登山のグループに出会う。割とゆっくりとしたペースだったので、一番後ろにいた先生方と話して、後を付いていくことにした。しかし彼らのペースにも付いて行けず、次第に遅れ始める。石室のような迎久須志神社がある九合目からは道も狭くなる。追い抜くのが難しくなるので、この辺りから所々で渋滞するようになる。鳥居が見えてくれば山頂は近い。鳥居を潜って石段を登ると久須志神社の前に出る。吉田ルート頂上に到着だ。山頂は流石に人が多く、久須志神社隣の山小屋も一杯で中に入ることができなかった。風の当たらない所で休憩を取りたかったのだが、仕方がない。高山病の症状を和らげるには下る以外に方法はないので、早いところ浅間大社奥宮に行って御朱印帳を購入してしまいたい。
(御来光館)
(御来光館裏から山頂を望む)
(九合目手前の鳥居)
(迎久須志神社)
(吉田ルート山頂に到着)
念願の御朱印帳を手に入れる そして下山
久須志神社から浅間大社奥宮へは軽いアップダウンが続く道で通常なら30分程度で歩きとおせる。しかし高山病に罹って体に力が入らない状態で、かつ風もそれなりに強い状態ということもあり、なかなか浅間神社奥宮が近づいてこない。御殿場ルートの頂上から登り返した所が浅間神社奥宮や郵便局が入った石室が立つ富士宮ルートの頂上だ。風が強く寒いので、建物の陰に隠れて水を飲む。高山病に罹ったときは体を温めて水を飲むと症状が和らぐとの話もあるが、気休め程度と考えていい。石室の中に入ると風はなく、ようやく落ち着ける。とりあえず御朱印帳を購入しようと思ったのだが、どこで頼んだらよいのかよくわからない。両親から頼まれたお守りを買う際に神職に聞いてみると御朱印を押す所で聞いてみればわかるという。御朱印を押す所には列ができているのだが、そちらには並ばずに直接声を掛けて購入することができた。どうやら御朱印を貰う人達は繰り返し富士山に登っていて、過去に購入した御朱印帳に押してもらっていることが多いようだ。
(富士宮ルート頂上)
無事目的を果たし、後は日本最高所である剣ヶ峯を目指すだけだが、今回は寄らないことにした。10年前に既に登っているし、今の体調では剣ヶ峯手前の馬の背を登りきることができないだろう。正直久須志神社の手前まで戻るのも辛いくらいなので、これ以上登ることなど考えることができなかった。強風吹き付ける御鉢を戻り、山小屋手前から吉田口・須走口下山路に入る。登山道と異なり、六合目まで只管砂礫地の九十九折が続くので、山慣れている人なら歩きやすい道だろう。高度を下げれば高山病はすぐに良くなるかと思ったのだが、なかなか症状は改善せず、何度も道端に座り込んでしまう。こんなに下山がきついことは過去二回ではなかった。御来光館が見える高さも過ぎ、須走口との分岐を過ぎた辺りから急に気持ち悪さが無くなり、体が軽く感じる。ようやく高山病から解放された。こうなるとそれまで体力を使ってこなかったので、一気にスピードを上げることができる。山頂から須走口分岐までの間で追い抜かれた人達を逆にどんどん追い抜く。本来こんなに急ぐ必要は無かったのだが、下山路は砂埃が酷く、下山者が多い時間帯にのんびり下る気にはなれなかったのだ。
(大内院を望む)
(山小屋の手前に吉田口・須走口下山道が延びている)
(下山路 傾斜はそれなりに急だが、山慣れている人なら楽な道だろう)
(吉田口・須走口分岐 10年前に歩いたときは小さな立札だったような…)
落石事故防止用のシェルターを過ぎると安全指導センターのある六合目へと戻ってくる。ボクは全く知らなかったのだが、7月27日は富士登山競争の日で、六合目はエイドステーションとなっていた。簡易トイレが沢山設置されていた理由がようやくわかった。六合目より下は登下山道が一緒になるのだが、選手はほとんど通り過ぎてしまったのか、酷い渋滞を引き起こすことはなかった。歩き難い石積みの道は他の登山者も難儀しているらしく、砂礫地の九十九折に比べるとだいぶスピードが落ちる。泉ヶ滝へ下りてくると観光用の馬車が泊まっていた。五合目まで乗せていってくれるとのことだが、料金4000円は少々お高い。我慢して最後の長い登りを進んでいく。灼熱の道でもう少し長い行程だったら熱中症になっていただろう。樹林を抜けると河口湖口五合目へと帰ってきた。三度目の富士登山も無事下山することができた。
(落石事故防止用のシェルター 2ヶ所ある)
(六合目付近 登山競争の選手たちが登っていく最中)
(五合目に帰ってきた とにかく人が多い)
宿泊した富士山みはらしで休憩を取っていこうかとも思ったが、観光客と下山者がどんどんやってきて、店でのんびり買い物することもできない。止む無く外の自販機で水を買い、早めに帰ることにした。新宿行きの高速バスは既に満員だろうと諦めていたのだが、富士山駅行きのバスも結構混んでいて乗ることができない。そこでハイウェイバスドットコムで予約状況を確認するとまだ席が残っている。すぐに11時発のバスの予約を取り、窓口で乗車券を買うことができた。窓口でも高速バスのチケットを予約無しに購入することはできるのだが、ボクの前に並んでいた外国人グループは購入できなかったので、ネット予約枠があるのではないかと思う。行きと同じく帰りも隣は日本人でそれほど窮屈に感じることなく帰路に就くことができた。
(浅間大社奥宮の御朱印帳と御朱印)
DATA:
7月26日(一日目)
バスタ新宿14:45(中央高速バス)富士山河口湖口五合目17:12→富士山みはらし(宿泊)
7月27日(二日目)
富士山みはらし0:00→0:13泉ヶ滝→0:39六合目(安全指導センター)→1:42七合目花小屋→2:27本七合目鳥居荘→3:04八合目太子館→4:40本八合目トモエ館→5:08八合五勺御来光館→5:45九合目迎久須志神社→6:18富士山山頂久須志神社→6:55浅間大社奥宮→7:20吉田口・須走口下山路入口→8:29須走ルート分岐点→9:33六合目→10:08富士山河口湖口五合目11:00(中央高速バス)バスタ新宿
山と高原地図「富士山」(昭文社)
トイレ 河口湖口五合目・六合目・七合目以降各山小屋・下山路七合目トイレなど
入山料 1000円(環境保全協力金という名目)
交通機関
西武新宿・拝島線 新所沢~西武新宿 370円(往復)
中央高速バス バスタ新宿~富士山五合目 2700円 富士山五合目~バスタ新宿 2700円(共に片道料金)
宿泊 富士山みはらし 相部屋 6480円(税込み)
富士登山の方法論については脇屋さんの「山旅メーリングリスト」(http://tozan.net)の「富士登山をしてみたい」をご覧ください。大変示唆に富んだ考察がなされています。強いて言えばマスクは必須としてよいのではないかと思います。マスク無しで下ると2日間くらい気管支の痛みに悩まされることになります。持ってなければタオルを巻いて鼻と口を覆っておいてください。また富士山は五合目以降、砂漠に近い気候と考えることができます。夜間の寒さは良く知られているところですが、日中の暑さにも注意が必要です。標高が高くても山頂付近を除けばそれほど涼しくはなく、熱中症の危険もあります。できれば下山用の飲み物を取っておくようにしましょう。
八合目以降で高山病に罹ったため写真が少なめです。予めご了承ください。
ボクの兄は御朱印集めを趣味にしている。世の中には目的が無いとなかなか出掛けられない人もいて、仕事が忙しく旅行先を決めづらい兄にはちょうど良い趣味なのだろう。ある日、そんな兄が所沢の家に戻ってきて歓談をしていたところ、富士山頂に行く機会があったら御朱印帳を購入してきてほしいと相談してきた。どうやら富士山頂でしか購入できない御朱印帳があるらしい。ボクは8年前と10年前に富士山頂まで登っていて、正直富士山はもう懲り懲りだと思っていた。しかし遠回しにとは言え、御朱印帳購入を頼まれたからにはいずれ登らなければならない。そこで機会をうかがっていたのだが、昨年の7月は繁忙期が長引いて忙しく、8月は悪天候と富士山へ行くことができなかった。だが、今年は繁忙期が早く終わったので準備をしっかりと整えて富士山へ三度目の挑戦をすることになった。
7月26日(一日目) 初めてのバスタ新宿 そして五合目宿泊
前回まで二度の富士登山は共にいわゆる弾丸登山と呼ばれるものであった。夜遅く高速バスで五合目に着き、そこから夜通し歩いて山頂を目指すやり方には現在自粛要請が出されている。今回はどこかで宿泊する必要があるのだが、七合目以降の山小屋の状況を考えるとあまり積極的に宿泊したいものではない。そこで観光地化されている五合目で宿泊できないか調べたところ、河口湖口にはいくつかの宿泊施設があり、予約を受け付けていた。早速その一つに宿泊予約を取った。あとは五合目までのアクセスだけが問題だった。河口湖口五合目までは新宿からの高速バスが安くて、早くて簡便なのだが、7月以降予約が一杯だったのだ。今回は諦めて電車利用を考えていたところ、宿の予約を取った後予約サイト(ハイウェイバスドットコム)を見ると運の良いことにバスの予約も取れてしまった。登山予定日には台風が近づいているとの予報もあったが、こうなれば後には引けない。雨風が強くなれば歩いて五合目から下山するつもりであった。
出発当日。かつて新宿駅は仕事でもレジャーでも頻繁に訪れていた所だが、最近は御無沙汰している。おまけに高速バス乗り場であるバスタ新宿へは初めて訪れる。どの辺りにあるのか全く調べなかったのだが、かつてあった西口のバス乗り場からはそう遠くないだろうと西武新宿駅からJR新宿駅に向けて地下道を歩き出す。空調の利いた地下道は涼しく、夏場夜行バスを使うときは人混みの多い地上部分を歩くよりも良いのではないだろうか。JR新宿駅近くまで来て案内図を見るとバスタ新宿は南口のすぐそばにある。ふむ、高島屋タイムズスクエアの近くだな。東口から地上に出て、ガードを潜り、エスカレーターで上がるとバスタ新宿の待合所に着いた。電光掲示板を見るとウィラーエクスプレスのバスも発着しており、利便性はかなり増したのではないだろうか。
綺麗な待合所ではバス乗車券の販売も行っており、席が空いていれば直接窓口で買ってもよい。但し富士山五合目は電光掲示板によると満席になっていた。ボクはコンビニで事前に乗車券を購入していたので、直接乗務員に見せてバスに乗り込む。なお乗車券は降車時に回収するとのことなので、紛失してしまわないようにしたい。ザックはトランクに入れ、手ぶらで乗り込むと隣は僕より年上らしき日本人男性であった。以前乗ったときは体の大きな外国人男性だったのでありがたい。バスは午後の新宿の街を快調に走り出し、1時間ほどで八王子近くまで来てしまう。日の高い内に中央道に乗ったのは初めてだったのだが、関越道や東北道と異なり片側二車線であることをようやく知った。これでは連休中の渋滞も激しくなるわけだ。
八王子を過ぎると周囲は山岳風景へと変わり、大月に近づけば見慣れた扇山・百蔵山や大きな岩場が露出する岩殿山が見えてくる。大月からは中央道の富士吉田線に入る。桂川によってできた谷間を富士急行大月線と並ぶように進んでいく。富士急ハイランドが見えてくる頃には富士山が正面に見えるはずなのだが、台風の影響なのか空は厚い雲に覆われて、薄らとしか姿を拝むことができなかった。河口湖ICを降りると河口湖口五合目へ続く富士スバルラインはすぐそこだ。周囲は鬱蒼とした原生林で、それが一時間近く続く。四合目の御庭を過ぎた辺りで雲の上に出たのか強い太陽の光が車内まで差し込んでくる。五合目より上は綺麗に晴れているようだ。
河口湖口五合目には予定時刻より10分ほど早く到着した。もう17時過ぎなのだが、まだ日は高く、観光客の姿も多い。宿に入るにはまだ早いので、軽く周辺散策をする。バスターミナルの下には休憩所とトイレがあり、唯一無料で使える施設だ。土産物店街の北には小御嶽神社があり、今の時期は17時半くらいまで開けているようだ。拝殿で明日の登頂成功を願ってお参りしていく。土産物店はどこも相変わらずの混雑だが、明日に備えて500mlのペットボトル入りの水を一本買っておいた。新所沢の西友でも一本買っておいたので、明日は1リットルの水を持って歩く予定だ。
(河口湖口五合目から山頂を望む 山頂付近には雲が掛かる)
(小御嶽神社から山頂を望む)
(五合目休憩所付近から下界を望むと雲海が広がっていた)
宿はすぐ側の「富士山みはらし」に取っているのだが、食事は付かないので、2階のレストランで早めの夕食を取ることにした。10年前に初めて富士山に登ったときも外国人が多かった印象があったのだが、今は観光客の比率としても外国人のほうが多いのではないだろうか。レストランも外国人の利用が多く、ボクにはわからない言葉が飛び交っていた。感心したのは富士山みはらしの従業員の方たちで、皆英語を流暢に話していた。英語が苦手なボクからしたら羨ましいばかりである。夕食は「山旅メーリングリスト」で「前日はパスタを食え」とのことだったので、パスタを取ることにした。味は良かったのだけれども、結構お腹が凭れた。朝から調子が悪かったのでそのせいもあるのだろう。食事を終え、外に出るとまだ日は落ちていない。日影はだいぶ肌寒い感じもするのだが、日に当たっているとかなり暑い。この暑さを考えると夜の出発時間をよく考える必要がある。
(右が富士山みはらし)
18時半を過ぎたので、1階奥で宿泊受付を済ませる。料金は税込で6480円。食事の付かない相部屋なので、この料金を高いと見るか安いと見るか難しいところだ。3階の宿泊スペースに案内されると他の宿泊客の荷物が既に置かれていた。40人泊まれる部屋に10人ほどの予約とのことだったので、スペースにはかなり余裕がある。荷物を下ろし、19時頃まで外で過ごす。土産物店街のすぐ先にある総合管理センターではTVモニターで気象情報を提供しており、5時間先の天気がわかる。山頂付近は晴れの予報だ。登る前にもう一度確認していくことにしよう。総合管理センター隣では入山料の徴収を行っていて、ボクも払っていくことにした。冊子と木札が貰えて、木札は登山中ザックに括り付けておくように言われる。
(総合管理センター 手前のテントで入山料の徴収を行っている)
宿に戻ると既に数人の宿泊客が床に就いて鼾をかいていた。足に靴擦れ防止のテーピングを張ってからボクも寝ることにした。布団を被るがどうにも眠れない。ボクの布団は廊下側にあるのだが、個室客の人たちが頻繁に出入りするので煩いのだ。とにかく目をつぶって体力の回復にだけ努めることにする。それでも22時前くらいからウトウトし始め、気が付いたら23時半になっていた。計画では夜の3時に出発する予定になっていたのだが、夕方五合目の暑さを考えるともう少し早く出発したい。そこで荷物をまとめて24時には五合目を発つことにした。外に出ると夕方の混雑が嘘のように誰もいない。気温は大分下がってはいるが、寒いと感じるほどではない。ラジオ体操をして体をほぐしているとタクシーがやって来た。登山姿の60過ぎのご夫婦が降りる。これから登るのだろうか。だとしたら七合目以降の山小屋に泊まる予定なのだろうか。そんなことを考えていたらいつの間にか24時が間近となっていた。
(夕陽を望む)
(出発前 ここを離れるとヘッドランプ無しでは歩けない)
7月27日(二日目) 七合目を目指す
24時を回ったところでいよいよ山頂に向けて出発する。まずは佐藤小屋方面との分岐でもある泉ヶ滝を目指すのだが、その前に総合管理センターで天気を確認していく。どうやら5時までは少なくとも晴れているらしい。ヘッドランプを点けて歩き出す。ちょっとした樹林帯を抜けると道はどんどん下っていく。泉ヶ滝まではずっと下りなのだ。北側は展望の良い所で、晴れていれば富士吉田の街の灯りも見えるのだが、今日は厚い雲が掛かっていて全く見えない。山頂付近とはえらい違いだ。所々落ちている馬の糞に気を付けながら、泉ヶ滝(2275)にやって来る。ここからは樹林帯の登りだ。石が敷き詰められた道は段差の大きな所もあり、少々歩き難い。落石事故防止用のトンネルの辺りで先ほどタクシーで乗り付けたご夫婦に追い抜かれる。奥さんがサポートタイツ姿だったところを見ると結構健脚な人達なのだろう。ボクはマイペースでゆっくりと歩いていく。トンネルを抜けると煌々と灯りの点いた六合目の安全指導センターに着く。簡易トイレがたくさん置いてあるのだが、その理由は下山時に判明する。
(泉ヶ滝)
(六合目安全指導センター)
六合目から七合目花小屋までは砂礫地の九十九折となっている。10年前に歩いたときはこの間でも死屍累々といった感じで座り込んで休憩している人が結構いたものだが、弾丸登山自粛を呼びかけるようになった成果なのか、今回は全く見当たらなかった。そして夜通し歩く人もかなり減ったように感じる。徐々に近づく山小屋の灯りを目印に歩き続け、六合目から一時間ほどで標高2700メートルの花小屋に到着。花小屋のHPによるとここまでは馬で上がることができるそうだ。どうりで歩きやすい砂礫地の九十九折になっていたわけだ。
(七合目の山小屋を見上げると月が出ていた)
(七合目の山小屋の灯り)
(花小屋)
七合目からが富士登山本番
七合目から八合目蓬莱館までは岩場のやや急な斜面へと変わる。吉田ルートで一番厳しいのはこの岩場の登りだろう。特に夜間登山の場合、足下がわかりにくいので、ややもすれば効率の悪いルートを歩いてしまいがちになる。ただ東洋館までは山小屋が連続するエリアなので、疲れたら小屋前で休んでいけばよい。富士山での死亡事故は落石によるものが最も多いのだが、小屋は一番安全なので、苦しくても岩場でへたり込まないようにしたい。赤い鳥居が立つ本七合目の鳥居荘に着いたのは2時半近く。10分前に居た一つ手前の富士一館の張り紙には八合目まで一時間と書かれていたので、まだ50分くらいはかかるだろう。床が板張りされた綺麗な東洋館を過ぎるとしばらくの間小屋が無い。精神的にはなかなかきつい所だが、五合目でしっかりと休憩を取ったおかげか、それほど身体は疲れていない。
(日の出館)
(七合目トモエ館 なお本八合目にもトモエ館がある)
(七合目救護所 八合目にも救護所がある)
(鎌岩館 標高は2790m)
(富士一館 標高は2800m)
(鳥居荘)
(東洋館)
東洋館を出発して30分ほどで標高3100メートルの太子館に到着。これ以降は八合目だ。過去二回はいずれもこの辺りから高山病の症状が出始めていた。今回は高山病の影響なのかはわからないが、とにかくお腹の調子が悪い。前日の朝から下痢気味ではあったのだが、高所で寒さが厳しくなってきたせいか、猛烈にお腹が痛む。ただ前日トイレに入っても出るものが無く、実際便意を催しているわけでもなかった。唯々お腹の痛みに耐えて登るしかなさそうだ。蓬莱館を過ぎると道は砂礫地の九十九折へと変わる。岩場の登りに比べると体力的にはかなり楽だ。標高3200メートルの白雲荘に着くと東の空が明るくなってきた。オレンジから藍色へと変わるグラデーションが美しい。40分ほどかけて登ると富士山ホテルに着く。小屋の前には雲海が広がっているのがはっきりと見える。もうじき日の出時刻だが、まだ上がれそうだ。
(太子館)
(蓬莱館)
(白雲荘)
(白雲荘からの眺め)
(元祖室 標高は3250m)
(雲海も見えるようになってきた)
(富士山ホテル)
(富士山ホテルからの眺め)
高山病に罹る それでも山頂へ
4時40分、標高3400メートルの本八合目トモエ館に到着。もう日の出の時刻は過ぎているが、まだ日は昇りきっていない。小屋前のテラスで待っていると雲海の向こうから太陽が姿を見せた。御来光に特別な感情は持っていないのだが、何故かこのときは手を合わせて拝んでしまった。太陽の持つ巨大な熱エネルギーがそうさせたのだろうか。日が昇ったことで少し空気が暖かくなってきた。だがお腹の調子は相変わらず悪く、おまけに頭痛と吐き気まで催してきた。完全に高山病だ。ただここまで来れば山頂は目前で、8年前に高山病に罹ったときも惰性で登ることができた。水を飲み、とにかくゆっくりと歩いていくことにした。
(本八合目トモエ館 標高は3400m)
(トモエ館からの御来光)
(江戸屋 後ろを見るとわかるように九十九折に上がっていく)
最後の小屋である御来光館を過ぎると学校登山のグループに出会う。割とゆっくりとしたペースだったので、一番後ろにいた先生方と話して、後を付いていくことにした。しかし彼らのペースにも付いて行けず、次第に遅れ始める。石室のような迎久須志神社がある九合目からは道も狭くなる。追い抜くのが難しくなるので、この辺りから所々で渋滞するようになる。鳥居が見えてくれば山頂は近い。鳥居を潜って石段を登ると久須志神社の前に出る。吉田ルート頂上に到着だ。山頂は流石に人が多く、久須志神社隣の山小屋も一杯で中に入ることができなかった。風の当たらない所で休憩を取りたかったのだが、仕方がない。高山病の症状を和らげるには下る以外に方法はないので、早いところ浅間大社奥宮に行って御朱印帳を購入してしまいたい。
(御来光館)
(御来光館裏から山頂を望む)
(九合目手前の鳥居)
(迎久須志神社)
(吉田ルート山頂に到着)
念願の御朱印帳を手に入れる そして下山
久須志神社から浅間大社奥宮へは軽いアップダウンが続く道で通常なら30分程度で歩きとおせる。しかし高山病に罹って体に力が入らない状態で、かつ風もそれなりに強い状態ということもあり、なかなか浅間神社奥宮が近づいてこない。御殿場ルートの頂上から登り返した所が浅間神社奥宮や郵便局が入った石室が立つ富士宮ルートの頂上だ。風が強く寒いので、建物の陰に隠れて水を飲む。高山病に罹ったときは体を温めて水を飲むと症状が和らぐとの話もあるが、気休め程度と考えていい。石室の中に入ると風はなく、ようやく落ち着ける。とりあえず御朱印帳を購入しようと思ったのだが、どこで頼んだらよいのかよくわからない。両親から頼まれたお守りを買う際に神職に聞いてみると御朱印を押す所で聞いてみればわかるという。御朱印を押す所には列ができているのだが、そちらには並ばずに直接声を掛けて購入することができた。どうやら御朱印を貰う人達は繰り返し富士山に登っていて、過去に購入した御朱印帳に押してもらっていることが多いようだ。
(富士宮ルート頂上)
無事目的を果たし、後は日本最高所である剣ヶ峯を目指すだけだが、今回は寄らないことにした。10年前に既に登っているし、今の体調では剣ヶ峯手前の馬の背を登りきることができないだろう。正直久須志神社の手前まで戻るのも辛いくらいなので、これ以上登ることなど考えることができなかった。強風吹き付ける御鉢を戻り、山小屋手前から吉田口・須走口下山路に入る。登山道と異なり、六合目まで只管砂礫地の九十九折が続くので、山慣れている人なら歩きやすい道だろう。高度を下げれば高山病はすぐに良くなるかと思ったのだが、なかなか症状は改善せず、何度も道端に座り込んでしまう。こんなに下山がきついことは過去二回ではなかった。御来光館が見える高さも過ぎ、須走口との分岐を過ぎた辺りから急に気持ち悪さが無くなり、体が軽く感じる。ようやく高山病から解放された。こうなるとそれまで体力を使ってこなかったので、一気にスピードを上げることができる。山頂から須走口分岐までの間で追い抜かれた人達を逆にどんどん追い抜く。本来こんなに急ぐ必要は無かったのだが、下山路は砂埃が酷く、下山者が多い時間帯にのんびり下る気にはなれなかったのだ。
(大内院を望む)
(山小屋の手前に吉田口・須走口下山道が延びている)
(下山路 傾斜はそれなりに急だが、山慣れている人なら楽な道だろう)
(吉田口・須走口分岐 10年前に歩いたときは小さな立札だったような…)
落石事故防止用のシェルターを過ぎると安全指導センターのある六合目へと戻ってくる。ボクは全く知らなかったのだが、7月27日は富士登山競争の日で、六合目はエイドステーションとなっていた。簡易トイレが沢山設置されていた理由がようやくわかった。六合目より下は登下山道が一緒になるのだが、選手はほとんど通り過ぎてしまったのか、酷い渋滞を引き起こすことはなかった。歩き難い石積みの道は他の登山者も難儀しているらしく、砂礫地の九十九折に比べるとだいぶスピードが落ちる。泉ヶ滝へ下りてくると観光用の馬車が泊まっていた。五合目まで乗せていってくれるとのことだが、料金4000円は少々お高い。我慢して最後の長い登りを進んでいく。灼熱の道でもう少し長い行程だったら熱中症になっていただろう。樹林を抜けると河口湖口五合目へと帰ってきた。三度目の富士登山も無事下山することができた。
(落石事故防止用のシェルター 2ヶ所ある)
(六合目付近 登山競争の選手たちが登っていく最中)
(五合目に帰ってきた とにかく人が多い)
宿泊した富士山みはらしで休憩を取っていこうかとも思ったが、観光客と下山者がどんどんやってきて、店でのんびり買い物することもできない。止む無く外の自販機で水を買い、早めに帰ることにした。新宿行きの高速バスは既に満員だろうと諦めていたのだが、富士山駅行きのバスも結構混んでいて乗ることができない。そこでハイウェイバスドットコムで予約状況を確認するとまだ席が残っている。すぐに11時発のバスの予約を取り、窓口で乗車券を買うことができた。窓口でも高速バスのチケットを予約無しに購入することはできるのだが、ボクの前に並んでいた外国人グループは購入できなかったので、ネット予約枠があるのではないかと思う。行きと同じく帰りも隣は日本人でそれほど窮屈に感じることなく帰路に就くことができた。
(浅間大社奥宮の御朱印帳と御朱印)
DATA:
7月26日(一日目)
バスタ新宿14:45(中央高速バス)富士山河口湖口五合目17:12→富士山みはらし(宿泊)
7月27日(二日目)
富士山みはらし0:00→0:13泉ヶ滝→0:39六合目(安全指導センター)→1:42七合目花小屋→2:27本七合目鳥居荘→3:04八合目太子館→4:40本八合目トモエ館→5:08八合五勺御来光館→5:45九合目迎久須志神社→6:18富士山山頂久須志神社→6:55浅間大社奥宮→7:20吉田口・須走口下山路入口→8:29須走ルート分岐点→9:33六合目→10:08富士山河口湖口五合目11:00(中央高速バス)バスタ新宿
山と高原地図「富士山」(昭文社)
トイレ 河口湖口五合目・六合目・七合目以降各山小屋・下山路七合目トイレなど
入山料 1000円(環境保全協力金という名目)
交通機関
西武新宿・拝島線 新所沢~西武新宿 370円(往復)
中央高速バス バスタ新宿~富士山五合目 2700円 富士山五合目~バスタ新宿 2700円(共に片道料金)
宿泊 富士山みはらし 相部屋 6480円(税込み)
富士登山の方法論については脇屋さんの「山旅メーリングリスト」(http://tozan.net)の「富士登山をしてみたい」をご覧ください。大変示唆に富んだ考察がなされています。強いて言えばマスクは必須としてよいのではないかと思います。マスク無しで下ると2日間くらい気管支の痛みに悩まされることになります。持ってなければタオルを巻いて鼻と口を覆っておいてください。また富士山は五合目以降、砂漠に近い気候と考えることができます。夜間の寒さは良く知られているところですが、日中の暑さにも注意が必要です。標高が高くても山頂付近を除けばそれほど涼しくはなく、熱中症の危険もあります。できれば下山用の飲み物を取っておくようにしましょう。
富士さんの記事に書いてよいのかですが、忘れぬうちに!
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=1051747278360794&id=100005765952128
普段一人で歩いているので、とても楽しい山歩きになりました。ありがとうございました。
小金沢連嶺の記事のUPはちょっと時間がかかるかもしれません。ご了承ください。