野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

武蔵野の記憶 不老川 狭山池から権現橋

2014年07月01日 | 武蔵野の記憶
(不老川の土手 山王中学校付近)

不老川は東京都西多摩郡瑞穂町にある狭山池に発し、入間市・所沢市・狭山市を経て川越市の新河岸川へと流れ込んでいる。
狭山池の伏流水を水源としているため、かつては冬になると干上がってしまうことがあった。
正月の頃になると水が流れない川ということで「としとらず川」と呼ばれ、それが次第に音読みのふろうがわとなったらしい。
以前自転車で不老川を下ったことがあったのだが、土手が狭く、自転車では川を辿りにくいという難点があった。
そこで徒歩で行ってみることにした。但し迂回路などを考えると20kmくらいあるので、一日で川越まではきついかもしれない。

11時に箱根ヶ崎駅へ着く。八高線を使ってこの駅に降りるのは初めてだ。狭山丘陵を迂回するため所沢から一時間も掛かってしまった。
駅周辺は商店もあることはあるのだが、どちらかといえば住宅地のほうが優勢のようだ。金子駅辺りと似ているように感じる。
駅前の広めの通りを進み、墓地が目立つ寺まで来ると左手に細い車道が下りていく。車道を下りると残堀川が見えてくる。
残堀川は不老川と同じく狭山池を水源とする川で、南の多摩川へと流れ込んでいる。川の規模は残堀川のほうが大きい。
残堀川の遊歩道を進むと狭山池が見えてくる。案内板によると狭山池はかつては現在よりもかなり大きな池だったらしい。
しかし残堀川の水を玉川上水に注ぎ込むため、狭山池の水を残堀川につなげたことから池が小さくなってしまったそうだ。
池の周辺には飲食店が数軒建ち、昔から観光地としての意味合いが大きかったと推測される。
池では原則釣りが禁止になっているが、ふなっこ池だけは許されている。子供たちが釣りに興じているのを見ると何となく和んでしまう。





狭山池


(釣りをする子供たち)


(弁天堂)




(残堀川)

大通りへと戻り、すぐ近くにある狭山神社へと寄って行く。狭山神社は狭山丘陵の西端にある小さな丘の上に鎮座している。
前回も苦しんだ急な石段を登る。今日はここのところの雨でかなり石段が滑りやすくなっていた。
石段を登りきると大きな社殿が出迎えてくれる。社殿の奥に最高点があるのだが、藪っぽいので無理して行く意味は無い。
狭山神社の祭神の一つに箱根大神が居り、岬のような丘の突端に神社が置かれたことから箱根ヶ崎という地名が付いたとされている。

(狭山神社の石段)


(社殿)


(巨樹)

社殿脇のスロープを下り、大通りをしばらく進むと国道16号に合流する。不老川はしばらく伏流となっているので、車道を行くしかない。
ガソリンスタンドが見えてきたら、手前の車道を右に入る。住宅街を抜ける細い道路だが、交通量は多い。抜け道になっているのかも。
不老川は北の住宅街を流れている。但し私有地には立ち入れないので、川沿いの車道が付けられている所まではお預けである。
食品工場がある交差点を左に入ると不老川がようやく見えてくる。コンクリートで護岸された川は驚くほど川底が浅い。
正面に見える老人ホームまで川沿いに歩く。不老川は老人ホームの裏手を回り込むように付けられている。ここはそのまま裏手を回り込む。

(茶畑だったのだろうか 奥は狭山丘陵)


(いよいよ不老川に出る 奥の建物は老人ホーム


(川底は浅い)


(裏手を回って 公園がある)

老人ホームを過ぎると瑞穂町と所沢市とを結ぶ県道に出る。県道の先はもう入間市だ。道路を渡り、右岸の広い土手を進む。
すると道路にぶつかる所で土手が無くなる。入間市内は畑や住宅地を通ることが多く、川沿いに歩けない所が多い。
一旦道路を北に進み、最初の分岐を右に入る。すると再び道路にぶつかる。道標が立っているので、目印にはちょうど良い。
この辺りは茶畑が多い。綺麗に刈り取られたお茶の木は庭師による芸術作品のようでもある。
また道路を北に進むと地形図で未成線となっている辺りにやってくる。道路は出来上がっていないが、用水路に蓋をした通路がある。
蓋をした通路が切れる辺りでようやく不老川に再会。さてどこまで土手を歩いて行けることやら。

(入間市に入る)


(土手を歩くことはできない)


(道標立つ ここは左に)


(茶畑)


(未成線の通路)


(用水路が切れると不老川に合流する)

橋を渡るとその先はまだ土手を歩いて行けるらしい。大きな木の立つゲートボール場にやってくると何やら川の中に鳥がいる。
あの黄色い産毛はカルガモだ。まだヒナのようだ。親はどこにいるのかと思っていると向こう岸に待機していた。
ここのところ頻繁に雨が降るので、不老川もだいぶ増水しているらしい。流れが速く、ヒナが泳ぐには難しいのかもしれない。
土手は畑の管理用とされているのか、農作業に励む小父さんたちと顔を合わせることが多い。
割と交通量が多い道路に出た所で土手の道が途切れる。ここは大きく迂回していくしかない。



(カルガモの親子)


(ゲートボール場脇)


(畑の管理用の橋 あまり騒がしくしないように)


(流れは速いが川底は浅い)

北は民家、南はだだっ広い畑が広がる道を行く。夏のような日差しが恨めしい。突き当りを右に入り、すぐの分岐を左に入る。
狭い道だが思ったよりも交通量は多い。入間市の畑では珍しく、正面に大きな雑木林が見えてくる。
一時停止の標識を右に入ると不老川に出る。不老川沿いを歩けるのはこの辺りだけで、以後しばらく川からは離れることになる。
突き当り、橋の架かる辺りはよく整備されているが、その先の雑木林に入る所で土手は寸断されてしまう。
止む無く雑木林に沿って細い車道を進んでいく。木陰が涼しいのだが、カラスが多く、あまり林には近寄れない。

(グラジオラス 畑に花を植えた一画がある)


(奥の雑木林で土手は寸断される)


(ここの土手沿いには行けない)


雑木林の脇を進む)


(整備された雑木林)

林が切れると清掃工場の煙突が見えてくる。一面に広がる茶畑が美しい。この辺りも道は狭いが交通量が多い。入間はクルマ社会なのだな。
小さな橋で不老川を渡るとあからさまに交通量の多い通りに合流する。地形図を見ると電波塔脇を抜けていけそうだ。
車一台が通れる程度の砂利道は通る車も無く、のんびりと歩ける。但し猛烈に蒸し暑い。大きな通りのほうが風は抜けるのだ。
入間から川越へと抜ける県道に出ると交通量は格段に増える。その分、風が涼しい。

(清掃工場と茶畑)


(電波塔の脇を抜ける)

しばらく県道を歩き、上藤沢中への通学路に入っていく。不老川からはまだ遠いが、うるさい県道を歩くよりかはましである。
中学校の手前には昔懐かしい駄菓子屋がある。大きな木が立ち、休憩していくには良い所だろう。
住宅街を抜けていくと国道463号(バイパス)に出る。子供たちの声が響き渡っているが、道路の向かい側で遊んでいるらしい。
歩道橋を渡り、不老川へと下りる。すると小学生くらいの男の子たちが声を掛けてきた。どうやら蛇がいるらしい。
覗いてみると細く長い胴体を持った蛇だ。男の子の一人が「なんていう蛇ですか?」と聞いてきた。
特徴からするとアオダイショウだろう。「毒はあるんですか?」と聞かれたので、「無いけれど悪戯しないように」と注意しておいた。

(駄菓子屋)


バイパスにぶつかる)


(歩道橋からの眺め)


(アオダイショウ)

土手の道は県道にぶつかる所で途切れる。熊野神社の交差点までは車道を歩いていくしかない。
近年進学に力を入れている狭山ヶ丘高校や藤沢支所を過ぎると熊野神社に着く。割と大きな神社だが人は常駐していないようだ。
交差点を左に入ると行く手は高台となっている。平らな地形が多い入間には珍しく河岸段丘になっている。
川を渡った所で土手へ下りる階段が設けられている。ここから行政道路(こちらも国道463号)に出るまで土手沿いに歩いて行ける。
左岸にはマンションが多く建ち、河岸段丘であった形跡を見つけることは難しい。住人にとっては眺めは良いのかもしれないが。
交通量の多い道路を度々横切るため、安全に歩くのであれば、信号機のある右岸を歩いたほうが良いだろう。

(県道にぶつかる所までは歩ける)


(路傍の石仏)


熊野神社


(土手へと下りる)


(自販機が置かれている所も)

交通量の多い行政道路には信号機の無い横断歩道もあるが、出来れば交差点まで迂回したほうが良いかもしれない。
土手沿いの道は西武池袋線の手前まで続いているようだが、今回は北に大きく迂回ルートを採った。
でも南の県道を素直に回ったほうが歩く距離は短縮できたように思う。
行政道路から紫陽花咲く下道に下り、保護林を抜けると共同住宅が建つ団地に出る。碁盤の目のような敷地を抜けると入間基地にぶつかる。
踏切を渡り、豊岡第一病院の裏手を進むと茶畑の広がる丘の上に出る。丘を下ると信号機のある交差点が見えてくる。この辺りで狭山市に入る。
交差点を渡ると不老川の流れに沿って基地の周りを歩いていく。この辺りは交通量が多い割に歩道が無いので少々歩きにくい。

行政道路


(行政道路下の紫陽花)


(保護樹林)


(河岸段丘上から)


(左手は入間基地)

基地の敷地から不老川が離れていく所で川沿いの土手を歩いていく。ちょっとわかりにくいが右岸から入れるようになっている。
一旦土手沿いに進むも橋が掛けてある辺りで猛烈な藪となる。流石に歩くのはしんどい。住宅街を抜けて踏切を渡ることにする。
踏切を渡ると線路沿いに歩道が延びる。不老川に橋がかけてあり、左岸から土手を歩くことができるようだ。
線路下の狭いスペースには声変わりした男の子たちの声が聞こえてくる。子供たちにとって大人の目の届かない所が必要だとボクは思う。
何でも監視下において危険から遠ざけることは子供たちをひ弱にしてしまう。大事なのは助言してやることなのだ。

(整備された護岸)

石を積んでできた堤防はコンクリートの護岸よりも見た目に美しい。父親の生家の裏手も祖父が石を積んで堤防を作っていて、何となく親しみが持てる。
そのまま左岸を歩いていくと県道に出る手前で七曲井(ななまがりのい)に着く。すり鉢状に掘って作ったまいまいず井戸という奴だ。
武蔵野台地では深い井戸を掘る必要があったため、一旦すり鉢状に掘り下げて、そこから井戸を掘るということが行われてきた。
羽村や府中にもあるほか、ここ狭山市にはこの七曲井のほかに堀兼神社にある堀兼之井などがある。
七曲井は復元されたもので、井戸まで下りて観察したり、また井戸として使うことはできない。

(カモ)


七曲井まではこんな道が続く)




(七曲井)

目の前にある信号で県道を渡り、少し南に行った分岐に入る。住宅街を抜けると土手に付けられた道に出られる。
ここからは基本的に新河岸川まで土手の上を歩いていくことができる。入間市側に比べるとかなり歩きやすいと云えるだろう。
紫陽花や桜の木が点々と植えられ、藪刈りなども定期的に入っているようだ。しばらくは住宅街の裏手を進む。決して覗かないように。
県道を注意して渡ると山王様の像が置かれている。江戸時代に災害予防を願って勧請されたものだという。
住宅街が切れると広大な畑地が広がる。狭山市・所沢市・川越市・三芳町にかけて広がる畑地の一画に入ったのだ。
畑の向こうに雑木林が見えるというのが上記四市町に共通した特徴と云える。

(ここから土手へ入れる)


(紫陽花咲く道)


(ベンチなどがあり、住民の憩いの場となっているようだ)


山王様


(桜の木だろうか?)

山王中学校の側を通る辺りで小学生くらいの子供たちとすれ違う。女の子が男の子たちに恋バナをしている。やはり女性のほうが成長は早い。
中学校を過ぎた先に東屋があり、川辺に下る階段も付けられている。休憩するには良い所だが、どうにも天気が怪しくなってきた。
この先は隠れる所の無い畑地が延々と続くので、権現橋に着いたところで残りの行程は中止することにした。
とりあえず新しく出来た県道までは歩いていかなければならない。遠くで雷が鳴り始めた。

(広大な畑 雲行きが怪しい)


(川辺に下る階段)


(新権現橋へ向かって)

片側二車線の広い県道に架かる橋は新権現橋と名付けられている。交通量の多い道路を渡ることはできない。
信号機のある権現橋西交差点へ迂回し、道なりに進めば権現橋に着く。橋というよりは四方へ道が延びる交差点といった感じだ。
橋の袂にはお地蔵様と石碑が立っている。石碑には「子之権現」と書かれている。あの奥武蔵の子ノ権現だ。
狭山市のHPによるとこれらの石仏が子ノ権現より来たことが橋の名の由来だとされている。
他方で子ノ権現へ向かう道が延びていたことに由来するという説もあるようだ。
いずれにせよあの馴染み深い子ノ権現の影響が遠く狭山の地まで及んでいることに驚きを感じた。

(新権現橋)


(権現橋の石仏 右から二つ目に子ノ権現と書かれている)


権現橋 近年整備されたようだ)

さて雷雨がやって来る前にこの地を去らねばならない。県道を北西に行けば狭山台、南東に行けばシチズン前からバスに乗ることができる。
土曜日であれば堀兼神社から市内循環バス「茶の花号」に乗ることができたのだが、残念ながら日曜日は運休だ。
狭山台のほうが距離は近いが、所沢へはシチズン前バス停へ向かったほうが良い。
時に早足、時に駆け足で県道を進み、雨が本降りとなる前にバス停に着くことができた。着くことはできたのだがバスが来なかった…。
結局西武線が止まるほどの豪雨に見舞われてしまった。山以外でもエスケープは考えておかなければと思い知らされた。

DATA:
箱根ヶ崎駅11:00~11:12狭山池~11:25狭山神社~12:56国道463号バイパス~13:09熊野神社~13:25行政道路~14:09七曲井~
14:26山王様~14:45権現橋~シチズン前バス停(西武バス)本川越駅

箱根ヶ崎から新河岸川まではおよそ7時間くらい。権現橋まで来るとエスケープに苦労します。
熊野神社辺りなら武蔵藤沢駅、七曲井辺りなら入曽駅が最寄り駅です。
新権現橋近くに堀兼神社や赤坂の森があります。堀兼神社では平日・土曜日に限り市内循環バス「茶の花号」が利用できます。
なお本流は所沢市を流れていないようです。

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