おてんとうさんのつぶやき & 月の光の思案 + 入道雲の笑み

〔特定〕行政書士/知的財産管理技能士/国家試験塾講師等が生業の巷の一介の素浪人の日常

改正 一段落だけれど

2020-09-13 | 〔法規 ・ 法制〕

 

                                         [条文省略部分アリマス]

平成三十年法律第七十三号
法務局における遺言書の保管等に関する法律
(趣旨)
第一条 この法律は、法務局における遺言書(民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百六十八条の
自筆証書によってした遺言に係る遺言書をいう。)の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとと
もに、その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとする。

この施行が 本年7月10日 ということで 一連の民法関連改正 一段落 というところですね

 

法規・法制相談もあり 調べものが 次から次へ ということなのですが 個人的に 一番 関心度が

強かったのは 法定の相続人の中の特定の者 についての ≪相続させる という遺言≫ の扱い 

と その周辺の整理のことでした

実務案件の中に 多く登場し サマザマな論があったのでは と 思われますので 

 

「相続させる遺言」 という 圧倒的威力をもった遺言の相談などがあった場合には

必ずといっていいほど 次の名文句が頭に浮かぶのでした  

        <・・・この印籠が目に入らぬか・・・ >

なにしろ 被相続人(遺言を残した方)の 一言で 法定の相続人の中の特定の者 に 

全財産を譲ることも可となり(遺留分という問題がありますが 請求がなければ それま

でです) しかも その権利移転の登記申請も 他の法定相続人の意向など気にせず 

その協力も不要で 単独で可能ということですので

要するに 分割手続までをも不要として おおよその相続で遺産の中心であろうところの

不動産について 他の相続人の知らぬ間に 単独相続登記申請を進め 完了し得る

ということ

相続債権者・利害関係人・対第三者とのことからにしても 問題があったりしたことだろう

法定相続分に限らない範囲での優位性を 受益相続人は 持ち得た

 

そうした仕組みは いかがなものか と 批判も強かった
(遺留分減殺請求とか遺言無効とか詐害行為取消とかが考えられるにしても “今さら
争っても” 

ということで流れていってしまうことも多かっただろう・・か ?)

 

そこで さすがに 手を入れないわけにはいかず ? 次のような レベルの改正ではあるが

トニカク なされた  

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。
 
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈 の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
 
 
(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
 
 
(受遺者又は受贈者の負担額)
第千四十七条 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
 
 
 
遺贈とは 遺言によって 無償で財産的利益を他人に与える行為をいいます
遺言で財産の贈与を受ける者は 相続人とは限りませんが 相続人であり かつ 
遺贈を受ける者もいます
特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産
承継遺言」という。)
という表現が登場しています
 
 
繰り返しにもなりますでしょうが ホンノ一部ですが ポイントを選んで述べてみますと・・・・
・いわゆる <相続させる> 旨の遺言について 改正法では これを 
特定財産承継遺言
 と 呼んでいる 〔不動産に関してだけではなく 動産に関しての遺言においても〕
 
特定財産承継遺言があった場合の遺言執行者の原則の権限の内容
を明文で示した(1014)
 
特定財産承継遺言による権利の承継についても 相続分を超える部分
については 対抗要件主義が
採られる(899ノ2)
 
・受益相続人の単独での移転登記手続きは可だが 遺言執行者にも権
限あり(所有者不明不動産対策という意味合いもあって)
 
 
以上に関連して
特定財産の受遺者であって 相続人でもある者は 相続債務が多い場合等では 
相続については放棄して債務をまぬがれ 遺贈は受遺者として相続財産を得る 
ということも可能 と 考えられます
(もっとも 詐害行為取消の対象となるのでは・・・ ということも 理論としては
あり得る ?)
 
 
ムムム ???
相続人への[特定遺贈] と 相続人への[特定財産承継遺言 の扱いの差異とは 
 
相続による動産物権の承継には 債権承継の場合のような特則(899条の2の2項)
は無く 遺言執行者があるときの場合(1014 2項)のことを除いて 特別な措置は
無いのか ?
 
なんとなく 解説書も シックリしない というか ハッキリしない というか・・・
 
 
ということで 債権法の改正も ヤハリ そうとうに手強いですが 相続法関係も 
手強すぎるところが 多数箇所ありますね
 
イロイロと 新しい解説書を漁ってみたりするのだけれど 自身の能力の問題も
モチロンあるからこそのモヤモヤなのだろうけれど・・・
 
 一日も早く 
【 新基本法コンメンタール 相続 】 発刊して欲しいなー
同シリーズの 【 〃 マンション法 】 も だけれど
 
 

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