マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

2回目の大規模修繕工事

2006-10-11 09:00:00 | 外壁等

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入間リバーサイド住宅

(埼玉県・入間市)
住棟7タイプ32棟516戸



建物概要



「入間リバーサイド住宅」は、西武池袋線「仏子」駅から徒歩数分の入間川に沿って自然豊かな環境に立地し、大型スーパーも近接している公団(現・都市再生機構)分譲の団地型住宅である。



建物は経年24年で、5階建(階段室型・陸屋根)住棟は現場打ちコンクリート造250戸、プレキャストコンクリート造100戸、8階建(陸屋根)住棟は96戸、2階建タウンハウス(勾配屋根)は70戸で、住棟が7タイプ・32棟の総戸数516戸と、住棟タイプ・棟数が多い団地。



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管理組合の取組み



管理組合では修繕委員会を設置し、各住棟ブロック間の調整や管理組合理事会に修繕計画(設計事務所との協議・打合せ、工事内容、施工会社等)の答申を行い、大規模修繕工事がスムーズに実施するようにはかった。



建物タイプ別の建物調査結果・アンケート調査結果に基づく修繕内容の提案、修繕工事に向けてのスケジュール説明等についての大規模修繕に関する住民説明会を開催し、合意形成を行った。



修繕委員会は、工事着工後は月2回の管理組合・設計事務所・施工会社との打合せ会の出席や、工事中の居住者と施工会社のトラブル防止をはかりスムーズに工事が進行するように、修繕委員会のメンバー(連絡員)が月曜から金曜まで、1名が交代で工事事務所に常駐し、居住者と施工者間の調整を行った。



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修繕工事の特長等



  1. 工事費
    5階建の工事費を1とすると、2階建タウンハウスは約2.7倍、8階建は約1.3倍と住棟タイプ別の工事費が大きく異なっている。2階建タウンハウスは外壁面積が他住棟タイプと比較して大きいことや、傾斜屋根の化粧セメント瓦葺替工事を実施し、工事費の負担が多くなった事が原因である。屋根防水改修工事は、2階建タウンハウス以外のタイプは数年前に実施したため、今回は工事対象外であった。


  2. 換気金物取替
    スチール製の箇所やトイレ・洗面所の換気フードをステンレス製に取り替え、5階建住棟の外壁付鋳鉄製ベントキャップからの錆汁が外壁に付着しているため、アルミ鋳物製に取り替えた。


  3. 排気ダクト清掃
    全棟の台所系排気ダクト、トイレ・浴室系排気ダクト及び換気扇ファン、排気ガラリの清掃。


  4. トップライト改修
    2階建タウンハウスの勾配屋根に設置されていたトップライト(ガラスブロック製)からの漏水対策として、新規にポリカーボネート製のドーム型トップライトを設置。


  5. 外壁塗装
    バルコニー・開放廊下・階段室の上裏(天井)は、コンクリートの中性化抑止のため、ポリマーセメントモルタルでバリア層を設けた。又、仕上は複層塗材とし、美観の向上もはかった。


  6. 階段室塩ビシート貼り
    面には防滑性塩ビシート貼りを行ったが、キャタピラ付介護用機器を使用している居住者が通行する階段室は、階段部に取り付ける既製品のノンスリップ金物は耐力不足のため、施工会社とノンスリップ金物の仕様(形状・材質・取付方法)を協議・検討し、テスト施工実施の上、設置した。


Koji0610_03換気棟詳細図



Koji0610_02傾斜屋根工事完了後



(八生設計事務所・一級建築士・近藤 武志)



<アメニティ新聞289号 2006年10月掲載>




『色彩計画』にも注力して大規模修繕工事を完了

2006-09-13 09:00:00 | 外壁等

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東船橋ガーデニア

(千葉/船橋市)

東船橋の街と共に誕生

「東船橋ガーデニア」は、23年前の1983年11月に、JR総武線・東船橋駅から徒歩7分の新興住宅街の一角に建設された。当時は東船橋駅が開業し、まだ2年しか経っていない「新しい街」の創成期で、周辺は戸建住宅の宅地整備や建築中の家が多かった時代である。その中で14階建ての高層棟や4階建ての低層棟を含む全10棟・332戸の真っ白な大規模集合住宅が誕生した。

現在は、区画整備も整い、近隣は戸建住宅を中心とした閑静な住宅街となっている。近所に「宮本台北公園」があり、緑も豊かな周辺環境である。

今回、第2回大規模修繕工事の設計・監理をおこなった、株式会社三衛建築設計事務所は、集合住宅の外装も街の景観を構成する大切な要素と考え、修繕委員会に対して「色彩計画」を提案した。

「色彩計画」とは…?

04年の「景観三法」施行以後、視環境を整備する動きが活発になり、外装の「色」が街や周辺住民に与える影響を配慮し、「建築物の外装は、公的要素がある」と考え、外装の色彩を計画的にコントロールする手法である。

「東船橋ガーデニア」同委員会は同事務所の「色彩計画」を積極的に取り入れ、今年2月から大規模修繕工事をおこなった。外装を現状の「真っ白」から一新して「明るいブラウン系」をベースに、合計4色で構成し現在の「街と調和する」集合住宅へと外壁修繕および塗装を施した。その他、屋上防水・バルコニー防水・外階段の補修・共用部照明器具の交換など、建物の共用部を中心に工事を進め、8月末に第2回大規模修繕工事を完了した。

Koji0609_02施工後、暖かな色合いになった外装

前回の不備を補う

約10年前におこなわれた、第1回大規模修繕工事で外階段にノンスリップを取り付けていた。その際、ノンスリップと階段の接合部分から水が浸水し、内部に水が滞留したため鉄骨階段の腐敗が顕著な状態に陥った経緯があり、今回の改修では腐敗部は切断して段板を鉄板で新規作成し、上から被せるといった「被せ工法」を採用し、床仕上げは階段用塩ビシートとした。費用的にもかなりのコストを要しており、施工も大変苦労した工事であったが、今回の工事では、こういった教訓を活かして下地補修や躯体改修についても、入念に施工している。

Koji0609_03 施工前、腐敗が進行していた外階段

Koji0609_04 施工後、色彩計画に基づき修繕工事が完了した外階段

これからの街の景観と集合住宅

昨年、埼玉県営浦和高層住宅の外壁に広告掲載を募集する計画が自治体から発表された。広告掲載料金は、年間105万円で1年以上5年以内の使用期間で募集し、収入は県営住宅の維持管理費にする大胆な発想で、マスコミも採り上げていたが、街の景観に与える影響を考えると、「無条件で賛成はできない」という意見も多く聞かれた。それだけ、集合住宅の外壁と街の景観は密接に結びついている。

その点、同住宅の今回工事は街の景観に配慮し「色彩計画」を基におこなわれた成功例である。

これからの大規模修繕工事は、居住者だけでなく、街の景観にも配慮する「心の余裕」が管理組合に求められているようだ。

<アメニティ新聞288号 2006年9月掲載>


耐震補強工事と環境改善工事 ライオンズマンション下赤塚大規模改修工事

2006-04-26 09:00:00 | 外壁等

ライオンズマンション下赤塚外観
ライオンズマンション下赤塚

(東京都・練馬区)



マンション概要



ライオンズマンション下赤塚は、総戸数64戸、地上7階建て、練馬区内の国道沿いに建つ典型的な都心型マンションである。このマンションはライオンズマンション100棟記念として建てられ、大手ゼネコンが建設に携わっている。



今回の工事は第2回目の大規模修繕工事であるが、大規模修繕工事と併せて、耐震補強工事も実施した。当マンションは1980年に建設されており、現在の新耐震基準に変わる直前の建物である。構造図を見ると新耐震基準を意識した設計になっているものの、エントランス廻りに2層吹き抜けの大きなピロティがあり、耐震性に不安の残る構造となっていた。そこで、居住者が安心して住みついでいける住環境を整えるために、まずは耐震補強に対する検討が大きな課題となった。



一方、大規模修繕工事も、単に外壁を修繕することに留めず、今後のメンテナンス性、防犯性、居住性、美装性を向上させる様々な「環境改善工事」を積極的に検討した。



耐震補強工事の検討



耐震補強壁の鉄筋組
耐震補強壁の鉄筋組


耐震補強工事を実施するためには、耐震診断を実施し、その結果分かった弱部に対して耐震補強設計・補強工事を実施するという流れが一般的な考えである。ただし、マンションの場合は、耐震診断の結果、専有部分の補強をするのが望ましいという判断が出ても、工事の実施は難しい。そこで、今回のプロジェクトでは、まず耐震診断からという一般的なやり方とは異なる方法をとった。現在、建設会社は耐震補強工事の実績を増やしており、耐震に対する技術力の向上は相当なものである。そこで、建設会社数社に呼びかけて、「人命の保護」と「共用部分における補強」を条件に耐震補強方法を検討した。最終的には、新築時に施工を担当した大手ゼネコンが、独自の手法で耐震診断と補強の詳細設計をし、工事の実施に至った。なお、このゼネコンは設計までを担当し、施工は大規模修繕工事を請け負った別の建設会社が実施している。今回、こういった手法をとることで、安価に補強工事が行えたことは、居住者にとって大きなメリットとなった。



柱の耐震補強
柱の耐震補強



環境改善工事の検討



居住者の安全性を向上させるという観点では、「防犯性の向上」が挙げられる。当マンションは都心に近いので、不特定者の出入も少なくない。そこで、今まで自由に出入りできたエントランス廻りをオートロック化した。オートロック化に伴い、エントランスホールを大規模に改修し、各戸インターホンからの開錠システムの新設、意匠性を考慮した侵入防止柵の設置などを実施した。



その他、外観に大きな影響を与える「バルコニー手摺」の交換を実施している。新築時の鋼製手摺をガラスパネル入りアルミ製手摺に交換した。これにより、鉄部塗装などのメンテナンスを大幅に軽減できると共に、建物全体のグレード感の向上が図れた。



また、外壁色も今までの赤レンガ色から、ベージュとブラウン色のツートンカラーにし、明るい色彩の新しいマンションとして生まれ変わった。



扉の新設とメールボックス設置
オートロック扉の新設とスルー式メールボックス設置



おわりに



耐震性や防犯性の向上は、新旧を問わず様々なマンションに共通する課題である。しかし、区分所有という性格を持つマンションは、必要性に迫られながらも、これらの工事を実現するのは容易ではない。今回の工事では、管理組合執行部の皆さんと何度も話し合い、都心型マンションとしての問題点について多くの議論がなされ、多岐にわたる改善事項や耐震補強工事を実現するに至った。これらの成果は、都心型マンションのこれからのモデルとなるに違いない。



(株)スペース・ユニオン 一級建築士 藤木亮介



<アメニティ新聞283号 2006年4月掲載>




2回目の大規模修繕工事 コンセプトは建物の総合的グレードアップ

2006-02-10 09:00:00 | 外壁等

サニーヒル今宿住宅
サニーヒル今宿住宅

(神奈川県・横浜市)

「サニーヒル今宿住宅」は横浜駅より十数分の相鉄線鶴ヶ峰駅を最寄り駅とする公団(現・都市再生機構)分譲の団地型住宅である。周辺に自然公園、親水公園、動・植物園などの施設が取り巻く自然豊かな環境に立地している。

建物は3階建階段室型住棟が10棟、2~3階建テラスハウス型住棟が30棟合計40棟の住棟と管理棟・給水棟等の付属施設で構成されている。テラスハウスは1棟を2住戸で構成されているものもあり、棟数の割に総住戸数236戸と比較的少ない。

今回の工事は第2回目(築23年目)の大規模修繕工事で、工期は平成17年9月1日~平成18年3月31日までで現在工事続行中である。

修繕内容は、理事会の諮問機関である施設管理委員会が設計事務所と共に練り上げ、建物の総合的グレードアップをコンセプトに以下の工事を実施することとした。

(1)第1回目の大規模修繕工事で実施した基本修繕工事

-コンクリート躯体改修、シーリング改修、外壁塗装、鉄部塗装、バルコニー床防水等-

塗装は配色を現代にふさわしく若者にも受け入れられる配色で塗り替えた。また、階段室型住棟では階段室の入口を高級感のあるデザインに刷新した。【図-1】

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(図-1) 階段室入口リニューアル

(2)第1回目には実施しなかった新たな修繕工事

-屋上やルーフテラス・階段室の防水改修、金物(集合郵便受・室名札・物干金物・換気口等)の取替、共用灯の取替、外構工作物の取替・修繕等-

屋上防水は既存断熱防水の上にカバー工法で塩ビシート断熱防水を施し断熱層を二重にする事により、断熱性能の向上を図った。【図-2】金物類や共用灯はモダーンなデザインのものに取り替えた。

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(図-2) 屋上の高断熱化

(3)緊急性のある修繕工事

-突風による飛散事故のあったテラスタイプ住棟の屋根(コロニアル)の葺替工事【写真-1】-

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コロニアル屋根の葺替工事

屋根の葺き替えも断熱材を従前の約倍の厚さにし、さらに屋根葺材の下に通気層を設け断熱性能を向上させた。【図-3】

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コロニアル屋根の高断熱化

(4)今まで住み続けての要改善工事

-外壁の汚れ防止措置、階段に手摺設置等-

バルコニーや庇見付などに雨筋汚れが目立っていたため、塗装を低汚染型塗料を使うと共に汚れやすい箇所を濃色で塗装し、外観デザイン上のアクセントとした。また、既設の階段の手摺りは、高さが不適切だったり、不連続だったりし高齢者・身障者には役に立たなかったで新たに連続手摺を新設した。

(有)八生設計事務所 設計監理担当者

<アメニティ新聞281号 2006年2月掲載>


外壁塗装その他改修工事 超音波で既存塗膜を完全除去

2006-01-10 12:49:00 | 外壁等

南大和住宅
南大和住宅

(埼玉・和光市)

工事までの経過

入居時より関東地域での鉄筋コンクリートPCで日本住宅公団が分譲した建物では初めての住宅であり、全般に雨漏りが非常に多く発生し、管理組合では補修交渉に多くを費やして来ました。その中で昭和48年両者合同による第1回目の外壁塗装及び雨漏り、水漏(浴室)等の補修工事をしましたが、その時は住宅公団指導による株式会社団地サービス施工でした。

その後、雨漏りも減少し、第2回目外壁塗装他補修の準備を平成8年から調査検討を始めました。平成4年、6年と屋上防水工事での不備等が発生し、施工会社との間で裁判になり、約2年間で平成16年3月和解しました。

その間も外壁塗装準備委員会では住民皆様により改修項目、工法、材料等の研究調査等をしていただき2回に亘る提案が管理組合に提出あり、管理組合では再度検討しながら、今回の工法、材料、施工会社決定の作業を行い、第1期工事(150戸)を平成17年9月末日より、第2期工事(240戸)を平成18年1月よりに分けて着工しています。全体完了は平成18年6月となる予定です。

今回工事での特徴

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外壁目地シーリング工事
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階段室壁旧塗装剥離工事

外壁塗替工事で前既存塗膜と高圧洗浄が出来なかった階段室・南バルコニー壁と両天井は超音波にて既存塗膜(2層)を完全取り除きコンクリート面を出すことにより新しい塗膜の接着力が増しますので作業を開始しています。既存塗膜撤去により鉄筋露出が非常に多くその補修費も増大なので設計分譲した現在の「都市再生機構」に質問書を提出、今後の交渉等を進めていく予定にしています。

(南大和住宅管理組合 高嶋泰一)

〔工事概要〕

  • 外壁塗装及びPC板継目シール打替え
  • 鉄部塗装及び階段手摺りに2段目手摺り取付け、バルコニー手摺り支柱補強補修
  • バルコニー床全面塗布防水
  • 階段室床全面塗布防水
  • 屋上排水金物改修及びパラペット立ち上がり笠木金物及び下地補修
南大和住宅概要
所在地
埼玉県和光市南2丁目1番
戸数
390戸
棟数
住居棟13棟、管理棟、ポンプ棟、高架水槽
構造
鉄筋コンクリート・PC造5階建
分譲会社
旧日本住宅公団(現・都市再生機構)
入居年
昭和45年12月・昭和45年1月
施工会社
安藤建設株式会社
管理形態
昭和49年から自主管理
管理費
一般管理費 月額4500円、修繕積立金月額8000円
敷地等
団地は埼玉県南西部のはずれに東西に約1kmに通り1列に建物が並んでいる特別な団地で前後に建物がなく、日照・風通し等はよいが管理等では種々問題もあり、今回の工事費でも割高になっていると思います。
総面積
28,430m2

<アメニティ新聞280号 2006年1月掲載>