あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

おとなが読む童話

2017-09-03 | 本(文庫本)
伊坂幸太郎さんの『夜の国のクーパー』を読みました。
読書記録はお久しぶり。本を読んでいなかったわけではないのです。だから読書記録、ネタが溜まっています。今作だって、読んだのは7月末だったかな~。誕生日後の初読書作品でしたから。

男が目を覚ますと、見覚えのない草叢の上で蔓で縛られて身動きがとれなくなっていた。男の胸の上には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と話しかけてきた。猫は戦争に負けた町の話を始めた。町には占領軍の先兵隊がやってきて、平和な生活は一瞬にして奪われてしまった。しかし町の人々は「透明になったクーパーの兵士」たちが必ず助けてくれると信じていた。

伊坂作品の多くはとても不思議な世界を描いたものが多いのだけど、現実味もちゃんとあって、決してファンタジー的には展開はしません。案山子がしゃべろうが、自動車がしゃべろうが、音楽好きの死神が出て来ようが、もうすぐ地球が滅んでしまおうが、現実の世界とまったくかけ離れたようにはならないのです。
ところがこの物語は、猫に話しかけられる男の経歴がわずかに「実際の社会」なだけで、あとは「?」な世界。一体彼は、どこに紛れ込んでしまったのでしょうか。
でもこの「?」の部分が心地よくて、物語の面白さに一気に引き込まれてしまいました。
戦争に負けるとはどういうことなのか、クーパーの兵士が透明になるという噂、猫と鼠の習性の違いやそこからの駆け引き。
猫の目線から語られる「人」の世界の様子は、とても新鮮な描き方で、「なるほどね~」と思わせられっぱなしでした。多分、本当に猫たちはそう見ているに違いない! そして本当はそれほど興味を持っていない!

本書は、伊坂作品らしいと言えばそうだけど、これまでにないような雰囲気を持った作品でした。イメージするなら、ファンタジーではなく、おとなが楽しめる童話。そんな感じ。
読後は、いつもとはちょっと違ったパターンでスカッと気持ち良くなっていました。
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