萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第30話 誓暁act.4―another,side story「陽はまた昇る」)

2011-12-29 23:48:39 | 陽はまた昇るside story
あなたと一緒に、




第30話 誓暁act.4―another,side story「陽はまた昇る」

あたたかな陽ざしふる天窓に青空が明るい。
その空からふる雪雲の、名残の影がしずかに床をよぎっていった。
雪雲の影がすぎてふる冬の陽のもとで、寄りそった唇がそっと静かに離れると、おだやかに周太は微笑んだ。

「…英二、愛している。…英二をね、信じている…ずっと英二の帰りをね、迎え続ける」

これは自分の覚悟の言葉。
もう揺らぎたくない、もう泣く痛みだって逃げない。
いま自分の頬には涙の跡があるけれど、きちんと伝えて微笑めている。だから大丈夫。
きっと自責は簡単には止んでくれない、きっとまた泣いてしまう。それでも自分は逃げない、揺るがない。

どんな泣いても、愛することはやめられない―
だから覚悟するしかない、それで良いんだと潔くこの唯ひとつの想いに殉じてしまえばいい。

出会ってからずっと、いつも幸せを贈ってくれる英二。
そして卒業式の夜に自分を求めて泣いて掴んでくれた、そのまま自分を守って隣にいてくれる。
そうしてあの日、13年前の事件の決着の日にすらも、英二は身代わりになるつもりだった。
もう今は知っている、なぜあの日に英二は自分のホルスターを見つめていたのか?
そして警察学校の日々に、なぜ英二は自分と同じ拳銃操法を身に付けたのか?
そんな英二はきっと、努力の影に独り泣いた瞬間がたくさんある。それでも自分を愛し続けることを英二は止めない。
そうして英二はずっと、自分への想いに殉じて生きて笑って温もりでくるんでくれる。
だから自分も泣いても逃げない、ずっと微笑んで英二を愛して、英二の居場所でいてあげたい。

だから想う 幸せは、あなたと一緒にしか見つけられない

だから微笑めばいい、もっと幸せになればいい。
きっと幸せな分だけ自責も痛む、それでもいい、あなたが幸せに笑ってくれるなら。
きっと自分は今夜も幸せの痛みに泣くだろう、それでも構わない、あなたが幸福な眠りに安らぐのなら。

さあ、今も微笑んで見つめるよ、英二?
ほら、微笑んで見上げるひと、笑ってくれるよね?
そんな決意と微笑んで見上げる想いに、きれいに英二が笑いかけてくれた。

「うん、信じて周太?俺はね、ほんとに周太の隣だけに帰る。他なんか、いらないんだ」

ほんとだよ?そんなふうに見つめてくれる。
そんな真直ぐで、きれいな目が自分をまた確信でくるんでしまう。

やっぱり自分は「英二の隣」でいることが正しい

そうだと幸せだと想える。
だから与えられる想いに素直に微笑んで、英二に幸せを贈ってあげたい。
きれいに周太は英二に微笑みかけた。

「ん、…俺の隣に帰ってきて?…ね、英二。俺ね、昼ごはんの支度してくるね?ゆっくりしていて?」

そう言って梯子へと向かいかける周太に、英二はくっついて歩いてくる。
どうしたの?そう振り向いた周太に英二は笑いかけてくれた。

「俺も台所へ行くよ?だってね周太、もう俺、ちょっとも周太と離れていたくないんだ」

そう笑いかけながら英二は、すぐ後ろから梯子を降りてくる。
そして下の周太の部屋に着くと、デスクに置いた花束を提げてまた周太のすぐ隣に立った。
うれしいけれど気恥ずかしくて、それでもうれしくて周太は微笑んだ。

「そう?…じゃあ、台所でお茶淹れてあげるね?…あ、ココアとかコーヒーの方がいい?」
「うん。昼飯の前だしな、お茶がいいな。でね、周太?午後は周太のココアが飲みたいな」
「ん、…あとでね、ココアも淹れるね…ね、英二?そんなにくっつくと、階段おりるの、あぶないよ?」

ちょっと困って周太は英二を見あげた。
さっきから廊下を歩きながら、ずっと英二は周太の肩越しに覗き込んで話しかけてくれる。
こんなに寄りそってくれるのは気恥ずかしいけど嬉しくて、そんなに求められて幸せが温かい。
けれど階段とか危ないから、ね、英二?そう見上げた周太に少し首かしげると、きれいに笑って英二は言った。

「うん、周太。じゃあさ、これならいいよな?」

言いながら英二は止める間もなく周太を、花束ごと横抱きに抱え上げてしまった。
一緒に抱えられた花の香と頼もしい腕が幸せにしてくれる。
でも気恥ずかしい、だってこれは「お姫さま抱っこ」だあんなときの。

警察学校の山岳訓練で怪我した後、こんなふうに寮の部屋で抱えて介けてくれた。
あのときも恥ずかしくて、でもこんなにまで意識しないでいた。たんに親しい友達だと思っていたから。
けれど今は恥ずかしい、だって英二は「あんなとき」こうして抱えてベッドや浴室に運んでくれるから。
これから料理するのに緊張させないで?すっかり困って周太は、すぐ間近の端正な貌に訴えた。

「…あの、っ、英二?これだってあぶないから…ね、英二?」
「危なくないよ?だって俺、いつも現場や訓練でもさ、こうして救助者を抱えて山を歩いてるよ?まあ背負う方が多いけどね」

そんなふうに英二は笑って廊下を歩きだしてしまった。
どうしようこんなこと?困って押しやろうとふれた英二の肩に、ふっと周太の手が止まってしまった。
ふれる肩が逞しくなっている、それがニットを透かしても伝わってしまう。
この1ヶ月と少しの間どれだけ英二が全てを懸けて訓練に取り組んだのか、そうして最高峰への夢に懸けているのか。
そんな英二の実直な努力がうれしい、微笑んで周太は抱えてくれるひとへ訊いた。

「英二、ほんとうに努力しているね?…毎日ほんとうに、がんばってるね…」
「うん、周太。俺ね、頑張ってる。
 だって、周太に逢うことまで我慢して俺、ずっと頑張ったんだ。
 ずっと本当は逢いたかったんだ。だからね、周太に褒めてもらえるとさ、ほんとに嬉しいよ。あ、周太?しっかり掴まってて」

うれしそうに笑って応えながら英二は、周太を抱え上げたまま軽々と階段を降りた。
たった1ヶ月とすこしの間に、英二の体も意志の強さもまた逞しくなった。
そんな姿が心からうれしくて周太は微笑んだ、そんな夢に懸けて輝く英二を自分こそが望んでいるから。
やっぱり隣で見つめ続けていたい、もう今こんなに幸せで離れたくない。
そんな想いで見つめる周太を、そっと台所でおろすと英二は笑いかけてくれた。

「はい、到着。ね、周太?俺もうさ、こんなふうに周太を軽々と抱っこして一緒に歩けるよ?だから安心してよ」
「…あんしん?」

訊いた周太の顔を覗き込むように、英二は長身を少し傾けてくれる。
そして英二は、きれいに笑って言ってくれた。

「周太の全部を抱っこして俺は、どこだって軽々と歩けるから。だから安心してよ周太?
 もう俺はね、それだけの力をつけたんだ。周太を抱っこして一緒にずっと生きられるようにね。
 他の誰かの為じゃない、周太だけ。だから安心して、周太?俺は周太だけを抱っこしたくて、いっぱい努力しているんだから」

警察学校の山岳訓練で怪我した後、いつも英二は自分を抱えて背負って、介けてくれた。
最初の頃は自分の重みに英二の腕が震えていた、それが申し訳なくて哀しかった。
けれど日々その震えは消えて、怪我が治るころには不安なく抱え背負ってくれていた。
それは今も続けてくれているの英二?そんな想いが幸せで、周太は微笑んで頷いた。

「ん、…俺だけをね、抱っこして?ずっと一生…ね、英二?」
「うん、周太だけだよ?だからね周太、ほんと言うと俺さ。救助者の抱っこも訓練の抱っこもね、周太のための練習だから。
 もちろん山岳レスキューの責任感と誇りはあるよ。けれど周太のことがね、やっぱり俺には1番だから。だから安心して周太?」

ほら、こんなふうに全てを、自分の夢まで懸けて見つめてくれる。
こんな自分は幸せで、ほんとうに幸せで、温かい想いが心を迫り上げてしまう。
ゆるやかに想いの温もりが昇ると周太の瞳から、きれいなきらめきが頬伝って零れおちた。

「泣き顔もきれいだね、周太は」

きれいに笑って長い指で、英二が周太の頬を拭ってくれる。そして温かなキスで周太の目許にのこる涙をすくってくれた。
こんなに大切にされて幸せすぎて、どうしたら自分は想いに応えられるのだろう?
そう見上げて見つめる想いの真中で、きれいな笑顔がおだやかに咲いて周太を受けとめた。
そうして受けとめられたとき、ふっと想いが響いてことりしずんだ。

…その答えは一生かけて探せたらいい、想いに応えること

そんな静かな決意が周太を温めて、ゆっくり微笑みが充ちてくる。
だってこの想いに応えることが、きっと自分の「運命」だから。
これが運命ならば、この一生をかけて応えを探せばいい。そして答えはきっと見つかるだろう。

いま英二は自分を抱き上げてくるんで幸せにしてくれた、それは女性では自分に与えられない温もりと幸せ。
だから自分も出来るはず、女性には出来ないけれど自分には出来ること。
自分は男で英二の子供は産めない、けれど自分だからこそ贈ってあげられる「幸せ」があるはず。
そう、自分だけにしか贈れない「英二の幸せ」がきっと見つけられるはず。

そんな自分は今はまだ父の為に危険に生きている、けれど必ず了えられる。
だってこの美しいひとが自分のためだけに全てを懸けて生きている、こんな美しいひとを誰もが見離せないから。
だからきっと美しいひとが哀しむ結末にはならない、だから自分も哀しませたくない。
この今も笑ってほしい、そう願える幸せがほんとうに温かい。幸せで周太は微笑んだ。

「…ん、もし俺がね、きれいなら。きっと、英二の所為だよ?」

そう告げられた英二の切長い目がすこし大きくなる。
もとが端正な目だから、大きくなると少し幼顔になるギャップが英二は可愛い。
この顔かわいくて好きだな?うれしくて周太は微笑んで、持ってきたエプロンを着始めながら英二に笑いかけた。

「お茶すぐ淹れるから、座っていて?…ね、英二?」
「うん、周太…」

周太の言葉にうなずきながら、英二はダイニングテーブルの椅子を一脚ひきだした。
その高めの背もたれに腕ぐむと顎を乗せて、調理台に立った周太を見つめて微笑んだ。

「ね、周太?どうして俺の所為なんだ?」

そんなふうに改めて訊かれると気恥ずかしい。
周太は首筋が熱くなるのを感じながら、湯を沸かして茶葉と急須を並べた。
さあどう応えよう?とても気恥ずかしいけれど、自分はもう決意をしたのだから応えないと。
そんな想いと一緒にふりむくと赤らめた頬のままで周太は微笑んだ。

「ん、…英二をね、愛してるって想うから、たぶん…きれいなんだ」

言ってしまって恥ずかしいほらもう顔が真赤にきっとなっている。
けれどそう見つめる先の英二は、すこし驚いた顔から瞬く間に華やかな笑顔が心から咲いた。
こんな笑顔を見せてくれるなら恥ずかしくても頑張れそう?

「周太、俺ね、いまほんとに幸せだ…どうしよう、俺。ちょっと、うれしすぎるよ?」

きれいな低い声が華やいだトーンで笑ってくれる。
こんな声で喜んでくれるひと、自分の方こそ幸せでうれしくなってしまう。
そう微笑んだ傍で、ゆるやかな湯が沸く水音がたって周太は火を止めた。
そうして手際よく茶を淹れると盆に載せて、ダイニングテーブルに静かに運んだ。

「はい、英二。熱いから気をつけて?…ね」
「うん、周太?これもさ『約束』守ってくれているんだ?」

英二には一生ずっと周太が茶もコーヒーを淹れること。
そんな約束を11月に訪れた御岳駐在所の給湯室で、英二は周太にねだってくれた。
そうこれも「一生ずっと」の約束。
もう自分は「一生ずっと」の約束をいくつ英二と交したろう?

「ん、…そうだね、英二。やくそく守ってるね?」
「周太、一生の約束だからね?守ってよ。…あ、旨い。やっぱり周太の淹れたのはさ、旨いね」

きれいに笑って自分の茶を啜ってくれる、ほんとうに幸せそうに。
こんな幸せな笑顔を見つめながら、どうして自分は迷えるだろう?
もうたくさんの「一生ずっと」の約束を交わしてしまった、もう迷えるはずなんかない。
だってこの隣は約束は必ず守るひとだから。もし自分が約束を守らなかったら、きっと哀しませて苦しめてしまう。
この隣のくれる「約束」を自分は信じて微笑めばいい。

「ん、よかった。…ゆっくりしていて?ちょっと俺、仕度始めるね」

幸せに微笑んで周太は、まな板と包丁を出して手を動かし始めた。
火にかけた鍋から台所に湯気がくゆりはじめる。パスタを茹でる鍋にセットした蒸籠で蒸野菜も同時につくっていた。
人参ポタージュの鍋を火からおろすと、次にフライパンをかけてクルミを炒っていく。
その肘にふと温もりがふれて肩口を振向くと、楽しげに英二が覗き込んでいた。

「ね、周太?それは何を作ってるところ?」
「ん、…鶏をね、クルミを混ぜた衣で焼く、よ?…だからクルミを炒って、香りをだしているところ」
「旨そうだね、周太。俺ね、クルミの衣って初めて食うよ。楽しみだな」

ほんとうに幸せそうに微笑んで英二は、周太の肩越しに手元を覗きこんでいる。
こんな笑顔をしてくれると、自分が隣に居ていいのだと素直に思える。
それは本当に幸せでうれしい、そっと周太は微笑んだ。
けれどちょっと距離が近すぎて料理中の今は危ない、遠慮がちに周太は英二を見上げた。

「あの…料理中はね…そんなにちかいとあぶないから…ね、英二、少しはなれて?」
「許してよ、周太?だってさ、もう1ヶ月と5日もさ、俺は我慢してきたんだから」

そんなこと言われても離れたくないよ?
そう目で言い足しながら、周太の肩に顎を乗せて英二は微笑んでいる。
1ヶ月と5日…日にちまで数えて、本当に指折り英二は逢える日を待ってくれていた。
それが伝わって嬉しい、けれど今はすこし困ってしまう。そう周太が途惑っていると英二は周太に提案してくれた。

「じゃあさ、周太。なにか手伝わせてよ?でないと俺、離れられないから」

手伝ってもらうのは良い考えだろう。
いまは英二は青梅署併設の独身寮で生活しているから食事に困らない。
けれどいずれは新人の入寮や本配属先次第で退寮する日がくる。そのとき自分で食事が作れないと困るだろう。
それも英二が自分からやる気になっているなら良いチャンス、うれしくて周太は微笑んで答えた。

「あ、…じゃあね、クルミを砕いてくれる?…いま火から下ろして、すり鉢に移すから」
「うん。周太、お手本見せて?そしたら俺、出来ると思うから」
「はい、…このくらいに砕いて?擦っちゃうと粘りが出るから、こうしてね、叩く感じで…ね?」
「うん、やってみるよ」

こんなふうに一緒に台所に立つ時間も良いな、それも楽しくて周太は教えていった。
いつか英二が独り暮らしする時も困らないでほしい、そしてきちんと食事して元気でいてほしい。
そう思って英二の手元を見ながら周太も自分の調理を進めていると、肩に重みが載せられた。
どうしたのだろうと振向くと、周太の肩に顎を載せて英二が笑いかけている。

「ね、周太?一緒に暮らしたらね、こんなふうに周太をいつも俺、手伝うから」

いつか一緒に暮らす時。
ほんとうにそう、こんなふうに一緒に台所に立って笑い合って。そう出来たらどんなに幸せだろう?
そんな想いに微笑みながら周太は英二に答えた。

「ん、…お願いするね、英二。…でもその前にね、たぶん独り暮らしする時があるよ?その時にも困らないように、ね」
「嫌だね、」

きれいに笑ったままで、英二はバッサリ切るように言った。
どうしたのかな?そう見つめる周太を見つめ返して英二は言った。

「前にも言っただろ、周太。俺はね、独り暮らしなんか絶対しないよ?
 いつか俺が寮を出る時はね、周太と暮らすときだけ。周太と一緒だからね、自分で料理が出来なくてもさ、俺は困らないよ?」

「…でも、英二?…新人が入寮する順番とかでね、退寮する都合とか…ね?」
「だからね、周太?それまでには一緒に暮らせるように、俺はするよ」

それまでには一緒に?
そうなの英二?それだと5年くらいの間っていうこと?

もしそうなら5年以内には、自分は父の軌跡を追うことが終わらなくてはいけない。
なぜなら父の軌跡を追う道の配属先は原則強制的に寮住まいとされているから。
けれど任期満了は原則5年、そして特例や幹部候補となれば任期は延長されてしまう。

その任期の切上げは普通は認められない。
それは英二にも解っていること、それなのに英二は「それまでには一緒に」と言ってくれる。
どういうことなのだろう?そっと周太は唇を開いた。

「…英二、…でも俺、…そんなに早くは、きっと…」
「周太、」

きれいな切長い目が周太を真直ぐに見つめてくれる。
その目には強い意志があかるくて、そして英二はきれいに笑って言った。

「俺はね、周太?ほしいものは必ず掴むよ?俺がほしいのはね、周太と一緒の幸せなんだ。
 だから周太の願いも叶える、そして俺は遠慮せずに周太と一緒の幸せを掴むから。だから今、言ったことも俺は叶えるよ」

真直ぐに明確な意思の表明、そんな英二の目に周太は何も言えなかった。
こんな強い意志と真直ぐな目に、どうしたら何かを言えるのだろう?ただ見つめる周太に英二はおだやかに微笑んだ。

「周太、約束だよ?俺は必ず周太の隣に帰る、一緒に暮らす、そして最高峰から想いを告げ続ける。
 どれも一生ずっとの約束だ。どれも俺は全部守るから頷いてほしいよ?『俺が退寮するときは一緒に暮らすとき』これでいいよな?」

ずっと考えていた「いつか」のこと。
父の軌跡を辿り了えて想いの全てを受けとめたら、ようやく自分の生き方に向き合える。
その「いつか」が来た時には必ず自分は、この隣の為に全てを懸けて生きる道に立ちたい。
そうずっと考えて、その「いつか」を必ず無事に迎えたくて支えがほしくて。
だから「クライマーウォッチの交換」を自分は思いついた。

その「いつか」を英二は、英二の意思で決めてしまうと言ってくれている。
それは自分が考えているより時間を早めて「いつか」を迎えたいと言っている。
そんなこと可能なのだろうか?隣に立つ笑顔を周太は見つめた。

「周太、俺を信じて?」

真直ぐな明るい、きれいな目。
穏やかな静謐と思慮深い実直さが美しい、きれいな切長い目
こんなきれいな目をした自分の愛するひと。このひとの言葉を信じて自分は父の道に立っても今日まで生きられた。
だからこれからも信じればいい、警察官としても唯の自分としても。そっと周太は微笑んで応えた。

「ん、…信じてる英二。…一緒に暮らそう、ね?」
「おう、約束だよ?周太」

きれいに笑って英二はそのまま周太の唇に唇を重ねてくれた。
やわらかな熱と一緒に想いが重なって、そっと周太の心へ想いがとけこんでいく。
またこんなふうに温かい約束をくれる、愛する想いの中心のひと。こんな想いを懸けてくれるひと、見つめないではいられない。
そんな想いに微笑んで、静かに離れると英二がきれいに笑った。

「きれいだね、周太は。俺ね、エプロンしている周太って好きだな」
「…ん、そう?…なんか気恥ずかしいけど…うれしいよ」

赤くなった顔が恥ずかしい、けれど温かな安らぎと幸せに周太はくるまれていた。
そんな周太に英二は、クルミのすり鉢を見せて訊いてくれる。

「周太、こんなで大丈夫かな?」
「ん、…上手に出来てるね、英二。ありがとう」

思ったよりもクルミはきれいに砕いてくれてある。
やっぱりやれば上手に英二は出来るんだな、そう微笑んだ周太に門の軋む音が聞こえた。

「…あ、今の、門が開いた音?」

そう言う言葉の向こうで軽やかな飛び石を踏む音が聞こえる。
きっと母が帰ってきた。うれしくて微笑んだ周太の顔を、笑って英二が覗きこんだ。

「周太、お出迎えしてきていい?」
「…ん、ありがとう。きっとね、喜ぶ」

見上げて微笑んだ周太に、英二も笑い返してくれる。
ほら、笑ってくれたね?その笑顔がうれしくて見つめる周太の頬に、そっと英二はキスをした。

「…っ、」
「かわいい、周太」

不意打ちに目が大きくなる、そのまま熱が首筋を昇ってしまう。
どうしよう母が帰ってくるのに赤くなってしまう、またからかわれるかもしれない。

「…あの、だからりょうりちゅうはあぶないからって…うれしい、んだけど…あ、出迎え、おねがい…」

途惑っていつものように話し方もおかしくなってしまう。
どうしようと困っている周太に、幸せそうに英二が微笑んだ。

「お願いしてくれるんだ、周太?うれしいよ、周太の『おねだり』はさ」

きれいに周太に笑いかけると英二は、クリスマスの花束を提げて玄関へと行ってしまった。
すぐに扉の開く音と楽しげな話し声が聞こえてくる。ほっと息をついて周太は調理台へと向かった。
火にかけたトマトソースの鍋を見ながら、そっと頬に掌を宛ててみる。
どこかまだ英二の唇の熱が残るようで、しあわせで周太はそっと微笑んだ。

…クライマーウォッチのおねだりも、喜んでくれるのかな?

きっと喜んでくれる、そう信じているから自分は英二にあの腕時計を買ってしまった。
カタログで見た値段よりも店頭価格は安くなっていた、けれど人気のモデルでプロ仕様だから個数が少ないらしい。
それで取り寄せてもらうことになって、間に合うかすこし心配だった。
けれど周太が店で発注をしたのは雲取山から帰った翌日、あの小部屋を開くために実家へ帰った日の夕方だった。
おかげで充分に間に合って、無事に用意することが出来ている。
どんな顔で受け取ってくれるかな?そんな考え事をしていると母が台所へ入ってきた。

「ただいま、周。いい匂いね?はい、これケーキ」
「おかえりなさい、お母さん。あ、…」

受けとったケーキの箱が大きくて、すこし周太の瞳が大きくなった。
いつも4号サイズの小さなケーキを、13年間ずっと母は買っていた。
なんだか大きなケーキがうれしい、箱をかかえて微笑む周太に母は笑いかけてくれる。

「英二くん、きっとたくさん食べるでしょう?だから大きいのにしたの。どうかな?」

いま母は「英二くん」と名前で呼んだ。
母の黒目がちの瞳を見つめて、そっと周太は訊いてみた。

「ん、…お母さん、名前で呼ぶことに、したの?」
「ええ、」

おだやかな黒目がちの瞳が微笑んで、ゆっくり母は頷いた。
そして周太の瞳をまっすぐ見つめて、静かだけれど明るいトーンで言ってくれた。

「彼は周の運命のひと、でしょう?だから、お母さんにはもう一人の息子になるね?だから名前で呼ぶのよ、これからずっと、ね」

「周の運命のひと」母はそう言ってさらりと認めてくれた。
そして「これからずっと」と母は言う、母は英二の夢を聴いたのだろうか?
そう見つめる周太に母は、黒目がちの瞳を楽しげに笑ませて口を開いた。

「世界一の最高峰で、世界一に周太を愛してるって想ってみたい。
 それはね、きっと最高に幸せだって思いませんか?そんなふうにね、英二くんは話してくれたのよ」

母にまでそんなふうに?
さすがに母には気恥ずかしい、というか誰でもそれは気恥ずかしい。
けれど英二の性格だと、いざとなったら世界中に公言したいと思うだろう。
実直で2番目でも満足する英二だけれど、そういう大らかな明るさも持っている。
だからこれくらいで怯んでいては一生ずっと一緒にいるのは大変、そんな覚悟をしながら周太は母に訊いてみた。

「…ん。お母さんは、なんて答えたの?」
「きっと最高に幸せね。だから無事に登って、必ず周太のとこへ帰ってきて?そう、お願いしたのよ」

無事に、必ず。
そう願ってくれた母の想いが切なくて、ありがたくて周太の瞳が熱くなってくる。
そんな母の願いは「周太を独りにしないでほしい」母は英二に自分を託すということ。

そんな母と周太には身寄りはお互い以外に誰もいない、親戚もいない二人きりの母子だから。
だから周太も知っている、母はずっと心配してくれていること。
母は、いつか母が順縁にこの世を去る時に、周太を独り残す日を心配している。
そして周太の性格を理解しているから、周太には結婚も難しいと解っている。

周太は一途すぎて余裕が無いだけ頑固なうえに、感性が繊細すぎて傷つきやすい。
だから恋愛の駆け引きは到底できないし、女性特有の同調を求める甘えに頷くことも出来ない。
そんな周太は女性どころか人すべてに遠慮と壁を作ってしまう、こういう性格で一家の大黒柱になることは難しいだろう。
むしろ孤独でいる方が楽だし無理な気遣いを続ければ破綻する、そうして自分も周りも傷つけてしまうのが怖い。
だからこそ13年間を周太は孤独を選んで生きてしまった。そして、その哀しみすらきれいに隠すから誰も本音に気づけない。

そのことを理解していると母は、卒業式の翌朝にあの公園のベンチで周太に話してくれた。
だから周太が見つけた相手が英二だと訊いても、母は何も驚かずに当然と受け留めてくれた。
それは外泊日で帰るたびに聴いた話と、一度だけ外泊日に訪れた英二の姿から解っていたから。
そして母は本当に自分を英二に託そうとしてくれている。
こんなに理解してくれている母が、やっぱり自分は大好きで大切にしたい。うれしさと切なさに周太は微笑んだ。

「ん、…お母さん、ありがとう。…ね、英二は何てお母さんに答えたの?」

黒目がちの瞳がうれしそうに楽しげに笑ってくれる。
そして母は、きれいに笑って応えてくれた。

「必ず帰って周太に、ただいまって言います。これは絶対の約束です。そう言ってね、きれいに笑ってくれたの。
 お母さん、ちょっと見惚れちゃった。あんまり幸せにね、きれいに笑ってくれるんだもの。…ね、周?あなたは幸せね?」

ほんとうにそうだ。
あんなに幸せに、きれいに笑ってくれるひとが隣に居てくれる。
そして母にすら認められて今、自分の実家の台所で食事の支度が出来ている。
そんな母も言ってくれた「あんまり幸せに、きれいに笑ってくれる」
そう笑わせているのは自分の存在のため。こんなに幸せな自分はただ微笑めばいい、周太はきれいに笑った。

「ん、お母さん。俺はね、幸せだよ?」

笑った周太に母も微笑んでくれた。
そんな母の笑顔がうれしくて幸せで温かい、そんな想いでいる周太の頬をふっと花の香りが撫でた。
香に振り向くとリビングとつなぐ扉から、英二が花を生けた花瓶と笑って覗きこんだ。

「花、こんな感じで大丈夫ですか?」

きれいな笑顔が冬ばらの横で笑っている。
きれいな華やぐ笑顔、明るくて真直ぐで美しいひと。このひとが自分も母もこうして笑わせてくれる。
このひとは自分から望んでこの家に立ってくれた、そして心から幸せに笑ってくれている。
ただ自分への想いの為だけに笑ってくれるひと。このひとを自分も幸せにしたい、そんな願いと微笑んで周太は食卓を整えた。

14時半になって、母は軽やかに出かけて行った。
食卓での母は周太の手料理とケーキを一緒に楽しみながら、英二の山の話に明るく笑って心底楽しそうだった。
そして帰りは明日遅くなると告げて、次ぎは年明けに会うかな?と笑ってくれた。
そんな母を見送ると英二は、周太を振り向いて微笑んだ。

「ね、周太。周太の『雪山』を見せてよ」
「ん、…花がね、11月より、多くなった、かな?」

そうして並んで雪の庭へはいっていくと、ゆるやかな午後の陽に白銀が明るく輝いていた。
その中にも山茶花の木は真直ぐに空を仰いで佇んで、いつものように静かに迎えてくれる。
さくり音を踏んで木の前に立つと英二は、常緑の梢を見上げて微笑んだ。

「ほんとだね、周太?たくさん咲いて、きれいだ」

山茶花『雪山』は雪の中にも凛と真白に花咲かせていた。
雪残る梢に雪の結晶のような花々は咲いて、常盤の葉は冬の陽光に濃緑を映えさせ輝いている。
この山茶花は、周太の誕生花として父が植えてくれた大切な木だった。

「御岳山の『雪山』もね、周太。たくさん花が咲いているよ。でも、これよりは少ないかな」
「ん、…ここのほうが陽当りが良いから、かな?」

そして御岳山のほうが寒いからだろう、それでも『雪山』は英二が毎日歩くあの山でも咲いてくれている。
ここの陽当たりが少しでも御岳の木にも届くといいな。うれしく花を見上げながら周太は微笑んだ。
そう見上げる右掌が温もりにくるまれて周太は隣を振向くと、長い指の左掌に右掌は繋がれていた。

「すこし手が冷たいね、周太?家に入ろう」

きれいに笑って英二が、そっと繋いだ掌を握りながら言ってくれる。
やわらかく繋いだ掌の温もりが幸せで、けれど気恥ずかしくて周太は瞳を伏せた。
それでも周太は想いを伝えたくて微笑んだ。

「ん、…あ、ココア飲む?」
「うれしいな、周太のココアは初めてだね。きっと甘いんだろな。ね、周太?」

うれしそうに英二が言ってくれる。
別段どうということのない言葉、けれどなぜか気恥ずかしくて周太は想ったままを口にした。

「…なんかはずかしくなるんだけどなぜか…」
「どうして周太?あ、甘いってとこかな?でもね、周太?きっと周太がいちばん甘いと思うよ」

そっと繋いだ掌を惹きながら英二は周太と歩いてくれる。
温かい掌がうれしい、でも言われる台詞がなんだか恥ずかしくて、そしてよく解らない。
自分が甘いってなぜだろう?騙されやすいう意味だろうか、または転がされやすい?
そんなことを考えているうちに、周太は台所に戻ってココアを作り始めていた。
夕食につかう南瓜を蒸す隣で、火にかけたココアの小鍋を練りながら周太は何気なく訊いた。

「ね、英二?俺って、…そんなに甘い?」

甘い人間だから警察官はやっぱり向かないよね?
そう目で訊きながら英二を振向くと、きれいな切長い目が愉しげに笑っている。
どうしたのかなと少し気恥ずかしく見ていると、英二が笑って言った。

「ね、周太?俺もね、周太は本当は警察官に向かないって思うよ。でもそれと甘いことは関係ないんだ」
「…じゃあ、なんで?」

ちょっと気になって周太は訊いてしまった。
だって警察官に向かないこと本当は少し悔しい。本当に好きで選んだ道ではない、けれど努力は人の何倍もしたのだから。
そして英二は本当に「山の警察官」に適性がある、卒配まだ3ヶ月で認められてトップクライマーになる訓練まで掴んだ。
そんな英二がすこし羨ましいと自分も思ってしまう、自分も男だから生きるべき場所を英二のように得たいから。

きっと男だったら誰もが願う、生きるべき場所と仕事を得て輝く人生を掴むこと。
それは努力だけでは掴めない、もって生まれた才能と運をも惹き寄せる強い意志が大切だろう。
その「努力だけでは掴めない」ことに自分はいつも苦しくなる、そして本当は少し悔しい。
だから英二、同じ男として本当は少しだけ悔しくもなるよ?そう目で訊いた周太に、英二は微笑んで応えた。

「ね、周太?警察官が拳銃を持つ意味は、周太はよく解っているだろ?
 警察官は拳銃を持つ、それは人を殺せることだ、それも法で保護された上でね。それはね、周太?
 俺たち山岳レスキューの警察官も同じだよ。俺たちはいつも人命救助に駆けつける、けれど場合によっては拳銃を携行するんだ」

初めて聞く話だった、そして意外で周太は英二を見つめた。
いつも英二の話は山と遭難救助のこと、それから藤岡や国村との会話や吉村医師の話。
それから後藤の個人指導や訓練の話、そうした温かな明るい話題が多い。
それなのに?ぽつんと周太は英二に訊いた。

「…そう、なのか?」

「そうだよ、周太。だってね、俺たちも首都警察だ。そういう事件性も当然あるよ?
 自殺者が紛れ込みやすいように、犯罪者も奥多摩には逃げ込みやすいんだ。
 そして自殺遺体に見せかけた他殺遺体もある。それを見逃すと犯罪を逃す事になるだろ?だから死体見分は真剣だよ。
 でね、周太?犯人が山に隠れている可能性があるとさ、拳銃携行するんだ。だから山岳救助隊は射撃や武道上手い人が多いよ」

そうした術科の得意な人間が多い部署はそれだけ危険が多い。
だから藤岡は柔道有段者だし、国村も射撃の本部特連の選抜経験者でいる。英二も射撃は上級の高得点合格者だ。
それくらい奥多摩管轄は警視庁でも厳しい現場。そう知っていたはずなのに自分はやっぱり甘い、周太は小さくため息を吐いた。
そんな周太の瞳を覗き込んで、おだやかに英二が笑いかけながら話してくれる。

「周太はね、豊かな感受性が素敵だよ?そして穏やかで純粋なやさしさが、本当にきれいだ。
 そんな周太の掌にはね、拳銃なんか似合わない。もっと美しいことに使う為の掌なんだよ。
 だから俺はね、周太は警察官は向かないって思うんだ。なによりね、周太?ほんとうに周太は警察官でいたい?」

自分は本当に警察官でいたいのか?
そのことは前なら疑問を持たなかった、けれど今は違う。
ただ「父の想いを受け留める」ためだけに自分は警察官の道を選んだ、そして自分は本当に何をしたいか見失ってしまった。
それくらい自分は一途すぎて余裕が無い、だから全て終わって余裕が出来たら一度きちんと考えたい。
そして英二の為だけに生きながら自分がやりたい道を見つけたい。
それを英二は解ってくれている、そっと微笑んで周太は英二に答えた。

「ん、…英二の言うとおりだね。父のことが全部解ったら、俺…辞めたいって思っている」

「だろ?だからね、周太。全て終わったら、ほんとうに周太の生きたい道がわかるよ。
 周太は一途だから、今はまだ他のこと考えられないだろう?
 でも大丈夫、全て終わったら周太なら、きっと自分の道を見つけられる。俺はね、そう信じているよ」

そんなふうにも信じてくれる。
そう「生きる意味、生きる誇りを見つけてほしい」それは自分が英二に願ったことだった。
それを同じように英二も自分を信じてくれる、それは男としても幸せでうれしいと素直に想える。
こんなふうに自分の全てを受けとめてくれる英二、ほんとうに唯ひとつの想いのひとだと確信してしまう。
ほんとうに幸せなんだ、微笑んで周太を英二に言った。

「ん、…ありがとう、英二。俺ね、ほんとうにやりたいこと見つかったら、最初に英二、聴いて?」
「うん、周太。最初に聴かせて。だって周太の隣は俺のもの、いつも一番近くにいるから」

いちばん近くで見つめてくれる、そして理解してくれる。
そんな隣がいてくれる幸せに素直に微笑んで、周太はココアを仕上げた。

「ね、英二。カップを出してくれる?…英二のと俺と、あと…その紺色のカップ」
「これかな、周太?」

3つのカップを食器棚から出して英二は、ダイニングテーブルに並べてくれた。
そして紺色のカップを手にとると英二は微笑んで周太に訊いた。

「周太、これが周太の父さんのカップ?」
「ん、そう…ね、英二。父の書斎にね、置いてあげてくれる?」

微笑んで答えながら紺色のカップを受け取ると、周太はココアを注いだ。
ゆるやかな甘い香の湯気をくゆらせながら、カップが満たされていく。
注ぎ終わると周太は、そっと英二に手渡した。

「周太?俺、すこし周太の父さんと話してきていいかな」

きっと最高峰へ行く話をしてくれる。山での時間を父も愛していた、英二の話は父も喜んでくれるだろう。
そんな想いで周太は微笑んで頷いた。

「…ん。英二の話はね、きっと父もよろこぶと思う」

そっと英二は周太の額にキスをして微笑んでくれた。

「すぐ戻ってくるから」

廊下へ向かう英二の背中が広やかで、また頼もしくなって見える。見送ってから周太は額へと掌でふれて微笑んだ。
それから夕食の支度を整えて残りの2つのカップにココアを注ぐと、トレイに載せて周太は階段を上がった。
まだ英二は書斎にいるのだろう、ゆっくり話してくれたらうれしい。
そう書斎の前を通りかかったとき、不意に書斎の扉が開かれた。

「…あ、英二?」
「周太、部屋でココア飲むの?トレイ持ってくよ」

いつものように穏やかに笑って、周太のトレイを持ってくれる。
きっと父との対話を楽しんでくれたのかな。そう思いながら周太は英二に答えた。

「あ、ん…ありがとう、英二。ん、屋根裏部屋ね、陽当り良くて気持ちいいから、…ね?」
「そういうのいいね、周太。あと、遅くなったかな俺?ごめんね、周太」
「いや…ゆっくり父とね、話してくれたなら、うれしい…よ?」

そんなふうに話しながら周太は英二と屋根裏部屋に上がった。



(to be continued)


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