守田です(20200918 23:30)
● ホームページで完全撤退を表明
日立製作所が、2019年1月に凍結が宣言されていた英国への原発輸出事業からの完全な撤退を表明し、ホームページで公開しました。
以下、声明のアドレスをご紹介するとともに、冒頭部分の引用を行います。
英国原子力発電所建設プロジェクト事業運営からの撤退について 2020年9月16日
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2020/09/0916.html
「株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、2019年1月に凍結した英国での新規原子力発電所建設プロジェクト(以下、ホライズンプロジェクト)の事業運営から撤退することを決定しました。
プロジェクト凍結から20カ月が経過し、新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより投資環境が厳しさを増していることも考慮し、撤退する判断に至りました。」
日立は2012年に買収したホライズン社のもと、ウェールズのアングルシー島に原発を建設しようとしましたが、建設費の高騰などから、2019年1月に凍結を宣言。その後、期待した追加融資なども得られない中で、完全撤退に至りました。
これで日本政府が小泉政権以来続けてきた、官邸主導の原発輸出計画がすべて失敗に終わりました。わたしたち、原発反対を唱えてきた民衆の勝利です!
日立の完全撤退を報じる毎日新聞
● 政府は「失敗」を認め原発輸出路線を撤回すべきだ
歴代政権の中でも、やはり責任が重いのが安倍前政権です。安倍首相は、福島原発事故をなんら顧みず、トルコに乗り込んでエルドアン首相(当時)と原発売買契約を結ぶなど、「トップセールス」を繰り返しました。
安倍元首相はすでに世界中で建設費が高騰しだしているにも関わらず、官邸主導で輸出政策を推し進め、日立・東芝・三菱を連れまわしてセールスを繰り返しました。しかしどこでも採算が合わなくなって計画が破産。すべて失敗しました。
この流れを作りだしたのは、世界の民衆の原発反対の声の高まりです。とくに日本民衆は特筆すべき活躍をしました。
福島原発事故以降、首相官邸前を埋め尽くすデモ、全国各地での金曜行動など、危険な原発に反対する声がこの国にこだましました。
世界の民衆もこれに呼応してくれて各地で立ち上がり、さまざまな交流も進み、国境を越えた運動が広がりましたが、これに直面した各国の原子力規制当局が、レギュレーションをあげざるを得なくなりました。
そのことで建設費が高騰、どこでも計画が行き詰まり、日本の輸出計画のすべてが失敗したのです。安倍元首相、菅首相は、この壮大な失敗を認め、謝罪し、経済的損失の責任をとり、輸出路線の全面撤回を表明すべきです。
計画凍結時に原発輸出の失敗を認めない安倍政権を批判した朝日新聞(20190117)
● 国内の原発も展望が狭まり事故リスクだけが上がっている
同時に見るべきことは、国内の原発の展望も急速に狭まっていることです。やはりレギュレーションの高まりの中で電力会社の経営がどんどん傾ているのです。
このことを象徴するのが「特定重大事故等対処施設(特重施設)」建設遅延で、原発が次々と停まっていること。
この施設は2013年7月の新規制基準で設置が決められたものの、5年もの猶予が与えられていました。ところがどの原発も完成できない。規制委員会は2016年1月にさらに猶予を与えましたが、それでも作れない・作らない。
このため2度目の期限も切れて本年3月川内1号機、5月川内2号機、8月高浜3号機が停まり、10月7日に高浜4号機が停まります。裁判で停まっている伊方3号機の期限は来年3月、大飯3,4号機・玄海3,4号機は2022年夏です。
どうして期限を延ばしても一つも完成しないのか。端的に電力会社がこの工事を進めると経営が苦しくなると判断してきたからでしょう。また実は電力会社が、この施設が原発を安全に導くものと思っていないことも見え隠れしています。
例えば九州電力は、新規制基準合格後に、条件の一つとされる「免震重要棟」を作らないと表明しました。できるだけお金をかけたくないのです。しかも規制委員会はそれでも合格を取り下げない。
ここにも原子力産業の行き詰まりが象徴されています。同時に展望を失った原子力産業が、無理に生き延びようとしているいまは危険性ばかりが高まってもいることを見ておかねばです。なにせ新規制基準など守らず運転を強行しているのですから。
いやそもそも世界で誰も買ってくれない原発なんか、運転を続けていいはずがない。すべての原発輸出計画を止めたことに続いて、さらに「全原発を停めよ!」の声を高めていきましょう。
九電は新規制基準を守ろうとしていない 守田の講演用スライドから
#日立原発輸出計画から撤退 #英国への原発輸出断念 #原発輸出路線撤回を
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