誰其彼怪奇譚

「あら？私が一番早いのね」

「いや……今回は二人だけだよ？」

「え”！」

「ソロセッションって事でね……

本来なら一人でほくそ笑みながらやるゲームを……

二人でやろうっていう企画を賢者から貰ったんだ……」

「あーうー」

「『なら、お前とオルタでやれ！』って言ったら……

『今、サムライライジングで忙しい』と宣いやがった！

と、言うわけでよろしくね」

「……ええ……」

「でだ……日本の歴史的な文化の知識は入れてきた？」

「……いいえ……ドット絵組に教えてもらうつもりでいたけど……」

「なら、漫遊記的なお話にしようか……

僕だって詳しくはないし……

杉浦日向子先生の『怪談』や『お江戸でござる』

	百物語 (新潮文庫)
	杉浦 日向子
	新潮社

 

	NHK コメディー : お江戸でござる ― オリジナル・ソング集
	ソニーレコード
	ソニーレコード

や

石ノ森章太郎先生の『佐武と市捕物控』

 

	佐武と市捕物控 1 (ビッグコミックススペシャル)
	石ノ森 章太郎
	小学館

くらいしか知らないし……

こんなことなら、巷説百物語やしゃばけを読んどくんだったなぁ」

「……そもそも、私は日本の文化からして知らないわよ？」

「そうでした……まあ、なんて表現したらいいのかな？

独創的すぎて、近似した文明が無いんだよね」

「あら？近くに大きな帝国があったでしょ？」

「影響は受けているけど、入ってきた文明を自分たちに必要なものを取捨選択して使ってたんだよ。

そもそも、その帝国の風土と日本の風土が違うから、受けた文化をそのまま使えなかったっていうのもあるけど……

基本的には、日本が『発達』させた文化だよ……」

「う～ん？」

「さすがに地続きの国境を持つ人には分かりにくかったかな？

そうだなぁ……キリスト教が入ってきたとき、ムラの概念に合わなかったんで、あまり普及しなかった。

最終的には、ローマ教皇が日本にだけ『特例』を出したんだよ……

まあ、出しても日本がキリスト教国になってないけどね」

「特例って？」

「僕も聞いた話だけど……ほら、キリスト教って洗礼を受けて、受けた人しか天国に行けないじゃない？」

「そうね」

「でも、先祖を大切にする日本人は、先祖と会えないんだったら、改宗しないって突っぱねたんだよ……

すでに死んだ人間を神、仏として崇める文化が根付いていて、分断できなかったんだ。

結果、教皇が日本にだけ『洗礼を受けると先祖も天国へ行けます』って言ったんだよ……

それでも、普及しなくって『宣教師の墓場』って言われたんだ。

ちなみに近くの国には、キリスト教は定着に成功している」

「……それっておかしいわよ？

島原の乱や踏み絵にまつわる宗教弾圧は？」

「……キリスト教が入った頃。秀吉の時代に、キリスト教の改宗者が、他の宗教を弾圧したんだよ……

だから、秀吉はキリスト教の宣教師を打ち払った。

島原の乱は、領主が重税を強いたために起こった一揆で……

領主が悪いんだけど、悪者を決めなきゃならなかった……

そこで、一揆側にいたキリスト教が扇動したってことにしたらしい。

秀吉の頃の他宗教の弾圧と一揆を首謀する危険因子として排除するしかなかったんだよ……

だから、まず謝るべきは土着宗教を弾圧したキリスト教が悪い……！」

「……私はジャンヌ・ダルクの反転英霊だけれども……ここまで、否定する国は初めてよ？」

「……神は信じないけど『教え（道徳的な）』は信じるんだよ。都合のいいところを『取捨選択』する。

キリストの神は知らないけど……イエスは良いことを言っているから、リスペクトしよう！

っていうノリかな？」

「……神を否定しても『神の子』は否定しない……

わぁ！こんらんしてきたぁ！」

「ね？十分独創的でしょう？」

「うう、不安になってきたなぁ……」

「まあ、そこまで厳密にロールプレイをするつもりはないし……舞妓さん経験くらいのノリで楽しんでよ」

「が、がんばる！」

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「さて、どんな珍道中を見せてくれるやら」

「楽しみですな！」

「ええ」

「まったく！」

「おまえら、趣味が悪いな……」