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デュエルアカデミアネオドミノ校に復学した十六夜アキは、フォーチュンカップの影響からクラスに馴染めないでいた。
復学とはいえ、サイコデュエルの力が原因でアルカディアムーブメントに参加し、メディアで大きく取り上げられているからしょうがない。
しかも、彼女はトップスの中でも上流階級の家柄。
普通の高校に王子様かお姫様がやってきたような。そんな雰囲気の中にあった。
たしかに、自分は変わることができたが、自分の周りの環境はまだ、決して開かれていない。
それは、かつての自分が、壊したものをもう一回摘み上げること……
それが、彼女の試練であり、傷つけてきた者たちへの贖罪だ……と、思っていた。
母は、そんな思いまでして学校へ行かなくてもと心配してくれたが……私が、決めたのだ。
自分の力から逃げないと……
その思いは、変わらない。
だから、アカデミアに復学する決意をした。
が、やはり、クラス全体の空気に馴染めずにいる自分に不器用さを覚えていた。
クラスメイトも教師ですら、腫れ物をどう扱っていいか困りあぐねている。そんな雰囲気であったが……今日は少し違う空気が漂ってきた。
教室でぽつんと次の授業の準備をしている中で、アキの名前を呼ぶ少女がいた。メガネでおさげという地味な少女だ。
「十六夜さんて、フォーチュンカップに出てたんでしょう?」
と、あけすけに尋ねられ、アキはあっけに取られてうなづいた。
「不動遊星とかジャック様とかどうだった?」
ジャック様という位置づけに彼のファンかしら?と思いながら。「どうって?」と、訊き返した。
「いやね、不動遊星とジャック様ってなんか因縁めいたような雰囲気だったじゃない?」
フォーチュンカップ決勝のあとに行われたジャックと遊星のキングをかけた戦い。
そのことを言っているのだろうか?
たしかに、彼らの間には様々な因縁のようなものを感じさせるものがあったのだろう。
アキ自身は試合そのものは見ていないが……ふと、右手の痣を手に握っていることに気がつく。
シグナーとダークシグナーとの5000年に渡る因縁の戦い。
さまざまな因縁の戦いも、つい先日決着がつき、ネオドミノシティも落ち着きを取り戻しつつあった。
ただ落ち着きを取り戻したわけではない。
サテライトとシティとをつなぐダイダロスブリッジには仮設のアーチが引かれ、サテライトもシティもその垣根を超えた交流が始まりつつあった。
「遊星とジャックは、昔からの付き合いで、衝突もしてたみたい」
と、何気なく、そう……本当に何気なく、つい……アキが言った。
すると、声をかけてきた少女の目が爛と光る。ような気がした。
「そうなんだ、昔から付き合ってたんだ……」
アキはその言葉遣いに違和感を覚えた。彼女のメガネの奥が見えない。
「ええ、腐れ縁だって、言っていたわ」
さらに輝きを増す少女の目(というかメガネ)を訝しげに見ながら、会話を続けた。
「ひょっとして、十六夜さんって遊星とジャック様と知り合いだったりするの?」
「ええ」
と、ここは控えめに肯定した。ダークシグナーとシグナーの戦いはシティの人間の記憶には残っていない。
ここで、ネオドミノシティのために一緒に戦ったという事実は伏せておいたほうがいい。と、いう判断である。
「じゃあ、じゃあさ~紹介~じゃなくてもいいの、ちょーっと遠くからでも見てみたいんだけど……」
ずいぶんと初対面からあけすけな少女である。
昔のジャックの人気なら知ってはいるが、今は「普通の人」でしかない……本人は否定するかもしれないけど……
「ジャックのサインが目的なの?」
「それは興味ない」
アキの言葉に間髪入れずに答えが帰ってくる。
「彼のファンなのよね」
彼とはジャックのことである。
「彼らのファンなの」
と、少女は言った。
どうにも、話が繋がらない。
訳も無く、ただ見たいだけという少女に彼らのガレージを紹介していいものか、悩む。
が……せっかくのクラスメイトの頼みを無碍に断るのも悪い気がする。
「本人たちに了解をとってからでいい?」
「本人たち?」
「ええ、遊星とジャックは今、同じところに住んでるから」
その言葉を聞いた瞬間。少女の目から光が消えた……
その変貌は素人目からも異常に移った。
サイコデュエリストの十六夜アキから見てもーー
「同棲……してるんだ……」
「え?ええ、同……棲?よね」
言い回しに、彼女の言い回しに疑問を覚える。やや弱い警鐘を感じる……
たしかに彼らはゾラという女性の時計屋のガレージを間借りしている。
遊星、ジャック、クロウは同じ屋根の下に住んでいるのだから……同棲していると言っても良かった。
のか?……さっきからやけに動悸が止まらない。
「そうなの……うん、ありがとうアキちゃん。紹介の件よろしくね」
少女は手を強引に握った。
アキは「え、ええ」とあっけにとられるしか無かったわけだが。ひとつだけ確認しておくことがあった。
「ちょっと、あなた、名前」
「え?ああ、言ってなかったけ?私はユキ、月代ユキよ」
名前を言った彼女のとてもいい笑顔が忘れられない……
だから、いつの間にか彼女は友人のようにアキを「名前」で呼んだことが気にならなかった。
しかし、その後、天性のトラブルメイカーな腐女子デュエリストの起こす。さまざまなトラブルに、絶え間なく巻き込まれることを考えると……
もし、時間を戻せるなら、過去の私……その子と関わるのはヤメなさいと言いたかった。
さて……僕があとにも先にも遊☆戯☆王シリーズのヒロインで萌えたのは、彼女一人です。
まあ、もともとこういうタイプの女の子に惹かれるのですが。
物語の中で成長して、きちんと主人公を支えるヒロインになるというジュブナイル小説のようなキャラクターなのが、気に入っている理由なのかなぁ〜と思います。
遊☆戯☆王は、ゲームボーイアドバンス版のものを遊んだことがある程度。ルールは少しかじった程度しかなく
サンボルとブラックホールとデーモンの召喚が猛威を奮っていたときのものしか知りません。
アニメも遊戯王GXからしか見たことがなく
それも、うちでケーブルテレビの加入して、テレビ東京が見れるようになったから、夕方のアニメチャンネルを見ていたという程度。
ほぼ、銀魂くらいしか見なかったのですが、遊戯王はGXの惰性で見ていましたが……
あと番組の5D'sは、なぜか大ハマりしました。
いや、最初の頃は、設定について行けなかったのは……
大勢の方と同じだと思いますが
やはり、フォーチュンカップあたりから急激にハマりはじめ
ダークシグナー編で完璧にハマりました。
デュエルのアイキャッチが格闘技の興行ポスターみたいだったり
カードゲームで世界を救うという、まあ何故かよくあるシチュエーションであったりしましたが。
人間関係……絆というテーマで表される物語が「見たかった」物語だったのです。
絆というか恋愛というか……主人公達の友情以上恋愛未満という「少年漫画における男女の理想的な関係」の物語。
ひさしぶりにそれを見たような気がして、アニメ最終回の後。大震災の爪痕で騒いでる中、不謹慎にも遊戯王の2次創作小説を書いていました。
パソコンのデータを整理していたら出てきたので、久しぶりに「蔵出し」してみます(笑)
お話は、ベタですが。
アキさんが、特殊な友だちに振り回されて、大変なことになる。
故に「十六夜アキの憂鬱」をお楽しみいただけましたか?
これを機にアキさんや遊アキに興味を持っていただけたら幸いです。
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