昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

小説・二十歳の日記  十二月二十九日  (晴れ)

2024-12-08 08:00:52 | 物語り

[突然のベル]

ビックリした、まったく。
半日で片づいた大掃除の後、
先輩と世間話をしていたところへ、
けたたましく鳴り響いた電話のベル。

事務所はもう閉じていたから、現場の電話に回ってきたようだ。

「仕事おさめです。誰もおりませんので、
年があけてからおかけなおしください」

一気にまくしたてて、電話を切ろうとしたんだ。

ところが、
”待って!”の声。

チコ? と思ったけれど、まさかだよ。
きょうは、東北地方に行ってる筈だから。

だけど、チコだった。
長距離電話をわざわざかけてくれた。

何度もなんども、ぼくの名前をくりかえして確認してた。
”そうだよっ”て、答えたけれど、
たぶん上ずった声だったんだろうな、ぼくの声が。

とつぜんの予定変更で、いますぐ来るって。
到着が十時ごろになるから、駅まで迎えにきてほしいって。
みじかい会話だったけれど、いつものチコらしからぬ悲しそうな声だった。

いま、九時二十分過ぎだ、そろそろ出かけなくっちゃ。



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