人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでワーグナ―「ワルキューレ」を観る 〜 池田香織、ミヒャエル・クプファー=ラデツキー、藤村実穂子、小林厚子、村上敏明にブラボー!

2021年03月12日 07時20分02秒 | 日記

12日(金)。わが家に来てから今日で2253日目を迎え、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は10日、東京五輪・パラリンピック会場の観客について「外国人観客を会場に入れるかどうかはなるべく早く決めたいが、入場者の上限数はなるべく遅くに決めたい」と語った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       I O C は海外のスポンサー関連者の入国を求めているけど  やっぱり基準はお金か

 

         

 

昨日は16時半からオペラ公演があるため、早めに夕食作りをしました 「鶏のマヨポン炒め」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました マヨポン炒めはマヨネーズで炒めるのですが、温度管理が難しくて焦がしてしまいました でも出来上がりは上々で美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、新国立劇場「オペラパレス」で新国立オペラ、ワーグナーの楽劇「ワルキューレ」プルミエ(初日)公演を観ました キャストは、ジークムント=村上敏明(第1幕)、秋谷直之(第2幕)、フンディング=長谷川顕、ヴォータン=ミヒャエル・クプファー=ラデツキー、ジークリンデ=小林厚子、ブリュンヒルデ=池田香織、フリッカ=藤村実穂子、ゲルヒルデ=佐藤路子、オルトリンデ=増田のり子、ヴァルトラウテ=増田弥生、シュヴェルトライテ=中島郁子、ヘルムヴィーゲ=平井香織、ジークルーネ=小泉詠子、グリムゲルデ=金子美香、ロスヴァイゼ=田村由貴絵。管弦楽=東京交響楽団、指揮=大野和士、演出=ゲッツ・フリードリヒです

当初、ジークムントはダニエル・キルヒが、フンディングはアイン・アンガーが、ヴォータンはエギルス・シリンが、ジークリンデはエリザベート・ストリッドが、ブリュンヒルデはイレーネ・テオリンがそれぞれ歌う予定でしたが、コロナ禍に伴う入国制限により来日できなくなり、上記の通り変更となっています さらに、健康上の理由で指揮者が飯守泰次郎から大野和士に変更となっています

 

     

 

リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)は1853年から1874年にかけて楽劇「ニーベルングの指輪」全4部作を作曲しました 上演日数4日、上演総時間16時間の超大作で、①前夜「ラインの黄金」、②第1日「ワルキューレ」、③第2日「ジークフリート」、第3日「神々の黄昏」から構成されています 「ワルキューレ」の概要は次の通りです

主神ヴォータンは人間女性との間に双子の兄妹をもうける。妹ジークリンデはフンディングの妻となるが、再会した兄ジークムントと愛し合うようになり、2人の男は決闘することになる ヴォータンは息子を勝たせようとするが、妻フリッカに反対され、彼を敗北させよと愛娘ブリュンヒルデに命じる しかし、娘が命令に背いたため、ヴォータンはフンディングにジークムントを殺害させる ジークムントの子を宿したジークリンデは森へ逃げていく。ヴォータンはブリュンヒルデを罰するため岩山に眠らせ、炎で囲み永遠の別れを告げる

 

     

 

私が新国立劇場で「ワルキューレ」を観るのは2002年3月、2009年4月、2016年10月に次いで今回が4度目ですが、ゲッツ・フリードリヒの演出で観るのは2度目です

自席は2階3列15番、センターブロック左通路側です。会場は通常配置で1階席はかなり埋まっていますが、2階は空席が目立ちます 主役級の歌手が変更された影響がないとは言えないと思います

どうでもいいことですが、隣席のカップルは 開演前こそ1冊のプログラムを仲良く読んでいましたが、第1幕が終わると姿を消し、二度と戻ってきませんでした デートの場所を間違えたか、まさか5時間を超える大作だとは思っていなかったかのどちらかでしょう チケット代は決して安くないのですから、よく考えてから行動パターンを選んだ方が良いと思います

ステージ上はフンディングの家の室内が設えてありますが、部屋は左に15度くらい傾き、さらに奥が高く手前が低い傾斜舞台となっています 歌手にとっては結構きつい条件ではないかと思われます

大野和士がオーケストラ・ピットに入り、第1幕が弦楽器による荒々しい演奏で開始され嵐が表現されます。この冒頭の激しい音楽を聴くと、「これから5時間を超えるワーグナーの旅に出発するんだな」と思います    この幕はジークムント、フンディング、ジークリンデの出番ですが、ジークムントを歌った村上敏明は声がよく通り、表現力に優れていました 時折、歌手を助けるプロンプターの声が2階席まで届いていましたが、急きょの代演ということでやむを得ないことだと思います ジークリンデを歌った小林厚子は初めて聴きましたが、声量もあり力強い歌唱力で説得力がありました フンディングを歌った長谷川顕は低音の魅力がありました

第2幕は、遠近感のある2本の道路のような舞台装置で、やはり手前に低い傾斜舞台になっています この幕ではジークムントが秋谷直之に代わります。彼もよく検討しましたが、やはり村上敏明が通して歌うことが出来なかっただろうか、と思ってしまいました 他のオペラならともかくワーグナーの楽劇となるとそう簡単に通して歌えないということでしょうか

この幕で初めて主神ヴォータンと妻フリッカ、ヴォータンの娘ブリュンヒルデが登場します

ヴォータンを歌ったミヒャエル・クプファー=ラデツキーは魅力のあるバリトンで、次の第3幕も含めて、神なのに頼りなく妻フリッカには頭が上がらない”人間的な神”としての演技力も十分で、存在感がありました

フリッカを歌った藤村実穂子はバイロイト音楽祭でも歌った経験のある実力を発揮し、美しくも力強い歌唱力を披露しました

プログラム冊子に寄せた青山学院大学教授・広瀬大介氏の「『愛』の物語としてのワルキューレ」によると、「日本語では『ワルキューレ』とだけ表記される本作、ドイツ語では  Die  Walkure と単数女性名詞を表す定冠詞が用いられる 集合名詞としての『ワルキューレ(戦乙女)』ではなく、ブリュンヒルデだけを指していることが分かる」とのことです その意味では、この楽劇「ワルキューレ」は「ブリュンヒルデ」と言い換えても差し支えないことになります そうしたことを勘案すると、ブリュンヒルデを歌った池田香織こそ この公演のヒロインそのものでした 第2幕、第3幕を通じて彼女の歌い演じるブリュンヒルデを見ていると、神なのに日和見主義者で頼りないヴォータンの娘としての苦悩や、”愛”こそ一番大切なものであることに目覚める様子が切々と伝わってきました

 

     

 

第3幕は飛行場の滑走路のような傾斜舞台です この幕ではブリュンヒルデと、母親を別とする8人の「ワルキューレ(戦乙女たち)」が登場します 冒頭の「ワルキューレの騎行」はフランシス・コッポラ監督の「地獄の黙示録」(1979年製作)で使われて有名になりましたが、勇壮な音楽です 大変申し訳ないのですが、8人のワルキューレは誰が何を歌っているのか見分けがつきませんでした この幕はほとんどブリュンヒルデとヴォータンの会話が占めますが、最後に本公演の演出で注目すべき仕掛けがあります 舞台中央に深い眠りに落ちたブリュンヒルデが横たわり、その周囲に火が放たれるシーンですが、四角いステージを囲むように 炎が白煙を上げながら走っていく有り様は 本公演の最後のハイライトです 2階席から見下ろすとその様子がよく分かり感動を覚えます

本公演では、オーケストラピット内の間隔を確保するため管弦楽縮小版により演奏されたため、東京交響楽団の人数が限られましたが(それでも多く感じましたが)、大野和士の巧みなタクトのもと メリハリの効いた迫力ある演奏を展開し 聴衆を魅了しました

新国立オペラとして4回目となる「ワルキューレ」公演は、コロナ禍のなか主役級の歌手の変更という悪条件のもとで挙行されましたが、大作ではあるものの出演歌手が極めて少ない作品なので、歌手同士のソーシャルディスタンスをとる上では、これほど相応しいオペラ(楽劇)もないかもしれません

何度もカーテンコールが繰り返されましたが、振り返ってみると、ヴォータンを歌ったミヒャエル・クプファー=ラデツキーとブリュンヒルデを歌った池田香織が際立っていました

かくして午後4時半に始まった5時間(休憩を含む)を超えるワーグナーへの旅は午後9時45分に終了しました

 

     


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