12/12(土) 18:12配信
文春オンライン
「実験思考 世の中、すべては実験」(NewsPicks Book、幻冬舎)
11月28日深夜、東京・恵比寿の高級ラウンジ「X」で従業員女性A子さん(20)が亡くなった。警視庁渋谷署によって死因は事故として処理されたが、A子さんは亡くなる直前に“ある客”からの提案でテキーラ瓶の一気飲みをしていたようだという噂がSNSを中心に広まり、いま大きな波紋を呼んでいる。
【画像】前澤氏らと定期開催している「ZOZO会」
なぜなら、その“ある客”がZOZOTOWN創設者の前澤友作氏(45)や、実業家の堀江貴文氏(48)、前田裕二氏(33)らと交流が深い有名実業家の光本勇介氏(38)だったからだ。光本氏は「実験思考 世の中、すべては実験」(NewsPicks Book、幻冬舎刊)というビジネス書も出版している。担当したのは有名編集者の箕輪厚介氏だ。
「光本氏は事業を立ち上げ、売却することで財を成した起業家です。持ち物をすぐに現金化できるサービス『CASH』を展開していた株式会社バンクをDMMに約70億で売却しています。しかし事業が上手くいかず、その後に光本氏が約5億で買い戻したことも話題になりました。
著書『実験思考』は読者が買値を決めるという斬新な方法で発売し、1カ月半で約1億円を売り上げています。そのサービスを提供する株式会社価格自由には、取締役会長に幻冬舎社長である見城徹氏(69)が、代表取締役に光本氏と箕輪氏が名を連ねています」(経済紙記者)
光本氏本人が語った「私が提案したわけではない」
NewsPicksにもよく登場していた光本氏の名前はSNSで一斉に広がり、一時はTwitterトレンドにもランクイン。事態が大きくなったことを受け、12月10日、光本氏はニュースサイト「デイリー新潮」の取材に応じ、A子さんが亡くなった直前の様子を明かしている。
「女性急死のテキーラ事件 渦中の100億円『起業家』は『私が提案したわけではない』」と題された記事では、A子さんがその場でテキーラ1瓶を飲み干すことに挑戦したことを認めながらも、あくまでA子さんが自ら進んで行ったことであると、自身の関与を否定している。
《ただ、これは私が提案したわけではないのです。今回、残念ながらお亡くなりになった女性が、自ら志願してきたものです。「私、お酒に強いのでやってみたい」と》
「A子が志願するなんて信じられない」友人の悲痛告白
しかしA子さんの友人は、目元に涙を浮かべながら、悔しそうにこう語る。
「A子はお酒があまり強くないこともあり、自ら進んで深酒をするタイプではありません。すぐに顔が赤くなるし、一緒に飲んでいてもお酒を飲み残すことが多かった。それにA子は実家暮らしですし、お金に困っている素振りを見せたこともありません。ラウンジ勤務はあくまでアルバイトで、お客さんとアフターに行ったこともない。そんなA子が10万円欲しさに『私、お酒に強いのでやってみたい』とテキーラを一気飲みするなんて……。信じられません」
光本氏はインタビューで現場となったラウンジ「X」には11月27日の午後11時半頃に行き、VIPルームの個室に案内されたと語っている。煌びやかな高級ラウンジの密室で、何が起きていたのだろうか――。
「A子さんは性格がよくてちょっと天然な、嫌味のない美人」
ラウンジ「X」の関係者が、絶対匿名を条件に重い口を開いた。
「A子はお父さんが外国の方でとにかく可愛い。昼はアパレルの仕事をして、週1、2回ほど『X』でアルバイトをしていました。性格も良くて、A子からはお客さんの愚痴や同僚の悪口を聞いたことがない。
店内にある1、2段の階段を上がったところに女性従業員が待機するスペースになっていた一番大きいテーブルがあるのですが、A子はその待機テーブルではなく、なぜかいつもバックヤードの控室の端っこにいました。なぜそこにいるのか聞くと『ここが落ち着くんだよね』と笑顔で話していた。綺麗で性格がよくてちょっと天然で、まさに嫌味のない美人でした」
A子さんは若いこともあり、男女問わず従業員から妹のように可愛がられていたのだという。そんな可憐な女性の人生は、11月27日に来店した光本氏らの席についたことで暗転する。
「その日、光本さんのグループは確かに個室で飲んでいました。その席にA子もついていた。その日、A子は珍しく随分酔った様子で、0時頃にはトイレの前でうずくまっていたところが目撃されています。それでもまた個室に戻り、しばらくして光本さんらが退店しました」(同前)
その後、A子さんは姿を消していたという。
「A子は段ボール箱に頭を突っ込んで倒れていた」
「閉店時間の午前3時。女性従業員らはその日の給料をバックヤードで受け取って帰り支度をするのですが、そこにA子の姿がなかったんです。みんな不思議に思っていたようですが、『何か用事があったのかな?』くらいで、特に問題視していませんでした。しかし、A子は光本さんたちが退店した後は空いていた個室にいて、段ボールのような箱に頭を突っ込む形でぐったりし、酔い潰れてしまっていたようなんです。
営業中、女性従業員はそれぞれのお客さんの席についていたので、多くの子はA子がそんな状態になっていることには気がつきませんでした」
A子さんは極度の酩酊状態にあったようだ。しかし、光本氏はA子さんの様子について、デイリー新潮の取材にこう語っている。
《彼女が気持ち悪そうだとか苦しそうな顔をしていたというような記憶はありません。終始楽しそうにしていらっしゃった》
《本当にちょっと吐いただけという感じでしたし、お店の方がしっかり介護している様子を見届けてから1時半頃に帰りました》
「A子の具合はかなり悪そうでした。しかしまさか亡くなるとは……。一緒に個室についていた女性従業員らが『A子がかなり飲まされていた』と話していたので、『テキーラチャレンジ』をさせられたんだろうなと思いました」(同前)
そもそも「テキーラチャレンジ」とは、15分以内にアルコール度数の高いテキーラをボトル1本飲み干すという、光本氏が発案した“ゲーム”だという。
実際、A子さんは亡くなる前にテキーラチャレンジをしており、光本氏はインタビューで《750ミリリットルくらいのテキーラ1本を制限時間の15分以内に飲み干せたら、10万円をご褒美としてもらえるという内容》《楽しくお酒を飲んで盛り上がりたいという、他のよくある飲み会ゲームと同じ趣旨のレクリエーション》などと説明している。
有名だった「光本さんのテキーラチャレンジ」
光本氏はテキーラチャレンジについて《私は毎度このゲームをやっていたわけではなく、どちらかといえば稀にしかやりません》とも語っている。しかし他の店に勤める女性によると、光本氏のテキーラチャレンジはラウンジ界隈では広く知られていたようだ。
「女性が亡くなる前から、光本さんの名前とテキーラチャレンジの話は有名でしたよ。1年ほど前には西麻布のラウンジ『Y』で飲み干した子がいました。その子はお酒に強かったこともありあっけらかんと武勇伝のように語っていましたが、六本木のラウンジ『Z』で挑戦した別の女性はかなり辛かったようです。その後、お店に光本さんの接客NGを出しています」
ラウンジ「Z」で光本氏がテキーラチャレンジを提案したのは1度ではないという。別のラウンジ関係者が語る。
「上客なので断れない空気」「ビビッてる子も結構いた」
「1年前くらいだったと思います。光本さんの席には複数の女の子がついていたのですが、ほぼ全員が順番にテキーラチャレンジをさせられていました。光本さんからは『断っても良いけど、断るならもうこの席付けないからね』と言われ、実際に断った子は『じゃあすぐ替わって』と席を外させられました。
この日は制限時間はなしで、光本さんの指名で順番にテキーラチャレンジをしていたのですが、『もう無理です』とトイレに吐きに行く子もいた。1人が失敗すると光本さんは『じゃあ次行こうか』と新しいテキーラボトルを注文するんです。女の子には『お酒は飲まないと強くならないからね。こうやって飲ませた方が良いでしょ』と話していました。
光本さんは上客なので断れない空気がすごいんですよね。個室で飲むことが多い方なので助けも求めにくいし……。しかも光本さんはちょっと押しが強いところがあって、ビビッてる子も結構いました」
「光本さんのインタビューには気になることはあった」と語るのは、また別のラウンジ関係者だ。
「光本さんの(デイリー新潮の)インタビューでは、テキーラチャレンジを“志願”したA子さんに《「ほんとにできる? 大丈夫?」と繰り返し確認》したとか、《ボトルを開ける前に、もう一度再確認しました。「自己責任と自分の判断になるけどやる? どうする?」と、他の10人にも聞こえる声ではっきり。》と話していましたが、ここにも違和感しかないっていうか……。A子さんが亡くなった後も、光本さんたちは結構無茶苦茶な飲み方をしているんですよ」
A子さんが亡くなった6日後の12月4日、光本氏は六本木のラウンジ「W」を訪れている。そのなかにはA子さんが亡くなったときに同席していた、光本氏の友人らもいたという。
A子さんが亡くなった6日後にテキーラボトル2本
「光本さんはよく頼む、通称“サボテン”と言われるテキーラ『ポルフィディオ』のボトルと、人数分のショットグラスをオーダーしました。席についた女性従業員にドリンクを選ばせることはなく、もちろんテキーラが飲めるかどうかも聞かれません。すぐにショットに入ったテキーラが配られ、拒否できる空気ではありませんでした。
そして光本さんがグラスを持って、机にぶつけトントントンと音を立てる。その音が乾杯の合図なんです。光本さんに続いてその場にいる人全員が同じように音を鳴らして、ショットをグッと一気に飲み干します。乾杯のペースは光本さん次第で、10分で2、3杯ペースで飲み、この日は2時間も経たないうちに2本のテキーラボトルが空いていました」(同前)
「A子はまだ20歳。お酒にも慣れていなかった」
この時、光本氏らは6日前に亡くなったA子さんに思いを馳せることはなかったのだろうか。前出のA子の友人はこう憤る。
「A子はまだ20歳なんです。お酒にもまだ慣れていません。光本さんは倍近く歳が離れている大人なのに、こうなることが本当に予測できなかったのでしょうか……。私はA子が自らテキーラチャレンジに志願したとは考えていませんが、もしそうだとしても、そんなゲームを考案して、『自己責任だからね』と確認すれば許されるんですか? もしA子がやると言い張っても何がなんでも止めるべきではないでしょうか。それを“レクリエーション”という言葉で片付けるなんて……。まともな大人のやることじゃないと思います。
A子は来年に成人式を控えていて『痩せなきゃ』と、一緒に美容サロンに通ったりしていたんです。それにアウトレットモールに行く約束もしていたのに……。本当に悔しい。悲しいです」
A子さんの友人は祭壇に手を合わせるため、A子さんの実家を訪れている。A子さんは母親を早くに亡くし、実家で外国出身の父親と2人で暮らしていた。
A子さんの父親は「真実が知りたい」
「お父さんは、A子の帰りが遅いと電話をかけてくることもあって、A子をとても大切にしていることは知っていました。父娘関係もよくてA子は『一人暮らししたいけど、お父さんが1人になるのが可哀想』と実家で暮らしていたくらいです。だからお父さんの悲しむ姿がとても心苦しくて……。
お父さんは日本語がそんなに得意ではないので、A子がなぜ亡くなってしまったのか、あまりわかっていない様子でした。SNSで話題になっていることもご存じないようでした。ただ『真実が知りたい』と。『A子は亡くなってしまったけど天国に行くのではなく、一心同体だからA子の分までいっぱい笑わなければ』と気丈なことも話してらっしゃいました」(同前)
「一気飲み」は深刻な社会問題だ。学生を中心に急性アルコール中毒で救急搬送されたり、死に至るなどの事例は後を絶たず、早稲田大学をはじめ、飲み会での一気飲みを禁止している大学も多い。2017年12月に近畿大学の男子学生がテニスサークルの飲み会で酒の一気飲み後に死亡した事件では、両親が学生ら18人と大学に約1億500万円の損害賠償を求め訴訟を起こし、今年10月7日には第1回口頭弁論が大阪地裁で開かれている。
光本氏に、事実確認や一気飲みの危険性についての見解を求めたところ、以下のような回答があった。
光本氏は取材に「私の軽率な判断と行動も一端」
デイリー新潮のインタビューで答えていた内容と重複するところもあったが、12月4日にラウンジ「W」で酒席を囲んだことについて「知人との会が既に予定されていたので参加しました。テキーラを飲むゲームを行っておりません」と回答。
また、一気飲みが社会問題となっている現代において、複数回にわたってテキーラチャレンジを提案していることについては以下のような見解を寄せた。
「女性がどのような理由・原因で亡くなられたのかについて正確な情報は把握できておりませんが、いずれにせよ私の軽率な判断と行動も一端となってこのような事態を招いたことは自覚しており、女性やそのご家族、ご親族、ご友人の皆様にとって取り返しのつかない結果を招いてしまったこと、お店や関係者の方々に多大なご迷惑をおかけしてしまったことにつき、ただただ申し訳ない気持ちで一杯であり、自らの行動を深く反省し、後悔しています。今回の事態を重く受け止め、自分の中の傲りや立ち居振る舞いを見直し、この反省を決して忘れることなく深く胸に刻んで参ります。
改めて、亡くなられた女性、かけがえのないご家族を亡くされたご遺族様には、このような結果となりましたことを深くお詫び申し上げますとともに、心から女性のご冥福をお祈り申し上げます」
12月12日(土)21時から放送の「 文春オンラインTV 」では、本件について担当記者が詳しく解説する。
※事実関係を確認し、落合陽一氏のお名前は削除いたしました。(12月12日20時00分)
「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班)