福原愛さんが卓球解説に生出演しネット沸騰「めっちゃ美人なった」「透明感凄い」

2021年07月26日 16時59分13秒 | 社会・文化・政治・経済

7/26(月) 14:48配信

スポーツ報知

卓球の卓球女子シングルス3回戦が26日午後2時半からフジテレビ系で生中継され、卓球女子五輪メダリストの福原愛さん(32)がコメンテーターとして登場した。

【写真】福原愛さん「筋肉がすっかり落ちました」美脚ショットが大反響

 福原さんは冒頭、コロナ禍のなかでの五輪に臨む選手達の気持ちを思いやり、「大変だったと思うんですね。思い切って、思う存分、自分たちのプレーをして欲しいなと思います」とエールを送った。

 愛さんの登場にネット上は話題沸騰。「福原愛めっちゃ美人なったな」「福原愛ふつうに出てるwww」「あら!愛ちゃん!私は周りがなんて言おうと福原愛ちゃんが好きです!!!」「福原愛ちゃんオリンピック番組出るんだ。すごいメンタル強い」「福原愛さん、綺麗だー!驚くくらい綺麗!透明感凄い!」「離婚したからもういいのか?」など、さまざまな声があがっている。

 福原さんは元卓球台湾代表の江宏傑(32)と今月8日に離婚したことを発表した。

報知新聞社
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13歳の西矢椛が涙の金メダル!岩崎恭子超え最年少の快挙 16歳中山楓奈が銅!

2021年07月26日 16時56分18秒 | 社会・文化・政治・経済

7/26(月) 13:32配信

デイリースポーツ

 決勝で会心の演技を見せ、ガッツポーズを決める西矢椛=有明アーバンスポーツパーク(撮影・高部洋祐)

 「東京五輪・スケートボード女子ストリート・決勝」(26日、有明アーバンスポーツパーク)

【写真】痛っ!両肘から流血の西矢椛 でも可愛すぎる13歳のゴールドゴール

 西矢椛(13)が金メダルを獲得。バルセロナ五輪の競泳・岩崎恭子(当時14歳)を超え、日本五輪史上最年少での快挙を成し遂げた。

 西矢は大阪府出身の13歳11カ月(2007年8月30日生まれ)。今年6月の世界選手権で2位に入るなど、急成長を遂げた。今大会では一気に表彰台を狙う存在として注目されていたが、ラスト3つのトリックで高得点をそろえる最高の演技をみせ、ガッツポーズを見せた。

 金メダルが決まると、何度も涙をぬぐった。試合後のインタビューでは「うれしいです。何か途中まで勝てないと思ってたけど、周囲の人が励ましてくれて、乗れてうれしかったです」と初々しく語り、「他のひとも応援してくれている。最後まであきらめずにやろうと」と振り返った。

 国際舞台で活躍する中山楓奈(16)が銅メダル。17年Xゲームで日本人初優勝を成し遂げた西村碧莉(19)を含め、決勝には10代の3選手が出場した。

 五輪初採用となるスケートボード。前日は男子の堀米雄斗が金メダル。スケボーは金ラッシュとなった。プロスケートボーダーの瀬尻稜さん(24)のフランクな解説も話題となるなど、注目度が高まっている。

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読書について 他二篇

2021年07月26日 08時23分17秒 | 社会・文化・政治・経済

ショウペンハウエル (著) 斎藤 忍随 (翻訳)

 

内容(「BOOK」データベースより)

「読書とは他人にものを考えてもらうことである。1日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく。」―一流の文章家であり箴言警句の大家であったショウペンハウエル(1788‐1860)が放つ読書をめぐる鋭利な寸言、痛烈なアフォリズムの数々は、出版物の洪水にあえぐ現代の我われにとって驚くほど新鮮である。
 
 
「読書は、何でも人ごとではなく自分事にできる感性を養う上で、とても大切」
出版科学研究所の加藤真由子さんの言葉だ。
つまり、「相手の身になって考える」ことに通じる。
読書は暮らしや生き方の糧になるもの。
 
 
最近、多読に励んでいるところであり、彼の哲学は非常に参考になりました。本書で論じられている通り、今年は古典を読み、自分の頭と目で考えていきたいと思います。

・良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。
・いかに多量にかき集めても、自分で考えぬいた知識でなければその価値は疑問で、量では断然見劣りしても、いくども考えぬいた知識であればその価値ははるかに高い。何か一つのことを知り、一つの真理をものにするといっても、それを他のさまざまの知識や真理と結合し比較する必要があり、この手続きを経て初めて、自分自身の知識が完全な意味で獲得され、その知識を自由に駆使することができるからである。
 
知識を知っていることが果たして目指すべきところなのか。
巷ではクイズや雑学など、いくつ知識を知っているかがその人の頭の良さのものさしであるかの風潮がある。
しかし、現実社会は答えなどない問題に対処し、最善の結果を導く繰り返しで評価され、自己実現が叶うところである。
この開きは果たしてどちらが正しいのだろうか?
この本は、真っ向から知識を持っているだけではただの受け売りで、なんの役にも立たない。
自分で考え辿り着いたもののみ使うことができる武器になるという。
そのため多読に時間を費やすのは無駄であり、そんな時間が有ったら考えて答えを出せという。
著者は哲学者の中でも、受け売りの知識を組み合わせて、さも知っているかのように振る舞う者が大嫌いなようで、限りなく軽蔑している。
この内容も、そうした者に向けられたものであるが、書かれている内容は極めて一般にも当てはまるもので、所々、穴があったら入りたい気持ちになる箇所があった。
本を受け身で読んでいてはいつまでたっても教えられる側であり、自分で社会を見ることができないままである。
その姿勢でいれぱ、問題に対処することはできない。問題は得てして自分を苦しめるものだから、解決したその先により良い未来が待っている。
そこに行くために、問題を解決する必要がある。
人が幸福をもとめないなら問題解決はしなくてもいいが、幸福になりたくない人はこの世にいないだろう。
人は問題を解決する姿勢を持つ必要がある。
使える知識があればあるほど、解決できる数が増え、人生を豊かにできる。
それをどれだけ持っているかが姿勢の可否を分ける以上は、受け売りで語ることはなんの役にも立たない。
この本で言っていることは正しい。
そして、この本で学べることは、考えはその人自身であるがゆえに、人と同じである必要がないということだ。
考えが記されたものは思想の模倣物であり、考えの過程が排除されているという。
という事は、考えが記されたものが無数にあれば、思想も無数にあることになる。
たとえ同じ結論であっても、過程が違う無数の思想が存在し得る。
そう考えると、日本人的な、誰かと同じでなければ不安と考えることが馬鹿らしくなる。
逆に、考えの先にある思想を持つことに誇りさえ抱ける。

この本を道標にすれば、自分の考えを堂々と持てる人間になれるだろう。
誰かと違うことが当たり前なのだ。
 
 
あんまり読書習慣がない自分が、ネットでこれだけは読んどけとおすすめせれてた本だったので買って読みました。本自体は薄く、本が苦手な方でも3日あれば読める量です。印象に残った言葉としては、1つは読書は他人に物を考えてもらう事であること。
2つは多読は自ら考える力がなくなってしまうこと。3つは古典を読め。4つは匿名で本を書いたり批評するな。ですかね。ショウペンハウエルがドイツ人であるが故に、言語の使い方が間違っていると指摘している部分がドイツ語で書かれているため何が違うのかわかりませんでした。
部分的に訳されていますが。まあ、彼の時代にいた多読に費やす書籍哲学者とか三文文筆家とか匿名批評を痛烈に批判してます。
彼がアマゾンレビューとか見たらかなり怒りそうですね。本を出すときは正しい文法か国が検閲して、間違ってたら1つの語につき罰金設けろとか言ってたのも印象的でした。本をどう読むかと言うよりかは、彼自身の読書論と当時の批判が書かれた本なので、興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか?
 
 
 
多読書をする人ならば一度は読書という行為について考える上で,読まなくてはいけない本である.
これほど痛烈に悪書について言及している文は他にないのではないだろうか.
というのは,悪書について批判するというのは,そのことについて書いた書籍が自己反省的で自己言及的な側面を含むからである。
現代において余程自身の著書に自信がなければ,これほど他の本について批判することもできないだろう.

内容は他のレビュアーがおおよそ書いていてある通りで,検索すれば本書の批評なるものが散見されるが,
気になるのは,「多読をしない方が良い」と受け取っているレビューが多いことである.
本書は確かに多読について批判している箇所も多々あり,「多読をするな」とも受け取れるが,
p.12において

『さて体系的な思想家もまさにこの手続きをふむ。ただしいっそう大規模に行なう。
つまり思想家には多量の知識が材料として必要であり、そのため読書量も多量でなければならない。
だがその精神ははなはだ強力で、そのすべてを消化し、同化して自分の思想体系に併合することができる。
つまりその精神はたえず視界を拡大しながらも有機的な組織を失わない壮大な洞察力の支配下に、その材料をおくことができるのである。』

本文やあとがきでも指摘されている通り,ショウペンハウエルは天才主義者,貴族主義者の傾向が垣間見える.
p.130でもそのような才能を持つものの読書の効用について述べられている.
『つまり読書は我々が駆使しうる天賦の才能の駆使を促すのである。
だからこの読書の教えは、生まれながらの才がある場合にのみ意味をもつ。』

読書批判について,目が行きがちだがショウペンハウエルの思想の根底にあるのは,天才主義者,貴族主義者であり,
思想家のような自らの思想を持った人,天才のような人の読書と凡人の読書とはそもそも同じ読書という行為でも
得られるものや,たどり着く境地が異なっているという考えである.

だから,多読が悪かと言われれば,個人的にはそうは思わない.
ただ現代のベストセラーなるものは,本の内容から鑑みても,「〜の5つのテクニック」など
まるで表面積だけ押し広げて味を薄くしたはんぺんのようなものであり,量は多そうに見えるが味が薄い.

ただし,現代の出版状況や読書についての批判をした書が他になさそうな点から考えると,
歴史的に見てやはり価値があると言えると思う.
 
 
本書に書いてあることは現代にこそ当てはまるのではないかと思う。
本屋に行くとキャッチーなタイトルで中身の薄そうな本が平積みされていますが、そのような本を見かけると、この本に書いてある「多読はするな」「古典を読め」というのを思い出します。
読書の重要性は間違いないですが、くだらない本を読んで時間を浪費しないよう気をつけたいと思います。
 
 
ショウペンハウエルは哲学者のイメージが強く「どうせ難しいことを書いているのだろうな」程度の認識で、読まず嫌いで敬遠してました。実際読んでみると、我々にもわかりやすい文章で、納得できる部分も多かったです。根っこの考え方がブレないので、明快に伝わる文章であるように思います。『思索』と『読書について』では、著者の文脈に流されるのでなく自分で考えながら読みなさいと、多読を戒めています。『著作と文体』では、近年のドイツ語の乱れを指摘し、思想の崩壊に警鐘を鳴らしています。ドイツ語に詳しくないので分からない部分もありましたが、言いたいことは充分に伝わります。
 
 
『読書は言ってみれば、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。』本文P.11

『自らの思索の道から遠ざかるのを防ぐためには、多読を慎むべきである。かりにも読書のために、現実の世界に対する注視を避けるようなことがあってはならない。』本文P.16

『第一級の精神にふさわしい特徴は、その判断がすべて他人の世話にならず直接自分が下したものであるということである。』本文P.18

『だが読書にいそしむかぎり、実は我々の頭は他人の思想の運動場に過ぎない。』本文P.128
 
 
 
 
 

創作 人生の計算 続3)

2021年07月26日 06時00分05秒 | 創作欄

「郷に入れば郷に従え」といったことわざがある。

「新しい土地や新しい環境に入ったならば、そこでの習慣に従うべき」という意味であり、農林新聞に、営業職として転職した川口雄介は、地方の農協を回る機会が増えた。
農家の機械化の実態を調べ、新聞広告の拡充につなげるためであった。
記事を書くのは、編集の先輩たちである。

先輩で編集・記者の戸田秀雄は農業大学の大学院で農業工学を専攻した生真面目な人であった。

社長秘書の伊藤亜里沙は「戸田さんは、戌年なので忠実な人」と評価していいたが、その言葉の奥には、川口雄介は<油断ができない男>という反目が見え隠れしていた。

ところで、戸田秀雄から八郎潟の干拓事業などについても教えられた。

また、北アルプスのふもとに広がる大王わさび農場についても教えられた。

「長野の安曇に出張なんだね。ついでに大王わさび農場に寄ると良いよ」と紹介される。

そして、「ああ、こんなところがあったのか!」川口雄介は日常の煩わしさから解き放たれたように感動したものだ。

営業で農協を訪問したあとに、つかの間の心の憩いを味わう。

思わず、わさび農場の北アルプスの透明な雪解け水を手で掬い飲んでみる。

従兄の一人が、群馬の生家から長野に移住した気持ちが分かるようでもあった。

群馬の山並みをはるかの凌駕する北アルプスの山並み実に壮大であり、パノラマそのものの景観に圧倒される。

見渡す限り広がるわさび田と北アルプスが創り出す景観は、心を穏やかにしてくれる。
安曇野の自然を堪能しながら、「何時かここに住みたい」と彼は本気で思った。

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参考

北アルプスのふもとに広がる大王わさび農場。
壮大な北アルプスの雪解け水が湧き出る長野県安曇野市。
大王わさび農場では豊かな水資源を利用して、年間を通してわさびの栽培を行ってる。
実はここ大王わさび農場、南北におよそ1kmにわたり広がる日本一広いわさび農場なんです。その広さ、なんと4万5,000坪。

見渡す限り広がるわさび田と北アルプスが創り出す景観は、心を穏やかにしてくれる。
安曇野の自然を堪能できる。

池田町からの展望

有明山

 有明山を中心とした一角。その形は富士山に似ているため別名信濃富士とも言われている信仰の対象となっている山でもあります。 北アルプス展望美術館(池田町立美術館)の階段から見ると、山の形が左右対称で、きれいな台形をしているとてもきれいな有明山が見えます。少しでも移動するとその形は傾いて見えてしまいます。
 有明山を中心とした北アルプスと田園の織り成す景観はまさに数少ない日本の原風景。山下大五郎画伯や奥田郁太郎画伯はこのとりことなって神奈川、東京からこの地にやってきて多くの名画を残され、現在池田町立美術館でその絵を所有し、展示しています。前山なので高く見えますが標高は2,268mと低い山であり、また登山には厳しい山でもあります。

 有明山の右隣に奥山として燕岳が見えます。標高2,763m。夏の朝5時40分ごろから6時ごろにかけて燕山荘の屋根が、東から上がる太陽の光を反射して見えます。 燕岳の横には 餓鬼岳がそびえたちます。この山も前山で標高は2,647mとあまり高くありませんが横幅の広い山で目立ちます。 そこからさらに右(北)に伸びていくと後ろに唐沢岳(2,632m)の頭がわずかに見えます。

北葛岳・針ノ木岳・蓮華岳

 餓鬼岳・唐沢岳をさらに左に行くと北葛岳の勇姿が目に入ります。この山も、とがっているので針ノ木岳と間違えやすい前山で標高は2,551m。 その隣の奥に美しい姿をした山が見えますが、そちらが針ノ木岳です。標高は2,821m。この山は日本の山には珍しく針のようにとがっています。また、針ノ木岳は池田からの形がとてもきれいに見えます。3丁目から堀の内あたりの間がベストスポットです。そこから外れるととがった形が崩れて両肩を怒らしたような姿になります。池田町を出ると他の山の陰になってしまいよく見えなくなってしまいます。

 また、蓮華岳2,799mがその横にどっしりと右肩さがりの緩やかなカーブを描いて、険しいアルプスの中ではひときわあたりを和ませてくれる曲線美を披露しています。その緩やかな傾斜は、しかし、長くきつい登山道となり登山するには苦労します。 北葛、蓮華、針のこの3山で一つの景観を形成しています。

爺ヶ岳・鹿島槍ヶ岳・五竜岳

 赤沢岳(2,670m)、鳴沢岳(2,641m)、新越乗越、扇沢頭に続き、爺ヶ岳が見えます。標高は2,670m。3つの峰をもつきれいな山です。北アルプスの名前を覚える時はまずこの3つの峰を探し、そこから右左にみていくと覚えやすいといわれます。
 その右隣には2つの峰を持つ鹿島槍ヶ岳の秀峰2,887mがそびえたちます。そして五竜岳2,814m。この山も2つの峰が見えます。

  池田町から見えるこの3つの山々と田園の風景はとても美しく、見る人の目を楽しませます。                        

白馬三山(白馬鑓ヶ岳・杓子岳・白馬岳)

 白岳(2,405m)、唐松岳(2,696m)そして八方尾根を見ていくと、白馬三山にたどり着きます。池田町から見えるこちらの山々は、白馬村から見る迫力とはまた違った優雅な姿が見られます。 最初に白馬鑓ヶ岳(はくばやりがたけ)2,903m、真ん中の山が杓子岳2,812m、そして白馬岳(しろうまだけ)2,932m。白馬岳は池田町から見える山の中では一番高い山です。 晴れていれば、小蓮華岳(2,763m)や乗鞍岳(2,436m)も見えます。

常念岳・蝶ヶ岳

 有明山の左(南)に目を向けると、大天井岳(2,922m)、東天井岳(2,814m)、横通岳(2,767m)が連なり、そして霊峰常念岳2,857mが見えてきます。池田からは馬の鞍のように見えるこちらの山は、安曇野市からみると立体感があってさらに綺麗に見えます。

 これをさらに南にいくと、蝶ヶ岳(2,677m)や大滝山(2,616m)、鍋冠山(2,194m)が見えます。

北アルプスのふもとに広がる大王わさび農場。

壮大な北アルプスの雪解け水が湧き出る長野県安曇野市。
大王わさび農場では豊かな水資源を利用して、年間を通してわさびの栽培を行っている。
大王わさび農場、南北におよそ1kmにわたり広がる日本一広いわさび農場で、その広さ、4万5,000坪。

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参考

八郎潟は北緯40度、東経140度の経緯度交会点(日本で唯一10度単位の経緯度交会点)を中心に、東西12km、南北27kmに広がり、総面積2万2,024haの滋賀県琵琶湖に次ぐ日本第2の広さを誇る湖だった(東京山手線内側の 2.5 倍)。
最深部でも4~5mの浅い湖で、古くは江戸時代から干拓事業の構想があった。
これら構想は財政等の事情により実現されなかった。
再びその干拓計画が進められたのは昭和31年のことだ。
戦後の食糧不足を解消するために、国の事業として農地を増やす計画が進められた。
日本の土木技術を結集し、またオランダの技術協力を得てついに八郎潟干拓事業計画が完成し、昭和32年に事業の着工となる。

幾多の困難、試行錯誤を重ねながらも工事は順調に進み、昭和41年には干陸、引き続き「新農村建設事業団」の基幹工事が行われ、昭和52年3月に20年の歳月と約852億円を投じた大規模干拓地への事業が完了した。
八郎潟は1万7,239haの希望の大地へと生まれ変わったのだ。
昭和 43(1968)年の第一次入植(56 戸)以来、全国 38 都道県から計 600 戸近くの入植が行われた。
同事業は、我が国農業のモデルとなるような生産性の高い機械化農業を目指したものであり、昭和 52(1977)年には、1万7千 ha(標準区画 1.25ha)の大規模干拓地が完成しした。

(機械化の進展等により生産力高まる)
入植が始まった当初、干拓地の土壌は排水の悪い重粘土質の軟弱基盤となっており、入植農家は特に田植作業、収穫作業等で大変な苦労をした。
しかし、その後、土地が乾くとともに、田植機、コンバイン等の機械化が進んだこともあり、農作業上の問題はほぼ解決され、生産力を高めていった。


なぜ五輪は無観客なのか?

2021年07月26日 05時11分07秒 | 事件・事故

【岩田健太郎教授が緊急解説】五輪は無観客なのに…欧米のスポーツイベントは「なぜ有観客OK?」
7/9(金) 18:57配信

SmartFLASH

7月7日におこなわれた「EURO2020」イングランド対デンマークの準決勝。6万人超が詰めかけた(写真・AFP/アフロ)

 7月8日、IOCと東京都などのトップによる5者協議で、東京オリンピックの都内会場はすべて無観客にすることが決定された。

 同日に確認された新型コロナウイルスの東京都内における新規感染者は896人。1週間前の7月1日に比べ、223人増加と都内の新規感染者数は増加傾向にあった。

 政府も7月12日からの緊急事態宣言発令を決定していたなか、東京都の小池百合子都知事(68)は無観客開催について「都民の命と健康を守り、安全を重視した大会とするため」と説明した。

 だが、一方でインターネット上では、

《EUROは準決以降は制限なしで盛り上がってるのになあ。。。イギリスは感染者数も死者数も日本より多いのにだぞ?》
《エンゼルスの試合を見ている限りだと、普通にオリンピック開催出来そうな気がしてきた》

 といった声も聞かれる。
 日本より感染が拡大傾向にある、欧米でのスポーツイベントの開催を例に、東京五輪の「無観客開催・中止議論」に対して疑問を持っているようだ。

 海外で開かれた3つのスポーツイベントをもとに、「なぜ有観客で開催できるのか?」という疑問を、感染症が専門で新型コロナウイルスに関する発信を続けている神戸大学大学院・岩田健太郎教授にぶつけてみた。

(1)サッカー「UEFA EURO2020」

 イギリス・イングランドで開かれた準決勝は9万人収容の「ウェンブリー・スタジアム」で最大6万4950人を収容して、開催された。

「EUROは11カ国の分散開催で、国とスタジアムによってレギュレーションが違います。ウェンブリー・スタジアムに関しては、抗原検査を観客の入場条件としているようですが、スコットランドからの観客の間で多くの感染者が出てしまった。抗原検査だけで感染を防ぐことは出来ていません。

 しかし、イギリスはもう『コロナと共生していく』と態度を決めました。ワクチン接種率はかなり高いですが、毎日新たに3万人近い感染者が見つかり、毎日300人ほどが入院している。

 死亡者も人口10万人あたり、年換算で10人ほど出ています。それでもガンや心臓発作に比べれば死者の割合はそれほど大きくないから『あきらめましょう』と決めたということです。これがいいか悪いかは、価値判断の問題だと思います」(岩田教授)

(2)F1「オーストリアGP」

 観客上限がなくなり、オランダからの大応援団など、7月2日~4日の3日間でのべ約13万2000人の観客が訪れた。

「まずオーストリアは1日の感染者が100人以下にとどまっており、かなり感染を抑えつけています。コロナを抑えつければなんでもできるということです。先ほどのEUROでも、ほとんど感染者が出ていないハンガリーは首都・ブタペストのスタジアムを満員にして開催していました。

 ヨーロッパでは、コロナ対策をしっかりやったあと、経済やイベントの “ご褒美” がついてくるわけです。しかし、日本は2020年に患者が増えている状況にもかかわらず、『GoTo』をやっていた。ヨーロッパと真逆のミスをしているんです」(岩田教授)

(3)野球「ロサンゼルス・エンゼルス戦」

 6月18日から本拠地「エンゼルスタジアム」は観客制限なしの最大約4万5000人収容で開催されている。

「アメリカはまだ感染が抑えられてはいませんし、バイデン大統領も『コロナとの戦いは終わっていない』と発言しています。

 ただ、カリフォルニア州が経済活動の全面再開に加え、マスクを外していいなど感染対策の緩和をおこなっているのは、『その代わりにワクチン打ってね』という感じの全州民にワクチン接種を促すための方便ですよ。

 一方で日本は『感染者が増えたから緊急事態宣言で』みたいな、なんのビジョンもなく、場当たり的な対応をしているだけです」(岩田教授)

 岩田教授は、今回の東京オリンピックの無観客開催について「最悪の選択は避けられた」と話す。

「いちばん最悪の状況は『オリンピックが始まっちゃったから感染者が増えても対策を取りません』ということでした。無観客になって、これだけは避けられた。

 はっきり言って、コロナ対策で100点の国もないし、0点の国もない。各国の政策には一長一短があると思います。『日本の対策は全部ダメ』と言う人も『批判なんて気にせず経済を回せ』という人もどっちもおかしい。

 ただ、ひとつ言えるのは日本には対策のビジョンがない。これは科学的にも、理性的にも本当によくないと思います」

 五輪開幕まであと2週間を切った。最悪を避けた後のシナリオはどうなったのか……。

 写真・AFP/アフロ

 

東京都 小池知事「五輪が変化のきっかけに」

開催都市・東京都の小池知事は8日夜開いた臨時の記者会見で「人の流れを抑制して感染拡大を防止する観点から無観客となった。
 ... 小池知事は「何としても感染の拡大を抑え、安全・安心な大会として成功に結びつけていくことが東京や日本の貴重なレガシーになると考えている」と述べました。2021/07/09

 

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ウインブルドンは準々決勝から観客のフル収容に踏み切った

2021年07月26日 05時09分34秒 | 社会・文化・政治・経済

「パンデミックはまだまだ続く」フェデラー、観客100%収容に懸念。ファンへの感謝を述べつつも…<SMASH>
中村光佑
2021.07.07

ウインブルドンは準々決勝から観客のフル収容に踏み切った。フェデラーは感染拡大を懸念するとともに観客の重要性にも理解を示す(C)Getty Images
 現在開催中のテニスの四大大会「ウインブルドン」(6月28日~7月11日/イギリス:ロンドン/グラスコート/グランドスラム)について、大会主催側は男女共にシングルス準々決勝からセンターコートおよびコート1における観客数の制限を設けないことを発表した。

 この決定に対し、ウインブルドンで最多の8度の優勝を誇る男子テニス世界ランク8位のロジャー・フェデラー(スイス)は、懐疑的な見解を示している。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、観客数を最大収容人数の50%程度に抑えた形で開催してきた今年のウインブルドン。大会に出場する選手たちには定期的にPCR検査を受けることや指定されたホテルに宿泊するなどのルールが設けられ、徹底した感染拡大防止対策を講じている。

 そんななか、大会1週目が終了した時点でクラスター(集団感染)の発生が確認されなかったため、英国政府が人数制限を解除することを認めたという。また、現在もイギリス国内では新型コロナの新規感染者数が増加傾向にある一方で、ワクチンの普及が急速に進んでおり、死者数が低く抑えられていることも制限解除の決め手となったようだ。


テニスのウィンブルドン 観客数の制限解除|日テレNEWS24
<b>テニス</b>の<b>ウィンブルドン 

観客</b>数の制限解除|日テレNEWS24

今大会のウィンブルドンの試合は、観客数を最大収容人数の50%程度に抑えて行われてきました。

しかし、集団感染の発生などが確認されていないことから、 ...

 


サッカー欧州選手権 英で6万人超観客入れる計画に懸念広がる

2021年07月26日 04時55分10秒 | 社会・文化・政治・経済

2021年7月3日 4時54分 NHK

サッカーのヨーロッパ選手権をめぐり、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念が高まっています。変異ウイルスの感染が広がるイギリスでの試合に6万人を超える観客を入れる計画について、ドイツのメルケル首相が疑問を呈したのに対し、イギリスのジョンソン首相は予定どおり開催する方針を強調しました。

ヨーロッパ選手権はヨーロッパ各国で行われていて、7月6日と7日の準決勝、それに11日の決勝はロンドンのウェンブリースタジアムで、6万人を超える観客を入れて行われる予定です。

ただ、イギリスでは、インドで確認された変異ウイルスのデルタ株が拡大し、感染者が2万7000人を超える日もあります。

ドイツのメルケル首相は2日、訪問先のイギリスでのジョンソン首相との共同会見で「観客数が多くないか、非常に心配で懐疑的に見ている」と述べ、強い懸念を示しました。

一方、ジョンソン首相は「スポーツイベントは注意深く管理しながら徐々に再開している。国内にはワクチン接種によってかなり大きな免疫の壁ができている」と述べ、試合を予定どおり開催する方針を強調しました。

イギリスでは今大会、試合の観客などおよそ2000人に感染が確認されています。

イタリアのドラギ首相は、決勝はほかの国で行うべきだと主張しているほか、ドイツのゼーホーファー内相も大会を主催するUEFA=ヨーロッパサッカー連盟を「無責任だ」と非難するなど、各国の間で懸念が広がっています。

 


五輪強行、中止言えない理由と見えない結末

2021年07月26日 04時13分03秒 | 社会・文化・政治・経済

坂上康博教授に聞く

 参院決算委員会で答弁する政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(右手前)。左端手前は菅義偉首相=2021年6月7日、国会内【時事通信社】

 新型コロナウイルスとの闘いが続き、東京五輪・パラリンピックは、カウントダウンに入っても開催の可否や観客受け入れなどをめぐって激震が続いている。それでも開催する理由や中止できない理由を語れない政府、東京都、大会組織委員会。「始まってしまえば」との目論見も透けるが、その通りの結末が待っているのか。坂上康博一橋大教授(スポーツ社会学)と考える。(時事通信社・若林哲治)

 ◇「森友問題」にも似ている

 ―国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長らに屈辱的なことを言われても、日本側は中止をちらつかせることさえできず、国内の反対論や慎重論を説得する言葉も出てきません。

 坂上氏「そもそもIOCは五輪開催に関してものすごく超越的な権限を持っています。開催都市契約に、開催国の指導者は五輪憲章に忠誠を誓うという1項目があり、その他にも開催国の国家主権を侵害するぐらいの超法規的な権限がある。それが本来五輪が持つ特別な意義、平和運動という権威を人々が認めていることで成り立っている。IOCがボイコットなどを経験し、政治からの自立性を守る努力をしてきた結果なのですが、それに加え、今回は違う脈絡で日本の立場が弱くなっている」

 ―やはり昨年3月の判断が想像以上に重い。

 「バッハ会長に追随せざるを得ない状況ができてしまった。IOCと安倍(晋三)前首相のやりとりがすごく重い足かせになっているのではないか。日本側の意向で、延期を2年でなく1年にしたことで安倍前首相が受けた恩ですよね。中止なら入る保険が延期なら入らないとIOC側から念押しされ、そのリスクも引き受けてしまった」

 ―1年なら安倍前首相の花道にできるともいわれました。

 「それは政治的な理由であって、国民に説明がつくことじゃない。それをやってしまった。何が何でもやるしかない今の日本側の不自由さは、そこから来ているのでは」

 IOCのバッハ会長(左)から「五輪オーダー」を授与された安倍晋三前首相=2020年11月16日、東京都新宿区の日本オリンピックミュージアム【時事通信社】

 ◇日本国民が背負わされるもの

 ―今となっては「安倍さんがまいた種」とは言えない。片やIOCは、憲章にない「延期」を認めたんだぞと。さらに海外の観客も入れない、ワクチンも提供する。これでもか、これでもかと。

 「AP通信の記事に、五輪経済に詳しい大学教授の試算が載っていて、中止ならIOCは放送権収入で約35億~40億ドル(約3850億~4400億円)を失う可能性があり、保険で補えるのは4億~8億ドルにすぎないと。見込んだ収入が減るのであって損失ではないが、IOCも必死でしょう」

 ―だから日本が責任を持って開催しろと。そのリスクを国民が健康や生命を懸けて背負わされるわけです。

 「森友学園問題で『私や妻が関わっていたら国会議員を辞める』と言ってしまって、公文書を改ざんせざるを得なくなった。あの時も自殺者を生み出したけれども、今回も、五輪がなければ助かった命が助からなかったケースが出てこないとも限らない。後戻りできない形にしてみんなを巻き込んでしまう。その意味で似ている感じがします」

千載一遇の外交舞台

 平昌冬季五輪開会式に姿を見せたIOCのバッハ会長(前列左端)ら。その隣が韓国の文在寅大統領夫妻。後列中央は北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長(左)と金与正党中央委員会第1副部長(右)、前列右端が日本の安倍晋三首相、その左がペンス米副大統領夫妻=2018年2月9日、韓国・平昌(EPA=時事)【時事通信社】
平昌冬季五輪開会式に姿を見せたIOCのバッハ会長(前列左端)ら。その隣が韓国の文在寅大統領夫妻。後列中央は北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長(左)と金与正党中央委員会第1副部長(右)、前列右端が日本の安倍晋三首相、その左がペンス米副大統領夫妻=2018年2月9日、韓国・平昌(EPA=時事)【時事通信社】
 ―政府コロナ対策分科会の尾身茂会長らがこの状況で開催する理由を質しても、菅義偉首相や小池百合子東京都知事、丸川珠代五輪担当相、橋本聖子組織委会長らの答えは答えになっていません。

 「絆とかスポーツの力とか。2011年、東日本大震災の直後に立候補を決めた当時に戻るようなことを言い始めましたが、なぜパンデミック下でも、緊急事態宣言の中であってもやるのか。片や合理的、科学的な説明を求めていますよね。安全というなら安全性の根拠を示せと。当たり前の話です。でも、答えない」

 ―ここでもまた、何か言えない理由があるのかと。

 「五輪は競技だけをやるのではなく、世界最大の外交の舞台なんです。開会式に約100人の各国首脳が出席する。国連やG20の会議よりはるかに大きい。16年リオデジャネイロ大会はブラジル国内の問題があって30カ国ぐらいでしたが、みんなが集まって開会式に出る。今回はどうするのか」

 ―無観客だと、ガラガラのスタンドにそういう人たちが陣取る光景も。

 「これは主催国が招待する非公式な儀式で、五輪憲章にも開催都市契約にも書かれていない慣行に近いもの。それをIOCも止めていない。やめろと言わない。注目を集めたのは18年平昌冬季五輪の時です。北朝鮮の核・ミサイル開発問題との関係で、安倍首相が行くかどうかでもめた。出欠が外交上の意思を表明するような場になっているんです。五輪は国連加盟国を超える国と地域が一堂に会する唯一無二の機会ですから」

 ―政権にとっては格好のアピールの場です。

 「表立って言わないけれども、(開催理由として)大きいんじゃないですか。日本の首相が世界の首脳の中心に立って、何らかのメッセージを発信する千載一遇のチャンスですよ」

 ロンドン五輪で柔道競技を観戦するロシアのプーチン大統領(左)とキャメロン英首相=2012年8月2日、ロンドン【時事通信社】

 ◇3年前の橋本氏発言

 ―平昌では南北合同チーム結成も演出されました。

 「それに関しては橋本さん(当時自民党参議院議員会長)が平昌へ視察に行った後、党の会合で、南北朝鮮が五輪を政治的に使用していると苦言を呈してニュースになった。『これほどまでにスポーツが、オリンピックが政治の影響を受けたことはなかった、政治がこれほどオリンピックを利用したこともなかった』『政治とスポーツがお互いを利用するならば、そこには信頼とリスペクトがなければ』と。じゃあ今の状況をどう見るか。本当に政治側がスポーツへの信頼とリスペクトの下で動いているのか。聞いてみたいですね」

 ―本来、IOCは五輪での政治的行動を排除します。

 「平昌では大統領が前面に出てきた。大統領と首相とIOC会長がペアを組んで南北合同チームをつくった。そのこと自体はプラスの評価をしますが、露骨でしたね。政治家とIOCが手を組む形を初めて見た。IOCは開催国の首脳に競技場でのいかなる演説も認めていないんですよ。政治的なものを締め出してきた。プラスのメッセージであっても、(選手に)人種差別反対さえ言わせなかった。それなのに平昌ではああいう形でやった」

スペクタクルも一瞬か

 事前合宿地のホテルに到着したオーストラリアの女子ソフトボール代表=2021年6月1日、群馬県太田市【時事通信社】

 ―よくいわれるのは五輪を無事に行って秋の衆院選に勝つと。

 「自民党のイメージ維持のためにはむしろ強行突破の方がいいという判断が、感覚的にあるんじゃないかと。16年五輪招致に失敗した東京がまた(20年招致に)出てきたのはあの大震災の後。人々は不安の中で安定感を求めました。(その直後に)自民党が政権を奪回し、安定性というイメージで長期政権を取り戻す。それが招致活動とうまく心理的にはまった。その流れで何が何でもやり切る判断になるんじゃないかと。降りちゃうと弱い自民党のイメージになりますよね」

 ―カネもかけてきました。

 「国家戦略上に、五輪を頂点とするトップスポーツを位置づけてきた。スポーツ庁をつくり、議員立法ですがスポーツ基本法もできた。日本のアスリートが国際舞台で活躍すれば、国民が感動して国民的な一体感を生み出すことが可能だと。世論調査でも、2000年代に入って国民の日本に対するプライドがぐっと上がり、理由の一つに日本人アスリートの国際舞台での活躍があって、スポーツがそういう力を持っているという結果が出ていましたから。それとやっぱり、『始まってしまえば』というのがかなり…」

 代々木公園内のパブリックビューイング会場設置区域に設置された立ち入り制限の看板=2021年5月26日、東京都渋谷区【時事通信社】

 ◇自然な興奮とホスピタリティー

 ―1964年東京五輪もそうでしたが、それは大きいでしょうね。

 「オーストラリアのソフトボール代表が来たとか、表彰式のメダルのプレートもできたといったニュースがありました。こういうものが持つ力はすごいですよ。外国チームが来れば、やっぱりホスピタリティーが作動する。遠い国から来てくれるんだから、直接受け入れる地元は歓迎しますよ。五輪は本来、ホスピタリティーで成り立つ大会です」

 ―そのまま今回も盛り上がるでしょうか。

 「過去の五輪で人類学者が行った調査では、IOC本部のスタッフも憲章や理念などよく理解していないのに、開会式が始まった途端に涙を流したと。彼らは単なる達成感だけでなく、五輪の持つ力を感じるんですよ。今回もそういう強烈な力が働くんじゃないか、瞬間的には。人は目の前の感動や気持ちの部分では動くわけです。スポーツ、五輪はそのパワーを持っている。しかし、今回の五輪は合理的な説明も大義名分もないまま突き進んでいる。かつての戦争のように。だから五輪のスペクタクルで心が動いても、それが命より大事なのかという気持ちは国民の中で消えないと思う。命に関わる実感ですから、人々の気持ちが今までと全く次元が違う」

説明できない「特別扱い」

 5者会談でIOC・バッハ会長(画面)の発言を聞く東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長=2021年5月19日、東京都中央区【時事通信社】

 ―身近に感染者がいたり職や店を奪われたりした人と、職も失わず、怖いけれど実感の薄い人がいて、大きな「格差」が生まれています。7、8月のワクチン接種の進捗状況も地域などで大きく違って、五輪の楽しみ方にも「格差」があるはずです。

 「そこから(世論や国民に)すごい亀裂が生じるというか、非常に気持ちが悪いものを残すように思います。感動があればあるほど、何とも言えない後味の悪さを残してしまうのではないかと。そのギャップというのか居心地の悪さというのか。五輪がいろんなものを複合したようなすごい記憶を残してしまう。美しい壮麗な部分と政治・経済が絡んで濁った汚い部分を両方見せつけられて、命の上に置いているみたいなものがもろに見えてきて経験させるわけですから、受け止め方は複雑にならざるを得ないです」

 ―平時でさえ感動してもあっという間に終わります。今度はすぐわれに返ってみれば、感染が続いている。9月のパラリンピックも難しい問題があります。

 「五輪をやって衆院選に勝つという政治的な目標を設定した判断を、本当は覆したいけどできないみたいなところもあるのか、確信を持って(五輪をやると)言っているように見えない。苦々しくやっているようにも思えます」

 前回東京五輪で国立代々木競技場前に並んだ万国旗=1964年10月19日、東京都渋谷区【時事通信社】

 ◇なぜ100年以上続いたか

 ―五輪やIOCだけに批判が向くのもどうかと。

 「巨大な五輪が(相当程度)税金の無駄使いだという指摘は極めて正しくて、もっと大事なものがあるでしょうとなって、先進国の都市で反対運動が起きている。これは正しい常識的判断なのですが、五輪そのものは本来、金に換算できない。経済効果とか、そんなもので動いているわけではない。非常に神々しいものなんです。平和運動や、人権がさらに浸透した社会をつくるとか、人類の叡智の結晶であり理想を語ってきたから100年以上続いて、国境を越えられた。5大陸のシンボルマークをはじめ各国の国旗が全部平等に並ぶ状態などを見事に示していて、地球にはこれだけたくさんの人がいて一つになれる瞬間もあるんじゃないか、そうなってほしい、という願いを劇的にアピールできる地球上で唯一のイベントです。競技の感動やパフォーマンスもあるけれど、開会式などの儀式や国旗、国歌がうまく組み込まれ、理念を表象している。ここが力を持ち、人々が納得する部分が確かにあるので、超法規的に特別扱いされるわけです」

 ―それでも今回の「特別扱い」は説得力がない。

 「『説明しろ』と言われて答えていないことがずっと続いている。まともな説明がないのが明解な答え。言えないのは悪いことだから、隠し事があるからでしょうと。普通はそう思いますよ。そうなってしまっている。言葉が抽象的だという問題だけでなく、招致の出発時点から各局面で求められることにちゃんと答えられていません」

スポーツの「地平」から見ても

 ワクチンの接種を受けるブラジルのオープンウォーター選手アナマルセラクーニャ(左)=2021年5月14日、ブラジル・リオデジャネイロ(EPA=時事)【時事通信社】
ワクチンの接種を受けるブラジルのオープンウォーター選手アナマルセラクーニャ(左)=2021年5月14日、ブラジル・リオデジャネイロ(EPA=時事)【時事通信社】
 ―「説明しない」政治が続いてきました。五輪までが説明されずに行われるとは、選手にとっても不幸です。

 「最悪の環境です。国民の6割が中止を求める中でやるというのは、非常に罪深いですよ。ただ世界的な規模で見ると、日本はジレンマや怒りなど複雑な心境で迎えることになるけれども、各国でかなり格差があって、米国はワクチン接種が相当進んだ状況でテレビを見て盛り上がる。他方でインドのように大変な国がある。そこが五輪としてどうなんだと。世界の絆とか一体感とか言うなら、開催のタイミングが大事で、日本国内だけでなく世界状況はどうなんだと。喜べる国はいいでしょうけど、そうでない国との格差というか犠牲を生んでいる。そういう文脈でもバッハ会長の『犠牲』という言葉は考えられなくもない」

 ◇今は無視する国内世論

 ―100年以上続いてきたその土台を、今は表象できる環境にありません。世界中が平和で行われた五輪はないが、局所的な戦争や紛争では五輪休戦が実現しても、コロナに休戦はない。尾身会長発言に対し、丸川五輪相が「全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいと実感する」とコメントしましたが、科学の立場だけでなく、スポーツのあるべき姿からしても「普通はやらない」状況です。この人が見てきた「地平」とは何の「地平」なのかと。

 「だからIOCは開催都市決定に当たって、その都市でどのくらい世論の支持があるのかを重く見てきたわけです。東京が16年大会で落選したのもそれが大きかった。今はなぜ見ないのか」

 ―開催した時に人々がどんな気持ちになってどう行動するでしょう。
「五輪を機にわれわれの価値観の序列、何が一番大事にされるべきかということを、どっぷり試されたと言ったらいいのか。身体感覚、皮膚感覚のレベルでは初めての経験だと思います。しかも長期間ですから。皆さんがどういう意識を持つか読めませんが、64年大会の後のようにはならない。やっぱり、なぜ運動会が中止で五輪はいいのかと聞かれて答えられるのか、そういうことですよね」

 ◆坂上 康博(さかうえ・やすひろ) 1959年生。一橋大大学院社会学研究科・社会学部教授。専攻はスポーツ史、スポーツ社会学、スポーツ文化論。著書に「権力装置としてのスポーツ」「スポーツと政治」、編著に「12の問いから始めるオリンピック・パラリンピック研究」など。(2021.6.8)(了)


【記者解説】IOCの「本音」と都、国が見る「政局」

2021年07月26日 04時13分03秒 | 社会・文化・政治・経済

[2021年6月3日11時3分 ]

21年4月、東京五輪100日前マスコット像お披露目で除幕をした、左から山下JOC会長、小池東京都知事、組織委員会の遠藤副会長、石川東京都議会議長、小山東京都議会五輪・パラリンピック推進対策特別委員会委員長
21年4月、東京五輪100日前マスコット像お披露目で除幕をした、左から山下JOC会長、小池東京都知事、組織委員会の遠藤副会長、石川東京都議会議長、小山東京都議会五輪・パラリンピック推進対策特別委員会委員長
 3月、東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議をする組織委の橋本会長(中央)。右は丸川五輪相。オンラインで参加する、左から小池都知事、IOCバッハ会長

中止しない理由は複数あるが、世界的に見れば感染を抑え込んでいる日本で「なぜオリンピック(五輪)が開催できないんだ」というのがIOCの本音だ。国際社会から見ても、現在の感染状況で中止に転じたら日本の信用問題になるという見方もある。

金銭的な問題もある。IOCは中止した場合、膨大な放映権料を手放すことになる。収入の約7割を放映権料から得ているIOC。米放送局CNNによれば、東京五輪から夏冬10大会の合計で約1兆2700億円の放映権料という。

IOC関係者によると損害保険には加入しているが、全てを賄いきれるかは定かではない。IOCは収入の9割を各国オリンピック委員会(NOC)、各国際競技団体(IF)に分配している。収入源が乏しいNOCやIFは分配金が入らなければ厳しい経営体制を強いられることになる。

「金もうけのための五輪」と批判する声もあるが、逆に公金に頼ると今度は「スポーツ界は税金に頼ってばかり」と批判される。自活するために世界のスポーツ界がたどり着いた現在の仕組みでもある。

一方、国内では政局に五輪の開催可否が使われている。都議選(6月25日公示、7月4日投開票)と、今秋にも行われる総選挙に向けて国会もその様相。だからこそ菅首相、小池知事には、選挙に依拠しない冷静な判断を期待したい。政府関係者は「五輪が中止となれば政権は持たないだろう」と語った。官邸筋によると、菅首相は開催可否について私情を挟まず科学的根拠に基づいて情報収集しているという。だからこそ開催可否や観客上限の判断基準となる科学的根拠を示すべきだ。

都議会、国会ともに与野党が来る選挙のために開催可否を“ネタ”にしようとしている。先月28日には都議会第1会派の都民ファーストの会が「再延期論」を幹事長談話で発表した。会派の立場上「開催」とも「中止」とも言えないから、小池知事も組織委もIOCも否定し「ありえない」とされる再延期を選挙のために持ち出した。賛否の対立をあおっているだけで、まさに「選挙ファースト」だ。

緊急事態宣言が今月20日まで延長されたことで、観客上限数の判断は宣言明けとなる方向。組織委の橋本聖子会長は最近「サッカーや野球などが観客を入れている中、五輪だけ無観客なのもどうか」と話している。しかし、それらは基本的に地域の観客。五輪で東京に参集する人流はその比ではない。感染防止のためには慎重な判断が求められる。【三須一紀】


9割がワクチン接種部位に「痛み」あり 対処法は「冷却」と「エクササイズ」〈AERA〉

2021年07月26日 04時11分49秒 | 医科・歯科・介護

7/23(金) 8:00配信

AERA dot.

新型コロナウイルスのワクチン接種後は、15~30分程度接種会場で経過観察することになっている (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスのワクチン接種後に、9割近くが接種部位の痛みを感じ、2回目接種後の半数近くに発熱などの副反応が起きている。どのように対処すればいいのか。AERA 2021年7月26日号から。

【表】接種後9日目以降に起きる副反応の頻度はこちら

*  *  *
 第5波が現実的になっている今、菅政権が「頼みの綱」にするワクチン接種は、高齢者以外の若い世代でも進みつつある。同時に、ワクチン接種に伴う副反応の報告も増えている。接種部位の痛みは年齢に関係なく起きる。一方、発熱や倦怠感といった全身の副反応は若いほど起きやすい。頻度は低いが、接種後1週間ほど経ってから起こる副反応もある。

 ワクチンは、感染した時と似たような免疫反応を体内で起こして免疫系に新型コロナウイルスの特徴を記憶させることで、実際にウイルスが体内に入ってきた時に素早く免疫反応が起きるように備える。ワクチンの副反応は、体内で起きる免疫反応に伴って生じる。痛みのように接種した部位に局所的に起こるものと、発熱や倦怠感のように、全身に起こるものがある。

 筆者は夫の仕事の都合で滞在していたシンガポールで4~5月にかけ、モデルナ社製ワクチンの接種を受けた。1回目の接種後8日目に接種部位が腫れ、赤みを帯びていった。後述する「COVIDアーム」だ。接種20日後まで続いたが、たまにかゆいだけで痛みは一切無く、腫れている期間中もジムでの腕の筋トレに支障がなかった。

 2回目接種後の副反応では寝込んだ。接種翌日、39度まで発熱し、悪寒や関節痛がひどかった。しかし、接種2日目朝には潮が引くように平熱に戻り、関節痛なども消えた。

■9割が接種部位に痛み

 厚生労働省の研究班が、ワクチンを接種した医療従事者や自衛隊職員約2万9千人の接種4週間後までの健康状態の観察をまとめた調査によると、7月7日現在、先行して接種の始まったファイザー・ビオンテック社製のワクチンでは、1回目も2回目の接種でも、打った人の9割が接種部位に痛みを感じた。また、打った部分が赤くなったり、腫れたり、硬くなったりした人が1割程度いた。痛みなどはほとんどの場合、4~5日以内で解消した。

 モデルナ社製ワクチンの接種は5月に始まったため、厚労省研究班の調査ではモデルナ社製を接種した人は約9300人、うち2回接種が終わった人はまだ約1600人しかおらず、1回目接種後の副反応しかまとめられていない。1回目接種直後の打った部分の痛みの発生頻度はファイザーより若干少なかった一方、赤くなったり腫れたりする頻度は若干多かった。

 どちらのワクチンも、痛みの程度はさまざまだ。触らなければ痛くないといった程度から、打った側の腕が痛くて上がらないほど強い場合まである。外科医に、接種日は、翌日に手術が予定されていない日を選ぶよう指示している病院もある。腕を使う仕事をしている人は、仕事の予定を考慮して接種日を決めた方がいいかもしれない。

 米疾病対策センター(CDC)は、清潔な冷たい濡れタオルで痛い部分を冷やしたり、痛い側の腕を動かしたり、エクササイズをしたりすることで、痛みが和らぐことがあるとしている。

 米コロラド州にあるメトロポリタンデンバー州立大学は、体操専門の教授による、ワクチン接種後の腕の痛みを和らげるためのエクササイズを動画で紹介している。

 また、厚労省は、痛みがひどい場合、市販の解熱鎮痛剤を飲むのも一つの選択肢だとしている。現在、妊婦や子どもも飲めるアセトアミノフェンという成分の含まれる解熱鎮痛剤が一部の地域のドラッグストアで品薄になっているが、それ以外に、イブプロフェンやロキソプロフェンといった成分が含まれる非ステロイド性抗炎症薬も、解熱鎮痛薬として使えるとしている。

 ただし、次のような人は、飲める薬の種類が限られることがあるので、まずかかりつけの医師や薬剤師に相談するよう、厚労省は呼びかけている。

 ▽他の薬を飲んでいる▽妊娠中や授乳中▽高齢▽胃潰瘍や十二指腸潰瘍、腎機能低下といった病気で治療中▽薬でアレルギーや喘息を起こしたことがある。

■モデルナ・アーム対処は

 また、接種部位の痛みや腫れ、発熱といった典型的なワクチンの副反応とは異なる症状が出ている場合は、解熱鎮痛剤で対処するのではなく、医療機関を受診した方がいい場合もあるので、やはり医師や薬剤師に相談するよう求めている。

 ところで、厚労省研究班は、発生頻度は低いものの、接種後1週間以上も経ってから起こる接種部位の副反応についても報告している。モデルナのワクチンの1回目接種の9日後に3.46%、10日後に4.01%の人の接種部位が赤くなった。

 こうした接種から1週間以上経ってから接種部位に起こる副反応は、モデルナのワクチン接種後に起こることが多いので、日本では「モデルナ・アーム」と呼ばれる。が、同様にmRNAを使っているファイザーのワクチンでも頻度は低いが起こることがあり、米CDCなどは「COVIDアーム」と呼んでいる。

 モデルナの約3万人を対象にした臨床試験(治験)では、1回目接種の8日目以降にCOVIDアームが発生した人は0.8%、2回目接種では0.2%いた。

米マサチューセッツ総合病院の医師らが米医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に公表した報告では、赤く腫れても痛みよりかゆみを感じる人が多かった。厚労省研究班の調査でもその傾向がみられる。

 この報告によると、体験者12人の症状は2~11日で消えた。症状の起きた部位の皮膚を採って分析した結果、比較的時間が経ってから活性化する免疫細胞があり、COVIDアームは遅れて起きる過敏な免疫反応だと考えられるという。

 米CDCは、COVIDアームが起きても、2回目の接種を受けるよう勧めている。かゆみが気になるなら抗ヒスタミン剤、痛みがひどいなら、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬のような解熱鎮痛剤を服用してもいいとしている。ただし、痛みの場合と同様、他の薬を飲んでいる人など薬の選択に注意が必要な人は医師や薬剤師に相談した方が安全だ。

■若年と女性に出やすい

全身的な副反応で発生頻度が高いのは倦怠感や発熱だ。とくに2回目の接種後に多い。1回目の接種で新型コロナウイルスに対する免疫がある程度できたため、再度打った時にはより強い免疫反応が起きるからだ。

 厚労省研究班によると、ファイザー社製ワクチンの2回目接種後には、全体で7割近い人が倦怠感を感じ、4割近い人が37.5度以上の発熱を経験した。倦怠感や発熱は若いほど起こる頻度が高く、同じ年代では女性の方が起きやすい傾向がある。高齢者よりも若い方が、また男性よりも女性の方が、免疫反応が強いからだ。このため、20代女性の8割近くが倦怠感を感じ、5割以上が発熱した。

 発熱への対処法としては、接種部位の痛みと同様、市販の解熱鎮痛剤が選択肢の一つだ。注意が必要な場合も同様だ。また、米CDCは、発熱した場合、十分な水分補給をするようアドバイスしている。

 解熱鎮痛剤を飲んでも平熱に下がらないことがある。また、倦怠感への一番の対処法は休息だ。2回目接種の翌日は、万が一の場合に十分に休息が取れるよう、仕事の予定はなるべく入れない方がいいだろう。企業によっては、「ワクチン休暇」制度を作り、副反応が出た場合には休めるようにしたところもある。

 副反応の中には、まれに医療機関の受診が必要なものもある。医療機関の受診などについて悩む場合、都道府県に設置されている「新型コロナワクチン相談コールセンター」で、看護師や薬剤師が医学的な立場から相談に乗ってくれる。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2021年7月26日号

 

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コロナワクチンを2回接種したのに感染 それでも感じた効果とは

2021年07月26日 04時06分24秒 | 医科・歯科・介護

7/25(日) 9:19配信

毎日新聞

陰性になったかどうかを調べるPCR検査のために自宅で鼻孔から検体を採取する記者=モスクワで2021年7月14日、前谷宏撮影

 私はこの夏、ロシアで新型コロナウイルスに感染した。私はロシアの新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」の接種を3月に2回受けていた。それだけに信じられない気持ちも強かったが、ワクチンを接種しても感染する事例は世界各地で起こっており、珍しいわけではない。

【世界の5つの変異株】感染力、ワクチンの有効性は

 一方で、後述するように症状は軽く、命を守るというワクチンの基本的な効果も実感した。新型コロナとの闘いが長期化する中、ワクチン接種を受けるかどうかを判断する参考になればと思い、自分の経験を記しておきたい。

 ◇信じがたい「陽性」の結果

 最初に体調の異変を感じたのは6月30日の朝だった。目覚めてしばらくたった後も妙に体が重い。最初は「疲れがたまっているのだろう」と思った。その前の数週間、多くの原稿を抱えていて、週末もずっとパソコンとにらめっこする日々が続いていた。前日の夜には「気分転換のため」と9キロほど自宅のそばをジョギングし、その後にはビールやワインも飲んだ。「疲れているときに無理をしてはいけないな」。そんなことを考えながら、モスクワ支局に出社し、倦怠(けんたい)感の中で仕事を続けた。午後になると、軽い寒けも覚えたが、体温はまだ36度台後半だった。念のために日本から持ってきた市販の風邪薬を飲んで、この日は早めに床に就いた。

 だが、翌日も体調は戻らない。昼過ぎには体温が37度を超え、仕事をやめてベッドに横になった。「もしかして、新型コロナウイルスに感染したのではないだろうか」。そんな不安に襲われた。しかしワクチン接種を2度受けてから既に3カ月以上経過している。「風邪だろう」と自分に言い聞かせた。

 しかしその後、体温が上がったり下がったりを繰り返した。どうも普通の風邪とは違うようだとも感じ始めた。その次の日も熱は引かず、昼前に体温が38度近くまで上がった。

 ここで支局の助手に連絡し、近くでPCR検査を受けられる場所を探してもらった。ただ、ロシアでコロナの感染拡大が続く中、どこの検査機関も保健当局の指示で発熱などの症状を抱える患者の来院を断っていた。自宅への出張検査も予約が詰まっており、どこの機関も「いつ検査員を派遣できるか分からない」と言う。

 とりあえず一番早く来てもらえそうな検査機関に予約を入れた。じりじりする思いでベッドに寝ていると、自分で感染の有無を調べることができるという抗原検査キットを助手が薬局で買ってきてくれた。綿棒を鼻孔の奥に入れて粘膜を採取し、溶液に混ぜた後、試薬が塗られた部分に垂らすだけ。線が2本出れば陽性、1本だけなら陰性という仕組みだという。早速試してみると、無情にもすぐに赤い2本の線が浮かび上がってきた。「何かの間違いかもしれない」。この段階でもそう思う気持ちがあった。翌日にはようやく検査員が自宅に来てくれ、検体を採取していったが、結果はやはり「陽性」だった。「ワクチンを打ったのに、まさか自分が」。そんなやるせない思いがこみあげてきた。

 ◇拍子抜けした症状の軽さ

 昨秋から冬にかけて感染拡大の第2波が襲ったロシアでは、春以降、感染者数が低下傾向にあった。だが、6月に入ってから首都モスクワなど大都市部を中心に感染者数が再び急上昇を始め、7月4日には1日の感染者が2万5000人に達した。主な原因は、感染力の強いインド由来の変異株「デルタ株」の流行だ。モスクワでは感染者の約9割からデルタ株が検出されているという。

 私は3月にスプートニクVの2度目の接種を終えた。4月半ばには抗体検査も受けて、自分の体内に免疫が形成されていることも確認していた。だが、どのワクチンも感染予防効果は100%ではない。スプートニクVも臨床試験で、一部で接種後に感染する事例が報告されている。

 このため私は、ワクチン接種後も外出時はなるべくマスクをつけるなどの感染予防策は続けていた。特にデルタ株の流行が始まってからは、ワクチンを接種したのに感染したという事例が周囲でも相次いでいた。最近は公共交通機関を使わず、取材もできるだけオンラインで行うなど、特に警戒を強めていたつもりだった。

 私は、抗原検査キットで陽性反応が出て感染の可能性があると分かった段階で、まずは直近の2週間に対面で会話した人たちに注意喚起の意味も込めてメールを送った。発症時まで同じ支局で働いていた2人の助手にはすぐに検査を受けるよう指示を出した。しかし、2人とも検査の結果は陰性だった。最近会った人たちも皆、体調に異変はないという。「いったいどこで感染したのか」。そんな疑問が頭に浮かんできた。

 改めてクレジットカードの使用履歴などで自分の行動を振り返ってみた。不要不急の外出は控えているつもりだったが、仕事の忙しい日に何度か近所の飲食店で外食をしている。なるべくオープンテラスの席を選んでいるつもりだったが、食事の際はマスクを外していた。週に何度か続けているジョギングの際は、苦しいのでマスクをつけていなかった。思い返すと、自分の行動にいくつか「穴」があったことに気づく。冒頭に書いたように、発症の直前には疲れもたまっており、自分の体の免疫力が弱まっていたのかもしれないとも思った。ロシアでは残念ながら、今もマスクをつけるのを嫌がる人が多く、周囲の感染対策も万全とは言えない。「もっと慎重になるべきだった」と自分を責めた。

 一方で、心配していた新型コロナの症状については、発熱から4日目に体温が平熱の36度台前半まで戻り、せきや鼻水はほとんどなかった。その後、数日間にわたり腹痛や下痢が続き、ベッドで横になる時間も多かったが、1人で耐えられないレベルではない。PCR検査で陽性の結果が出た2日後には、地元の保健当局から派遣された医師が自宅まで来てくれた。血中酸素濃度に問題はなく、聴診でも肺に異常は無かった。「入院の必要はない。次の検査で陰性の結果が出るまでは自宅から出ないように」。医師は私に自宅で2週間隔離を続けるという誓約書に署名させ、ロシア製の抗ウイルス薬を1箱残して帰って行った。

 発症から1週間がたつ頃には机に座ってパソコンで原稿が書けるくらいにまで回復した。疲れやすさや軽い倦怠感は残っていたものの、自宅から出られないこと以外は日常生活に支障はない。7月14日に受けた再検査では無事に陰性との結果も出た。

 それまでに新型コロナに感染して肺炎になった人や、後遺症が残った人たちの苦しい体験談を読んだり聞いたりしてきただけに、拍子抜けする気持ちすら感じた。

 ◇重症化を防ぐ効果を実感

 ワクチンは感染を完全に予防できなくても重症化は防ぐことができる――。これは過去にインフルエンザのワクチンなどについて何度も聞いてきたことであり、今回の新型コロナのワクチンについても多くの記事の中で読んできた内容だ。実際にコロナに感染し、軽症で済んだことで、改めてワクチンのおかげで重症化を防ぐことができたのではないかという思いが強くなった。

 「3月にロシアのワクチンを接種しましたが、このたびコロナに感染してしまい、しばらく寝込んでいました。ただ、今のところ軽症で済んでおり、やはり接種可能な人はワクチンを打っておいた方が良いと考えています」

 7月9日にツイッター上でそう報告すると、4600件を超える「いいね」がついた。「ワクチンは、重症化させない性能が一番大切」。そんな反応が多数返ってきた。だが、中には「(ワクチンを)打ってもかかるんだったら、打つ必要はない」「軽症だったのはワクチンのおかげ、となぜ分かるのだろう」とワクチンの効果に疑問を投げかける声もあった。

 確かに私一人の体験ではワクチンの効果について証明するには不十分だと思う。ここでいくつかデータを挙げておきたい。ワクチンの1度目の接種を終えた人が人口の7割近くに達している英国では、デルタ株の流行により7月に入ってから1日の感染者数が3万人を超えているが、死者数は多くても1日50人程度にとどまっている。ワクチンの接種が進む前の今年1月に英国由来のアルファ株が流行した際には、死者数が最大で1日1800人を超えていた。ワクチンの接種が進んだことにより、感染力がより強いデルタ株の流行下でも、死に至るような重症化をかなりの程度で防ぐことができているのが分かる。

 米国の新型コロナ対策を主導したファウチ国立アレルギー感染症研究所長も7月4日、米メディアのインタビューで、6月に米国で新型コロナによって死亡した人の99.2%がワクチン未接種者だったことを明かしている。ファウチ氏は「どのワクチンも完全ではない。だが、入院や死亡について語るなら、その大部分は(ワクチン接種によって)避けたり防いだりすることができる」と強調している。

 ◇重症化率や死亡率は接種で低下

 ファウチ氏が語るようにワクチンは完全ではない。特にデルタ株の流行が世界的に広がる中、ワクチンの感染予防効果が低下しているという報告も出ている。ワクチン接種の「先進国」の一つ、イスラエルの当局は、デルタ株の流行が始まった6月以降、米ファイザー社製の新型コロナワクチンの有効性が従来の95%から64%に低下したと発表した。

 一方で、ワクチンによる重症化を防ぐ効果はデルタ株の流行後も変わっていない。イスラエルでは接種を受けた人の重症化を防ぐ効果は従来と同じ93%のままで、変わらなかったという。ロシアでも、スプートニクVを開発した国立研究所の研究者は、変異株によってワクチンの感染予防効果が下がることを認めているが、スプートニクVの接種を受けた人が重症化する割合は、未接種者の14分の1程度だと指摘している。

 ロシアではデルタ株の流行後、従来のワクチン2回接種では抗体の効果が不十分な場合があるとして、接種完了から半年後を目安に3度目の接種を受けることも推奨されている。ロイター通信によると、米ファイザー社も7月8日、半年ほどで「抗体が弱まり、再感染のリスクがある」として3回目の追加接種(ブースター接種)の許可を米当局に求める方針を明らかにした。このブースター接種については、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長がワクチン未接種者への接種を優先すべきだという考えを明らかにするなど、否定的な意見も広がっている。ウイルスの変異が続く中、限られたワクチンをどう活用するかという議論はこれからも続くだろう。

 一方で、これまでも繰り返してきた通り、従来通りのワクチンの接種回数でも、死に至るような重症化をかなりの確率で防ぐことができることは、世界で蓄積されてきたデータが示していると思う。重症化を防ぐことで、自分の命を救うだけでなく、病床の占有率を減らし、ほかの重症患者が十分な治療を受けることにもつながるかもしれない。ワクチンには一定の感染予防効果もあるため、周囲の人にウイルスをうつすことを防ぐことにもつながる。

 新たに開発されたばかりの新型コロナワクチンの効果を疑問視する声が出るのも分からないではない。私のように接種後に感染してしまうこともある。接種によってまれに血栓症や心筋症などの重い副反応が起こることもある。因果関係が不明なことが多いが、接種を受けた人が時間をおかずして死亡する例も報告されている。最終的には、こうしたリスクも踏まえて個々人が判断することだ。

 だが、一度肺炎を起こすまで重症化してしまえば、長い入院治療が必要になるし、長期にわたって後遺症に苦しめられる人もいる。多くの専門家も、接種による副反応のリスクと発症や重症化を防ぐメリットを比べれば、メリットの方が大きいという立場を取っている。健康に大きな問題がないなら、受けておいた方が自分や周囲の命を守ることにつながるのではないか。それがワクチン接種後に感染してしまったが、すぐに回復できた私の率直な思いである。【モスクワ支局長・前谷宏】

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ファイザー製ワクチン感染予防効果39%に低下 重症予防は91%

2021年07月26日 04時04分47秒 | 事件・事故

7/24(土) 2:15配信

TBS系(JNN)

 イスラエル保健省は、ファイザー製の新型コロナワクチンについて、感染予防効果が64%から39%に低下したと発表しました。一方、重症化の予防効果は91%とし、依然として高い水準を保っています。

 イスラエル保健省は22日、ファイザー製の新型コロナワクチンについて、感染予防効果が64%から39%に低下したと発表しました。重症化を防ぐ効果については、93%から91%と僅かに減ったものの、これまでと同水準だとしています。
 
 イスラエルでは22日、新規感染者が1100人を記録。感染者数の増加と、予防効果の低下はデルタ株拡大によるものと見られています。
 
 一方、ブルームバーグによりますと、今回の調査では、ワクチン接種済みグループと未接種グループを検査した際、異なる方法が使用されたため、調査の一貫性に疑問が生じる可能性もあるということです。また、ロイター通信によりますと、医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メデシン」に掲載された研究結果では、デルタ株に対するファイザー製ワクチンの発症予防効果は88%です。
 
 一連の報告をめぐっては、「感染予防効果」「重症化予防効果」「発症予防効果」が混在し、検査方法なども各国で統一された基準が策定されておらず、混乱を招いているとの指摘も出ています。(24日01:43)

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学びがある
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わかりやすい
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新しい視点

 


五輪開催は、ワクチン接種後の10月末に延期できないのか

2021年07月26日 03時41分38秒 | 社会・文化・政治・経済

4/28(水) 16:09配信

ニューズウィーク日本版
<独占放映権を持つ米NBCの存在>

その場合、現在政府の考えている接種スケジュールを前倒しして、6月15日までに高齢者、8月10日までに一般接種を終えなければなりません。そして、日本サイドにも、そして海外からの選手・役員にも安心感を確保したうえで、10月末に五輪を開催してはどうでしょうか。

つまり、五輪の開催を7月から10月末に延期するのです。20世紀末以来、夏の五輪は夏に実施するのが定例化しています。その最大の理由としては、数千億円相当のカネを払って独占放映権を買っている米NBC放送の存在があります。ですが、NBCにしても、こんな中途半端な形での7月開催では投資金額は十分に回収できない、そう考えているかもしれません。

アメリカの場合、秋の季節はフットボール(NFL)の公式戦、野球のポストシーズン戦、そしてバスケのNBA、ホッケーのNHLなど高視聴率のコンテンツが集中するシーズンです。ですから、高額なCM収入が見込める五輪中継を割り込ませるのは不可能とされてきました。

<開催時期はIOCの決定事項>

ですが、コロナ禍の「出口」を探る季節となる2021年秋の場合は、この方程式が完全に当てはまるとは思えません。NBCとしても7月開催で大損するよりも、他のアメリカ国内のスポーツイベントと日程を協議し、広告出稿を調整したうえで、10月末から11月に実施というのは、この2021年に限っては、成立するかもしれません。2020年とは違って、大統領選がないというのも好条件です。

この「開催時期」というのは、あくまでIOCが決定することになっています。ですが、そのIOCの決定が日本の国家主権の上位に来るというのは奇妙な話です。仮に、菅政権には10月末から11月の開催を強く主張する根拠が脆弱であるのなら、この5月に民意を問い、IOCと強く交渉するための権限を主権者に委任されて対処するのが筋と思います。

そのうえで、ワクチンによる集団免疫が一定程度確保でき、五輪の秋開催を成功させることができ、それが密室での独断専行ではなく、主権者が示した意思に基づくものであったなら、現在の政治不信や、経済の低迷といった現象も吹き飛ばすことができるし、日本の国としての威信も大きく向上するのではないでしょうか。

<独占放映権を持つ米NBCの存在>
その場合、現在政府の考えている接種スケジュールを前倒しして、6月15日までに高齢者、8月10日までに一般接種を終えなければなりません。そして、日本サイドにも、そして海外からの選手・役員にも安心感を確保したうえで、10月末に五輪を開催してはどうでしょうか。

つまり、五輪の開催を7月から10月末に延期するのです。20世紀末以来、夏の五輪は夏に実施するのが定例化しています。その最大の理由としては、数千億円相当のカネを払って独占放映権を買っている米NBC放送の存在があります。ですが、NBCにしても、こんな中途半端な形での7月開催では投資金額は十分に回収できない、そう考えているかもしれません。

アメリカの場合、秋の季節はフットボール(NFL)の公式戦、野球のポストシーズン戦、そしてバスケのNBA、ホッケーのNHLなど高視聴率のコンテンツが集中するシーズンです。ですから、高額なCM収入が見込める五輪中継を割り込ませるのは不可能とされてきました。

<開催時期はIOCの決定事項>

ですが、コロナ禍の「出口」を探る季節となる2021年秋の場合は、この方程式が完全に当てはまるとは思えません。NBCとしても7月開催で大損するよりも、他のアメリカ国内のスポーツイベントと日程を協議し、広告出稿を調整したうえで、10月末から11月に実施というのは、この2021年に限っては、成立するかもしれません。2020年とは違って、大統領選がないというのも好条件です。

この「開催時期」というのは、あくまでIOCが決定することになっています。ですが、そのIOCの決定が日本の国家主権の上位に来るというのは奇妙な話です。仮に、菅政権には10月末から11月の開催を強く主張する根拠が脆弱であるのなら、この5月に民意を問い、IOCと強く交渉するための権限を主権者に委任されて対処するのが筋と思います。

そのうえで、ワクチンによる集団免疫が一定程度確保でき、五輪の秋開催を成功させることができ、それが密室での独断専行ではなく、主権者が示した意思に基づくものであったなら、現在の政治不信や、経済の低迷といった現象も吹き飛ばすことができるし、日本の国としての威信も大きく向上するのではないでしょうか。

冷泉彰彦(在米作家)

 


「あえて真夏開催」の東京オリンピック、日程変更ムリな理由が判明

2021年07月26日 03時41分38秒 | 社会・文化・政治・経済

実は「あの国」の都合で…?
週刊現代講談社

最高気温、35度以上

東京五輪開催まで残り7ヵ月を切った。しかし、マラソンの札幌開催など、ギリギリまで続くドタバタ劇に多くの疑問や違和感を持った方も多いだろう。

東京五輪は、2020年7月24日から8月9日(パラリンピックは8月25日から9月6日)にかけて開催される。そもそも、なぜあえてクソ暑い7月に開催するのか。

この時期の東京は毎日のように猛暑日(最高気温が35度以上の日)が続く。2019年7月29日~8月4日、都内では、たった1週間で1857名が熱中症で救急搬送されている。

Photo by gettyimages
前回'64年の東京五輪は、10月10日が開会式だった。今回も気候の良い10月に開催すれば、わざわざマラソンを札幌で行う必要もなかった。選手やボランティアスタッフの熱中症対策に莫大なカネを費やす必要もない。しかし、東京五輪には絶対に「7月開催」をずらせない事情がある。

「これはIOC(国際オリンピック委員会)の問題なのです。IOCはアメリカの放送局から多額の放映権料を受け取っています。そのため、アメリカの『4大スポーツ』が盛んな秋を避け、閑散期であり、高い視聴率が獲得できる夏に五輪を開催させたいのです」(スポーツライター・玉木正之氏)

米NBCユニバーサルは'14年のソチ五輪から'32年の夏季五輪まで10大会分の米国向け放映権を120億ドル(約1兆3000億円)という莫大な金額を支払い、独占契約している。IOCはこれだけの「お得意先」の意向を無視することは絶対にできないのだ。

すべてアメリカファースト

当の米放送局側はどう考えているのか。アメリカの「3大ネットワーク」の一つであるCBSのスポーツ部門「CBSスポーツ」の元社長、ニール・ピルソン氏が語る。

「7~8月にサマーオリンピックを開くのは普通のことです。IOCは『7~8月に開催せよ』と命じたわけではありません。

9~10月には、アメリカではNFL(ナショナルフットボールリーグ)の試合や野球のワールドシリーズがあり、カレッジフットボール(アメリカンフットボールの大学リーグ)も始まる。アメリカのスポーツ経済を考えると、秋よりも夏に開催するほうがいいのです」

おわかりいただけただろうか。最初から選手や観客のことなど考えていないのである。

『オリンピック秘史 120年の覇権と利権』の著者、ジュールズ・ボイコフ氏が語る。

「この時期の東京での開催は、選手や観客の健康に配慮しているとは言えません。私も昨年7月に2週間ほど東京に滞在しましたが、非常に高温で、熱中症で亡くなる人まで出ている。

そんな状況で競技を行おうとしているのは信じがたいことです。頑なにこの時期の開催にこだわるのは、アメリカの大手放送局の利益以外の何物でもないのです」

人気競技の決勝はすべて午前中

発表された東京五輪の競技日程を見て、奇妙なことに気づいた人もいるのではないか。

競泳や陸上9種目(走り幅跳びや400mハードルなど)、バスケットボール、ビーチバレーなどの人気競技の決勝が、軒並み午前中に開催されるのだ。

「競泳はすべての種目で予選が夜7時から始まり、準決勝・決勝は朝の10時半スタートとなっています」(前出・五輪担当記者)

主要な国際大会は、夕方以降に決勝を行うのが通例だ。オリンピックではそれが逆になっている。

「男子バスケットボールに至っては、決勝を午前中に始めるために、3位決定戦が後回しにされています」(同)

なぜこのような不自然な競技時間となっているのか。前出の谷口氏が説明する。

「日本時間の午前がちょうど、北米のゴールデンタイムに当たるからです」

米・NBCがIOCに莫大な放映権料を支払っているのは冒頭でも見た通りだ。日本とアメリカには14~18時間の時差がある。日本で午前に競技が行われれば、アメリカ国民は夕方から夜にかけてそのライブ放送を楽しめるというわけだ。

しかし、困るのは競技に参加する選手たちだ。

「競泳などは複数種目に出る選手も多い。調子が出きっていない午前に決勝を泳ぎ、そのダメージをひきずったまま、今度は午後に別の予選を泳ぐなど、まったく本来の力が出せなくなってしまいます」(前出・記者)

さらにスタッフ、ボランティアにも影響が及ぶ。早朝の競技のために泊まりで準備をしなければならないケースも出てくるだろう。長時間の拘束や交通費、宿泊費の増加など、多大な影響が出る恐れがあるのだ。

「『選手ファースト』ならぬ『アメリカの放送局ファースト』で物事が決められているのです」(前出・ボイコフ氏)

果たして誰のためのオリンピックなのだろうか。

巨大台風でも大会延長はできない

暑さばかりに注目が集まっているが、同様に懸念されるのが、台風などの自然災害である。東京五輪が開催されるのは7月24日~8月9日だ。'18年は8月9日に台風13号が、'17年には8月7日に台風5号が日本に接近し、大きな被害をもたらした。五輪の期間中に大型台風が列島を直撃する可能性は十分にある。

Photo by iStock
通常の大会であれば、競技の日時を変更したり、競技期間を延長して対応するのが普通だろう。だが、五輪の場合はそうはいかない。

「実はオリンピック憲章には、『五輪の競技期間は16日間を超えてはならない』という規定があるんです。これは期間が長くなることで、選手や関係者の宿泊費、会場を借りる費用などが増大するのを抑えるためとされています。

IOCは、期間の長期化によって、世間の五輪に対する関心が薄まることで、『五輪ブランド』の価値が低下することを懸念していると言われています。いずれにせよ、台風が来たとしても、大会期間の延長はできないのです」(前出・五輪担当記者)

かといって、競技日程を変更するのも難しい。米大手テレビ局の意向があるため、スケジュールを動かすのは至難の業だ。ゴルフなど、大会の日程期間内に予備日を設けている競技以外は、強行される可能性がある。

大型台風が近づく中で競技を行えば、選手やボランティアが帰宅難民になったり、事故やケガ、そして「最悪の事態」も起こりかねない。前出・小笠原氏はこう語る。

「東京五輪の数々の問題に対して、正論を唱えても、大手メディアでは取り上げられず、組織委員会にも届きません。東京五輪に不安や不満を抱えている人は数多くいるはずですが、いまの日本ではいないことにされてしまっているのです」

五輪に対してあなたが持った違和感は正しい。「感動」「レガシー」、そんな言葉で誤魔化されてはいけない。

『週刊現代』2019年12月7・14日号より


焦点:東京五輪、なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる

2021年07月26日 03時40分16秒 | 社会・文化・政治・経済

Malcolm Foster, ロイター

[東京 26日 ロイター] - 日本列島を襲った今月の猛暑が、真夏の東京五輪開催に対する懸念を高めている。この時期は通常、1年の中で気温と湿度がもっとも高く、出場選手や観客に健康被害をもたらす恐れがあるからだ。

 7月26日、日本列島を襲った今月の猛暑が、真夏の東京五輪開催に対する懸念を高めている。写真は、五輪会場となる建設中の新国立競技場と日傘をさす女性。都内で24日撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
1964年に初めて東京で夏季五輪が開催された時期は、比較的涼しくて湿度も低い10月だった。4年後のメキシコ五輪も同じく10月に行われた。

だが過去30年にわたり、ほとんどの夏季五輪は7、8月に開催されている。テレビ局が大会を取材する上で理想的な時期と考えているからだ。

この時期は五輪以外に世界的なスポーツイベントが少なく、テレビ局はより多くの視聴者を獲得しようと数十億ドルの放映権料を支払う。

「IOC(国際オリンピック委員会)は、夏季、冬季五輪の開催時期について、米テレビ局の希望をよく分かっている」と、元CBSスポーツ社長のニール・ピルソン氏は話す。同局は1992年、94年、98年の冬季五輪を米国で放送した。

「夏季五輪が10月開催となると、単純にその価値が薄れる。その時期にはすでにさまざまなスポーツ大会の契約が存在するからだ」と同氏はロイターに語った。

IOCは、2020年夏季五輪の立候補都市に対し、7月15日から8月31日までの間に開催することを求め、東京は7月24日から8月9日を開催期間とした。

日程は、スケジュールが重ならないよう各スポーツ国際連盟から意見を聞いて決定されている。

<ゴールデンタイム>

スポーツイベントが閑散期だからという理由からも、五輪の開催時期は選ばれていると、テレビのスポーツマーケティング専門家は指摘する。公式五輪記録もそれを裏付けている。

9月あるいは10月に五輪が開催される場合、米国では、ナショナルフットボールリーグ(NFL)のシーズン開幕や野球の大リーグ(MLB)プレイオフといった他のスポーツイベントと視聴者を取り合うことになる。欧州でもサッカーシーズンの序盤と重なる。

「スポーツイベントの予定があまりないこうした閑散期に組み込まれるよう意図されている」と、米ホーリークロス大学のビクター・マシスン経済学教授は指摘する。

立候補都市は代替日を提案できるが、必ずしも認められるとは限らない。中東カタールの首都ドーハが2020年夏季五輪に立候補したとき、7、8月は暑すぎるとして10月開催を提案した。だが、オリンピック放送機構(OBS)とIOCテレビジョン・アンド・マーケティング・サービスSAは、2012年4月に公表されたオリンピック作業部会の報告書の中で、そのアイデアに批判的な反応を示した。


「五輪大会がIOCの推奨する7、8月に開催されれば、ゴールデンタイム視聴率の首位を獲得する『お墨付き』を放送局に与える」と同報告書は説明。「10月の開催では、放送局は低い視聴率に直面することになる」

IOCに76億5000万ドル(約8500億円)を支払い、2032年まで米国における独占放映権を獲得することに2014年合意したNBCはコメントを拒否した。

2015年にユーロスポーツを買収し、13億ユーロ(約1680億円)で2024年パリ大会に至る4大会を欧州全土で放送する権利を獲得したディスカバリー・コミュニケーションズDISCA.Oもコメントしなかった。

五輪日程の決定後、競技スケジュール作成中に放送局からの情報提供を受けている、とIOCでメディア広報マネジャーを務めるミカエル・ノワイエル氏は電子メールで語った。

夏季五輪の開催時期を7、8月と定めたのは2000年大会からだと同氏は説明。「2020年東京大会の開催時期に異論は出なかったため、利害関係者が相談を受けることはなかった」という。

<理想的な気候>

ほとんどの夏季五輪は1976年以降、7,8月に開催されており、暑さ対策を迫られる開催都市もある。

例外が認められたケースもある。2000年のシドニー大会は、南半球の気候に慣れるため9月後半の2週間に開催された。

提案した開催時期について、東京の立候補ファイルは、「晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」とアピールしている。

日本は今月、記録的な猛暑に見舞われ、五輪開催時期の気温について懸念が高まっている。

埼玉県熊谷市では23日、気温41.1度を記録し、国内最高記録を更新。総務省消防庁によると、22日までの1週間で少なくとも65人が熱中症で死亡した。これは2008年に集計が開始されてから最多となっている。熱中症による救急搬送も2万2647人に上った。

だが気象庁のデータによれば、過去20年における7月最後の10日間と8月最初の10日間の平均最高気温は、約32度となっている。

東京五輪のマラソンコースに基づき、2016年と17年の7月後半と8月に気温や湿度などのデータを集計した国際的な研究チームは、選手や観客が熱中症になるリスクが高い状況となる可能性を警告。日陰のエリアを増やすよう、大会組織委員会に提言している。

同研究に携わり、緑地環境計画が専門の横張真・東京大学教授は、五輪史上で、東京が最悪のコンディションになりかねないと、東京大会のマラソン競技について警鐘を鳴らした。

組織委は、こうした警告を真摯(しんし)に受け止め、マラソン開始時刻の午前7時半から同7時への前倒しを発表。また、マラソンコースや他の主要道路に太陽光の赤外線を反射する遮熱性の塗装を行い、温度を下げるとしている。

組織委はまた、暑さ対策として、テントや冷風機などの設置を検討しているという。

あらゆる可能性を考慮した暑さ対策を準備していると、組織委の高谷正哲スポークスパーソンは語った。

横張教授は、10月あるいは11月が、東京五輪にとって理想的な開催時期であり、夏は暑くで湿度が高すぎると語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)